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皆様、お世話になっております たつみやベビー店長の矢野です 3人娘達に手を焼く「夢見る中年男」の私が2003年から約15年の間に ごくたわいもないことをダラダラと書き込みつづけてておりましが 2017年の第243話をもちまして、めでたく最終回とあいなりました。 どうもありがとうございました。 まだこのページに残っている第181話以降の毒にも薬にもならない話を ゆる~い暇つぶしに読みとばしていただければと思っております 立石寺にて 1,015段の石段に疲れる 長女 私 次女 三女 (2013年) |
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第243話 宮津 2017年 3月19日 ああ~思い起こせばいろんなことがありました 30年ぶりに出会った旧友から「ホームページ見たことあるで~」とか 全く知らない人から「店長の独り言を見てますよ~」と言われて 恥ずかしかったり、うれしかったり・・・ 一方で「家族の辱をネットにさらすな!」と娘達にまで叱られたり・・・ そんなこんなでバックナンバーのページはすでに閉鎖しましたし ちょっとだけ反省もしました いまさらPCに残る初期のテキストから1話~20話を振り返ると 当時は長女が保育園へ通っており、三女は生まれてさえいないのが なんとも不思議に思えます さてさて今年度だけは3人娘が私の母校でもある地元の 小学校・中学校・高校へとそれぞれ通っていたおかげで 3校のPTA活動ではかつてないほど忙しくさせてもらいました みんなまだまだ小さな子供だとおもっていましたが 今では三人ともママと変わらない身長になっているではありませんか! 確実に成長しています 月日のたつのは冗談のように早いくせに笑えませんな~ 最後に第243話を最終話として故郷についての話をまとめてみました 最寄の京都縦貫自動車道の宮津天橋立インターを降りて 右折すると15分で海水浴場、そして球場があります 左折すると15分で大江山、そしてスキー場に到着しますので 自然が豊かな我が町・宮津はいいところだな~と思います 球場について~ 春になると球場のそばへ娘達とワラビやタラノメやコシアブラなどの 山菜を摘みに穏やかな木漏れ日の中を何度も出かけました コシアブラという聞きなれない木の芽はテンプラにすると妙に美味いのです しかし気をつけないと球場の周りの雑木の中にはウルシ系の木も多く かつて美少年だった6年生の私はうかつに触ってモロにカブレてしまい 翌日の午後からは親が見てもだれか分からないほど顔が腫れあがり うっかり掻いてしまった部分から全身へトビヒになった悲惨な事がありました 危険なのでかぶれる木もよく覚えておいて欲しいものです 娘達よ~穏やかそうにみえていても自然を絶対に甘く見てはいけないのだぞ! 私は野球に興味がないため球場には直接縁はないと思っておりましたが 中学でソフトボールを始めた次女の応援に足を運ぶようになりました 最初はびっくりするほどヘタだった娘は半年ほどでユニフォーム姿が なかなかさまになってきて、2年生からはギュラーに定着し 府下大会にも出させていただきました 6年生の時に体育で「1」をもらっていたのは一体だれだったのか? 我が娘ながら子供の成長には驚くばかりです 昨年のこと、N先輩の銀のワゴン車が球場の駐車場に停まっており ちょっと離れて試合を見ていた先輩を見つけて声をかけました 「次の試合にウチの次女が出ますよ、負ければそれで引退ですけどね~」 「あ、そうなんか~・・・えっ?もう中3ってか!早っ~マジかいや!」 と驚いた先輩は特に母校の応援ではなかったようでした Nさんは野球部やソフト部だった子供たちの応援のために かれこれ10年近くここへ通っていたけれど、今は3人とも卒業して 都会へ出てしまっており、盆か正月にしか顔をみることはなくなり ここに来たのもNさんは3年ぶりで、なんとなく見てはいても 懐かしくなって、思わず涙が出そうになったとのこと 私も山菜摘みにこのあたりへ来ても、この春からは ファーストで声を出していた娘を応援したころが懐かしいな~と 思い出すようになるのだと気付き、センチになったそのときは N先輩と飲もうと決めました 海水浴について~ 一昨年の夏に娘達と海へ行きました 車で10分の海水浴場の手前にある切り立った岩場へと降りると 天気がよくって波が穏やかで水温も高くて透明度もありました 水中眼鏡をつけて水中散策するとカラフルなウミウシや おいしそうな貝類がいたりしてビーチより面白いのです 泳ぐ気のなかった次女までもが普段着のまま海に飛び込むほどでした ところがポケットには長女から預かったスマホが入っており 防水ではないため再び電源が入ることはなく 最高だと思っていたのに最低な気分になった次女は 姉にコロサレル・・・と、かなり落ち込んでいましたが データのバックアアップがネット上あったようで、命は取り留めました 昨年の夏も娘達と海に行きました 切り立った岩場へと降りると 天気がよくって波が穏やかで水温も高くて透明度もありました 景色もいいので泳ぐには最高でしたが・・・なぜか次女だけは 「絶対に泳がへん!」と、ひとりで岩場を探検していました しばらくしてその次女がずぶ濡れで海から上がってきました なんで? しかも左足は流血しており真っ赤です! 聞けば、崖からすべって海に落ちたというではありませんか 頭を打っているようで妙にハイにもなっていました 打ち所が悪ければ死んでいたかもしれなかったことに恐怖しました 親として全くの監督不行届きに反省しております スマホと違って命のバックアップはネット上にもないので これを良い機会だと親子で気を引き締めねばと文字通り痛感しながら 止血もしつつ言いました 娘達よ~穏やかそうにみえていても海は絶対に甘く見てはいけないモノじゃ! 大江山について~ 3年前の秋に娘達と山登りというか山歩きをしました 大江山は車で頂上付近まで登ることができますので 愛犬のマコも連れて2時間ほど森林浴をしてみたのです 天気がいいのに涼しくて風も穏やかでした 大阪からバードウオッチングに来ている人と話もしました クマタカを狙っているんだよ~と高そうなカメラを見せてもらいましたし 小さなミソサザイが元気にさえずっていたりするのを望遠鏡で のぞかせていただき親子で勉強になりました さて散策の途中で困ったことが起こりました クマのウ●コを見つけたミニチュアダックスのマコが家族の制止を振り切って 犬の習性なのか、大きな●ンコの上でうれしそうにゴロゴロと転がりつづけ ウン●まみれになったのです 車に乗せるといつものように あまえてひざの上に乗ってこようとするのでさらに困りました 帰りにもっと驚いたのはクマタカに遭遇したことでした 森の中から車道にいきなり飛び出てきて私達の車の前を わずか4~5秒でしたがバサバサと飛んでくれました トンビより胴体は大きいのに翼がちょっと短くて、まるで千と千尋の神隠し に出てくる湯婆婆の変身にそっくりでした しかし宮津は自然が豊かだな~ 家に戻ると、もっともっと驚くことになりました 風呂場で熱心に洗ったはずのマコをドライヤーで乾かしても黒いツブツブが まだたくさんついていたのです しかも、ウン●かな?とよく見るとそれが動くのです! ダニでした・・・ 50匹ほどつぶしては粘着テープにくっつけても なかなかダニの数は減りません・・・ というかカーペットの上にもポロポロ落ちてうごめいています なんだか体中がムズムズしてきて、掃除機をかけまくったり 部屋中に半狂乱でダニキンチョールをまきつつ教えます 娘達よ~穏やかそうに見えていても山も絶対に甘く見てはアカンもんなんじゃ~! スキー場について~ 娘達とスキーをしたのは5年前が最後で2度目でした 長女も次女も小学校のスキー遠足はこのスキー場でしたから 予行練習に来たのです そういえばまだリフト券が残っていました また来ようと言いながら雪がほとんど降らない年が続いたり スケジュールがあわなかったりでスキー場が近くなのにいけませんでした そうそう、このスキー場の近くからは秋~冬にはキレイな雲海を 見ることができるため早起きして写真を撮ったりもしました インターの掲示板にキリ注意との表示があれば高確率で雲海が出ています 由良川沿いに雲がたっぷりとたまっているのでスキー場の方が雲よりも上なら 都会の人がうらやむような光景が簡単に拝めるのです スキー場と言えば去年の春、3月の半ばでした 車で普甲峠に差し掛かかると入り口の300m手前で K先輩の黒いワゴン車が路肩に停まっていました 車から降りてスマホで景色を撮っていたのは末娘のSちゃんでした 話を聞くと看護士の資格をとった娘さんは都会の病院に就職が決まり 先輩が引越し先まで送る途中で、ちょど宮津の町にお別れしているとのこと そこはふるさと宮津が一望できる場所なのでした 後日、先輩に聞くと引越しが終わってKさんが帰る時に 普段は気の強いSちゃんがオイオイと泣いてしまい 後ろ髪を惹かれまくったおかげで・・・また頭髪が薄くなったとか それからしばらくは奥さんと娘が毎晩長電話していたが 今では電話さえもかかってこないし 年に3回は実家に帰ると言っていたのに、この正月は ツレと信州へスキーに行くとかで帰ってもこなかったとか 遠くにいる次男も三男も大雪で帰ってこれなかったので 5人の子供のうち集まれたのは2人だけで みんなすっかり親離れしており、K先輩の心配は減ったようですが 飲み会では肩を落とした先輩が 「顔をあわせる機会も減るわいな~・・・」と半笑で言いました 顔をあわせる機会が減るといえば・・・ 気づけばもう年度末で4月から長女は高校3年に 次女も高校へ、そして三女は中学に入学です 高校3年と言えば・・・あと1年で長女はどこかの街へと出て行くはず ということは我が家の3姉妹とそろってダラダラと過ごせる 「普段どおりの生活」はもう1年しか残っていないのか~ ああ~さびしくなるな~ ワシは子離れができるのだろうか? センチになったそのときにはKさんと飲むとしよう と思っていた矢先・・・ 次女が塾の先生にも無理だと言われていた第一希望の学校に合格しました ありがたいことなのですが地元の宮津高校へ通うと思っていたため 親としては戸惑っています というのも、その隣町の学校では寮生活になるので 長女よりも先に次女が家を出てしまうのです! まだ中3で子供だとばかり思っていたのに 私は大切な事をぜんぜん教えられてはいないというのに このサイトを立ち上げた頃ころにはまだ1才だった 常に反抗期で親の言う事を全然きかずムヤミに泣きわめいた あの「ぬかるみのトコ」なのに・・・ あと1年だけはつづくと思っていた、かわいい娘が3人そろう 「普段どおり」はこの3月末で一旦終わるのです 終わるといえば・・・この、3人娘に手を焼く「店長の独り言」も そんなんこんなで今回で最終話なのでした ありがとうございました かの兼好法師がつれずれに244段をしたためたよりも1話少ない 第243話というのも自分ではちょうどいい感じなのです ああ・・・小学校の入学式から戻った小かった次女が まだ子犬だった小さなマコをうれしそうに抱いていたのは ほんの3~4年ほど前の話ではないのかと思えてなりません・・・ ああああ~月日の経つのは早すぎます! そして早いといえば人間より成長の早い犬のマコは気付けば10歳で 人間の年で言うとオバチャンからおばあちゃんになってしまいました 白内障で目がにごってきましたし、動きもゆっくりです 今も家族を癒し続けてくれているマコ~泪目の萬鼓~さえも 常識的に考えてもあと5年以内にお迎えがくるのかと思えば またまたセンチになります そして、その前後では末娘の三女さえも高校を卒業して家を出るタイミング! ああ~我が家はなんとさびしくなることか・・・ みんな都会へ出て行ってしまうのか・・・ さびしいといえば大江山スキー場はこの冬を待たずに閉鎖になりました 近年はあまり雪が積らなかったので仕方なかったのかもしれません しかし、今年はうんざりするほど雪が降ってしまったので あと1年だけでも続けてほしかったな~~ 家から車で15分なのだからもっと気軽にスキーをすればよかった 娘達と一緒にすべればよかった もっと娘をかわいがればよかった スキー場は終わっても子育てはまだ終りではありません 今できることを考えるとしましょう ああ~子供が成長することはうれしいけれど 年々さびしくなるのは困るな~ さびしいからと酒量を増やさないようにしなければ ・・・できるだろうか? いずれ宮津を出て行くであろう子供達へ最後に言うのは 娘達よ~穏やかそうに見えとっても都会は絶対に甘く見たらアカンのじゃ! そして・・・・にぎやかな街もエエんやろうけど、ふるさとの宮津は がっさい自然が豊かで、もっとエエトコやさかい 年に2回といわんとワシに顔を見せてくれ~よ~ 第242話 お酒をちょっとやめてみましたけど 2月19日 いろいろあって8年ぶりに2ヶ月の間、禁酒をしてみました・・・それだけです しかし前回の禁酒は①頭痛などの解脱症状 ②便秘 ③ストレスがたまる ④痩せない ⑤味覚の変化・・・などの不具合を感じたのですが 今回はその5つがすべて逆だったのです! 8年の間に何があったのか? 自分でも不思議です 今回は禁酒で体の具合が悪くなることはなく、概ね快調で 便通もよろしくてイライラもしませんでしたし 口がさびしいときには薄めた酢をのんでまぎらわし 気が付けば、さらに3kgも痩せてしまいました 現在はお酒を解禁してしばらくたちましたが すっかりアルコールに弱くなっていたわけでもなく ふつうにおいしくいただいております 断酒の結果報告は以上ですが 毎晩のみ続けていたお酒をしばらく断つきっかけについては 警察編 先輩編 友人編 後輩編 医者編と5つもありまして・・・ 最終回直前なのでムダに長い文章でいつも以上にダラダラとお知らせしてしまいます まずは~その1・警察編~ 夜の10時に寄り合いが終わり、飲みに行こうと4人で歩いていると 市役所の前の暗がりで、いきなりおまわりさん2人に呼び止められて 「どこの帰り?何歳?どこへ行くの?」と耳を疑うようなことを聞かれました 老人に間違われることさえあるスキンヘッドの後輩PK君とは 思わず顔を見合わせて、ワシらが40歳以下に見えるのだろうかと驚きました しかし私たちは後列で、前を歩いていた30代後半のM君とT君の二人が かなり若く見えるために高校生と間違われたようです・・・それぞれ答えます 「会議所の帰りですけど」「36です」「あの~私は47です」「居酒屋へ」 顔をよく照らせば、おまわりさんもすぐに我々がオッサンと分かります 「なんか事件があったんですか?」「これって職質なんすか?」 お巡りさんから残念そうな顔で「もう行っていいよ~」と言われましたが あとは酒の肴にするだけですな~ 飲みながら警察の悪口・・・じゃなくて、その勤勉さをほめちぎっていると 私と違って後輩たちは職務質問されたり、運転中に検問に遭うことも ほとんど無くて新鮮だったと言いだしたです・・・え?ワシだけなの?? 詳しく聞いても「10年ぶりや~」とか「2回目です」とか 「昔、大阪の繁華街で職質されて以来」なんて言ってくれますが 私くらいのイケメンになると・・・ここ1年で2回も・・・ それはそれで話が盛がってしまいたくさん飲んでしまいました 日付も変わったので、T君に自転車を貸してもらって帰路に着きました その翌週の寄り合いの後も一杯飲んでママチャリでフラフラ帰っていましたら ミニ・パトに呼び止められました 警「お仕事の帰りですか?自転車に乗ってますよね?お話をきかせてください」 私「はい・・・」 警「お酒はのんでませんか?」 私「飲んでます」 警「自転車の飲酒運転も違反になるからダメなんですよ!」 私「すみません」 懐中電灯で照らされ、防犯登録を照会しました その自転車は父親名義の登録でしたので、私の住所と違うため免許も見せました いろいろ質問されてしまいましたが 「今夜は風が強いから気をつけて帰ってください、飲酒運転はダメですよ」 と優しく言われて開放されました うわ~またつかまってしもた~ワシは目をつけられとるんか?今年3回目! 運が悪いだけなのか? 酔いが醒めてしもたで~ 軽くショックを受けてトボトボと家まで自転車をひいて戻ると 自宅の手前で先ほどのパトカーが私の帰りを待ってくれておりました さすが宮津警察! 無事の帰宅を見届けてくださるとは優しすぎます~ ありがとうございます でも・・・自転車に乗っ帰ってきたなら 現行犯逮捕されるところでした・・・アアコワ~ いままで何度も飲酒で自転車に乗って帰っていた私ですが 再び同じおまわりさんにつかまれば、どうなってしまうのでしょう? しかも後輩の自転車を借りて帰ったりしていたら、防犯登録の名義が違うので 盗難自転車と疑われ、署まで連行されてはたまりません その場合どんな罰になるのか調べてみると、これがビックリ 『~車両等を運転した者で、酒に酔った状態に該当する者は 3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する~』 「車両等」とは自動車だけでなくバイクも、さらには自転車も含まれるのです! ということは・・・酒を飲んで自転車に乗っただけで道路交通法違反になります しかも平成12年度の全国の資料を見ると、たったの半年間で なんと101人が自転車の飲酒運転で書類送検されているではありませんか! ここまでキビシイとは知りませんでした~ アアコワ~ 飲んだ後は自転車が便利だったのにな~ これからは飲み会の帰りは、徒歩かタクシーの2択になるのか・・・ 自転車の飲酒運転をすっかり悔い改めた小心者の私は家でおとなしく 警察の勤勉さを肴に苦い酒を飲むのでありました そして、したたかに酔って頭の冴えた私は、徒歩とタクシーの2択以外に 「飲まない」と言う三番目の選択肢があったことに初めて気が付いたのです! 夜になれば当たり前のように飲むのではなく、飲まないという自由もあったのか! 酒は飲まねばならぬという固定概念が私を支配していたことにも今さら気づき ちょっとお酒を控えようかな?と言う考えがちょっとだけ生まれたのです で~も、まだそれだけではお酒はやめません というわけで次は先輩編です ~先輩編~ きっかけは大酒呑みのN先輩の言葉です かつては男前だったNさんもすっかりメタボで 昨年はとうとう80kgを突破してしまい それでも寝る直前までず~~っと酒を飲んでいたはずのNさんの口が 「酒?誘われれば飲みに出るけど、もう家では飲まなくなったよ」と言ったのです 私はNさんみたいな記憶障害になったらお酒をやめてしまおうかな? と考えていたのに一体何がNさんを変えたのか・・・気になるな~ 詳しく聞くと「趣味と健康への関心」が「家庭での飲酒の快楽」を上回ったとのこと 以前は帰宅後にすぐ酒を飲んでいたのをきっぱりやめて趣味の時間に当てただけで 15kgも痩せてしまい、すこぶる調子が良いそうです 懲りない男のN先輩を健康体のイケメンに戻したスバラシイ趣味とは 自転車でした ヒマな時間があれば、夜中でも隣町や大江山にサイクリングに行くのだそうです 「よかったら、こんど一緒に行こうか?」と誘われました せっかくのお誘いですが私はママチャリしか持ってません・・・ そんな折、ステキなサイクリング自転車が中古屋の店先に置いてあったのです まだ新しそうな品なのに一万円ポッキリです むっちゃ細いタイヤを履いた2X7段ギアでスピードメーターや なんとパンク修理セットまでがついています 素人目には中古でさえ3万円以上の価値がありそうでした カギとスタンドは付いていませんが、コレはどう見ても掘り出し物です! よっしゃ買うた~! これでN先輩とサイクリングに行けます しかし、お互いのスケジュールが合わないうちに1ヶ月が経ちまして 私は飲み会へサイクリング車で出かけて警察に捕まらないように タクシーで帰りました しかし私はその後、自転車のことを・・・なんと1月間も忘れていました サイクリング車が無いのに気づいても、最後に乗った記憶が定かでは無く 盗まれてしまったか~とあきらめていたのですが とあるバーに立てかけてあるのを発見しました ああ~あった!よかった~ あれ?思い出した!この店には2次会で行ったな~ そうそう、ここに置いておいて翌日取りに来ようと思ったことを忘れて 3次会に行って~そのままか・・・すっかり忘れとったな~ N先輩の言う「40才を超えたら記憶がヤバイから気をつけろ!」 というのは本当だ~ おはずかしい! 記憶障害がほぼ確定です マスターに聞いたら、高そうな自転車が鍵もかけずに1月以上も放置してあるし 名前も防犯登録も無くスタンドもないし、とりあえず店先に立てかけておいたが だれも名乗り出ないので来週には警察に引き取ってもらうはずだったそうです これが都会なら1週間を待たずに盗まれていて当然です いやいや~我が町・宮津は治安が良すぎ、飲み屋は親切すぎるではないですか~ (special thanks BAR ROBIN) 40代も後半になり、このようにお酒で記憶が飛ぶ機会が増えつつある今日この頃 Nさんのように健康的な趣味に力を入れるのもいいかも~と考えつつ すぐに断酒を始めるかというと・・・これだけではね~ さて、そもそもお酒はおいしい・・・なのだろうか? 2ヶ月間の断酒についての次なるきっかけですが 居酒屋で飲んでいる時の後輩達の言葉でした ~後輩編~ M君とJ君に、家ではどれくらい飲むかを聞いてみました M「ボクは家では全く飲みませんよ、お酒は付き合いで外で飲むだけですよ」 J「オレも夜に運転が出来なくなるから家で飲むことはほとんどないですね」 私「え~っ!君らは酒をようけ飲むイメージなんやけど、じつはキライか?」 M「なんていうか~酒がキライではないんですが、美味しいとも思えません」 J「ボクも夏のビールの一口目だけは美味いと感じますけど、特に美味くは」 私「美味くないけど付き合いだから、しょうがなく飲むのか?なんか悪いな」 M「悪くないですよ、誤解がないように言うと楽しいから飲むだけなんです」 J「そうそう先輩~今夜も楽しく飲みましょうや~もう日本酒にしますか?」 私「ほな君らは、家では何を飲んどるんや?お茶か?コーラか?ノンアル?」 J「ほぼほぼ水ですね~基本的にアルコールは一人の時には飲みませんから」 M「みんなで飲むときは楽しいけど、逆に~楽しくない時には飲まないな~」 私「ということは、淋しいときとか、悲しい事があっても酒は飲まへんの?」 M「悲しい酒を飲むほうが悲しいでしょ?悲しいと飲み気も失せませんか?」 私「そういう時こそお酒で紛らわせるやろ?一種のストレス発散というかな」 J「一人淋しく酒を飲むほうがさらに落ち込んでストレスたまりそうですが」 M「あえて言うと(一人ぽっちで焼肉に行くか?)と同じでありえん話です」 私「ワシはひとりで焼肉屋で塩タン焼いてビールを飲んだことが2回もある」 M「ウワ~ひとりでなんてムリムリ、繰り返すなんて変態のすることですよ」 私「ほっとけ!一人ぼっちでも10人だろうが焼肉は絶対美味いモンやろ?」 J「ぼっちで肉を焼いて何がオモロイんです?そんなの絶対美味い訳がない」 私「酒を飲んだら肉の美味しさとか楽しい気持ちとかがアップするのやろ?」 J「そもそも、焼肉に一人で行って楽しいわけがない!多分ハラが立ちます」 私「君は怒り上戸か? ハラがたったとしてもビールと焼肉でチャラになる」 J「すでに一人で飲んでいる状態がダメダメなんです(怒)分かりません?」 私「分からん!お酒で楽しさが増すから、悲しい気持ちも中和できるのやろ」 M「中和?むしろ悲しさだけがアップするでしょ?聞いてて泣けてきますよ」 私「君は泣き上戸か・・・泣きながらの焼肉はさすがのワシもムリムリや~」 M「それにアルコールって臭いから、コーラやウーロンの方が飲みやすいし」 J「それわかるわ~熱燗とか絶対ムリやし焼酎も芋とか?く~さいのはNG」 私「君たち~、そういいながらもビールの大ビンが4本も空になっとるで~」 M「酒が美味しくない話をしながら飲むビールは意外とおいしいもんですね」 J「楽しいからつい飲んでしまうな~矢野さんもビールがすすむでしょ~?」 私「きっちりワリカンにしたくなるほど美味しいわい!ほな熱燗プリーズ!」 後輩達の話をまとめると 酒が飲みたいのと、酒が楽しいのと、酒が美味いのとは それぞれ別の解釈であり 酒に強いからと言って、酒がおいしいとは思っていなくて おいしいと思っていなくても、飲んで盛り上がれば楽しくて 楽しいから飲むのであって、飲むから楽しいのではない でも楽しいから、酒がすすんで、酒に強いといわれる・・・ うう~む、なんだか哲学的やな 私は酒が飲みたい~楽しい~うまい~の三点セットだったのですが 個別に考えると・・・どうなのでしょう・・・ああ~むずかしいな~ ところで最近の私はお酒を本当に美味いな~と思っているのでしょうか? その結果、楽しくなっているのでしょうか? 一人で飲んで満足なのでしょうか? 昨日のお酒は楽しかったのか・・・笑顔で飲んだ記憶もないし ただ、なんとなく飲んでいるだけか? そういえば美味しいと思ってない事も確かにありますし じっくり味わって飲むということは、ほとんどなく 眠り薬としての役割が増えています それでは酒を飲む値打ちがないような気がしてきたのです 酒をやめるのも自分を見直すいい機会かも・・・ しばらく断酒をしようかな~ で~も、これくらいではお酒をやめませんよおおおおおお! 断酒のきっかけのうち、次のきっかけは悪友の言葉です ~友人編~ 健康診断で、今年も肝機能が引っ掛かってしまいました 再検査の時に超音波エコーで肝臓をモニターで見ていたF先生から 「脂肪肝になりかけていますから酒の量を減らしたほうがいいですよ 日本酒なら一合を目安にやめて休刊日も週に2日は作りましょう」 とのありがたいお言葉をいただきました 私はよくよく考えてから答えます 「たったの一合では本意ないので、しばらく禁酒してみようかなと思います」 すると先生は驚いたようなそぶりで横目でチラっと見てニヤリと笑うと、こう言うのです 「へ~そんなことが・・・あなたにできますかな?」 あ!なんかイヤな感じがしたぞ せっかく禁酒しようと思ったのに失礼な! ヤメじゃい! 絶対に今夜も酒をたらふく飲んでやる! ああ~でも一合では少なすぎる・・・二合は欲しいな・・・ 一合だと、ぜんぜん酔っていないのがよく分かるので困るのです 二合目では、少し酔いがまわってきましたが、でも本意ないな~ 三合目で、しっかりと酔っている自分に気づきますね・・うんうん 四合目になると、それに気づいた自分が酔っているのなら、これは 正しい判断ではなくひょっとすると自分はまだ酔ってはいないのではないか? と考えて五合目を飲みながら哲学的な考えをめぐらせてしまいますので 三合あたりがちょうどいいのです 日本酒は三合がちょうどいいと分かれば、一合だけでやめるのは本意ないな~ これは男らしく最初から飲まないと決めたほうがいいのかも 酒を控えるのではなく、やめるのだ! この期に及んでは禁酒が一番良い判断であると 五合目の終わりで今夜の結論がでました しかし禁酒を決めたからには、まづは「禁酒祝い」で飲まなくてはなりませんな~ オイオイ!それでは禁酒にならんがな~って「一人突っ込み」したりして・・・ まあ~仕方ないな~禁酒は明日からにするか・・・ あっ!明日は自治会の引継ぎでその後は飲み会が・・・では、あさってから禁酒と ・・・そうすると明日でいよいよ飲み納めか~ では明日の飲み納めを祈念しましてカンパーイ!今夜もとことん飲もう~ ああ~ウマイウマイ・・・ええ~っと六合目だっタかナ~? 禁酒をまじめに考えたおかげで二日酔いになってしまうではありませんか 朝が来たな・・・まだ眠い・・・というよりも頭が痛いな~なんでだろう? でも昼ごはんを食べたら治った~・・・おっと電話だ・・・ツヨシか・・・ あ~もしもし~・・・おう、久しぶりやな・・・えっ、今夜か?・・・ ダニーと3人で・・・あ~ごめんよ今夜は先約があるんや~・・・うんうん ・・・え?明日か・・・何もないけど・・・悪いな~ほな7時で・・・了解 ・・・ハイハイよろしくね~どうもどうも~ そんなこんなで、とりあえず連日飲み会ならば、いつから禁酒をするかは 3人で飲みながら考えましょう・・・三人寄れば文殊の知恵というではありませんか 悪友とのはしご酒で二人に話をもちかけます Q(私のセリフのみ) 「ワシは中性脂肪と尿酸値?やったかな~なんかがヤバイらしいわ~肝機能も そうそう、飲みすぎらしいわ、それで『酒やめます』って先生に言ってみたんや 聞いてくれや~あのF先生は失礼なんや~『無理でしょ?』って笑ったんやで そこは笑う場所違うやん? ・・・な? も~ぜったいワシ酒やめたないで~! なんでワシが笑われなアカンのや? 医者は笑うんが仕事か? 金返せ~! でもな~とりあえず酒を控えろと言われとるし・・・君たちはどうおもう?」 ビールをグビグビ飲みながら、赤ら顔したおっさん達の 不毛な会話が繰り広げられます A-1(ツヨシのセリフのみ) 「なんで酒をひかえなあかんの? 健康って?俺たち五体満足で暮らしとるやろ? エエやん飲んだら! 酒を飲みないな! それにお前はタバコをすわへんやろ~ 白髪も俺らより少ないし、十分健康やんか~ そんなん気にせんでエエ~ だってパチンコもせんし、ギャンブルもせんのなら、君は何時何処で金つかうんや? たいした趣味もないし、な~んかこじんまりしてしもて~アカンでほんま よく考えてみ? 自分は、めっちゃ世間の金を滞らせてるんやで! そういう自覚が少しでもあるなら酒くらいゴイゴイ飲んでや~ 金をどんどん使わなアカンで!それは単純に社会悪やで! 健康よりそっちのほうが問題やな~、肝臓よりも頭の治療が必要とちゃうか?」 A-2(ダニーのセリフのみ 効果音付き) 「禁酒か~たいへんやど~、グビグビ ワシもな~、スパ~ 先生から、フ~ 健康のために スパ~ 禁煙せ~言われてな~ フ~ 禁煙しとるんや・・・ ん? ああ~今は吸うとるで スパ~ いつからって? グビグビ さっき、夕方から禁煙をはじめたんや スパ~今日の夕方や~ かれこれ3時間も禁煙しとったで~ハハハ グビグビ ちなみにオレは禁酒もしとるけどな フ~ え?今は飲んどるな~ それは昨夜の寝る直前に禁酒してやな~グビグビ ついさっき1時間前まで 禁酒も続けとったわけやな スパ~ 生ビールおかわりくださ~い! まあ~健康が第一や~ スパ~ 君も禁酒したほうがエエかもな~フ~ でも無理に禁酒を続けると、スパ~ ストレスがたまってな~それのほうが フ~ 健康に悪いかもな~ ああ、ありがとう、ほな今夜の5杯目に乾杯~! グビグビグビグビ ああ~ワシもお前と一緒に今夜から禁酒するわ~ハハハ~ スパ~ グビグビ 今夜寝てから 明日の夕方まで~ということで ハハハハ スパ~、健康第一! ゲップ グビグビ スパ~、グビグビ、スパ~ なぁ? え?ちがう? なにが? フ~ なんでもええか ええで うんうん スパー」 なにかが分かったような気がする、少なくともワシはこの二人よりは 普通の人間なんや~!よかった~ もはやこんな変人達のいうアドバイスを鵜呑みに出来るはずもありません へそ曲がりな私は、むしろ禁酒したくなってしまいました 持つべきものは親友ですな~ありがとう~ 明日から禁酒だ!・・・あっそうだ、明後日は青年会の飲み会が入ったし 来週はPTAの慰労会もあるな~ さていつから禁酒したものか・・・ と飲みながら考えているうちに2~3週間が経ってしまいます 不意に転機が訪れました ~医者編~ 痛みが体を走ります 私は腰痛持ちで、年に1回は動けなくなって寝込むのですが 整体の先生から「腰に筋肉をつけて、もう少し痩せると負担が軽くなる」 と言われたので、3日ほど腹筋と背筋を鍛える体操をして 軽くジョギングをしてみたらさらに腰の痛みが増してしまいました イタタ・・・しかしこれはイカン! う~む、どうしたものか・・・よし!酒を飲んで気を紛らわそう~ 酔えば腰の痛みが和らぐような~ ・・・ああ・・おやすみなさい こんな自堕落な生活を続けていた私を新たな痛みが襲うのです ・・・歯痛です 虫歯を治したはずなのに痛くて痛くて硬いものが噛めません でもお酒は飲めます 歯の表面ではなく根元のさらに奥へと釘が刺さっているような痛みです 痛いので酒を飲むと気がまぎれますな~ しかし、なぜか痛さが増しているような気が・・・ それでも懲りずに飲んでたのですが いよいよ痛み止めの薬も効かないほど悪化してしまい、とうとうしゃべることも ままならなくなりました そして酒をいくら飲んでも酔うどころか むしろズキズキと上顎~鼻~脳に響いて眠れません そんなつらい日が続いて寝不足でフラフラになりました こんなに痛い歯なら、抜いたほうがましじゃ~と、たまらず歯医者へ駆け込むと 先生から、やんわりと断酒をすすめられたのです 先生「歯が炎症を起こしている時にお酒を飲むと、さらに患部がむくんでしまい その結果痛みは倍増してしまいますよね?」 私「ええ~っ?気がまぎれると思って飲んだのが、逆効果だったわけですか」 先生「そうですよ~痛いのがお好きというのなら、どうぞ今夜も たっぷりお酒をお飲みなさい 痛いのがイヤなら治療中は飲まないことです」 この瞬間、私は歯を抜くのではなく酒を抜こうと決意してしまいました! そしてダメ押しの~妻編 歯医者から戻り妻に断酒宣言をしましたところ・・・意外にも 私「歯の痛みを倍増させとったんはアルコールなんじゃ~しばらく酒やめるわ!」 妻「え?酒で痛みが増すのも知らずに飲んでたって?そんなん一般常識やで」 私「ええ?知らんかったで~ほなワシは痛み上等で飲んどると思っとったんか?」 妻「そうそう、しかし懲りんやっちゃな~と思ってあきれとった、放置や」 私「うわ~知っとったんなら早く教えてよね~むっちゃ痛かったんやど~」 妻「そんなん昔から注意してもぜんぜん聞かへんかったからやないの」 私「ええ?そんなん言われたっけ?覚えがない~痛みは酒で紛らわすモンやと」 妻「アル中患者はみんなそんなことを言うんや、記憶は無くても自業自得や」 私「いやいや、お見捨てなきようにおねがいします、マジで断酒しますのでハイ」 さらにこのショックで肝臓の数値の悪化や通風に気を使わなねばならない立場の もうひとりの私が分裂して現れて、にわかにアルコールを嫌いだしました そして健康になった記憶障害のN先輩の言葉が頭をエンドレスで回りだしましたし いまさら後輩達に変態呼ばわりされることも、変な友人にアドバイスを求めたり ましてや警察に面倒をかけることも無用! よし!F先生もみかえしてやるぞ~! いまがその時! 断酒開始! そんなこんなで私はわずか2ヶ月間の断酒をさせていただくこととなったのであります 第241話 祖父の事 2017年 1月16日 関東へ引っ越してから10年ほど顔を見ていなかったY君が ひょっこり店に寄ってくれて、懐かしい話に花が咲きました うらやましいことに彼は昔とあまり変わっていません 変わらないのは車もそうで、見覚えのある古い日産ローレルを 今もキレイに乗っているのです この車には私も思い出があります サブウーハーの取り付けを手伝ったことや、本人以外には 車庫入れ不可能な恐ろしいほどに狭いガレージに神業で駐車を していたこと、そして当時は30万円もした最新鋭DVDナビを つけていたことなどです このナビについてよく覚えているのは餘部鉄橋までドライブした時です 帰り道を検索するのに助手席からリモコンでウチの電話番号を入れると モニターに映ったのはなんと! 『目的地~宮津市本町807番地 有限会社 辰巳屋 / 矢野友次郎』 とっとととととととと ともじろう? なんとその数年前に他界していた私の祖父の名前だったのです 個人名が出るとは最新鋭のすごさに驚きました このままナビの案内どおりに、このローレルで帰宅すれば ジイサンが家で待っているようなうれしい錯覚がしたものでした その話をY君にすると、ナビのことなら、あのDVDナビは 10年も前にHDDナビに買い換えたがデータが古くなったので 今ではスマホのアプリのナビだけを使っていると言い ナビもスマホももってない私は技術の進歩にただ驚くばかりです 驚くと言えば私の祖父は皮膚ガンでしたが長生きでした 健康のためなら死んでもいい!というくらい極端かつ頑固な人で ハチミツが健康にいいからと大量に食べ続けて糖尿病にもなり 冷水摩擦や乾布摩擦が健康にいいからと必死でやりすぎたため 皮膚が驚くほど丈夫になってしまった結果 糖尿病に使わなければならないインシュリン注射の針が 看護婦さんが強く押し込んでもなかなか血管に刺さらないほどで 超能力でもないのに曲がってしまう注射針を見た幼稚園児の私は 直視できないほどの衝撃でした さらに祖父は健康のためにと毎日5km以上は必ず歩いていましたので 私の目には驚くほど元気な老人に映っていたのです 私が小学校の低学年の頃に、健康にそこまで気をつけるのはなぜかを 祖父に尋ねたことがありました 「100歳まで生きて、ひ孫というものが見たいからじゃ」との答えに たしかにこのジイサンなら100まで生きるだろうと思いましたし 孫の中で一番年上の私が30歳の時に祖父はまだ100前なら ひ孫とやらを余裕で見せられるはずでした・・・ 祖父との思い出で一番楽しかったのは小学校3年生の時に 琵琶湖温泉紅葉パラダイスに連れて行ってもらったことです 当時テレビCMで流れていたジャングル風呂に入れるかと思うと 1ヶ月も前からワクワクして待ち焦がれていました まず立ち寄ったのが三井寺で、その翌日は延暦寺だけだったので じつはあれは年寄りの寺めぐりだったのだと この文を書いていてやっと気づきました お目当てのジャングル風呂はまさに裸天国で まだ銭湯にさえ通ったことのなかった当時の私は いざ入るとなると裸になるのが妙に恥ずかしかったことと 風呂へ渡るつり橋の下にワニがいたのは忘れられません 祖父とは何度か町外れまで一緒に歩いたり、軽い山登りもしたことがあり 小学5年のときには隣町へと抜ける「地蔵峠」まで行きました 弁当を持って往復10km以上も山道を二人で歩いたのです しかし、楽しいことも不思議なことも何も起きない 誰にも出会わない、とてもつまらない遠足でした 足を棒にして歩いたことが損をしたような気になるほどだったため 逆に忘れられません 元気そうに見えても病気持ちだった祖父は京都の病院へ 月に一度は通っていて、よく私に土産を買って帰ってくれました うれしかったのですが小学校の6年生になったころに 銀色のブリキの宇宙船をもらって困ったことも忘れられません さすがに対象年齢が低すぎるので遊べないと文句を言って放置しました 自分がほしいものを先に伝えておけばよかったのでしょう 当時の私はぜんぜん気がついていませんでした 「もうお前がなにを喜ぶのかがわからんで、これが最後じゃ」 と言って翌月にはニコンの高価な双眼鏡を土産にもらいましたが 興味のない私はそれさえも使うこともなく放置していました さてオジイサンは時代劇と相撲とプロレスが好きで 私が中学のころも土日にはよく一緒にテレビを見ていました 高見山VS貴乃花の取り組やA・ブッチャーVSジャイアント馬場の試合では エキサイトした祖父が両手でつかんでいたコタツを 思いっきり揺らしてお茶を何度もこぼしていたのはとても懐かしいです 時代劇も再放送を一緒に見ていて楽しかった必殺シリーズの 「助け人走る」は今でも一番好きな作品です 私が高校生の時に祖父は私に言いました 「同じ家にいるのだからもっと話をして、ニコニコと笑ってくれんか?」 私は祖父がキライではありませんでしたが 昔の苦労話とグチが99%で楽しい内容が無いため どこをどう考えても笑うことができませんし 黙って聞いていると、おばあさんのことまでボロクソにけなしながら 一方的に1時間以上はしゃべり続けるので基本的に会話にはならず 聞き流すのさえ苦痛でニコニコすることは最後までできませんでした いまや反抗期の娘が私の話を無表情で聞き流しているのを見ると 腹が立つよりも当時は祖父に悪いことをしていたな~と 反省してしまいます あのときは聞く一方でしたが今を思えばこちらで聞きたい話を リクエストすればよかったのか? 「今までで、一番ヤバかった話」「笑いが止まらなかった話」 「モテテモテテ困っちゃった話」「ばあさんのステキなところを100項目」 そういえば祖父に「子供の頃に面白かった遊び」の話をしてもらったことが 一度だけありましたがあまりにショボかったので、これも忘れられませんし 最後にはお説教になるので他の話を聞く気がなくなったものでした 「蚊が腕にとまると血をあえてすわせて太陽に透かすと腹が赤く光ってな キレイなんじゃ~そこで手に力を入れると針が抜けなくなって蚊が困る そこを叩き潰すのが楽しかった・・・昔はテレビもオモチャもない時代で いまみたいな楽しい娯楽が無かったんじゃ!お前らは恵まれすぎなんじゃ 贅沢で気まますぎる、もっと厳しく生きていかんとどうなることか!」 祖父の幼少期は家の仕事の手伝いでろくに小学校にも行かせてもらえず 楽しい話がそもそもなかったのでしょう 昨年の年末の大掃除で思わぬところからあの双眼鏡が出てきました これを機会にバードウオッチングをしようかなと思っていると おりしも家から15分ほどの川沿いでヤマセミを見かけました 舞鶴市へ山越えで抜ける途中に3羽もいたのです ヤマセミとはカワセミの仲間では日本最大で旧80円切手の鳥で バードウオッチャーが泣きながら大喜びして踊りだすほどの人気者です 私も生まれて初めて見ました ネットでみかけた「好きな野鳥ランキング」では 1位 カワセミ 2位 ヤマセミ 3位 アカショウビンの順でした(なぜかすべてカワセミの仲間) この宮津では1位のカワセミさえも川沿いを普通に飛んでいますし 山奥の渓流にしかいないはずのヤマセミまでもが気軽に見られるのなら これはもうバードウオッチングを趣味にするべきなのでしょう ちなみに4位のクマタカは1回だけ見たことがありますし 6位オオタカ 8位ミサゴ 10位ハヤブサなども我が町・宮津では 意外と普通に町の中やインターの周りを飛んでいたりします そういうときのためにあの双眼鏡を車に積んでおかねば・・・・ あれ?ない・・・・ないないないなあああああああああい! よくよく探すのですが・・・ないのです どこへ片付けたのか? たしか棚においていたはず、そのあとは使ってないのにどうしたことか というか今までまともに使ったことがなくてやっと使えるというのに 使いたいのに~ なんで?どこへ消えたの? なんだか自分のアホさが悲しくなりました せっかく見つけた祖父との思い出・・・というか形見の品を いまさら失くしてしまったことで申し訳ない気持ちにあふれた私は あの懐かしい地蔵峠に行ってみようと思いたったのです そうすれば「ああ~そうだ~ココだココ!」などと当時を思い出して 懐かしむことができるはずだと期待しましたが 祖父との思い出が新たによみがえることはありませんでしたし 35年ほど前は一日が終わるくらい長い時間歩き続けたはずが なにもステキなことは起きないまま正午には帰宅できたのです 大人になった今となってはあっけないものでした あっけないといえば、祖父が体調を崩したのは3月でした 大学の春休み中だったので私も看病はしていましたが 私の不注意から脱水状態を起こさせてしまいました まさか死ぬとは思っていなかったので 優しい言葉をかけることもなく 声をかけてもまともな返事を聞くこともないまま帰らぬ人となりました 気持ちの強い人だったので100才までは生きるだろうと 思い込んでいたのが間違いでした 病院から父の運転する箱バンに積み込んで家へと連れて帰る時に 峠道で転がらないように荷台で遺体を支えていると 懐かしい記憶がポロポロとあふれ出し もう「孝行」というのをしようと思ってもできない そんな当たり前のことが悲しくて仕方がありませんでした 先日、メンドクサイな~という娘達を誘ってあの地蔵峠を歩きました 「うちが何で辰巳屋というかしっとるか?」と聞くと 三女はまだ知らないというので、いい機会だと教えておきました 「ワシの辰年のおじいさんと巳年のおばあさんが二人で始めたからやで~」 天気も景色もよくない陰気な長い山道を当時の私と同じく 3人娘はつまらなさそうについてきてくれました 逆につまらないことで、記憶に深く残るのではと期待をしつつ 私は祖父にひ孫を見せているような気分で歩いていました ちょうど今年は祖父の27回忌にあたります 第240話 美人 11月1日 Nさんの奥さんはとても優しそうな美人です しかし奥さんが本気で怒ると皿を投げてくるため当たると痛いし 避けると皿が割れたり家具に傷がつくとかで困ると聞きました Vさんの奥さんもとても優しそうな美人です しかし奥さんが本気で怒ると本来の話とは全く違う話に 飛び火しつつ臨界に達し、説教が深夜まで続くので困ると聞きました Kさんの奥さんもとても優しそうな美人です しかし奥さんが本気で怒るとすぐに実家へ戻ってしまい 1週間ほど子供の弁当や食事、洗濯モノをすることになり困ると聞きました Bさんの奥さんもとても優しそうな美人です しかし奥さんが本気で怒ると、婿養子のBさんは立場がなくなるどころか 子供達の前で最初からいなかったことにされるのは惨めで困ると聞きました Yさんの奥さんもとても優しそうな美人です しかし奥さんが本気で怒ると、怒りを抑えるために高価なモノを買って 償う羽目になり、大事なヘソクリがなくなって困ると聞きました Sさんの奥さんもとても優しそうな美人です しかし奥さんが本気で怒るとレディースだった大昔に戻ってしまい 暴走モードでキレるとマジで恐くて困ると聞きました とても優しそうな美人の奥様方でも、それぞれ恐い部分はお持ちのご様子で 先輩方の話を聞けば聞くほど、ウチの妻が無個性・・・ではなく とても優しく思えてきます 美人な奥さんが本気で怒ると先輩方が困ることが共通点ならば 「ウチのようにすぐに謝ったほうがいいのでは?」と具申すると すぐに謝ると逆に許してくれない・・・というのもみなさん共通のようでした いろいろ考えさせられますね~ さて、美人について考えさせられるといえば 私が鳥取県のベビー用品店で働いていた24歳の頃の話を3つほど ひとまわり年上のW先輩から「急で悪いけど一緒に飲みにいかいや~」 と誘われてOKすると「そげか~矢野君は優しいな~~」と喜ばれたのは なにやら家にはまっすぐ帰りたくない事情があるようでした ちなみにWさんの口癖は「優しいな~~」と「甘いな~!」でした 軽く飲んでから2件目に連れて行かれた高級感のあるラウンジ 「聖域」のママは驚くほどの美人なので隣で水割を作ってもらうと 逆に緊張で酔いがさめてしまったのは忘れられません 女の子もカワイイのでまさに天国にでもいるような気がしたものでした ママさんから知人の出産祝を明日買いに行くからボトルを入れてと言われ さらに女の子にのせられてカラオケも歌いまくって大いに盛り上がり ついつい飲みすぎた私達は請求額の数字でつらい現実へと戻り わずかに残った小銭で先輩となんとか〆のラーメン屋に寄りました 私「いや~聖域のママは超キレイでおねえさんも超カワイかったすね~」 W「君は優しいな~~超をつけて30を超えとるオバハン達をほめるんか」 私「え?30超え・・・まさか?ボクよりちょっと上くらいでしょ?」 W「おいおいおい~、見て分からんのか?君は人生経験が足らんけんな~」 私「でもママさんはめちゃちゃキレイでびっくりしましたよ~」 W「甘いな~!40前にしては若く見えるかもしれんけど、まあ普通や」 私「いやいや普通ではないでしょ~!Wさんの、その節穴は目ですか?」 W「ん?普通は『その目は節穴ですか?』やろ!目が無いみたいに言うな」 私「じゃあ普通に目は見えてるのにキレイに思えないなんておかしいな~」 W「おかしいのはお前の節穴のほうだが!あれは全て化粧のせいだがん」 私「ええええええ~!マジですか?どうにも信じられません」 W「甘いな~!あれは上手に化けとるんだけん、女は魔物や~覚えとけ」 私「あの~・・・ソレがよくよく分かっていながら楽しめるんですか?」 W「はぁ~?楽しい意外には何もない!みんな優しかったが~?」 私「そうですか・・・優しかったかな?ごく普通だったような気がします」 W「甘いな~! しかしまあ~、君にも分かる時がいつか来るけん」 翌日、見覚えのない女性客二人が店にやってきてギフトを買ってくださり 「昨夜はどうも~」と言われた私はまだピンときませんでした 笑顔のW先輩が「ありがとね~、また二人で飲みに行きますけんね!」 と言ったときに私は全てを理解することができました 昨夜の? 「聖域」の! ママさんと? おねえさん! ・・・なの? わずか12時間でこんなにも印象が変わってもいいのでしょうか? 結果から申し上げるとWさんの言うとおり私の目は本当に節穴だったのです ひっつめ髪で酒やけしたダミ声のスエット姿で、ほぼノーメイクの二人は 野菜に例えるとママさんはゴボウで、おねえさんはカブのようでした ゴージャスな髪型にドレッシーな服装のあの圧倒的な色気はいずこへ? 「普通のオバサン」と言い切っても問題ないように見えました ぎこちなくプレゼント包装をしつつ人生経験の少ない私は 普通に接客しているW先輩を尊敬せざるをえなくなったのです なぜ私には分からなかったのか・・・ これは酔ったときに使える『特殊能力~イッツァ・ワンダフル・ワールド~』 のせいでして 私はお酒が入れば入るほど、料理は美味く、歌も上手に聞こえるし 特に女性が美人に見えてしまうのです もともとは自分が幸になるためのお気楽な能力なのですが いういうときだけは困りますね~ この話を当時お世話になっていたA店長にすると笑顔でこう言われました 「そうだ、W君の奥さんが上手に化粧をしたら、恐いほどの美人になるよ~」 ちなみに店長はハンサムという言葉がそのまま服を着て歩いている と言いきれるほどの男前で、あえて例えるとジェームス・ディーンと 草刈正雄を足して2で割ったようなルックスにもかかわらず 明るくてお酒も強くて後輩に優しい、なんとも穏やかなナイスミドルでした そんな店長ですから「奥さんはさぞや美人でしょうね~?」と尋ねたところ 意外な答えが帰ってきたのです A「ウチの奥さんはズバリ言って『オモロイ』としか表現できんに~」 私「え?むっちゃ愉快な人ってことですか?」 A「いや愉快とかではないけん、不快というか普通にブサイクな顔だに」 私「いやいやいや~店長、そんなむちゃくちゃな事を・・・」 A「化粧してもオモロイし寝起きは誰か分からんぐらいオモロイに」 私「ボクは店長が人をけなしているのを初めて聞きましたよ」 A「いやいや~全然けなしとらんよ、これは事実だに、ハッハッハ~」 私「では性格が素晴らしくて良妻賢母な女性なんですよね?」 A「それが中身も普通にひどいに~鬼嫁だに~ハッハッハ~」 私「とか何とか言って本当は最高なんでしょ?」 A「顔だけは最高に笑わせてくれるけん~ハッハッハッハッハ~」 私「すみません、ぜんぜん信じられません」 A「まあ、直接見る機会があれば、矢野君も信じるしかないって」 私は耳を疑いました・・・ しかしその後、店長が忘れた弁当箱を届けに来た奥さんを 偶然目撃してしまったのです! 色白で欧米人っぽくて背が高くて超スマートな・・・店長 とは真逆の個性をもったそのオバサンは野菜に例えるとカボチャでした 小柄で南米系のファニーなフェイスで体脂肪が増し増しな姿を見て 金縛り状態になっていた私に店長が笑顔で言うには 「さっきの物体がウチの奥さん、はっはっは、顔を見たやろ?笑うやろ? これほどとは思わんかったやろ?正直に言うたらエエんやで~どうや? みんなウワサ以上の面白さに言葉を失うに~、これで分かったやろ?」 返事に困った私は男前の店長に奥さんを選んだワケを思い切って聞くと これまた予想外の話に絶句したのです 「オレはこんな顔やし、昔はめちゃめちゃモテたに~それで美人とばかり 付き合って振って、もっと美人と付き合ってをずっと繰り返してたらな 貧乏やけど最高の美少女と出会ってしまって何年も同棲してしもたんや むっちゃ貢いで彼女の学費もオレが働いて出したに、足長おじさんだに でも卒業してエエ会社に入ったらオレのほうがあっさり捨てられたに~ 向こうは玉の輿に乗って、いままでアリガト~サイナラ~って・・・ こんな話信じられる?それからは女の子の顔はもうどうでもよくなって 逆にオモロイほうが落ち着くのに気付いたに、安心だに、分かるかな? ま、ある意味でトラウマだに~、これがオモロイ顔の妻を選んだ理由 そうそう、結婚するときは妻の両親も兄弟もオレにむっちゃ感謝してね マジで新鮮やったな~、結婚してから気付くと、周りがオレに対して 妙に優しくなったんよ~、ブサイクな奥さんを受け入れる本当にエエ男 やと勝手に勘違いしてしまうに~、オレはずっと美人とばかり付き合っ てきたおかげで妬まれ続けていたみたいで、親友と呼べるようなツレが いないし、周りからも浮いていたし、逆に敵は常に多くて困ってたのが 一気に解決したんよ~むっちゃ楽になったで~はっはっはっはっは~ 今は信頼されて『Aさんだけには聞いてほしい』と言われて人生相談を よくうけるに~だからW君もよくオレにいろいろ話してくれるのよ~」 もはやどう返事していいのか分からない私はなぜか謝ってしまいました さて謝るといえば、かのW先輩とお客様へお詫びに行きました バースデープレゼントが手違いで誕生日の翌日に届いてしまい 依頼主は電話でカンカンということですぐに車で向うと 玄関先で仁王立ちの美人な奥さんからキツ~くお叱りをいただいたのです 「謝ってすむ問題ではないのにわざわざ来るなんて、どこまで失礼なの?」 「誕生日は年に一度しかないの!5歳の誕生日は人生で1度きりなの!」 「お宅の会社の教育のレベルがよく分かりました!もうよその店に行きます」 「あなたがたの言う誠意ってなんです?意味が分かって使ってますか?」 キツイ言葉が続きましたが10分近く誠心誠意二人して謝ると 「これからは充分に気をつけて仕事をしてくださいよ」と笑顔で 許してもらえました、そして緊張がとけた帰りの車で先輩は言うのです W「いや~、しかしあの奥さんはむっちゃ優しいな~~エエな~」 私「え?優しいというよりも『キツいけど美人な奥さん』でしょ?」 W「甘いな~!美人かどうかは置くとして、あの優しさが分からんか?」 私「は?さっきまで二人でしかられていたのに、先輩はドエムなんですか?」 W「ダラか!あんな優しい奥さんがいたら幸せだろうな~と思わんの?」 私「あああ~やっぱりドエムでしょ?うっとりした顔になってますよ」 W「なに?そうか~顔にでちょったか・・・男らしく否定はせんでおこう」 私「男らしいドエムって、もはやキャラがブレブレですよ」 W「甘いな~!人を顔で判断しているうちは真実は見えてこんよ」 私「すると・・・やはりあの奥さんは化粧が上手いということですか」 W「ちがうがん、優しい~~のほうだけん!ブレブレなんは君のほうだよ」 私「ああ~そうなんでしょうね、でも優しい人があんなに叱りますか?」 W「それは叱る内容によるがん?悪いのは誰や?やはり君は甘いな~!」 私「はいボクは甘いです、見た目も甘いでしょ?ブレてない証拠です」 そういえばW先輩の奥さんも化粧で美人になるはずと思い出して Wさんが常に顔で判断しているのではないことには納得しましたが やさしいな~~と連発するのにはまだ違和感を感じました そういえばラウンジ「聖域」でもママさんが美人だからではなくて 「楽しい」のは「優しい」からだとWさんは言っていました 実際にママさんは有言実行でギフトを買いに来てくださったわけですし 口先だけではない、本当の優しさがあるということなのでしょうか もしや普通なことが優しいことなのか? この話をA店長にすると笑顔でこう言われました 「そうそう、W君の奥さんが化粧をしたら、恐いほどの美人になるけど ・・・中身はウチの鬼嫁の100倍凶暴だに~、W君は悪くなくても 一方的に叱られるし、暴力は当たり前で、説教も基本的に10分では 終わらなくて、土下座で謝っても許されるなんてことはないんだって 恐いよね~それでいて素顔はさらに恐ろしくてさ、夜中に目がさめて 寝ている奥さんの顔を見てしまったらドン引きすると言っていたよ~ ウチの方が笑えるだけマシだわ~、だから恐い奥さんのせいでW君は 他の奥さんを優しく思えるんだろうね、そうそうオレもW君からは 『店長は優しいな~』と言われるけども、オレは普通なんだけどね~ はっはっはっは~矢野君も笑えよ~はっはっは~ほれ笑えって・・・」 先輩方には貴重な話を聞かせていただき今でも感謝しております あれから早いもので20年がたってしまいました 今も甘い~私は、今宵も『特殊能力~ワンダフル・ワールド』を発動します 普通に優しい鳥取県育ちの我が妻は、私がお酒を飲めば飲むほどに どんどん細くスマートになり、かわいげも増し増しに増して 盛り盛りの化粧なんかしなくても文句のつけようのない美人になってくれます そう、今では我が家こそが「聖域~サンクチュアリ~」です というわけで今夜もお酒の神様に感謝の杯は欠かせません 第239話 泣ける曲 9月22日 ひょうひょうとしていたH先輩は音楽が大好きで、いろんな楽器が演奏できて パソコンでの作曲にも取り組んだりと多趣味な人だったのです 酔った私が冗談でイメージ曲を作ってほしいというと、すぐに作ってくれました 渡されたCDに入っていた曲は、キーボード2台にドラムとベースの編成で なにやらサワヤカな雰囲気のとても穏やかでスローな曲でした 妙な音の入った変則的でヘナチョコなパンクロックかな?と思っていたために Hさんはやはり私の本来の姿をよく分かってくださっており、それを素直に表現した いいイメージの曲に大変満足いたしました しかし数日後に先輩が納得いかないから作り直すと言ってCDを回収したのです なんでも昨夜、音楽仲間の新曲を聞いて衝撃を受けてしまい 私用に作った曲がずいぶん幼稚に思えて許せなくなり、やり直すとのことでした それからしばらくたって先輩は体調を崩してしまい私の曲はどうなったのやら あああ~もうメロディを思い出すこともできません・・・ そしてこのイメージ曲が一緒に失われることになるとは想像もできませんでした 話は変わりまして、久しぶりにCDを買いました 新譜を予約して待つなんて10代の後半以来のことでした そのCDとは大瀧詠一のニューアルバム「DEBUT AGAIN」です! 彼の死後にはもう新たな音源は聞けないと思っていたので 奇跡のような32年ぶりのオリジナルアルバムには 全曲で泣かされてしまって、うれしいのに困りましした 家族は私が毎晩このCDをかけっぱなしでねるので困っています というわけで、これ以外の「私の泣ける曲」を16曲ほど披露してみます なじみのありそうな曲が少なくてすみません ~敬称略~ 1 涙のサスピション ハルヲ&パール 1988 「夢のアルバム」収録 作曲はクールスのジェームス藤木 パール兄弟のギタリスト・窪田晴男のボーカル曲 6分もあります サエキけんぞうの歌詞もすばらしく、アレンジも申し分ない名曲 サスピションとは疑惑のこと 彼女のしぐさに他の男の影を見る歌 パール兄弟なら「洪水デート」も好きです 2 いつもあなたが TETSU 1983 アニメ「装甲騎兵ボトムズ」のエンディングテーマ とても陰気な曲なので、シングルを買っても当時はノリのある オープニングばかりを聞いていました あまりひねりのないストレートな歌詞がいつのころからか 雨の夜などに聞くと心にしみるようになりました 歌っていたのは大作曲家の織田哲朗だと気づいたのはつい最近 3 雨のマルセイユ 市川実和子 1999 「PINUP GIRL」収録 女優の市川実和子のかすれた低音が印象的です ちなみに妹の市川実日子もとても個性的な美人ですな 作詞/作曲は大瀧詠一 独特のナイアガラサウンドが心地よすぎます なんとなくフランスに行ってみたい気分になります 森新一の「冬のリヴィエラ」と対になりそうな内容で 普通に有名な女性歌手がカバーすればヒットしそうなのにな~ 4 ダイナマイトとクールガイ ムーンライダーズ 1992 アルバム「A.O.R」収録 鈴木慶一が作詞とボーカル 明るい曲調で5分以上もある長いレゲエの曲です 独自の世界観による愛の終りについて 私も波の中に虹色を見たことが昔あったな~と 彼らの曲なら「スカーレットの誓い」も好きなのです 5 可愛いひとよ 山瀬まみ 1987 作詞:阿久 悠 作曲:大野 克夫 ノリの悪い私でもつい踊りだしたくなる曲・・・なのに泣ける 1971年のオリジナルよりも山瀬まみバージョンのほうが好きです 学生の頃にデビュー間もない姿を学園祭のステージで見ました 50mも離れていましたが8頭身のスタイルと意外にもパンチのある歌声は 今だに忘れられません じつはマミちゃんと同い年なのです 作詞はヒットメーカーの阿久悠 6 昨日・今日・明日 ベッツィ&エマ 2009 アルバム「歌鬼2~阿久悠vs.フォーク」に収録 やさしい歌詞に励まされる曲です 「白い色は恋人の色」を歌っていたベッツィ&クリスのベッツィと 娘のエマとのデュオ 最初の英語の部分とハーモニーがたまらん 井上順の歌う1971年のオリジナル曲はオブラディ・オブラダっぽくて良いのですが このベッツィ親子のカバーバージョンは癒し効果が絶大です あらためて阿久悠はすごい作詞家なのだな~と思い知らされました 作曲はこれまたヒットメーカーの都倉俊一 7 あなただけを あおい輝彦 1976 あまりにも素直でゆったりとした恋の歌です あおい輝彦といえば黄門さまの三代目・助さんですが あしたのジョーの声優でもあるわけで、あの矢吹丈のエエ声で 優しく歌われると・・・たまらんですな~ カラオケでN先輩が歌ったのが、かっこよくてツボにはまってしまい 酔っ払って聞いていた私はうっかり泣かされてしまったことがありました 8 春の嵐の夜の手品師 あがた森魚 1986 アルバム「永遠の遠国のうた」収録 なんとも不思議な歌詞をその特徴的な声で歌い上げると モノクロのSF映画だったり極彩色のアニメのような 妙な夢でも見ているような気分になれます イエモンの吉井和哉が推す運命の10曲のうちの1つだそうです ほかの歌手ではまねができないほど個性的なあがた森魚の曲なら ヴァージンVSの「百合コレクション」も私の心にはシミジミときます 9 炎のたからもの ボビー 1979 傑作映画「ルパン三世 カリオストロの城」主題歌 飲み会に友人のG君がギターを持ってきて盛り上げてくれました おりしもこの曲も弾いてくれたので酔っ払っていた私は ご機嫌でギターのケースをたたきながら熱唱しましたら 他のツレがその動画をフェイスブックとやらに上げてしまいました 後日、ソレを見たよというツレのツレから「へ~歌うんやね」「意外やな~」 と言われたのですが私はスマホを持っていないので何のことやら・・・ どんな感じに映っているのか? それって消えないの? お酒ってコワイ 別の意味でも泣けます 10 夜霧のハニー 前川陽子 1973 キューティーハニーのエンディングテーマ とてもしっとりと落ち着いた曲 荒木伸吾の描くタイトルバックの絵も素晴らしくて 子供心に大人の雰囲気を感じた作品でしたが、いまさら思うと 如月ハニーはまだ高校1年生なのでウチの長女の方がもう年上なのか~ よく飲みに誘ってくれるK先輩は有名なノリノリのオープニングの方を熱唱します 倖田來未もびっくりの先輩の動画をだれか撮ってアップしてもらえませんか? 11 やがて愛の日が 三井由美子 1973 泣けるエンディングと言えば必殺仕置人のテーマとして有名なこの曲 私が歌おうと試みても、とても難しいばかりか イントロのトランペットで泣けてくるのでまともに歌えません しかしこのシリーズにはハズレがないな~ 「荒野の果てに」「望郷の旅」「夜空の慕情」「あかね雲」も甲乙つけがたい 平尾昌晃の書くノリのいい新しい演歌はどれも魅力的です 12 愛のさざなみ 島倉千代子 1968 私の生まれる前の年のヒット曲 作詞:なかにし礼 作曲:浜口庫之助 そもそも島倉千代子には何も興味が無かったのに 洋楽をよく聞いていたはずのH先輩が、この曲はとてもすばらしいよと 絶賛していたので気になっていたのでした 先日、誰かのカバーバージョンを不意に聞いて、たしかにいい曲だと思い オリジナルを聞いてみると「涙が~あふれる~♪」の歌詞では つられて私も泣けてしまうほどの感動を覚えました いいものはいい・・・・それにつきます 12.5 応援 ダンス☆マン 1998 モーニング娘の大ヒット曲「LOVEマシーン」の編曲を手がける長身で アフロヘアのアーティストがダンスマンなのです ファーストアルバム収録曲 原曲は「Y・M・C・A」のヒットでおなじみのヴィレッジ・ピープルの 「ゴー・ウェスト」です すばらしいディスコナンバーの英語の歌詞を空耳で 聞こえる妙な日本語訳でひょうきんな声で歌いあげます 原曲では全く泣けない私ですがこのカバーではさらにノリノリにもかかわらず 涙がとまらなくなるのは自分でも理解できません 13 太陽のひとみ サエキけんぞう&ジ・エレキ・マッシヴ 1995 「サーフ in’to ジャングル」収録 作詞 サエキけんぞう 作曲/編曲 朝本 浩文 私がお勧めするなかで一般的に全く知られていない曲です 窪田晴男の弾く若大将~加山雄三っぽいギターサウンドでいきなり夏の砂浜に 引き込まれるレゲエの曲 とぼけた感じのサエキけんぞうと美声の女性ボーカルとの掛け合いが面白くて 全編で幸せな感じなのに泣けてくるのはなぜだか分かりません しかし独特な聞きなれない歌詞「つぶらな瞳は玩者みたい~♪」の玩者って何? ゲーム中毒のことかな? ここを変えて、だれか歌ってくれませんか いい曲なんですよ~ 14 愛をもういちど 谷山浩子 1988 「しっぽのきもち」収録 作詞・作曲:谷山浩子 もともと「映画・未来少年コナン」の主題歌として1979年に発表されていた曲です オリジナルの研ナオコの歌は文句なしで素晴らしいのですが こちらのセルフカバー盤は谷山浩子のコミカルではなくシリアスなほうの歌声が 作品の世界と泣けるほどマッチしています テレビ盤のエンディングテーマにぜひ使ってほしかったな~ 15 晴れたらいいね DREAMS COME TRUE 1992 NHK連続テレビ小説『ひらり』の主題歌 じつは最近まで私は歌詞の意味がよく分からなかったのです 小さな頃は背が高かった同級生の女の子のことなのか 比較的小柄なアニキの話なのか、親戚のオバサンか?ねえさんか? ひょっとして歌っているのは女々しい男の子の設定なのか? 特にドリカムが好きというわけでもなく、意味不明のままだったのですが 実は1番が父 2番は母への歌詞だと最近分って謎が解けたとたん 涙があふれました・・・いつか娘の運転でドライブしたいものですな 16 我が良き友よ かまやつひろし 1975 吉田拓郎の作詞/作曲 なんと6番まであります 洋楽好きなのにハイカラというよりはバンカラな雰囲気のH先輩が いつもこの曲をスナックで楽しそうに歌っていました 鼻に抜いた声でちょっと口を尖らせて歌うその姿が 目にも耳にも焼きついて離れません・・・というかもう忘れられません 体調を崩していたH先輩が帰らぬ人となってしまったのです・・・・ 先輩と仲の良かったNさんKさんと3人で飲みに行きましたら Kさんがこの曲を生前のHさんのように明るく歌ってくれるのですが 3番の途中でいきなり泣きが入ってしまい、代わりにだれか歌ってくれと マイクを回しても5番のラストではNさんさえも泣いてしまい 私もすでに号泣していたため歌うことができず 6番はカラオケだけがむなしく流れていました。 第238話 ツマミXムニムニXバカバカ 7月18日 飲み会で、うまい酒の肴の話になったときにB先輩が絶賛したのは 意外にも「クキワカメ」でした とにかくハマるからと言われてたので後日スーパーで買って食べると ああ~美味い!クキワカメはアリです その独特の「ムニムニ」した歯ごたえがたまりません とってもヘルシーで、すっかり気にいって2週間ほど食べまくりました なんで今まで食べなかったのでしょう! ああ~バカバカ ある夜のこと、9時半に帰宅して冷蔵庫を開けても ビールもツマミも無かったのです これはいかん! すぐに車でスーパーへ出撃するとビールとクキワカメを買い求めました 帰りの車の窓から何気に海を見ると波も静かで星もきれいでした ロマンティックな私はちょっと寄り道して海岸におりてみました ちょうど懐中電灯で照らした部分に妙なものがうごめいており 最初は保護色でよく分からなかったのですが しつこく照らすとそれは小さなタコだったのです あわてて車に戻って、こんなこともあろうかと積んでいた網で 張り付いて抵抗するタコがスキを見て逃げ出す瞬間をすくって帰りました まだ生きているタコに娘達はキモイとかカワイイとか盛り上がり 携帯で撮影したりして、食べたらかわいそうとまで言われました しかし、そこは食材だと割り切って軽くボイルしてブツ切りにしましたら 「ムニムニ」して「コリコリ」して、かめばかむほど味が出ます ああ~美味い! 今日はラッキーだ! 新鮮なタコは最高です! 娘達もむっちゃ美味いといって、モリモリ食べたので 小さなタコはすぐに品切れになりました ああ~もうちょっとないかな~物足りないな~と思っていると、そうです! さっき買ったクキワカメがあるではありませんか さっそくポンズであえて食べてみましたら 「ああ~ヘルシーでうまいやないか~い!」と絶賛するはずが・・・ なんだか味気ないのです・・というか味がしません 普段なら美味く思えるはずなのにもはや海草の一部だとしか思えません なぜか?・・・それはタコのせいです! タコが新鮮で美味すぎたために、その直後には何を食べても物足りないのです ズワイガニの身を食べた後でカニカマを食べたようなものです 私はバカな事をしてしまいました 順番を間違えたのです! ああ~せっかくの好物だったクキワカメなのに その後はしばらく食べようとは思わなくなってしまいました・・・ ああ~バカバカ 後日そのことをB先輩に言うと、今度は刺し身コンニャクが意外と美味いよと 勧めてくれましたので早速スーパーで買って食べると ああ~美味い!刺し身コンニャクはアリです その独特の「ムニムニ」した歯ごたえがたまりません とってもヘルシーで、すっかり気にいって2週間ほど食べまくりました ちょっと水で洗えばいつでも食べられる手軽さに加えて 値段は安いし、保存は利くし、ノンカロリーでヘルシーです 甘辛いタレでも酢味噌でもどちらもおいしくいただけます もはや刺し身コンニャクの悪いところがまるで見つかりません いたく気に入って二日に1度は刺身コンニャクを食べていました こういうツマミは日本酒も焼酎も進みます なんで今まで食べなかったのだろう・・・ああ~バカバカ 今まで食べなかったいといえばマンボウも意外にイケます 地元のスーパーの鮮魚コーナーで年に数回ですが ティッシュの箱くらいのマンボウの大きな切り身を見かけます 値段も300~500円ですから高くはないと思います ブヨブヨの身をテキトーに指でさいて、フライパンに並べ 日本酒を大サジ3~4ほど振って火にかけると どんどん水が出て半透明だった肉がみるみる白くしまります 半分くらいに縮んだら汁を捨てます あとは食べやすい大きさに切って、少しの油と塩コショウでいためるだけです 簡単にポンズであえても、酢味噌をつけても簡単でおいしいです 魚の白身というよりも「イカの煮付け」や「焼肉のミノ」に近い歯ごたえなので これが魚だと言われても信じられないほどのムニムニの食感が面白い一品です 先日、後輩が誘ってくれて夜釣りへと出かけました つれたのは小さなアオリイカが1杯だけでしたが 生まれて初めて釣った緑色に輝くイカに私はかなり喜びました 帰宅するとまだ透明なイカをすぐに捌いて、刺し身にしましたら なんと上品なムニムニ感でしょうか! 生姜醤油でいただくと美味すぎます 娘達もむっちゃ美味いといって、モリモリ食べたので イカはすぐに品切れになりました ああ~もうちょっとないかな~物足りないな~と思っていると、そうです! 冷蔵庫には刺し身コンニャクがあるではありませんか さっそく袋から出して軽く洗って生姜醤油につけると 「ああ~ヘルシーでうまいやないか~い!」と絶賛するはずが・・・ なんだか味気ないのです・・・というか味がしません 普段なら美味く思えるはずなのに薄いコンニャクとしか思えません 妙なニオイが鼻について歯ごたえも悪く感じるのはなぜか? ・・・それはイカのせいです! イカが新鮮で美味すぎたために、その直後には何を食べても物足りないのです 刺し身を食べた後で刺し身コンニャクを食べたようなものです というかそのままです 私はまたバカな事をしてしまいました 順番を間違えたのです! ああ~せっかくの好物だった刺身コンニャクなのに その後はしばらく食べようとは思わなくなってしまいました・・・ ああ~バカバカ 最後に私がオススメするキング・オブ・ムニムニ食感!と言えば わが町・宮津の特産品であるトリガイです 後輩のKY君からアオリイカと一緒に巨大なトリガイを 3枚もいただいたのです 早速かるく茹でるとまさにトリのようなシルエットの 極上の身が現れたではないですか 妻も娘達もこんな大きなトリガイは見たことがないと驚き 一口食べてみると まずい!・・・・・・・・・ワケがない! 危険なほど美味いのです! 今まで食べた海産物の中で文句なしでトップです さすがは宮津の名物なり! 実はかなりの高級品ですし、都会の料亭向けにほとんどが出荷されており よい品は1個2000円の値がつくため地元民でもなかなか食べられません ムニムニとした歯ごたえと圧倒的なうまみの多さには何度も驚くほどです これでお酒がすすまないわけがない! 美味いにも程があるぞ! もはや「けしからん!」と思えるほどの美味さに舌鼓を連打しましたが いくら大きいとはいえ3枚分を家族5人で分けたので トリガイはすぐに品切れになりました ああ~もうちょっとないかな~物足りないな~と思っていると、そうです! アオリイカがあったではないですか さっそく捌いて醤油につけて食べてみましたら 「サイコや~むっちゃうまいないか~い!」と絶賛するはずが・・・ なんだか味気ないのです・・・というか味がしません 刺し身コンニャクと間違えたのかな?と思えてしまいます あれほどうまかったはずのイカなのに、まるで味がしないのです ・・・それはトリガイのせいです! トリガイが超美味すぎたために、その後には何を食べても物足りないのです よく冷えたエビスビールの後でぬるいノンアルコールビールを 飲んだようなものなのです 私はまたバカな事をしてしまいました 順番を間違えたのです! ああ~せっかくの好物だったイカの刺身なのに その後はしばらく食べようとは思わなくなってしまいました・・・ ああ~バカバカ 第237話 パンク 5月22日 ゴールデンウイーク滋賀県へお出かけしようかなと考えて お得なクーポンで使えそうなのがないかな~と検索していると サーカスと遊覧船での琵琶湖周遊がセットで今なら3000円ポッキリ~ というのがヒットしました! サーカスが90分で自由席は2500円 遊覧船も90分で2750円ということはトータルで5250円のはずが3000円は安い 本当なのか? 電話で確認しましたが予約も要りませんし子供料金はさらに安かったのです 追加で500円払えば見やすい指定席にも変更可能ということでした 私はサーカスを見たことがないため、これはチャンスと出撃しました 片道2時間半で琵琶湖畔に到着 先に船に乗ると、湖の説明を聞きながらの音楽ショーのあと船内を探検して ついてくるカモメにエサをあげたりして90分はあっという間です 同じくサーカスも90分がすぐに終わってしまうくらいの面白さでした 一番スリリングだったのは、大きな金網のボールを 軽四車両がグルグルと宙返りして回り続ける出し物でした そのほかに一輪車、ジャグリング、皿回し、バイクの曲乗りや火吹き男 トランポリン、犬とピエロのショー、空中ブランコなどを 近くで見れたので、その臨場感に「ああ~来て良かったな~」 と言いつつ帰路につくことができました しかしインターの直前で、なんとなくタイヤに違和感を感じて 路肩に停めてチェックすると 後輪の1本がすでにパンクして空気がずいぶん抜けており 焦げ臭いニオイをさせていました 危うく高速道路でサーカス以上のスリルを体験してしまうところでした 子供は「どうするん~?」と不安げでしたが ホイールナットを緩め、ジャッキでクイクイと持ち上げたころには 妻がスペアタイヤをトランクから出してコロコロと運んでくれているので パパっと交換して、ものの5分くらいで出発できました 子供は「はやっ!」と驚きましたが、この手際の良さは 長年一緒にいるからできる夫婦ならではの阿吽の呼吸 などではなく、私がよくパンクする人間だからなのです この10年で10回以上はパンクしています 早く気づけば修理代は1000円ほどですが 手遅れになるとタイヤを1本はき換えねばならず かなりの出費です・・・ それゆえ空気圧のチェックはマメにするようになりましたし 釘を踏んで刺さっていないかのチェックも怠りません ひどいときには3本刺もさっていたりします 自分でできるパンク修理セットも買ってしまいました しかしダレに聞いてもパンクなど人生でまだ2~3回という答えが多く 私は少なくとも2~3年に1回は誰でもパンクをするものと思っていたので そんなヤツはお前だけだ!とまわりから常識を疑われました 常識を疑うといえば・・・ 私の運転を下手だ!と何度も言い切るKY君の車に乗せてもらうと 確かにヤツの運転はストレスを感じさせないほど上手でした 直線では飛ばすのにブレーキもアクセルも性格と対照的に穏やかです しかし運悪く悪路での転回中にこともあろうかフロントタイヤを 側溝に落としてしまったのです いわゆる脱輪ですな 「ワシの運転がいくら下手でも脱輪はせんぞ、実はワシより下手なのか?」 などと下品なイヤミは言わずに、あえて上品に 「運転が上手な人は脱輪するのも上手だな~」とカワイイ後輩をほめましたら 脱輪している状態にもかかわらず 「うるさいわい!矢野さんのほうが運転は下手にきまっとるんじゃ~!」 などと言い続けることのできる後輩の常識を疑ってしまいました そうそう、後輩の常識の話なら 私は昨年、高速道路を走行中にフロントグラスの目立つ部分に バチッ!と音がして2cmほどの白いキズが入りました 飛び石というヤツですな 車間距離もかなり開けていたのに 対向車線からはじかれて飛んできたのでしょうか? 免許を取って25年目で初めてのショックでした ガラスを交換するなら13万円と聞いてさらにショックでへこみます なんてツイてないのだろうとC君に話すと 彼は今までの人生でパンクこそたった1度だけだが 飛び石でガラスにヒビが入ったことなら今まで3回もあると言いました 5~6年に一度は飛び石でガラスにキズはつくものだとの認識に こういう常識もあるのかと少し気が楽になりました 先日、一緒にドライブしたB先輩から 「お前の運転は左に寄りすぎで恐いわ~、パンクするぞ!」 と言われてしまい謎が解けました だから私は左の路肩に落ちている釘を拾ってパンクするのですな! あああ~自動車学校では「キープレフトが常識」と教えられたのに・・・ 常識ってなんなのでしょ? 第236話 忘れられない・・・光景いろいろ 4月20日 三女と近所の海岸線をドライブしていたら 海岸から20mほど沖の海面が一部だけ盛り上がっているように見えました そこには魚の群れがいるみたいで海鳥も上空を飛び回っています かなり大きな魚のようで、ジャバジャバとにぎやかな音が聞こえます ジャンプしたりしているのをよく見るとなんだかイルカのよう・・・ 三女も「イルカ?」と言い出します そのうち高くジャンプしたシルエットはホンモノのイルカでした! 私は野生のイルカをはじめてみました どうやら50頭ほどの群れが小魚の群れを浅瀬に囲い込んで食べているのです あわてて家に望遠レンズのついたカメラを取りに帰りましたが 戻ったときにはもう海は盛り上がっておらず 特徴的な背びれをピョコピョコと見せてジャンプしながら泳ぎ去る姿を 遠く見送るばかりでした 翌日のニュースで日本海を500頭のイルカの群れが北上中とのことで その一部がちょうど宮津湾に来ていたのでしょう 普段は見ることがないモノが見みられるのは素晴しいなと思いました 普段は見ることのないといえば 行った事のないコンサートというものに一度は行っておこうと思い 学生最後の年に特にファンではなかったのですが 元ボウイの布袋寅康のチケットを買って2階中央の席に座ったときのこと ステージの中央を狙うピンスポットの照明設備が目の前でジャマだったけれど 登場した布袋を照らすときには あたかも私の胸元から布袋に向かって強い光線が一条出ているように見えた ソレをきっかけに布袋が私に向かってまっすぐ指を刺し 「うううううううっ!」と叫んでギターをかき鳴らした時には なぜかつながった感じがして、おもわず私も 「うううううううっ!」と叫びかえしていました(敬称略) 叫び返すといえば 配達の帰りに田舎道で車を止めてカンコーヒーを買っていたら おりしもランドセルの男の子が二人で帰ってきて、知らない私を見て 「こんにちわ~」と挨拶してくれました 気持ちのいいものですな そして、この辻で「バイバ~イ」と言って二人は左右に別れたのですが 10秒ほどしてどちらともなく「バイバ~~~イ!」と叫んだのです 言われた方も振り向きもせずに「バイバ~~イ」と背中で叫びます さらに10秒後に同じことがありました 徐々に離れてしまうので声はお互いに届きにくくなっており 4度目の「バイバ~~~イ!」は中間に居る私でも聞こえないほど小さく この子たちのバイバイを途切れさせるのもなんなので その場でコーヒーを飲みつつ5回目には返事がないことを確認してから ゆっくり発車しました 友達っていいものだな 昔、自分にも同じことがあったような気がしました そうそう友達と言えば 妻の友人からクール宅急便で発泡スチロールの箱が届きました フタをあけてびっくりしたのは中身がズワイガニだったことに加えて こちらに向けて生きているカニ達がはさみを突き出したことでした まさにおどろくほどの新鮮さ! とてもおいしいカニでした、ありがとうございました クールで驚くといえば 雪の降る中を配達に出かけました 表札の苗字を確認してチャイムを鳴らそうとしたときです 庭からピョン・・・ピョン・・・ピョンと妙な音がしたので 声をかけながらのぞいてみれば50代のオジサンが素振りの手を止めて 恐ろしく厳しい顔のままこちらへやって来ました しかしその数秒間、私はその気迫で動けませんでした 引きつった顔で配達のことを告げるとオジサンは優しい笑顔になり その家なら3件となりだよと教えてくださいました 実は私が固まってしまったのはご主人の格好が普通ではなく 真冬にもかかわらず薄い稽古着1枚に袴をはいており 頭や肩に雪が積もった状態なのに裸足だったことと 素振りをしていたのはバットでもゴフルクラブでもなく 「真剣」だったからなのです 片手に剣を持って近寄ってこられるだけで恐怖を感じました 真剣は本気で振ると「ピョン!」と映画とは違う音がするのは意外でした 剣をサヤに納めるときも「チャリッ」というような音は全くしませんでした とにかくルパン三世の石川五右衛門を実際に見かけることがあれば 思った以上の衝撃に感動するのだろうなと実感しました 思った以上に感動といえば 幼稚園の役員をしていたときの卒園式がそうでした 感動して泣いている保護者も多数おられました しかし自分の娘はまだ年少で卒園はしないため、役員の末席で私は ウチは、ま~来年だな~と思って、最初は感動もせずに座っていたのです 式のラストで卒園証書を受け取った園児達は保護者の拍手のなか花道を通り 会場の体育館を一人づつ張り切って出て行くのを何気に見ていると ちょうど私の席からだけは会場を飾る幕とカーテンの隙間から 自分のクラスへと戻る子供達が最後まで見えたのです キョロキョロと落ち着かない子 緊張したまま行進を続ける子 緊張が解けてさわぎだす子 気になって戻ってくる子 なぜかスキップする子 友達と手をつなぐ子 転んでしまう子 立ち止まる子 駆け出す子 笑顔の子 泣く子 大事な卒園証書を落とす子と、それを拾ってあげる子 なんだか人生の縮図を見ているような気がした私は 一人ひとりづつちょっと違う子供の行動に徐々に涙が出てきてしまいました そして、なんだか忘れられないちょっと違う子供の行動の話で最後にします 公園に人だかりができており女の人の騒ぐ声がしました 足を止めてのぞいてみますと親子連れとオバサンのトラブルのようで どうやら通りがかりのオバサンにふざけていた子供がぶつかってしまい 二人とも転んだのに被害者のオバサンを母親がにらみながら自分の子を カワイソウニ~と抱き上げた現場のようでした オバサンは「そっちがあやまれ!」と大声でアピールします 小学2~3年くらいの男の子をかばうような姿勢の母親は 何故か知らん顔をしています お父さんは険しい顔で「すみません」と言いました しかしオバサンは再び「ちゃんとあやまれ!」と叫び お父さんはオバサンに向き直り「すみませんでした」とわびました オバサンは「それで謝っているつもりか!?」とわめき 回りもザワザワしています お父さんは頭を下げて「どうもすみませんでした」とわびましたが オバサンは「それがあやまる人間の態度か!?」と目を吊り上げてわめき お父さんは今度は深々と頭を下げて「本当にすみませんでした」と謝っても なぜかオバサンはさらに圧力が上がっており 「それが本当にあやまる人間の態度か~!?」とわめきちらしたのです 残念なことにお母さんはめんどくさそうな顔でそっぽむき 子供はヘラヘラしています そこでとうとうお父さんが「だったら、どうしたらいいんですか!?」 と逆ギレしてしまいました オバサンの態度も悪いので当然かも知れません そんなときに半笑いの息子がまわりのザワザワを一発で静めたのです 「パパが土下座すればいいんやんな~ママ?」 以上、忘れられない光景でした 第235話 色 2月25日 飲み会でリアルに怖いオカルト話になりました N先輩の長女は霊感があり、いわゆる見えるタイプの人間で 「あそこに誰かいる」と言ってよく家族をビビらせたり 修学旅行で訪れた激戦地ではおびただしい数の何かが見えてしまい 何度もゲロをはいてしまい大変だったとか T君の妹も見えてしまうらしく、就職した病院の待合室に 患者さんが残っているように見えてしまうため 「今日はおしまいだね~」という看護士の先輩達に何度も 「まだいらっしゃいますよ?」と言って気味悪がられたとか・・・ B先輩が二十歳の頃の話で、夜中に目が覚めると気配を感じ 部屋に張っていたポスターのブルース・リーが気になり、見つめると ヌンチャクをもつポーズがゆっくりと変化したとか Bさんが言うには二十歳の誕生日までに霊感体験をすると その後も見える体質になるらしく 自分は20歳を過ぎていたのでその後は見えなくなったのでよかった~ と言いました 20歳までに見えるといえば・・・ 朝の4時に長女が私を起していうのには 「あのな~、さっき寝とったら目が覚めてな、テレビを見たらな あの~画面にな、あの~汚れかと思ったら顔がうつっとってな~ あの~私がうつっとるんかと思ったらな、それがこっちをみてな」 こちらも寝ぼけているので落ち着いて話すよう言うと どうも娘は居間で勉強していて今夜もそのまま寝てしまっており 目が覚めるとテレビに顔が映っているみたいにみえたので 見つめていると顔に見えて、しかもちょっと動くので 恐怖映画のコマーシャルかなと思って2度見したがやはり顔がある 一旦落ち着いてからよくよく見たが、よりハッキリした顔になっており とうとう目が開いてきて恐くなって消そうとしたけど もともとテレビには電源が入っていないので消せないのがさらに怖いとか この騒ぎで起きてしまった次女と三女が「オバケを見た~い」といって 現場のテレビを確認に行くがなんともない 画面の汚れが寝ぼけてそうみえたのでは? という話で一旦は落ち着いてもらうが 20歳までにお化けが見れたらその後も見れるよ~とも言っておきました ダラダラしまくりの長女にはよいお灸になってシャキっとするかも と思っていましたが・・・家の手伝いを頼んでも 「コワイも~ん」と言って断るようになっただけでした さて一旦落ち着いてからよくよく見たが・・・で思い出しました 私が体験した色にまつわるちょっと不思議な話をさせていただきます 20年前のその夜はパーキングに止めていた愛車が なぜか青ではない気がしました 色がついていないように見えてしまったのです 近づいてよく見ても違和感があり、すぐには乗り込むことができず 内装とナンバーで自分の車だと確認したものの 一旦落ち着いてからよくよく見たが、よりハッキリしたグレーになっており ためらいながら鍵をまわしたところで自分の車だと確信して乗り込みました エンジンをかけるとようやく青く見えはじめたものの・・・ その30分後に高速道路で大破し一瞬で廃車になりました ハンドル操作を誤って自爆事故を起したのです 運がいい私は全くの無傷でしたが駆けつけた警察からは 「ドライバーは生きていたか?もう救急車で運ばれた?」 ときかれるほどの大事故でした そして10年前の話です 知っているオジサンが病院の前の横断歩道で信号待ちをしていました 青いジャンバーを着ているのに全体的に灰色っぽく見えたのです なんだろう?と違和感を覚えました しばらくしてそのオジサンは死んでしまったと聞かされて驚きました 私が見たのは亡くなる10日ほど前だったようです これは私の特殊能力ではないのかと思い、飲み会で話したところ G君が私と同じような体験を20代のころはしたと言いました 彼の場合は色ではなくて、顔がグニャっとゆがんで見えるらしく そういう人は大病を患っており余命わずかだったり 自殺したり・・・ということが何度もあり 喫茶店で隣のテーブルの人がいきなりキレて暴れだしたときに 顔がゆがんで見えたので声が出るほど恐かったとか 似たような話に、私だけではないのかと安心した翌日のこと! 配達前に鏡を見ると自分の顔が灰色に見えたのです・・・ なんだかイヤな予感がしました 健康診断の結果は悪くなかったはずです そして雪の積る中を配達へと出かけました 晴れていた空は日が陰って急に寒くなっていましたから かなり注意して運転していたのにやってしまいました! 日暮れとともに帰り道の長い下り坂が凍結しはじめており ほんの20分前に通った時はなんとか大丈夫だったはずが すでにツルツルでスタッドレスタイヤもABSブレーキも ほとんどきかなくなっていたのです! この勢いですべり続けると5~6秒で坂下の国道へ合流 しかも信号は赤の点滅です! このまま突っ切るか? いやダメだ~交通量が多くて左右からの車をかわせないだろう さらに玉突き事故も発生して巻き添えを増やすことになるのか! おりしも出発前に自分の顔がグレーに見えた事を思い出し これから自分は20年ぶりに大事故を起して・・・ひょっとして死ぬ? すぐに最悪のイメージをすることができました なんとかせねば! ブレーキはきかなくてもハンドルは若干きくので あえてブレーキをはずして 除雪車が路肩に積んでいた雪の壁めがけて左に突っ込みつづけ ガリガリガリ~ドカン!と強制的に停車させようと試みました 激しい衝撃の後で気づくと目の前を何台も車が行き交いました 私は運よく国道の直前で止まることができたのです ああ~よかった・・・助かった 判断が遅れればこのうちの数台を巻き込んで簡単に死ねた状態に しばらく震えがとまりませんでした 今回は顔が灰色に見えたことで死ぬイメージがすぐにでき 車が中破することは覚悟の上で突っ込めたのが良かったと納得しました 当然、車のバンパーはゆがみ、フェンダーはへこみ 助手席側の前輪の取り付け角度がバッチリ狂ってまっすぐ走れなくなり 雪の中をフラフラの不安定なナナメ走りでなんとか帰宅しました 車の修理代は10万では済みませんでしたが命の値段としては安いと感じました 私は特殊能力として色による生死にかかわる予知ができるのでしょうか? たしかに顔は灰色に見えましたが車はどうでしょう? 今回の車は銀色で鮮やかさがないため灰色に見えていても 気づかなかったのだと思えてしまいます しかし一旦落ち着いてからよくよく考えれば、配達前には外で雪かきを していたため雪からの反射で私の目はくらんで見えにくくなっており そのせいで鏡に映った自分が灰色に見えたのだと思うことにしています そしてもしも死ぬのなら前日にG君から 「おいおい、そう言うお前の顔はゆがんで見える・・・」 と言われていたかもしれません そして次ぎ買う車は鮮やかな青がいいかな~と思いました とにかく灰色に見えたりしたら絶対に乗らなければいいのです! さて話は変わって・・・反抗期まっしぐらの6年生の三女のことですが なんでもないことでイチイチブチ切れてはイケメンの私に 「こっちみるな変態ジジイ」と言うようになってしまいました いつもニコニコ愛想良しの『まどろみの末っ子』はどこへやら 5年生後半から始まった反抗期のビッグウエーブは想像以上で かつての姉達がとてもカワイく思えるほどでした それでも私は「ヘチャでもわが子なればカワイイ娘じゃいや~」と言って ニコニコして見つめていると普通にグーで殴りかかってくるし いとも簡単に「パパシネ!」というようになってしまったのです もちろん最初は腹が立ちましたし、これが姉達ならシバいているところです しかし適応能力のある私はすぐにシネと言われ慣れてしまい 叱る気にならなくなりました すると三女は「パパ!死ね死ね死ね死ね死ね~」と連呼するようになってしまい それを聞いたママが「それが親に言う言葉か!」と叱ったものの 「ママには言わん、このオッサンにだけは言う」と聞きません 「それでもパパに死ねを言い過ぎや!」とママは初めて本気で叱ってくれました しかし1回の「死ね」ならセーフなのか?とも解釈できてしまい 妙な気分になる今日この頃です もちろん親として、このままでは教育上よろしくないので 死ね死ねコールを受けた後に、いつもと違う雰囲気をかもしてみました 「・・・パパは、おまえに死ね死ねといわれ過ぎたで、もう死のうかと思う・・・」 と穏やかに言ってみたところ、変な間の後で神妙に私を見上げた三女は 「え?マジで・・・パパ自殺するん?・・・」と言い 軽くうなづく私に不思議そうに続けた言葉で私のほうが驚きました 「あ・・・パパの顔が今ゆがんで見える」 三女も「見える」のでしょうか? そして、心にもないようなうかつな事を言うと、人なつっこい灰色の死神が すぐに寄ってきそうな感覚に恐怖しました 前言撤回! 三女の子供からも「変態ジジイ死ね」といわれる日までは死にましぇ~ん 第234話 白鳥ロード 2016年 1月22日 ドライブ中に立派な白鳥を見かけたので車を停めました 場所は与謝野海病院の近くにあるローソン前の田んぼです こんなこともあろうかと積んでいたカメラを構えてから ちょっと違和感を覚えたのは2年前のことでした 感じていた違和感は白鳥が田んぼにいることなどではなく 季節が5月だったことです! 白鳥といえば冬・・・ 普通なら白鳥たちは3月までに北国へ帰ってしまっているはず ケガをして飛べないのか? 近くで見ていたオジサンに話を聞くと あの白鳥は1週間前に飛んできて、この田んぼに居ついてしまい そこだけ田植えができないので農家の人が困っており 「なんとかしてくれ~」と相談されているというのです コハクチョウならすぐそばの天橋立の内海には毎年十数羽が飛んできます どうやらそれよりも大きいのでオオハクチョウかな?と思っていると オオハクチョウよりもさらに大型のコブハクチョウだと聞きました 実はオジサンはハンターらしいのですが、コブハクチョウは初めて見たし 猟対象外なので撃つわけにはいかないし、賢くてワナには入らないし 餌付けをしても慣れないし、近づくと攻撃してくるしで どうしたものかとマジで悩んでいるとのことでした どこかの動物園や公園からにげてきたという情報もないらしく 日本に来ないはずの野生のコブハクチョウの迷い鳥なのでしょうか? 気になって3日後に見に行ったときにはもういませんでした どこへ消えたのか・・・ 私が野生の白鳥を初めて見たのは20年前ですが とてもよく覚えております 島根県の友人・サムの家に泊めてもらって 翌朝近所をドライブしていた時でした 冬枯れた平野を突っ切る直線道路の右側の田んぼに白い部分があり 残雪かと思っていたら白い鳥の群れだったのです その数は軽く100羽を超えており、興奮してサムと話すと・・・ 私「おい、サムっ!あれはなんや!」 サム「何って、冗談でしょ?白鳥だよ、知らないわけないでしょ?」 私「間違いなくハクチョウなんか?」 サム「白いから白鳥って言うのは間違いはないはずだけど」 私「国語の問題じゃなくて、いわゆるスワンか?ガチョウではないよな」 サム「オレはガチョウってのをよく知らんけど、それって珍しいの?」 私「ガチョウの話はどうでもエエんや、珍しいのは白鳥や」 サム「そうかね~ガチョウって見たことないから俺には珍しいけど」 私「ガチョウは、マザーグースに出てくるアヒルのでかいようなヤツや」 サム「じゃあガンみたいなもんだね、ここらへんはハクガンもくるんだよ」 私「ハクガンって、そのガンの白いヤツか?」 サム「そうそう、オレでもめったに見たことないから珍しい鳥だよ」 私「いやいや、ワシが珍しくて興奮しとるのは、あの白鳥の群れなんやわ」 サム「そうなの?、白鳥なんかで興奮するもんかね~」 私「わ、左にも群れとる~そこだけ雪みたいや! わ、また飛んできたで」 サム「白鳥は飛ぶよ~、冬になれば普通に飛んで来るんだから」 私「冬の渡り鳥なのはワシでも知っとるわい、しかしすごい数やな~」 サム「すごくないって、この先もず~~っといるんだよ」 私「わ~ホンマや~向こうにも、あっちもか!もう300羽を超えるぞ!」 サム「数えると大変だよ、ここには1000羽ほどいるんだから」 私「なにっ 千羽も!すごいな~ あ?でもここは田んぼやないか」 サム「何いってんの?白鳥は田んぼにいるもんだよ、どうしたの?」 私「え?普通は湖とか池じゃないの?白鳥の湖とか言うし」 サム「ここらへんじゃ、夜は内海に浮かんでるけど、昼間は田んぼだね」 私「田んぼって、もう刈り取ってなんにもないし、水だってないのに」 サム「落ち穂を食べるんだよ、夕方には内海へ戻って寝る、それだけ」 私「へ~そうなんか・・・あれ?お前はずっとテンション低いな」 サム「だって、ただの白鳥なんだよ」 私「ただのって、なんかちがうやろ~」 サム「ん?そうか・・・ただのコハクチョウ」 私「いやいや種類の問題やない、白鳥が普通におるのが普通か?」 サム「普通だよ、だって昔からだもん」 私「ワシは白鳥の群れを初めて見たし、田んぼにいるのも初めて知ったぞ」 サム「じゃあ京都府に白鳥はいないの?宮津も内海があるでしょ?絶滅?」 私「いや、天橋立にも白鳥は渡ってはくるけど、数はむっちゃ少ないはず」 サム「オレはこの時期は白鳥が群れで日本中に普通にいるんだと思ってたよ」 私「それは一般の意見と真逆やで、そんなこと言うヤツは珍しがられるぞ」 サム「うそでしょ?」 私「こんな高密度で白鳥が見られる場所は日本でも数えるほどやと思うで」 サム「へ~ここって珍しいんだね」 私「そう、珍しすぎるって!民家と100mも離れてないんやで!」 サム「こんなのここら辺じゃだれもなんとも思ってないけどな~」 私「そっちのほうが珍しいな」 サム「そんなもんかね」 私「おいおい!30羽ほどの大集団がなんとV字で飛んでくるぞ~」 サム「白鳥はV字で飛ぶもんだってば」 私「カッチョエエ~!そうは思わんのか?」 サム「何がカッコいいのかオレにはよくわかんね~や」 私「わ~、カメラをもってくるべきだった~残念じゃ~」 サム「残念? そんなことより向こうからV字で飛んでくるのはガンだよ」 私「だからガンはどうでもいいの~っ!」 数百羽の白鳥を前に車を止めて、しばらく興奮して立ち尽くす私とちがって 寒さ意外には何も感じていないサムとの温度差も残念に感じたものでした 昨年11月にテレビで「島根~白鳥ロードに冬の使者」 というニュースを見てすっかり懐かしくなった私は 正月休みに島根県・安来市へ白鳥を見に行くことにしました 久しぶりに会うサムは相変わらずで、優しく迎えてくれます そして20年経った今も1000羽の白鳥が普通にたむろする あの道路こそが!今では「白鳥ロード」と言われている場所なのです やはりそうだったか~! いざカメラを携え家族と見に行くと・・・ あの時と同じく、すぐに白鳥の集団をあちこちに見つけました テキトーに数えはじめても、すぐに500羽になりましたし キレイな翼を広げて次々とV字の編隊が飛んでくるではありませんか 地元の宮津近辺の田んぼではコハクチョを2~3羽しか見かけないので 懐かしいやらうれしいやらで一眼のシャッターを切るのですが そんな私と対照的に家族は白鳥に興味がないらしく 島根県までわざわざやってきたのに動物好きなはずの長女でさえ 「寒い~」と言って車へ戻り、ママも三女も特に感動はないようで 次女にいたっては車から降りてもこずにゲームに没頭 そして20分を待たずに妻が「さあ・・・もう帰ろう」と言い出し 数百羽の白鳥達を前にまだ興奮している私と 寒さ意外には何も感じていない家族との、その温度差を 残念に感じるのも・・・やはり20年ぶりなのでした 第233話 イカ酢とサイダーについて思うこと 12月22日 先週のこと、スーパーでツマミを探していて酢のモノが目に留まりました 値段をみるとイカ酢が100gで200円を越しています 意外と高いのですね~! あれから30年もたってからやっと気づきました おばあさんは私のために安くはないこのオカズを買ってくれていたのかと 思いだして懐かしくなり買って帰る事にしました 私が高校の頃の話です、祖母が惣菜屋で買ってきたイカ酢が とても美味そうだったのでオヤツがわりにちょっとつまむと パリパリという食感、ワカメの風味、ムニムニとしたイカの歯ごたえと味 そして酢のサッパリ感に思わず「ウマイ」とうなってしまいました 普段は好んでは食べない酢の物がなぜかその日はとても美味く感じられたのです 祖母は全部食べてよいと言ってくれたので 本来は祖父母が夕飯に食べるはずだったオカズの一品を えんりょせずにたいらげてしまったのです すると翌日には200gほどのイカ酢を買ってくれました イカは私の好物なので嬉しいのですが、さすがに酢の物は100gで充分です せっかくなので完食すると、翌日からは300gのイカ酢が なんと1週間も続いたので食べ過ぎで気持ち悪くなってしまい もうイカ酢はいらないと祖母に言いましたら タコ酢を買ってきてくれるようになったではありませんか・・・ あきれてしまって感謝する気持のなくなった私はイヤな顔をしてしまいました 孫がうまいと言って食べる姿を期待してくれていた祖母は 「お前は、うみゃ~いうとったのに・・・」と残念そうでした 「週に1回だけ酢の物が食べたいな~」と言えばよかったと後悔しています さてイカ酢をツマミに一人で焼酎を飲んでいて、娘達に「いるか?」と聞けば ママと同じく酢っぱいモノが苦手な長女は「大丈夫~」と言い 次女は「ちょっともらう」と小鉢を受け取ってくれました パリパリと食べる姉に影響されてか三女までもが食べたいと言いだし 200gのイカ酢はあっという間になくなったのをみても その夜はツマミが足らなくなったのがなぜかうれしく感じました 第217話「アタリメとバナナについて思うこと」では イカの刺身はおいしくない・・・と言う次女の好物が実は 干したイカ・・・つまりアタリメだという事にやっと気づいて 「うまい」と喜んでくれるのならケース単位で購入しようか と大げさな事を思うのと同時に、かつて久々にバナナを食べた私の 「うまい」というつぶやきに母は私がバナナ好きだと思い込んで 帰省する度に買ってくれていた気持ちがいまさら分かった・・・ という話でしたが、今回は祖母が買ってくれていた「イカ酢」でも 同じことがあったな~と思い出したのです ちなみにアタリメとは干した硬いスルメイカをこまかくさいてある品で スルメはもうすこし水分の残った白い品かと思っていたら 基本的に同じもので、さいてなくてもアタリメだいう事が分かりました スルメはスルという音が失敗とかお金がなくなるときに使う表現なので 縁起かつぎで「スル」に「メ」ではなく「アタリ!」に「メ」をつけて アタリメなんだそうです 私がずっとスルメと呼んでいたのは、あぶると柔らかい「イカの一夜干」 のことでした 一夜干といえば先日、知人から立派な一夜干しをいただきました 安いスルメイカではなく、かなり大きなケンサキイカを干した逸品で 母が言うには買えば1枚1000円以上するとのこと! 昔は我が家も祖母が好きだったのでよく食べていたと聞きました そういえば、小さい頃に食べていた白くて甘くて柔らかくて かめばかむほど味の染み出る部厚い巨大スルメを思い出しました オヤツに食べるには当時でもなかり贅沢な品だったはずです それを祖母は「うみゃ~うみゃ~」としがんでいたというのです おばあさんの好物だったとはしらなんだ その高級品の一夜干を軽くあぶりるとママも娘達もよく食べてくれました 特に次女はモリモリ食べると「ガチでウマイ!」と言ってサイダーを飲み 私も「確かにウマイ~」と言ってビールを飲みました しばらくすると冷めてしまったイカをライターですこしあぶると チリチリと焦げて香りがたてばいい感じに柔らかくなり美味さがよみがえります これは悪友のツヨシが小さなメザシをアテに酒を飲むときに編み出した技で とても美味かったためイカにも応用してみました 火遊びはいけませんが次女もそれを試して笑顔で「ヤバい」と言いました 親子で美味いを共感できることは幸せですな 次女は祖母の味覚に似たのかも・・・私は不意に一昨日の夢を思い出しました ひさしぶりに祖母と会えたのです 和服姿で居間に座っており「おみゃ~に頼みたいことがある」と言いました 私は話を聞くよりも先にひ孫を見せたいからちょっと待ってと 肩を軽く叩いて娘達を呼びに行くところで目が覚めてしまいました 私に何を言いたかったのか気になりますが後の祭りです 今回も娘達を紹介することができなくて残念でしたが 今までの夢では祖母はずっと黙っていてしゃべることがなかったので 20年ぶりに触れたことと声が聞けたのでいい夢でした 今度はぜひ話がしたいものです 当時のおばあさんについて勘違いしていたことがありました 私も一緒に暮らした祖父母の家にはいつもビンのサイダーが ケースで置いてあったのです 祖父は糖尿病をわずらっていたので甘いサイダーは飲めませんし 年寄りがジュ-スを飲むイメージが全くわかなかったので 買ったのではなく誰かにもらったのだろうと決め付けていました それで祖母に許可をもらって1日1本飲んでいました 私なりに贅沢な瞬間でした しかしキリンレモンとか三ツ矢サイダーを飲んでも飲んでも新しいケースが 目立たないところにおいてあったのです よく冷蔵庫には祖母が半分飲み残した気の抜けたサイダーが入っており 年寄りが無理して飲まなくてもいいのに、もったいないな~ と思っていました ところがです! 母と「こないだの一夜干は美味かったな~」と話をしているときに 祖母はサイダーも大好物だったと聞いてしまったのです えっ? 糖尿病の祖父に気遣って台所で1日1本をこっそりと飲むのが 祖母なりの贅沢で「のどがシュワ~っとするのがうみゃ~」 と言っていたと・・・ なんだすて?? アホな孫はそれにまったく気づいていませんでした あのサイダーは貰ったのでも私のためでもなく おばあさんが自分のために買っていたとは・・・ なんで私はソレを知らなかったのか どれほど私にはコミュニケーション能力がないのでしょう もっとおばあさんとしゃべればよかった しかも祖母が1本を一気に飲むには量が多くて飲み残していたのなら 2杯に分けて一緒に「うみゃ~」といって飲んだのに 好物を孫がコップについであげたら喜んでくれたのではなかったのか? ずいぶん簡単に孝行ができたはず はたして私は良い孫だったのだろうか・・・・ ああ~夢におばあさんが出てきてくれないものか ひ孫がケンサキスルメをライターであぶるから それをアテにみんなでサイダーを飲もう! 第232話 好物~その8 11月12 好物についての話も今回で8話目になりました いつも以上に長くて読みにくいですが ショウガないな~とゆるしていただきたい! ということで、まずはショウガの話です ショウガはどちらかと言えば食わず嫌いな食材でした 熱心に食べるようになったのは10年ほど前に H先輩から〆に牛丼をおごっていただいたのがきっかけです すぐに食べようとする私をおもむろに止めたHさんは 「まずはショウガが先やろ!ちがうか?」というと 満面の笑みで紅ショウガを牛丼に盛りつづけたのです そしてショウガで埋め尽くされてもはや肉の見えないピンク色の 真ん中へ黄色のタマゴを落として七味をたっぷりふりかけると 牛丼は子供の書いた絵のような食べ物に変化してしまい 牛丼の並のはずがいろんな意味で並ではなくなり そのショッキングな光景に酔いが一発でさめました 『これはないわ~』と思っていた私の丼にも 「これはうまいよな~ちがうか?」と笑顔のまま 大量の紅ショウガをいきなり乗せて下さったのです 先輩は「うわ~やっぱり美味いな~」と幸せそうに食べていました 私は『うわ~やっぱりムリやわ~』と思いながらもほおばってみると 酸っぱいというよりも意外とあっさりとした味で驚きました 味の変化とか見た目の彩りの良さに加えて舌のリセット感が面白く サクサクした歯ごたえもいい感じなのです それ以降は紅ショウガを気に入り牛丼には必ず盛るようになりましたし すし屋のガリも食べるようになりました 冷奴に乗せるショウガのチューブも好んで使うようになり イカの刺し身にはワサビではなくてショウガです Hさんは自分の好きなものを相手も好きだろうと錯覚してしまう 極端な人でしたが、おいしそうに食べる姿は幸せな感じがしました おかげで私も食生活に幸せが増えました おいしいイメージって大事なんでしょうね 先月H先輩と飲みに行って最近美味かったものの話を聞くと 芋と一緒に芋焼酎を飲むのが美味いとの答えでした 昨年からHさんはサトイモを畑で作っていて 「煮っ転がしをアテに晩酌すると美味いんだな~ちがうか?」 と幸せそう教えてくれました 後日、H先輩からサトイモをたくさんいただいたので 妻にレシピを聞きき、自分で煮っ転がしを作ってみることにしました 初めてにしては上出来で、手伝ってくれた三女も美味いな~と ほめてくれたため自信がついた極端な私は 子供のころは嫌いだったはずのサトイモなのに、夜になると イモを煮っ転がしてはソレをツマミに芋焼酎を飲むのが 1週間も続いてしまったのでした ああ~お湯割がしみるね~ 飲む飲む♪ 以前はクサイと思っていた芋焼酎もおいしいく飲めるようになり 年をとったぶんだけ好物がまた増えて幸せな私です 後輩のM君と飲んでいてその話をしましたら、彼はサトイモが大嫌いでした しかも口に入れるのも恐ろしいというのです 大偏食家のM君らしいな~と詳しく聞けば 味ではなく、初めて食べたときからヌメヌメした感じが耐えられないのに 子供のころにサトイモを残そうものなら母親の説教が食べ終わるまで続き 特に機嫌が悪いと張り倒されたためにサトイモがさらに嫌いになり そのおかげでイモ類はほとんどNGで、サトイモと少し似たヌメヌメ感を持つ バナナさえもキライになってしまったほどだといいます これでは親の指導が逆効果です M君は小学校の頃はご飯を食べることまでがイヤになり 給食の時間は苦痛でしかなかったとか そういえば一緒に飲みに行っても彼はツマミをほとんど食べないのです 食べられると聞いて注文したヤキソバでさえもあまり口にしません 聞けば、もともと食が細いうえに飲むときにはあまり食べないし 今回はヤキソバに乗っている紅ショウガがNGフードで あのすっぱいカケラが口に入れば、これもまた吐き気がするのだそうです 先に言ってくれたら抜いてもらったのに・・・ 彼はタコヤキに赤い粒が少しでも入っていれば食べないとか うう~む、いつもながらM君は一筋縄では行きませんな~ 「牛丼にかけると美味くなるやろ?」と言っても聞く耳をもっていません 紅ショウガについては嫌いなショウガを大嫌いな酢だけでなく 保存料や着色料でも漬けており、まさに史上最悪の食材なんだそうです とにかく酸っぱいものは基本的に食べられないとM君は なぜか胸を張って言い切ります フルーツでさえ甘さより酸味の勝る「すっぱい系」はほとんどが苦手で イチゴやグレープフルーツは吐き気がするとか 吐き気? なんだか深刻な偏食ぶりです・・・何があったんだ? 酢といえば私はそれほど好きでもなかったのが オッサンになってからじわっと好きになったのです そのきっかけもH先輩でした 5年ほど前にラーメンをおごっていただいた時 すぐにコショウを振ろうとする私をおもむろに止めたHさんは 「まずは酢が先やろ!」というと、酢の小瓶をつまむと 満面の笑みでクルクルとラーメンの上へ大量に回しがけたのです そのショッキングな光景に酔いが一発でさめました しかも私のラーメンにもいきなりかけようとするので困りました Hさんはビールを飲んではラーメンをすすり 「美味いな~でもまだ足りんな~」と言ってもう1周追加です そして幸せそうにスープを飲みました 『これはないわ~大間違いや~』とひるむ私のラーメンにまで 「これはうまいよな~ちがうか?」と笑顔のまま大量の酢を いきなりまわしがけて下さったのです 先輩は「うわ~やっぱり美味いな~」と幸せそうに食べていました 私は『うわ~やっぱりムリやわ~』と思いながらも一口すすると マズ・・・いことはないのかな・・・アレ? 酸っぱいというよりも意外とあっさりとした味でした 意外にもマイルドでコクというか、何かいい感じがしたのです 「ほれ、酢を入れたほうが美味いにきまっとるやろ?ちがうか?」 単純な私は酢を入れると「すっぱくなる」と思い込んでいたのが じつは逆で、味が落ち着くとは本当に不思議でした なんでラーメンに酢をかけようと思ったのかを尋ねてみると Hさんが若い頃に働いてた滋賀県ではラーメンに酢をかけるのは一般的で 特にチャンポンに酢をたっぷりと入るのが大人の常識だったと言うのです 私はずっとラーメン屋の酢は餃子のタレ用においてあるものだ とばかり思っていましたし、ラーメンに使っている人を知りませんでした しかし満足そうに酢入りのラーメンを完食するHさんの その幸せそうな食べっぷりでショウガに引き続き「酢」の持つ 新しい魅力に気づかされました ラーメンに酢を入れるのは間違いなくアリです! ごちそうさまでした~ もとより酢は健康にもいいので、入れないと損な気もして 私はラーメン店に酢があれば使うことにしています ちなみに入れすぎると急にすっぱくなるだけではなく 食後に胸が悪くなることがよくありますのでご注意を さて、すっぱいものがNGというM君にいよいよその理由を聞くと 子供のころのお楽しみ会でのゲームが原因だと言うのです 普通のにぎり寿司とワサビをたくさん入れた寿司を用意して だれがワサビ入りを食べたのかを当てることから始まったものの カラシを挟んだナビスコ・リッツやタバスコ入りのデザートで 被害者役になってしまった子がマジでむせたり泣き出したりで ほとんどゲームにならなかったといいます 最後に登場したM君はジャンケンで負けたため酢入りの麦茶を 飲むのですが、渡されたグラスには原液の酢だけが入っており もはや色で皆にばれてしまっているではありませんか! しかも、飲み干すまでは終わらないという恐怖のバツゲームに ルールが変わっていたため、しかたなく酢だけを飲み干したM君は みんなの前でゲロを吐くという大失態をしてしまったのです それ以降は酢だけでなく、すっぱいものがNGになり 胃袋が本当に受け付けてくれないのだと あああ~それでイチゴやグレープフルーツもダメなのか・・・ 軽い気持ちで聞いてしまったら、ずいぶんと重たい話で 今にも吐きそうな顔で語るM君がかわいそうになりました さて、そんな話をしながらもお互いに酔いがまわってきました M君は酔っ払うと下品になるか泣きだすかの困った男です 今夜は食べられないものの話が続き、白ご飯はOKだが オニギリはNGという話ではご飯を海苔で巻くと 胃腸の弱い自分は海苔が消化できないため ウ●コが海苔巻きになるからムリだとお下品な事を言い出したので 泣かれるよりはまだましかと思いつつ最後にもう一品たのんで お開きにしようと黒板を見ました 私「ワシな~昔はキライやったカキも徐々に好きになってきたんや」 M「そうなんですか~年齢とともに味の好みも変わるんですね」 私「カキ酢が気になるな~ あ!でも君は酢が苦手やったな」 M「ボクなら気を使ってくれなくて大丈夫ですよ」 私「カキフライはどうや?タルタルソースで食べると美味いやろ?」 M「タルタルは酸っぱいのでイヤです、マヨネーズの方がよくないですか?」 私「ほなマスター!カキフライひとつね~」 M「ボクは生ビールもらいま~す」 私「話は戻るがタルタルソースって、ほぼマヨネーズじゃないんか?」 M「そんなことはないです!アレにはなんだかイヤな刺激があります」 私「じゃあカキフライにはマヨだけ?レモンは絞らんのか?」 M「レモンは酸っぱくてムリです、というかボクはカキフライを食べられません」 私「おいおい!カキフライをマヨネーズで食べる話ではないのか」 M「そうなんですか?ボクはもともとアゲモノはスキじゃないんですよ」 私「香ばしく焼いたのがよかったのか?」 M「煮ても焼いてもカキは食べれません」 私「あの~まさかとは思うが生でないとないと食べれないとか?」 M「生なんてありえません、死んでもムリです!ムリム~リ~♪」 私「ム~リ~♪って・・・カキの何が気に入らんのや?カタチか?」 M「カタチも味も含めて全てです、というかボクは貝類は全てムリです」 私「そこからか! ほなカキだけじゃなく巻貝もダメなんか?サザエとか」 M「もちろんダメです、サザエのつぼ焼きの緑の尻尾?は最悪ですよ」 私「あ~最後に出てくるトグロの部分か~ワシもなんかイヤやな~」 M「ですです、昔ね~母がその部分を『残すな!』といきなり口へ押し込んで」 私「でも、そういうことで子供の食わず嫌いが治るんじゃないの?」 M「そうかもしれませんが、僕の場合は兄が『それはウンコやぞ~』って」 私「それで貝がNGか・・・しかし君はいたるところにトラウマがあるな~」 M「貝を美味いと食べるヤツの頭の中は緑色のウンコがつまってるはずです」 私「しかし下品なことしか言わんな~、あれ?涙目になっとるやないか」 M「貝なんかを一生食べなくてもボクは死にませんから~、生きてやる!」 私「大げさなよっぱらいやな~、っていうか貝を食べても死なんど」 M「子供のころにカキ鍋で食中毒になったときは死にかけました」 私「コラコラ、そういうことは先に言ってくれ!マジか?」 M「ですです、胃に吐くものがなくなってもまだ苦しいし、下痢は止まらないし」 私「うわ~今からカキがでてきても食べにくくなったやないか!」 M「もう今夜でカキは食べ納めにしましょう、ウンコの脳ミソが治るかも」 私「・・・君はいつもワシの食欲をなくさせるな」 M「食中毒の心配もなくしてさしあげますよ、ノロウイルスでしたっけ」 私「あのな~これからワシはカキフライを召上るのよ」 M「ノロウイルスの感染力はインフルエンザの1000倍ですって」 私「は~?君のおかげで食べ納めかも・・・冬にかけてが旬なのによ~」 M「ですです、旬といえばカキにあたるのも冬場が一番多いんですって!まさに旬」 私「ああ~もう聞きたくない、トラウマのおすそ分けはノーサンキューじゃ」 M「矢野さん、貝の毒を甘く見ないほうがいいですよ、あとで後悔しますよ」 私「いや~君の偏食ぶりを甘く見てたことに後悔するわ」 M「後悔って後でするから後悔なわけでボクが間違ってました、すみません」 私「まずあやまるべきポイントも間違ってるぞ」 M「ですです、そうだ、ウチの母だけはなぜかそのカキ鍋で当たらなかったんです」 私「どうでもええわ~カキを食べるより先にもう後悔しとるわ」 M「それは先でも後悔って言うんですか? 日本語は間違ってないんですか」 私「君のせいでワシは後から先までずっと悔やまれることになるんじゃい」 M「そんなことはおいといて、ちょうど例のフライが揚ったみたいですよ」 私「こっちのメートルもあがっとるわい、マスター~芋焼酎のオカワリ~」 M「おや~、タルタルじゃなくて、この店はマヨネーズですね」 私「それがどうしたんや?どうせマヨネーズも嫌いなんやろ?」 M「あ、ボクはマヨラーです」 私「え? 君はマヨネーズがスキなんか」 M「ですです」 私「ですですって?それってスキということやろ?なんでや?マジか~」 M「ですです」 (・・・マヨネーズってすっぱくないのか???) 彼が言うにはオムライスにもマヨ、刺し身にもマヨ さらにはスイカにもマヨをたっぷりとかけるのだそうです・・・ 何でそんなに好きになったのかを尋ねると また子供のころの話に戻りました 幼少期の体験が味覚にどれだけ影響するのでしょうか? M君の母親は何にでも醤油をたっぷりかける人で 何も考えずに人の皿にまで回しがけたりするのが許せなかったし さらに兄は醤油かソースをかけるはずのオカズにさえ何の考えもなく 赤いケッチャップをたっぷりとかける人だったので、そんな家族を見ていたら ある日を境に気持ちが悪くなり、自分はあんなふうにはならないようにと 反抗してマヨネーズを使いはじめたらしいのですが 苦手な食材の味を消すためにマヨをたっぷりかけてみると意外と食べられたし それからはなんにでもマヨネーズをかけてしまうクセがついたとのこと なんだか極端で面白い話です さて、偏食マヨラーのM君にマヨネーズとあう食材で一番は何かを聞きますと その答えは私が予想したアスパラ、お好み焼き、豚シャブではかすりもしない 棒アイスの「ガリガリ君ソーダ味」にかけるのが最高なのだと教えてくれました 凡人の私には想像力すら追いつかない話にもう帰りたくなっていたのですが 熱心に勧めてくれますので、私はハッキリと「絶対に試さぬ!」と答えると マヨをアイスにのせたそばからすべって落ちそうになるのさえクリアできたら 絶対に気に入ってもらえるはずとさらにグイグイ言ってきます そういう問題ではないのですがヨッパライとの議論は不毛なので聞き流します なんでも、この難点をクリアするために彼はいろいろ工夫をして マヨネーズを凍らせて使ったことがあり そうすると表面によくなじんでマヨすべりの問題を解決できるとか・・・ しかし、そのあと常温においておくと解凍状態のマヨネーズはなぜか 黄色く半透明な油っぽい部分と不気味な白い層に分離してしまったため とても気持ち悪くなり捨ててしまったし そのことはトラウマにならないよう深く考えないようにしているとのこと 私にもマヨの冷凍保存には気をつけるように念を押してくれますが 聞けば聞くほど、どうでもいい話でした おや?・・・たしか!・・・たしかマヨネーズの主な成分はサラダ油とタマゴと そう!彼のトラウマである「酢」だったはず 間違いない! 酢を大嫌いなはずのM君がなにゆえマヨネーズを愛することができるのか? もうわけが分かりません このワケのわからない後輩に親切な私は 「おいおい、マヨネーズの半分はモロに酢やないかい! 酸っぱい味で気がつかんのか?それに 母が醤油で黒 兄貴のケッチャップは赤、君のマヨは白で、色こそ違うが 考えもなしにかけまくる気持ち悪さは全く同じやぞ! 聞いたこっちがトラウマになるわい!どうしてくれるんじゃ~」 と言い放って彼を黙らせることに成功すると・・・ 今までの経験上、泣き上戸のM君の涙腺を破壊してしまうことになるので これ以上は彼の心の傷口を広げないようにと 今夜は味気なく感じるカキフライを芋焼酎で流し込むと 貝だけに口をつぐんでおきました 今夜もサトイモを炊いてツマミにすると芋焼酎がすすんで飲む飲む~♪ ママと三女は喜んで食べてくれますが 長女は一口だけで「だいじょうぶ~」とか言ってもう食べないのです 今夜は甘さも柔らかさも絶妙に仕上がったのにな~ それならと次女にも勧めると「む~り~」というふざけた返事 「一口でも食べてくれ~食べれば分かるぞ」と頼んでも 「絶対にイヤ、後悔する」と言われてしまいました 「食べるより先に後悔するとはどういうことだ!何がイヤなんじゃ?」 とワケを聞くと「大嫌いや~あのヌメっとした感じは意味不明~」とのこと は~?意味不明なのはお前じゃ!親をバカにしよって~ 説教したる! 覚悟せい! サトイモちゃんのヌメヌメが気にいらんだと? ヌメヌ・・・あ、どこかで聞いたな・・・ おおお!大偏食魔人のM君と同じ事を言っているではありませんか! お説教がエスカレートしてムダに叱ったり、ムリに食べさせたりすれば M君のようにバナナまでが食べられなくなると困ります かわいい娘に妙なトラウマができては本末転倒なので無用な説教はせずに 「うわ~うまいな~間違いない!」と言つつ半笑いのまま残さず食べました でも幸せ感だけは残したつもりです 娘達よ~今はキライなものでも、大人になれば食わず嫌いはせずに いろんな食材のおいしさと幸せに気づけるようにしてください そのときは一緒に芋焼酎も飲もう 第231話 思い出の中華飯店 10月26日 四十を超えたあたりから中華料理は油が胃にもたれるようになりました それでも半年に1度は猛烈に外食の中華が食べたくなります しかし、その帰りにはウーロン茶を飲まねばなりません これでも一人暮らしをしていた若い頃はとにかく中華が大好きで 病気みたいにどうしても食べたくなることが月に一度はあったはず ちなみに兵庫県の明石市~鳥取県の米子市に住んでいた頃の話です 忘れもしない20才のときです 銭湯の帰りに中華を食べようとお店に入って 中華丼と酢豚セットでどちらにしようか本気で悩んでいると お得なセットがあるのに気がつきました 大きな皿の半分は中華丼、半分は酢豚にサラダがついており 両方頼むよりかなり安いのです でも、数分後にボーイッシュなお姐さんが運んできた品は 印象がどこか違いました マンガを読みながら3~4口ほど食べてからやっと分かったのは 白いご飯に酢豚がアンカケのようにかかっていて サラダの上には八宝菜のように中華丼の具が乗っていたことです どうやらかける場所を間違えています たべられなくはないものの、なんだか損をしたような気がして 作る人も運ぶ人も気がつかず、食べてからやっと気がつく鈍感な 自分もなんだかイヤで、もうその店には行きませんでした 忘れもしない21才のときです 酢豚定食を食べようとちょっといい感じの中華の店に入りました ランチタイムの店内はとても混んでいました カウンターの一番隅に座って待っていると、その席からだけは とても男前のマスターが調理をする姿を見ることができたのです 火力の強い3つのコンロにそれぞれ違う中華鍋をおいて 同時に力強く使いこなす手並みは素晴らしく 値段も高すぎず味も文句なしで素晴らしかったのに どうにも気になることがありました マスターが鍋を振るのに連動して、ヘビのように舌がペロペロ出ること 小さな同じスプーンで仕上げ前に何度も味見をすることと 酢豚を皿に盛るときにもやはり舌をベロ~ンを出しており 渋い男前なのが逆に残念で、もうその店には行きませんでした 忘れもしない22才のときです 私だけがサルモネラ菌にやられたことがあります 医者は昨夜食べた豚肉が原因ではないかと言いました じつは前日には友人たちと中華をたべようと外食したのです その店は集団食中毒をだして2度目の営業停止になっていたのが ようやく再開したので怖いもの見たさで、あえて行ってしまったのです みんなはギョーザとラーメンを注文しましたが 私だけギャーザはヤバイと感じてヤキソバのみを注文しました これが間違いだったのです、みんなと同じものをたのめばよかった・・・ ほどなく他のお客さんがウエイトレスに文句をつけはじめます 「おまえではダメや、店長を呼べ~!」とわめくので雰囲気が悪くなりました ぽっちゃりしたウエイトレスが妙に若い店長にクネクネしながらいうのには 「お客さんが私のクツが汚なすぎるから食欲がなくなったって怒鳴るんです~」 事情を聞いた店長はお客には平謝りでしたが、戻ってきて肩を抱くと 「いろんな客がおるからな、気にせんでもエエんやで~」と慰めます ウエイトレスは「も~あの客サイテ~!ぜんぜん意味わからんし」と逆ギレで さらにイヤ~な感じがしました しばらくして私にヤキソバを運んできたウエイトレスの足元を何気に見ると もともとは真っ白だったはずのデッキシューズが油で深く汚れて 茶色とか黒のマダラ模様になっていたのです これでは食欲をそがれる客がいてもおかしくない、というか ほとんどの客が嫌がるはずですから、さきほどの店長の発した 「気にせんでもエエんやで~」はいかがなものかと思い すっかり気分がわるくなりました そして気分が悪いといえば翌朝・・・ 夏なのに妙な寒さで目が覚めた私が便所にこもり あの汚いクツを思いだして吐き続ける羽目になることは 言うまでもなく、もうその店には行きませんでした 忘れもしない23才のときです 路地裏の中華屋に入ると 床もテーブルも雑誌まで油がついてヌルヌルでした とりあえずニラレバ定食を注文してトイレに行くと 便所の床はさらにヌルヌルで、すべってころびそうになりました とりあえず小便器の前で放水を始めようと力を抜くと 肩幅より広めに開いていた足がジワジワ外へすべりだしたのです! そこへ隣の小便器に巨漢のマスターがやってきて放水を開始した時に 足が開いてしまう私の靴とマスターの長靴がくっついてしまい なんだか気まずい感じがしました 足を閉じようとすると私は放水圧が急激に下がるのです マスターの白いゴム長はすべらないようで 私が力を抜いて放水を再開すると再び半笑いのマスターと 靴がすべってくっつくので困りました・・・ お客さんとは同じタイミングではトイレに行かない方がいいと 思いましたし、指先や靴底のヌルヌル感はしばらくとれなくて 気持ち悪かったのも忘れられません ニラレバ自体はかなり美味かったので残念です その後、先輩から衛生的に問題のある店なのだと聞き なるほどと納得して、もうその店には行きませんでした 忘れもしない24才のときです ドライブ中に湖で泳いでいる人を見かけました 季節はすでに秋で、とても普通に泳げる気温ではないため驚きました ちょうどお腹が減ったのでこの辺で遅い昼飯を食べようかと 引き返したときには、もう午後2時を過ぎていました ちょうど湖畔の古い中華食堂に営業中の札が出おり 車を停めて中に入りましたが店内の照明は半分以上が消えていて 声をかけてもダレも出てきません・・・営業中ではなかったのか? それでもちょっと待ってみようと端っこの席で漫画を読んでいると 外から戻ってきた小柄なおねえさんが「お客さんですよね?」と驚き 「マスター!お客さ~ん」と奥へと呼びに行きました おねえさんが水を持ってきてくれたので「中華丼」を注文すると 「ちょっと待ってくださいね~」と言ってなぜか外へ出て行きました しばらくして入り口が開いたので振り向くと そこにはガリガリに痩せた険しい顔をした色黒のオッサンが うつむいたままでペタペタとはだしのまま店内に入ってきたのです! しかし驚いたのはそんな事ではなく、このオッサンは服を着ておらず パンツ一丁のずぶ濡れで、ポタポタとしずくをたらしており まるで不気味な水の妖怪のようだったのです しかも海パンではなく普通の白いブリーフ微妙に透けており 逆にカッパでもなければ限りなく変態に近いため 私はあっけにとられてしばらく動けず声も出ませんでした それゆえオッサンは私に気づかないまま、テーブルに座って 「ああああああああ~っ」と低くうなりながら しばらく顔や両足をこすっていましたが 漫画を手に固まっている私の気配にようやく気づき ゆ~っくりとこちらを向くと、なぜか目をあわさないまま さらに険しい表情でなぜか厨房へと静かに消えたのです ・・・まさか! すると外からおねえさんが戻ってきて、しずくでぬれていた床を見て 「あれ~どこで行き違ったんやろ?」と言いつつ厨房の奥からは こんな会話が聞こえました 姐「マスター!また泳いでたんですか~ 表の札が営業中のままですよ」 マ「わかっとる」 姐「さっきからお客さんが待って」 マ「わかっとる」 姐「中華丼を1つ」 マ「わかっとる」 三度目の「わかっとる」は本当にわかっとるのか不安でした その後、無事に運ばれてきた中華丼の味は全く覚えていませんが お会計のときに気になって厨房をのぞいてみると こちらにペコリと頭を下げていたマスターが裸にエプロン姿 ではなく、ごく普通の格好をして、ごく普通の笑顔だったのは 逆に印象的でよ~く覚えております でも、半裸を見てしまった気まずさに、もうその店には行けませんでした 翌年、25才で地元へ帰ってきてから早20年・・・この5店舗のうち 「営業中」の札は何枚出ているのでしょうか 第230話 待つ時間 10月12日 飲み会の前にシャワーを浴びておこうかと早めに帰宅する直前 待ち合わせの公民館の前で時計を気にしているB先輩が見えました 時刻は5時45分でした 今夜はご近所の青年会の飲み会で隣町へ行くのです ・・・あれ? 送迎のマイクロバスが来るのはたしか午後7時のはず ん?いやいや!・・・私の勘違いで6時だったのかも? ああ~そうかもしれん ヤバ! そのまま着替えずに公民館へ小走りで向かい、6時に間に合いました しかし参加者はまだBさんしか来ていません それから10分ほど二人で立ち話をしたのですが・・・ 私「あれ~遅くないですか?みんな時間に厳しいのに 6時を過ぎましたよ~」 B 「まだこの時間なら誰もこんやろな、 そうそう君は野球は見るほうかい?」 私「最近はナイター中継も見なくなりましたね~、 しかしバスも来こないな~」 B 「ずいぶん気が早いな~ あせってもまだバスはこんし、まだ出てもないぞ」 私「えっ・・・それじゃあバスがココにくるのって、もうすぐじゃないんですか?」 B 「そうやな~ 時間までには来るやろうから7時10分前くらいとちゃうかな」 私「7時? じゃあ集合は7時であってたんですか! おかしいと思いましたよ」 B 「おかしいって?君が早くきたのは 今夜の幹事だからではなかったのか」 私「ちがいますよ、集合時間をしっかり覚えてなくて間違えたようなんですが」 B 「まだ若いのに気の毒なヤツや~ スマホで確認してみ、集合は7時やで」 私「ボクはずっ~とガラケーのままですし、 メールも基本的に使わないです」 B 「実際に不便とちがうんか? 時間も間違えるくらいやし、 変わっとるよな」 私「あのね~ Bさんの姿が見えたからボクはあわてて走って来たんですよ」 B 「ワシを見て? ワシは走ってなかったし 君が変わっているのは昔からや」 私「Bさんには負けます!聞くんですが、今ココで一人で何をしてるんです?」 B 「ワシが飲み会の送迎バスを待つ人間以外に君は見えてしまうのかえ?」 私「見えません、だからボクのほうが間違えたと思ってしまったんですけど!」 B 「おいおい ワシはなにも間違えてないし!早く来ることには問題がないぞ」 私「いえ、大いにあります!ココにくるのが早すぎることが大問題なんですよ」 B 「も~ そんなことはどうでもエエぞ、 そうそう昨日の阪神戦は見たんか?」 私「見てません! 話を戻しますが、今は6時10分で間違いないですよね?」 B 「君は時計も持っていないのか? ガラケーでも時計くらいはあるじゃろ?」 私「じゃなくて、これからココで50分も待つつもりなのかを聞きたいんです!」 B 「ココが待ち合わせ場所なんやぞ? それって当たり前すぎてびっくりやで」 私「ああ・・・・ ボクはあせって損しましたよ~、 しかも急いで汗もかいたし~」 B 「それこそ時間はたっぷりあるから乾くし、なんかほかの話はないんか?」 私「は~?逆に話だったら 1時間も前から待ってるワケを先に話して下さい」 B 「ワケと言われてもな~ そんなに聞きたいのか? 逆になんでやと思う?」 私「逆って・・・・ メンドクサイ人ですね~、ほなBさんが幹事だからですか?」 B 「不正解!さっき君に、今夜の幹事か?と尋ねたワシが幹事はないやろ」 私「じゃあ~ なんでこんな早くから待ってるんです? マジで理由はなんです」 B 「待つ?理由?・・・ 余裕があればワシはいつも1時間ほど前には来るぞ」 私「いつもって?普通は早くても10分前でしょ~、1時間は時間のムダです」 B 「ほな~家で50分間も10分前までをひたすら待ってからココに来いと?」 私「そうです、普通のみんなはそうするはずで、Bさんこそ変っているんです」 B 「逆に君が50分間待つのにココよりも家のほう選ぶそのワケはなんや?」 私「やっぱり家で待つのが一番落ち着くはずでしょう? なんの心配もないし」 B 「でも家やと、うっかり遅れてしもて 皆に迷惑をかけるかもと心配やろ?」 私「まあ~それは多少あります、ついうたた寝をして遅れたことがありました」 B 「なら、先に集合場所にいたら 心配事が確実に1つへるということやな?」 私「それは・・・」 B 「なら集合するのは早い方がエエやろ? それのほうが一番落ち着けるぞ」 私「間違ってないようにも聞こえてきたけど 絶対にその考えは変ですって!」 B 「ワシはココで待つのは初めてで新鮮だし、家では特に新鮮さは感じない」 私「ボクも家が新鮮とかでは・・・ あ、分かった~家には居づらいんでしょ?」 B 「居づらくなんかないし、妻も『早く出かけたほうがいいよ~』って言うぞ!」 私「逆に奥さんがBさんと一緒に居づらいから、早く出掛けて欲しいんですよ」 B 「そんなことはない、ウチは仲好し夫婦や、逆に君は待つのがイヤなんか」 私「はいイヤです、 逆に待ってて楽しい気分になるヤツっているんですかね」 B 「えっ? 楽しい飲み会が待っているのに、待つのはイヤって 逆に変やろ」 私「そうかな・・・ ほなBさんは、ず~っと待ってても退屈じゃないんですか?」 B 「まあな~、しかし待つといっても遅刻するヤツを待つのは1分でもイヤや」 私「えっ?1時間も待てる人が、そこの1分は待てないって、どういうことです」 B 「あのな~ワシ的には、この状態をまだ待っているとは思っていないのよ」 私「はあ? ボクは隣でもう10分ほど待っているんですけど、ちがうんですか」 B 「約束の時間に遅れてくるヤツがいたら、そこで初めて待ち始めるわけよ」 私「そうか!確かにこの状態は早すぎて、逆にまだ待ってさえいないのかも」 B 「1時間ココにいても7時に皆がそろったら 待ち時間は0ということなわけ」 私「でも実際には1時間も待機することは揺るぎ無い事実ですが違います?」 B 「待つのではなく、約束の時までゆるりとした気分で佇むと表現してみよう」 私「表現は自由ですが、 ココで1時間もゆるりとするほど僕はゆるくないです」 B 「しかし 楽しい飲み会のことを楽しみにしながら待てば楽しいのは正解~」 私「まあ、そうなんでしょうけど~、でも立ってるだけでダルくないんですか?」 B 「立つのは普通じゃ!それに10分待つより60分待つほうが6倍楽しいぞ」 私「そうですかね・・・それは絶対に違うとおもいます、6倍疲れるだけですよ」 B 「ほれ、この10分間はワシとしゃべったら あっという間やったやろ~が?」 私「逆に長くて疲れたかも・・・あっ!もしかしてBさんって、そうとうヒマでしょ」 B 「え?」 私「何にもすることがないんでしょ?スマホもぜんぜんいじってないですし~」 B 「う・・・・アレは仕事で使うから、遊ぶときにはあえて触りたくはないんじゃ」 私「ほんまBさんって変わってますね、今に始まったことではないですけど~」 B「いまだにガラケーの君なんかに言われたくないな、君のはムーバやろ?」 私「フォーマですっ!さっき、逆に待たされるのはイヤって言いましたよね?」 B「そう、今日も時間に1分でも遅れるヤツがおったらイヤ~な気分になるな」 私「それならボクは着替えたいので今からシャワーを浴びに帰ってきますね」 B 「うわ~ なんかイヤ~な感じがする、マジか?それで遅刻したら許さんぞ」 私「それが、逆に7時の集合時間にわざと遅れて、 7時1分に戻ってきます」 B 「そこは10分前に戻ってこいや~、なぜ遅れるんや?逆に聞きたいわい」 私「Bさんを1分間待たせるために、7時1分まで待つのが楽しいからですよ」 B 「うわ~! 変わっているのを通り越して逆に頭がおかしいのとちゃうか?」 私 「どちらの頭が本当におかしいのかを ここで一人で考えてみてくださいよ」 B 「そんなもん考えなくても、 君がダントツでクレイジーなのはゆるぎないぞ」 私「いやいや~時間ならた~っぷりありますから、よく考えて待ってて下さい」 B 「イヤや~バスや皆を待つのはいいが、 逆に君を待つのはイヤじゃ~!」 私「それなら~2分も遅れようかな~、どうせU君も5分は遅刻するでしょうし」 B 「なんだと!君もUも乗せへんぞ、二人が来る前にバスを発車させたるぞ」 私「バスはウチの前を通るはずなんで~ 逆に、7時2分にウチで待ってます」 B 「うわ~ハラたつな~変人としゃべっとったら逆に疲れるわ~帰れ帰れ!」 私「そうします、しかしBさん『逆に~』の使い方は逆に 逆じゃなくないすか?」 さて7時2分に戻ると、U君も含めて全員がすでにバスに乗り込んでおり わずか2分の遅刻した私は思った以上に白い目で見られました まさかBさんがU君たちに早めに来るよう電話したのでしょうか? 飲み会では何故か隣の席に座ったBさんが不気味な笑顔で三合徳利を傾けて 日本酒を私のコップになみなみと注いでは繰り返しこう言いました 「待つのがイヤなヤツは早よ飲め!逆にワシが注ぐのを待たせるつもりか?」 先輩をあんまりからかうと飲み会で笑えなくなりますので 皆さんは程よい待ち時間を 第229話 整体 9月27日 タイヤを交換中に強烈なギックリ腰で全く動けなくなった私が 父につれられて隣町の整体院へ行ったのは、もうずいぶん昔になります その先生はかなりの凄腕らしく、レベル10だった痛みを いきなり1~2くらいにできるのだそうです そうなると今まで痛んでいた神経が急に正常に近い状態に戻ることで なぜか精神的ハイな状態になり、初めて施術を受けたあとの父は 落ちついて運転ができなくなり、休憩してから帰ったほどだったといいます それほどまで効くのならと期待し、座っていてもズキズキズキと 痛み続ける腰をかばいつつ順番が早く来ないかを祈るように待っていました 2時間もたったころやっと名前が呼ばれてゆっくりベッドに横たわると ちょっと疲れた感じの50代の細身の先生が登場して私の腰をさわりました 「ああ~いけませんね・・・でも・・・なんとかしましょう」と言った時に 場違いな女学生達が待合にぞろぞろと入ってきてにぎやかになったのです 先生は私にちょっとだけ待つように言って話を聞きに行きました 女の子達は地元の高校のバレーボール部のようでした 先生「そうぞうしいな、ここは病院だぞ!うるさくしてもらっちゃ迷惑だ」 チエ「先生ですか?お願いがあるんですぅ」 先生「なんだね」 チエ「この足をみてほしいんですぅ!」 先生「ん・・・腫れてるじゃないか、すぐに戻って冷やしたほうがいいぞ」 カナ「聞いてください、明日は大事な試合なんです!冷やせば間に合いますか?」 先生「これは・・・しばらくはムリだな、まあ1週間ほどのがまんだ」 チエ「1週間は待てないんですぅ!」 カナ「うちのパパがここの先生は天才だから治せると言っていました!」 クミ「うちのママも先生はほんまモンの天才だって言ってます!」 先生「うむ~、いくら天才でも治らんものは治らん、今回はあきらめて安静に」 チエ「どうしても明日の試合には出たいんですぅ!」 先生「この足を早く直したいなら悪いことは言わん明日はおとなしくしてろ」 クミ「私達三年はあすの試合を最後にもう引退なんです」 カナ「だからお願いします、チエの足を診て下さい」 先生「あああ~ダメなものはダメだ」 チエ「せめて一日だけ、1時間でもいいから痛まないようにはできないんですか?」 先生「1時間?ま~できないことはなくもないが・・・そんなに試合に出たいのか?」 チエ「出たいですぅ、ウチは人数がギリギリで、棄権することになれば私・・・」 先生「しかし試合に出たせいで足が動かなくなったら誰が責任取るんだ」 チエ「責任なら自分でとりますぅ」 先生「君はまだ子供だろ?」 チエ「両親とも相談して来たんですぅ、だからお願いしますぅ」 先生「どうなってもいいんだな?」 チエ「はい、明日のために皆んなでがんばってきたんですぅ~ここでやめるなんて!」 クミ「先生だけが頼りなんです~私達からもおねがいします」 カナ「チエはセッターなんです、チエがいないと試合にならないんです、どうか」 先生「うううむ、そこまで言われてしまっては」 クミ「じゃあ診てもらえるんですね!やった~!」 先生「おいおい歓ぶのはまだ早いぞ!これはいわゆる付け焼刃だ、治すのとはちがう!」 チエ「それでもいいんですぅ」 先生「午前中しかもたんかもしれんぞ、それでもいいのか!」 チエ「はい、それで充分ですぅ、ありがとうございますぅ」 先生「気が早い!・・・その治療には、そうとう痛い思いをするが、君に耐えられるかな」 チエ「私は耐えますぅ!だからお願いします」 先生「では、一言でも『イタイッ~!』とか口にしてみろ!すぐに帰ってもらうからな」 カナ「チエ~大丈夫?」 チエ「試合に出れるなら、どんなことも私はがまんしますぅ!」 先生「ほぉ~、いい覚悟じゃないか、だが途中で気絶してもワシはしらんからな!」 チエ「・・・はいっ!おねがいしますぅ!」 先生「よろしい、では予約の順番があるから2時間後に親と一緒に来なさい」 一同「ありがとうございます!わ~よかったね~よかったよかった」 先生「そうぞうしいぞ! ここは病院だといっただろう!」 なんだか昔の青春ドラマで見たようなくだりのため忘れられませんでした しかしこの先生は相当な痛みをともなう荒っぽい施術をするようなので 私も気絶しないようにと緊張してきました そういえば以前のギックリ腰で通った近所のドエス整体院(仮名)では なんと二人がかりで痛む腰をボキボキとサバ折りにされてしまい 絶叫し続ける私の両目からはバチバチとキレイな火花と キレイな涙が同時に出たことがありました ところが帰る時には「荒療治にも程があるじゃろうがい!」と逆切れしつつも 小走りで逃げるように・・・いや、ある意味元気そうに帰ることができました たしかその時も翌日の午前中まで痛みは半分以下に和らいでいたはず チエちゃん(もちろん仮名)もそんな感じなのでしょうか? お互いにこれから耐えがたきを耐え、忍びがたきを忍ぶ仲間です ちなみに~、あまりの手荒さに評判がすっかり落ちて 客足が遠のいてしまったあのドエスの先生達は どこか遠くへ引越してしまいました・・・ さて、ぞろぞろと女の子達が帰り、戻ってきた先生の手には 片方が恐ろしく尖った銀色のハンマーが握られていたのです! 先生「いや~お待たせしてすみまん、どれどれ試しにコレで~」 私「そ、そんなハンマーまで使うんですかっ!・・・かなり痛いんですよね?」 先生「え?痛くないですよ、これは感覚を確かめるのに使うだけですし」 私「さっきの女の子には痛くて気絶する~とかおっしゃってましたけど」 先生「あ~あれはちょっとからかっただけです、あの子は3回通えば治ります」 私「え?半日しかもたないとか」 先生「ウソです、ああでも言わないと、若い子は無茶して本当に故障してしまう」 私「そうなんですか、いや~先生もなかなかの役者ですね」 先生「好きなんですよね~ああいう熱いの、そうそう、熱いといえば~」 と言いながら先生は腰ではなく私のアバラをさすると肋骨をそのハンマーで 「これ熱いですか?痛いですか?」と言って軽く叩いたのです 私は驚いて「アッツ~!」と声が出ました さらに「それなら・・・ここも熱いでしょ?」と何箇所か叩かれて 「アツイ~アツイ」と体は素直にビクビク反応してしいました 先生は「でもね~これを触ってください」とハンマーを私の手に当てると 金属の冷たさにまた驚きました・・・めちゃめちゃ熱かったのになんで? それは骨格のゆがみで神経がおかしくなっている証拠ですよ~という先生は ハンマーを置くと、素手で軽く背中から腰の骨をフムフム~とさすって 「あ、ここか・・・エイヤ~ッ!」と一瞬だけ力を入れると ボキボキと骨がはまりました 「どうです?全然痛くなんかないでしょ~ボクは上手だから~」と言って もう3箇所ほどをさすって押して、特にもんだりもせずにあっさりと終了 これだけで効くのか?と思った直後にクスっと笑うくらいに楽になったのです さっきの女の子の親達が天才だと表現したのがうなづけます むっちゃ楽なのです!全然痛くない!これは天才以外の何者でもありません! 車から降りる時は父に肩を借りて「イタイ~イタイ~」と、うめいていたのに 帰りは駐車場まで一人でスタスタあるいて私が運転できるほどです しかも、頭がのぼせて楽しくなり、歌い出したい気分になるのでたまりません 聞いてはいましたがここまでとは驚きました 長く正座していて足を伸ばすと痺れがきれるように 圧迫されていた神経が開放されてムズムズとテンションがあがってしまうのです 車の窓を開けて「町のみなさんコンニチワ!一緒に地球を守りましょう!」と 叫び出しそうな勢いに自分でもおかしいなと感じていても高揚感がおさまりません そしてあの女の子達のチームを応援したくてたまらなくなってしまったのです ああ~そうだ!明日はガクラン姿で三・三・七拍子をわめきつつ 『チエちゃんガンバ!神の手ドクター整体万歳!byたつみやベビー』の 巨大横断幕を引っさげて体育館内をスキップで百周したりして 会場を激アツに盛り上げてさしあげようではあ~りませんか! ・・・そんな無駄なパワーが全身にみなぎりまくる状態が30分も続いたのです ひょっとして覚醒剤をうてばこんな気分になるのではないかとも想像できました しかし残念な事に超ハイな気分はこれが最初で最後でした というのも、あまりの評判のよさに忙しくなりすぎて すっかり過労になった天才の先生は どこか遠くへ引越してしまったのです・・・ 第228話 ゲーム 8月18日 娘達が使う「リア充」という言葉の意味が分からないので ネットで調べましたら、リアルな世界で充実した生活を送る の意味だそうで、リアルの世界で・・・ということは リアルではないゲームやネットの世界では充実しているのが前提みたいです なんだかややこしい言葉だな~と酒を飲んで あとはネットで懐かしい動画を見てはヘベレケになっておりました まあ、いつものことです 小学生の頃に見たドリフのコントや中学の頃に熱心聞いていた音楽などは つい時間を忘れて見入ってしまいますね~ そしていつもながら娘達が隣でピコピコとゲームをしているのを見て 「うるさいからボリュームを下げろ~!」と言うのですが ヤツらはヨッパライのいう事など全然聞いておりません めんどくさいので、こちらが娘のヘッドフォンをすると 「うわ~!オッサンのミミのバイキンが付いた!きたない」と叫んで外し 除菌用のティッシュで念入りに拭いているので 風呂上りの美しい紳士に対して失礼なヤツだな~と嘆きます 「宿題を先に終わらせろ~」「風呂にはいってしまえ~」 と言ってもゲームのほうに集中しています 貴重な集中力を無駄に使いきりおって・・・ しかも、そのあとで勉強をがんばるわけでもなく クリアできずにいちいちイライラしているのを見ると ゲームは完全にマイナスだな~と思いました いつぞやの飲み会でK先輩から、子供が約束を守らずにゲームを続け 宿題もせず、しかも親をまるで無視をするので、とうとう三日目には 「仏の顔も三度までと言うたじゃろうが~!」と叫んで ゲーム機を子供の前で叩き割ると、それからは子供が親のいう事を すんなりと聞くように・・・ なるどころか「パパコワイ・・・パパコワイ・・・」とうずくまり 2ヶ月ほども腑抜けのようになってしまい困ったと聞きました ウチも最終的にはゲーム機を破壊することもやむをえないと考えていたので それはやめておいたほうがいいと勉強させてもらいました ほかの先輩からも、日曜に朝から両親がいないからと用意してあった昼飯を 食べるのも忘れて夜までゲームをしていたとか ゲーム中毒になって外出もしなくなったとか聞くと人事とは思えません しかも一番ひどいゲーム中毒者、つまりゲームジャンキーになってしまうと ゲームを最優先させてしまうのでトイレにも行くことができずに もらしてしまう子もいたと聞き、ゲームの恐ろしさは増すばかりです そもそも私は子供にはゲームをさせないほうがいいと思っていたのに 孫には甘い誰かや、白ヒゲの誰かがDSを買い与えてしまい ゲームソフトもポケモンの白とか黒とか同じようなのが何個かあります しかも、お年玉つき年賀ハガキがなぜか大当たりで「Wii」をもらいました・・・ 貴重な運気を無駄に使いきってしまいました・・・33万分の1の確率だそうです ゲームをさせたくなくても、させてしまう環境が整うとは妙なものです おかげで子供の視力は下がるし、太鼓の達人などでは 連打する音がパコパコと無駄にうるさくて困るのです バカ娘達は「宿題を済ませれば1日に30分間だけ遊べる」というような 掟に従うわけもなく、宿題もせずにダラダラとゲームに興じては叱られ 叱られたからと言って宿題はしない・・・を繰り返してくれます 繰り返すといえば「どうぶつの森」ではゲーム内の生活で 借金を安易に繰り替えしていることに親としてリアルな不安を感じたりします 宿題をしないバツとしてゲーム機を取り上げても、やる気も一緒になくすし ゲームができないと夜中に起きてこっそりやっていたり、どうもいけません それならいっそ反面教師として子供にゲームをさせる暇を与えないくらい 私が夢中でゲームをし続けてゲーム・ジャンキーになったほうがいいかも? というようなアホな話を小学校の保護者会で言うと初めて会ったお母さんから ゲームはぜんぜんOKですよ~と言われて絶句してしまいました 最初のうちは私も「いやいや~」「でもね~」と反論したのですが・・・ おおむねこんな話でした 「昔、私の両親が当時初期型のファミコンだったと思うんですが 週末になると夫婦で仲良くゲームをしていたんです 先にクリアするのを見て幼心に大人はすごいんだな~と尊敬しましたし 私がいくらゲームをしても宿題さえやっていれば怒られなかったので 一緒にゲームをやりまくったんですが、高校くらいからはあきてしまって 私はぜんぜんしなくなっていたんです 今は主人がゲーム好きなので一緒にするようになりましたら 最近のソフトはよくできているので面白いですし夫婦の会話も尽きません よその家と比べると主人は会社が終わるとまっすぐに帰ってくるようで もちろんゲームの続きがしたいからですが、これって安心なんです それに大人の趣味としてはゲームってかなり安上がりでもあるんです パチンコや酒を飲みに行かれるより100倍マシだと思います しかも家族中で遊べるし、子供の友達も家に遊びによく来てくれます 私も先にクリアすると子供達から尊敬されるようになりました 実は私は目が悪かったんですが、なぜかゲームをやりだして 視力がよくなったんです、子供達ともゲームで対戦したり協力したり コミュニケーションはとれているほうだと思います 昨日も主人と年頃の娘がコタツの同じ面にくっついて入って 私がイラっとくるくらい楽しそうに遊んでいました 新作の発売が待ち遠しかったり、一緒に並んで買って盛り上がれます 聞くところによるとゲームで脳が活性化する研究結果があるらしいです それならテレビをぼ~っと見ているよりは絶対いいと思いますよ 子供にプレイ時間を守ることとか宿題をやりきってからという ごく簡単なルールさえ守らせれば、ゲームはアリだとおもいませんか? ネットの動画をダラダラと見ているより難しいゲームを攻略した時に 得られる達成感の方が心の成長にプラスに働くかもしれませんよ」 私の目からウロコがポロポロ落ちました ゲームが悪いのではないのか・・・ ルールを守らせることのできない親、つまり私が悪かったのか! 子供達はどうせゲームをして遊んでしまうわけだから 親が仕事を全部すませてから夫婦で仲良く時間を決めてやる姿を 子供に見せていればこんなことにならなかったのだろうか? それに子供の頃にアホみたいにゲームをやっていれば 確かにいずれはあきるかもしれません それなら、これからは少し容認してもいいような気がします 子供だって息抜きは必要ですもんね・・・ おかげさまで私はその日からゲームのことで 子供達に腹を立てる回数を半分以下に減らすことができるようになったのです でもね・・・子供達よ~これだけはわかってくれないか? 大人になると「仕事」と「生活」に必要な時間以外のことは 「余暇」と呼ばれるし、その中に「娯楽」という時間は確かに必要だ その「娯楽」のなかには「趣味」と「暇つぶし」がある 「暇つぶし」とは現実問題としてはたいした結果の残らなくてよい「息抜き」で 「趣味」とはリアルの世界で思い出や結果や作品が残るものだと思ってほしい ゲームはどちらかと言えば「息抜き」のほうだとワシは考えている クリアできないからと言ってイライラしては「息抜き」の意味がなくなるよ そして大人になったときに「趣味」だと思えるリアルな娯楽も徐々に覚えつつ ゲームなりネットなりで「ヒマつぶし」をちょっとだけしてください とにかく「ヒマつぶし」ではない時間の使い方を意識できているかが肝なのだよ 大人になったときにお前達が仕事も家事も勉強もしておらず 友達もいないしリアルな趣味もないとしたら、それはまともか?よく考えてみ ゲームだけで生きているような人は実際にはいないのだから・・・ ん?パパの説明はとてもよく分かるって? 毎晩、酒を飲みながらネット動画を見てヘベレケのパパはそのまま 「ヒマつぶし」や「息抜き」をしまくっている「ネット・ジャンキー」以外に見えないだと! うわああ~!「リア充」しなければならないのは、私のほうだったか! 第227話 思い出せない 7月29日 アホな文章をいつも長々と書いている私ですが 久しぶりに本棚を整理していると 「短い文章を書くコツ」という本が出てきたのです・・・ いつ買ったのか、どういう内容だったのか ・・・全く思い出せないのです さてさて、記憶力の維持のためにと日記をつけはじめて3年がたちました 読み返すと、印象的な事だけは思い出すのですが はやり半分以上は妙に新鮮に読み返せてしまいます 特に去年の9/21には全く覚えがなく 「珍しくリスを見た」と書いてあるのに何も記憶がありません 野生のリスを見たことは人生で3回くらいなので かなり印象的な出来事のはず・・・ その日の日記では次女と福知山方面へドライブしており 「萩寺はまだほとんど咲いていない」 「ウの群がV字で飛ぶのと併走した」とも書いてあります それらも思い出せないのです まだ1年もたっていないというのに・・・ どこで見たのかも全く思い出せないのです ああ~ヤバイな~ ボケが始まったのではと思うとマジで怖いので今夜も酒を飲もう! あれ?飲みかけだった一升瓶がほとんど無い・・・誰がのんだのだろう? 「あんた以外にだれがおるんやいな~」と妻にいわれてもピンとこず 「とうとうボケが入ったのと違うんか?病院にいくか?」と言われる始末 ああ~ヤバイな~ ああ~思い出せないといえば 10年ほど前にどこかの村を散策していたら 神社の脇の水路で5~6匹ほどのゲンゴロウが 元気に泳いでいるのを見かけたのです 虫が好きだった小学の頃でさえ捕まえたことはたった1度だけのはず ああ~これが子供の頃なら喜んだのにな~と思ったことがありました それからしばらく経ってからゲンゴロウは絶滅危惧種で 今ではほとんど見ることができないと知り 実物を子供にみせてやりたいと思うのですが どこで見たのかも全く思い出せないのです 10年ほど前にどこかの海岸線を散策していたら 岩の割れ目から10~15mmほどの水晶が ニョキニョキ生えているのを見かけたのです 水晶が好きだった小学の頃でさえ山へ幾度となく分け入りましたが 拾ったことはたった1度だけのはず ああ~これが子供の頃なら喜んだのにな~と思ったことがありました それからしばらく経ってから妻も娘もパワーストーンなどに 興味があると知り 実物を家族にみせてやりたいと思うのですが どこで見たのかも全く思い出せないのです 部屋を片付けていた妻が「この本ってダレが買ったんや?」と言いました 手にしていたのは記憶術の本でした・・・ まだ帯の付いた新書のようでしたが、全く思い出せないのです 記憶術の本を買っていることすら忘れている悲しい事態に お互いに本の所有権を譲り合いました アアコワ! 日記をつけても物忘れは加速する一方か・・・ 逆にすっかり忘れていることを日記で確認して落ち込んでしまいそうです ああ~なんとかならないものか なにか忘れないように工夫できないかと思っていると 6年生の運動会の前日のことを逆に思いだしたのです 子供の頃から忘れっぽかった私は クラスでも1~2を争っていたほど忘れ物の多い子供でした 注意力がほとんどなかったのでしょう 運動会の全体練習で、私だけハチマキを忘れて恥をかいたこともあり 本番で忘れては大変だと思って工夫しました あえて前日にはハチマキを持って帰らず、教室の机の中にしまっておいたのです さて寝る前に「明日の準備は終わったか?」と親に言われて持ち物を確認すると なんとハチマキがありません! 家中をくまなく探しましたがそれだけが見つからないのです ああ~あれほど八チマキを忘れ無いようにと思っていたのにどういうことでしょう! いくら考えても、どこで見たのかも全く思い出せないのです 途方にくれて親に相談すると猛烈に叱られましたが もう夜遅かったというのにミシンを踏んでハチマキを作ってくれたのです それにはとても感謝をしたし 忙しい親に迷惑をかけて本当に申し訳ないと思った 翌日、教室の机の中にハチマキを見つけて全てを思い出した私は 自分が思っている以上の猛烈なバカであることに初めて気が付いた 忘れてはダメと思って工夫したことを忘れてはダメなのですね・・・ でも、夜なべでハチマキを作ってもらった事だけは一生忘れません 第226話 泣ける話 6月1日 「パパはウチらの結婚式で泣くかな?」と聞かれたママが 「パパは多分泣くと思うで~」と答えると 「うっそ~あんなオッサンが泣くわけないやろ~」「ないな~」「ありえん~」 娘達の反応がショックで隣の部屋でシクシク泣いている今日この頃です 飲み会でそんな話をしていたら最年長でひょうひょうとしたH先輩が 娘の結婚式では飲みすぎてしまい不覚にも号泣してしまったと聞き みんなでヤイヤイ突っ込みながら酒がすすみ それぞれの涙腺がゆるくなった話題になりました Bさんはテレビで見た高校のブラスバンド部の活動の裏側に号泣したといい かといってブラスバンド部だったわけでもなく、音楽にあまり興味がないので なんで共感して泣けるのかが自分でも分からないと言っていました J君は草野球の慰労会でGReeeeNの「キセキ」をカラオケで熱唱中に いきなり泣けてきて歌が中断してしまったといい U君はフェイスブックで同級生の飼い犬が死んだことを知り あったこともない犬なのに、元気な頃の画像を見て涙が止まらなかったといい T君は息子の運動会を見に行くと5年生の組体操が懐かしくて 1年生の保護者なのに高学年の演技で泣けたといい M君はドラエもんの「のび太のおばあちゃん」が出てくる話に泣かされたといい C君は息子が妻にガミガミ叱られて泣いているのはなぜか泣けるといい Nさんは手塚治虫の短編「雨降り小僧」だけは読むたびに泣けるといい Kさんは10数年前に子供と見た劇場版の「クレヨンしんちゃん」に 軽く笑うつもりがびっくりするくらい泣かされてしまい困ったといい Hさんは久しぶりにネットで見た「まんが日本むかし話」の 「あとかくしの雪」の回が昔の記憶もよみがえってかなりヤバかったといい G君はサザエさんのエンディングでログハウスに駆け込む一家の姿に なぜか毎週泣かされてしまうといいました みなさんいろんな涙のツボがあるものですな 私も幼稚園の頃に母から浜田広介の「ひろすけ童話」を泣きながら 読み聞かせてもらってかなりヤバかったのを思いだしました (敬称略) 幼稚園と言えば、娘が4~5歳の頃に私の大好きな実相寺監督作品である ウルトラマン第35話「怪獣墓場」の話を一緒に見ていたら 「あのホネカイジュウがかわいそうすぎる~」と泣き出したので 酔っ払っていた私は急に共感のスイッチが入り もらい泣きしたことがありました もう10年も昔のことですな~ さて、中学で体育系のクラブに入った娘の試合を見に行きました 会場にいた100人くらいの中学生から我が子を見つけるのに まさか10分以上かかるとは思いませんでした 老眼のおかげで比較的遠くはよく見えるのに はじめてみるユニフォーム姿に見分けがつきません 以前なら運動会でも3分とかからず娘を発見できたのに とりあえず一人づつ消去して残った子が娘だと思って注目しても 家でいつもダラダラ、ゴロゴロしているイメージとまるで違うのです 髪を束ねて、ふつうにがんばっている姿に、熱中症にならないかな? 水分補給は大丈夫か?と思いながら しばらく練習風景をぼ~っとながめておりました すると額の汗をぬぐっている娘に何故か涙が出てきました 悲しいわけでも、情けないわけでもなのに自分でもワケが分かりません 活躍しているとか逆境に立ち向かっているわけでもなくて 試合前に軽く練習しているだけなのです 感動している自覚は全くないのにそれでも涙がでてきました しかも止まらないのです なんなのでしょう? 私も年でしょうか・・・ どんなスイッチが入ったのか、どこがツボなのか 自分で分からないので困ります 仕事の都合で試合は見ることができず20分ほど練習風景を見ただけでしたが もう充分でした あとで冷静になって考えると、見慣れないユニホームをきっかけに 親でも見分けがつかないほど成長していた姿に驚くことで 泣きのスイッチが入ったみたいです こうなると娘のウエディングドレス姿に父親が泣くのは どうか幸せになって欲しいと、感極まる・・・とか 娘を連れ去られたと感じ、淋しくて・・・とか 今までの苦労を思い出して・・・というよりも ドレス姿の娘が自分の今までのイメージとすっかり違ってしまっていることで そのギャップで泣けるのではないのか?と思えてきました 私の場合はそうだと思います ずいぶん気が早いことですが、もう娘の結婚式で 泣かない自信はなくなりました 末席で酒を早めにあおって水分補給をするとしましょう 第226話 ロマンチックな夜光虫 5月16日 酒とツマミを買った帰りの散歩道で静かな海と夜空の美しさに 風流な私は足が止まって星を仰いでいました おりしも流れ星が一条現れすぐ消えたので、なんだか嬉しくなり レジ袋からカップ酒を取り出してグビリと飲んで しばらく港の夜景を眺めて休憩をしました 気が付けば足元の波打ち際がうっすらと光っています 小石を投げると思ったとおり青い光の輪が広がりました 夜光虫の光です! これは家族にも見せなければと家路を急ぎ再び海岸に戻ると 最初はまあまあ妙味があったものの・・・ 長女は夜光虫よりも海岸にいる妙な海の生物が気になりライトで照らすし 次女とママはちょっと肌寒いとかですぐに車へと戻ってしまいました・・・ 三女だけは初めて見るようで、棒で熱心に水面をつついては 「むっちゃ光る~」と喜んでいました この青い光は宇宙的で、なんともロマンチックなのです がしか~し、そのロマンチックな夜光虫で私がまず思い出すのは 20代の前半にタヌキを車ではねたことなのです あわてて戻って、息をしていないタヌキに詫びてレジ袋へ入れました どこかへ埋めてやろうかと探しましたが、あいにく海沿いの住宅地だったので 掘れそうな地面もないしスコップも持っていないので、海に流すことにしました 暗い波止場で恐ろしく静かな水面にタヌキをそっと放すと なんと!タヌキが輝きだして青い波紋が広がったのです! 思わず声が出るほど驚きました・・・・ そして薄く光り続けるタヌキがゆっくりと沈んで見えなくなったので あたかもタヌキの魂が抜けていくかのような光り方に、こちらの腰も抜けました 落ち着いて考えれば、たまたま水面を漂っていた夜光虫が驚いて光っただけなのに 状況が状況だけに霊的な現象に見えてしまったのです 風も波もなく月明かりさえもない、いわゆる「ベタ凪」の夜に このお茶目なプランクトンはよく光ります 特に大発生する時期には見事ですし 昼間は水面がピンク色に染まるのでよく分かります さて、隣町の小さな入り江の小さな島には小さな橋が架かっており 橋から石を投げれば光る波紋が直下で丸く光って美しいので その近所に住んでいるオバサンは昼に海面がピンクだと 夜のサンポには途中で石を拾って夜光虫の光を楽しむと言っていました さて昨年の夏のことオバサンがいつものように橋まで来ると 近くに県外ナンバーの車が停っており 若いカップルが橋にもたれて愛を語りあっていたのです オバサンは夜光虫でムードを盛り上げてやろうと気さくに声をかけると 二人は水面が光るなんて聞いたこともないというので サービス精神に火がついたオバサンは持っていた石を数個手渡し 「これを一緒に投げるんやで~、むっちゃきれいだから」と促したのです よく事情の分からない二人が戸惑うのをよそに 「ほれっ、イチ、ニーのサ~ン!」とカウントダウンをはじめて投げ入れると 夢のような青い光の輪が三連で広がり幻想的な光景に 二人の愛は深まること間違いなし ・・・のはずが何も光らなかったのです その夜の潮の流れはかなり早かったようで 夕方までピンク色に見えるほど入り江にたまっていた夜光虫の群れは すでに流されており、オバサンは普通に真っ黒な水面をのぞき込んだまま しばらく絶句したそうです このままでは汚い石をにぎらせてデートのジャマをしたオバサンになるので 二人に夜光虫の素晴らしさを熱く語ってみたものの 徐々にお呼びでない感じとなり、蒸し暑い夏の夜なのに冷や汗をかいた・・・と聞き 私も夜光虫で寒さを感じる話を思い出しました そう、沖縄旅行です 夕方に町外れのさみしい感じの民宿へ到着して夕飯のあとオリオンビールを飲み いい気持で防波堤に座っていると「これから泳ごうか?」と仲間が悪ノリをして みんな水着に着替えたのです まだ充分あったかくて私も面白そうだと思っていました 月の出てない海は静かで、平泳ぎをすると夜光虫が光り 特に指の間から小さな光の粒がこぼれだす光景はてとても幻想的で 50mくらい泳いで戻るはずが、なかなか味わえないステキなことだからと 100mほども泳いで「沖縄最高!夜も楽しいぞ~!夜光虫でキラキラじゃ~♪」 とふざけておりましたら、ブオオオオオオオンとうなって頭上を何かが横切りました よく見るときれいな星空を黒く切り取るように、皿のようなレーダーを乗せた 米軍の偵察機がライトもつけずに飛んでおり、とても不気味に思えました さて、もう引き返そうかと振り返ると、なんと泳ぎ始めた岸が見えなかったのです 村の明かりも高い防波堤でさえぎられて見えず、陸はただの闇でした 降りそうな星空でしたがそれ以外は真っ黒で なんだか宙に浮いているような感覚は恐ろしく 帰る目印もない状態に、実は流されているかもしれないと絶望を感じました 仲間とお互いに声を掛け合いながら気を確かに持ち シンクロナイズドスイミングのような要領で一人を水面から高く持ち上げ 陸の方向を確認して、なんとか泳いで戻ることができました・・・ 夜の海はたった100mほど沖に出ただけで命取りになるのかと深く反省させられました しかも翌朝、防波堤から透明度の高い美しい海をのぞくと これまた美しいストライプが見事なゼブラ模様のウミヘビが何匹も泳いでおり 民宿のオヤジさんから 「にいちゃんたち~ここで泳いじゃだめさ~、ウミヘビにかまれたら死ぬよ~」 と聞いた時には夏の沖縄なのに寒気がしました 第225話 犬の話 5月2日 その1~ 中古屋でバウリンガルを見つけました 10年ほど前に流行った、犬の気持ちが分かるおもちゃ?というか 犬語の翻訳装置です 当時は15000円ほどしていたはずが980円だったので これは安いと衝動買いをしました 犬の首輪にライターより少し大きなマイク兼送信機を取り付け 受信機で犬種を「ミニチュアダックス」に設定して 期待しつつ愛犬マコを家族で囲んで待っていましたが こういうときにかぎってマコは吠えません なんだか不思議そうに固まっています ようやく5分たってから「バウッ」と小さく吠えたのでモニターをのぞき込むと 『ワタシハ、ナニヲスレバイイノ?』と表示されました なんですと? たしかにいい感じに翻訳されています 次はどんなことを言うものかと期待していましたがマコは吠えてくれません 10分以上もイライラして待っていると「バウッ」と吠えました モニターにはしばらくして『イライラスル~!』と表示されました 犬なりにストレスを感じていたのでしょう 留守番させるときには「サビシイナ」 遊び足らないときには「アソンデ~アソンデ~」と翻訳されるので バウリンガルはなかなかの精度だといわざるをえません 今度は何を聞いてみようかな? ~その2 おとなしい犬を見ました 隣町の山間の村のお宅へギフトの配達に行った時の話です チャイムがみあたらないので戸をあけて声をかけるのですが返事はありません 土間へ入って「すみませ~ん」と呼ぶと奥から返事があり ちょっと耳の悪いおばあさんがゆっくり出てきました 私が商品を手渡したその瞬間、何かが私のふくらはぎにサワサワと触れたので 何気に振り返ると、そこには犬がいきなりいたのです 驚いた私は腰を抜かしそうになりました いったいどこからわいて出たのか! 全く犬の気配がなかったので気づきませんでした 「大丈夫ですよ~大人しい犬なんで・・・」と言われてよく見ると 動きが驚くほどゆっくりで、なんだかさびしそうでした なんでこんなにおとなしいのかをついおばあさんに聞くと あえて吠えないように手術してあるというのです なんですと? 都会で暮らす息子夫婦がペット禁止のアパートでも飼えるように 声帯を取っていたにもかかわらず、大家さんにバレてしまったので 引越しするまでという条件でおばあさんは犬を預かったが すぐには引っ越せないまま夫婦には赤ちゃんができたので もう犬はいらないと引取りにも来ないし、吠えることができないので 番犬にはならない・・・かといって手術しても治らない しかもおばあさんは動物がキライなので困っているとのこと こんな八方ふさがりな話を聞いた後では かすかな呼吸音でピスピスと私に甘えてくる犬の顔はさらに悲しそうです この犬は何を思っているのだろう? 吠えることができないのではバウリンガルでも翻訳できません その3~ カニンヘンはカンニンして 我が家の末娘たる「涙目の萬鼓~なみだめのマコ」は 「ミニチュアダックスにしては小さいね~」と何度か言われたことがありました 小さいからミニチュアなのに妙だなと思っていましたが あえて気には留めませんでした 先日マコをサンポさせていたら、こちらに見知らぬ美女が近づいてきて 「わ~かわいいですね~」と言ったのです 私のかわいらしさに気づくとは美しいだけではなく趣味のいい女性だなと立ち止まると なぜか美人はしゃがんでマコをなでながら とんでもなくカワイイ笑顔で私を見上げて言うのには 「あれ?もしかしてカ●●●ンなんですか~?」 なんですと? 普通ならば「オスですかメスですか?」「何歳です?」「いつから飼ってるの?」 というゆるい質問が来るはずなのに、いきなり聞きなれない謎の言葉で 私は話が見えなくなってしまったのです ちなみに「ダックスフンド」の小型種である「ミニチュア・ダックス」よりも さらに小さい種類こそが「カニンヘン・ダックス」だと分かったのは それから10日以上もたってからでした とりあえずよく聞こえなかったフリで聞き返せば 美人はまた「カ●●ヘン?」と言いました しかし私の恥ずかしい耳にはなぜか 「カンジヘン?」と聞こえてしまったので大変です 私の脳内翻訳器では 『若くてきれいな私の熱い視線にアナタは何も感じないのですか?』 という意味だと変換できてしまい ハイと答えれば相手に魅力を感じませんという意味になるものか 犬が取り持つ突然のロマンスなら、どうこたえればいいのかを一瞬悩みました 念のため「えっ、なんですって?」とさらに聞き返すと、美人は 「カニン●ンじゃないんですか?」と答えたのですが、私のおめでたい耳には 「カニンゲンじゃないんですか?」と聞こえてしまい、蚊のような人間という意味なら 『あなたは私の血を吸いたいんでしょ?そういう人間に見えますよ』 と翻訳してしまいました ハイと答えれば白昼堂々血を吸ってよいのかと驚きつつ、念には念を入れて今一度 「すみません、どうもよく聞こえなくて~」と言うと 美人は不思議そうに犬の鼻から尻尾までの長さを手で計るようなしぐさで 「このコはカニン●ンだからこんなに小さいんですよね?」と言うのですが 私のふざけた耳には「このコはカニンケンだからこんなに小さいんですよね?」 と聞こえてしまうのです・・・カニンケン?ケンとは犬のことだったのか! 蚊人犬? 家妊犬? 火忍犬? 過認犬? 香仁犬? とにかく知らないことには答えようがないので聞き返しました 「そのカニンケンという種類を私は初めて聞くのですが・・・」と言う私に美人は 「じゃくてヘンですよ」というではありませんか! ヘンですよって!・・・失礼だな~! ひょっとして私はおちょくられているのでしょうか? しかし初対面で変人呼ばわりされるとはいくら美人でもちょっと困ります もうどうしたらいいのか言葉が出てきません 美人は不思議そうに私を見つめながら立ち上がると 足元のマコだけにかわいらしくバイバイをしてツカツカと離れていき 私はキツネにつままれたように、しばらく立ち尽くしてしまいました あの美人は私のことをかなり耳の遠いイケメンと思ったのでしょうか? もしかしてコミュニケーション能力ゼロのアホだと誤解しているのかもしれません ああ~気になるな~ そういうときこそバウリンガルの出番です! 「マコよ~教えてくれるか~あの美人はワシのことをどう思ったんかな?」 すると珍しく「ワン」と即答した賢い愛犬は女心の真実をしっかり伝えてくれました 翻訳されたモニターには『アソンデ~アソンデ~』の文字 なるほど謎が解けてスッキリしました 美人は私と遊びたかっただけだったのですね! 第224話 猫の話 4月8日 山奥に住むDさんのお宅へ配達に行くと奥から小さなネコが出てきて Dさんと私をスルーして、おじいさんに「ニー、ニー」とないたのです 「ウンウンそうか分かったからな、ちょっとまっとれ、今はお客さんやから」 とおじいさんが言うとネコは言われたとおりそのまま奥に引っ込みました おじいさんは何が分かったのかが気になって聞いてみると 「あれは『床下に動物が入り込んだよ』と言いに来たのです」 というではありませんか 「なんで分かるんです?」と尋ねるとおじいさんは 「動物の気配でしょうね、ネコはワシとちがって耳がいいから」と答えました 私はなんでおじいさんがネコの言葉を理解できるのかを聞きたかったのですが おじいさんはやはり耳が遠いらしく聞き直しても 「アナグマかタヌキか・・・そういう動物です」と言うと ネコの言う床下の点検を始めました 私は気になったのでDさんにネコとしゃべれるものかを聞くと D「私はムリですがオヤジはしゃべれるし、ネコもいう事を聞くんです」 私「そうなんですか・・・すごいですね~」 D「こないだもネコが『集会をしてもいいか?』と聞いたらしいんです」 私「え?」 D「それでオヤジが許可したら、家の中で何度か集会をしていたんです」 私「ボクもネコの集会は見たことがありますけど、屋内ですか・・・」 D「たくさんのネコが知らない間に家に入っていて、不気味でしたよ」 私「そうとうにぎやかなんですか?」 D「それが全然ニャーとか鳴かなくて静かなんです」 私「へ~」 D「でもね、オヤジだけはネコがあつまるとうるさいと言うんです」 私「ゴソゴソと物音が気になるんですかね」 D「いえいえ、それが物音一つしないのがまた不気味なんですよ」 私「なんだか妙ですね、お父さんはちょと聞こえにくそうに見えたのですが」 D「そう、でもねオヤジが『うるさいな~』と言うときは集会をしているんです」 私「いまでも集会があるんですか」 D「いいえ、オヤジがネコに『うるさいからよそへ行ってくれ』と叱ったんです」 私「それから集まらなくなったと」 D「はい、集会もなくなりましたがウチのネコもよそへ行ってしまったんです」 私「へ~言葉が分かるんですかね、でもすぐ帰ってきたんですよね」 D「それが半月ほどしてオヤジが『戻ってこい~』て呼んだら帰ってきました」 私「へ~、不思議な話ですね」 D「そんなことがよくあるのでオヤジはネコとしゃべれるのかなと」 そのネコはまだほんの子猫のように見えましたが実はかなりのおばあさんで いつのまにか住み着いて10年以上は飼っているとのことでした 10才オーバーのネコか~10年も飼えばネコと飼い主は 心のコミュニケーションが取れるようになるのでしょうか? 以前ウチにもネコがおりました しかし私には2匹とも何を考えているのか分かりませんでした ミースケがやってきたのはもう20年も昔のことだったのかと思い出します 初代のキジネコのミースケは屋根裏で生まれた野良猫の子で 壁の向こうの隙間に落ちてしまいミーミーないていたのです それが日に日に鳴き声が小さくなるので心配になり 壁を破って救出したものの親は迎えに来ないため そのまま2年ほど飼う事になったのです このネコはいわゆるアンマ猫で、暇なときにはクッションをもみまくっていました 父が帰ってくるとわざわざ迎えに出たり 母のソデをひっぱってゴロゴロうなって暗いところへ連れて行こうとしたり 両親にはなついていました そういえば妙な鳴き方をしたことがありました 夕飯時にウナギの蒲焼が欲しいと騒ぐので頭の部分を与えてみると かなり喜んだミースケはうっかり人間の言葉をしゃべったのです 「ウマイな~これは、これはウマイな~」と、はっきり聞こえ 「お前はしゃべることができたのか!」と驚きました ある日、外へ出てそのまま行方不明になり 家族であたりを探しましたが見つかりませんでした しかし2週間後にすっかり痩せて戻ってきて喜んだのもつかの間 その後も外へ出かけるようになり、もう帰ってきません 「ペット・ロスト」は悲しいので、もう飼わないでおこうと思っていても 1年と開けずに次の子ネコがやってきました 二代目のミースケはトラネコでした 同じオスでもこちらは気性が激しく、家の中を暴れ周り 叱るとフライングボディーアタックを仕掛けてきたり 当時まだ高校生だった妹を待ち伏せして襲ったり 私の腕に爪を立ててしがみつくと血が出るほど噛み付く凶暴なネコでした ところが赤ちゃんだった長女には噛み付くことはなく ヒゲや耳を引っ張られてもおとなしくしていたのは不思議でした ヤツはとても凶暴でしたが優秀なハンターでもありました 夏の夜に外でギーギーと音が聞こえ、ソレがだんだん近づいて 家に入ってくるので、てっきり寝ぼけたセミが飛んできたのかと思っていたら なんとミースケが生け捕りにした戦果を見せにきてくれていたのです しかし口にくわえていたのはセミではなく悲鳴を上げているコウモリでした ネズミはよく捕ってきていましたがコウモリには驚きました 翼は穴が開けられていましたがまだ飛べそうでしたし、かわいそうなので 取り上げて逃がすと、大事な獲物を横取りされて怒ったミースケはネコなのに 「ううう~っワンッワンッ!」と犬のように吠えたのにはさらに驚きでした パソコンのモニター前で寝転がったり、キーボードを踏んで 仕事のジャマをしてくれたのが今となっては懐かしいです・・・ 先代と同様、外へよく出ていたので5歳の頃に事故でお別れになりました この春に高校へ入学した長女がまだ3歳のときでした 当時は保母さんからペチャンコになって戻ってきたミースケの話を 保育園のオヤツの時に長女がしみじみと語ってくれたと聞きました お客さんのお宅で商品説明中に隣の部屋から 「オオ、オオ~イッ」と呼ぶ声がしました ご主人のFさんは私に「気にしないでください」と言いましたが こんどはドアをドンドン叩いて「オオ~イ」と呼ぶのです 私「あの~どなたか呼んでるみたいですよ」 F「気にしないでください、あれはネコですから」 私「え?でも、お年寄りの方の声に聞こえましたけど?」 F「たしかに年寄りですがネコなんですよ」 私「でも、はっきりと『オオ~イ』って・・・あれはおじいさんの声でしたよ」 F「おじいさんの声に聞こえますか・・・確かにオスですけど」 私「すみません、そのネコみせてもらっていいですか?」 F「はい、ネコもお客さんが気になるようで、タツミヤさんが嫌いじゃなければ」 私「じつは動物が好きなんです、おねがいします」 ご主人がドアを開けるとゆっくりとネコが入ってきました 尻尾を立てて目を怪しく光らせた足の長い大きな猫だと想像していたのに 足も首も尻尾も短くペッタンコで毛並みはボサボサの小さなネコでした 白黒なのに黒の部分に白髪がかなり混ざったグレーのブチ模様で 目は笑ったように半分閉じたまま目ヤニで固まっており、両頬がニャロメみたいに プクっと膨らんいる顔がとてもユニークな疲れた感じのお爺さんネコでした 私「いったい何歳なんですか?」 F「そうですね~ボクが高校の3年で拾ったから・・・20才は超えています」 私「20年!うわ~めちゃめちゃ長生きですね~」 F「みなさんそういいますが、私はこのネコしか知らないんで普通かなと・・・」 ネコは私に一度だけゆっくり擦り寄っただけでした そして「オオ~イ」とドアに向かってはっきりしゃべると ご主人にドアを開けてもらって戻っていきました F「もう、気が済んだようです」 私「たしかに『オオ~イ』ってしゃべってましたね~」 F「催促するときだけですよ」 私「しかし20歳を超えるともはやネコじゃない別の生き物のようですね」 F「そうですかね・・・もう年寄りなんで外にパトロールに行かなくなったし」 私「じゃあずっとコタツで丸く」 F「そうです、昔は私ともケンカしましたけど、今はそんな元気はないですね」 私「しゃべる以外に何か特技とか」 F「・・・何もないです」 私「これは喜ぶとかあります?ネコじゃらしや、ネコ用の缶詰とかネズミとか」 F「喜ぶ・・・さて、もう喜ぶことも、怒ることもないですね」 私「大好物をあげると『ウマイナ~』とウチのネコは言いましたけど」 F「そうだ、鯛が大好きです・・・そうそう、去年ここで宴会をしたんです お客さんに鯛の御頭付きのお膳が出たのをネコは欲しがってね 『オオ~イ』と鳴けばお客さんからちょっと分けてもらえたので まるで子猫みたいにお客さんの間を喜んで走り回っていました あいつの元気な姿を見たのはずいぶん久しぶりでしたね~」 私「へ~鯛ですか、ネコもおいしい魚は分かるんですね」 いや~20才オーバーとはすごい! こんな長生きのネコにはなかなかお目にかかれませんな~ ああ・・・もしも行方不明の初代ミースケが生きていればちょうど20歳か 明日にでも「オオ~イ!」としゃべるように鳴いて戻ってこないかな 鯛も鰻も両方用意しておくから 第223話 動物つながりの別れ話 3月9日 飲み会で動物の話になりました 先輩の家の床下にアナグマかと思っていたらハクビシンが入っていたとか 線路脇の水路に巨大ネズミのヌートリアが走り回っているとか 後輩が浜できれいなジャンプをしているイルカを2頭みたとか すると無口な同級生のG君が動物の話で思い出すのは・・・と言って 彼女との十数年前の別れ話を語ってくれたのです 暗い公園のベンチでなかなか別れを切り出せないでいた時に どこからか大きな黒猫がやってきて彼女のひざに乗ってきたというのです 彼女はネコ好きだったので嬉しそうになでていると ネコが「ナーゴ」と鳴いたのをきっかけにしてG君は「別れよう」と言うと 気まずい沈黙が続き、なでられていたネコが彼女に 「ナ~ゴ」ともう一声鳴いたら 「そうか~あなたとあうことは・・・もうないのね」と ネコだけに向かって返事をして、そっと足元に降ろすと 彼女もネコと同じく静かに闇に消えて、もうあうことはなかった・・・ 普段はおとなしいが表裏があり、大きなネコをかぶっていた女の子だったな~ と思い出すG君は黒猫を見ると元カノとの別れを思い出してしまうとのこと すると、その話を聞いたU君が「オレもあるある~」と言って 鳥が好きだった元カノの話をしてくれました 20代前半に同棲していたその彼女は おとなしくて細くて色白で無表情な美人で よく公園でハトにえさをやったり落ちていたツバメを拾ってきたそうです ある日、U君が部屋に戻ると彼女はいなくて かわりにいたのは真っ白いツルのような、とても大きくてキレイな鳥で 剥製かと思うほどおとなしかったそうですが、なんだか恐いため 彼女がまた拾ってきたのだろう、と深く考えず 部屋はそのままにしてパチンコへ行き2時間ほどで戻ると すでに鳥はいなくなっており 彼女にその話をしても全く知らないと言われた あの鳥はどこから入って来たのか、どこへ行ったのかもよく分からない その直後に彼女とはあっけなく別れることとなり 部屋を忽然と出て行ってしまったので 鶴の恩返しみたいに彼女の正体が鳥だった・・・ などと本気で考えたりはしないが、あの鳥を河原でみかけると 元カノとの急な別れを思い出してしまうな~とのこと ちなみにツルみたいなその鳥はU君の話を聞くとダイサギではないかと思います 黙ってその話を聞いていたK先輩が 「元カノね~・・・それならオレはヘビを見ると気分が悪くなる」 と言い出したので「ヘビ見て気分が悪いって普通ですやん、つながります?」 「相手はヘビ女だったんですか?」などとヤイヤイつっこみましたが 「コラコラ、まだ早い!最後まで聞け~!高校の頃の話なんや~」 といって元カノとの別れとヘビにちなんだ話しを聞かせてくれました デートで公園を散歩をしていたら 彼女がKさんの腕をかなり強く握ったまま固まって立ちすくんでしまい 顔は一瞬で青ざめて、目が点になっていたとか 彼女はいつもニコニコしていて その日まで悪い部分が全く見つけられないほど ステキでかわいい彼女だったと言います Kさんもヘビは嫌いでしたが彼女の手前、強がって前方のヘビをにらむと ヘビはあっけなくスルスルとどこかへ退散ました しかし彼女に、もう大丈夫だよと言ってもずっと凍り付いたままで そのあとは口数も減り会話もかみ合わず、食欲もないというので 楽しいはずのデートがパーになってしまったらしいのです 後日「ヘビが弱点なんか?ヘビ年なのに~」とか冗談を言っても 「今日はヘビは出てこんから大丈夫やで」とか気休めを言っても とてもイヤそうな顔でKさんを見るようになってしまい Kさんもそのヘビがきっかけで彼女のかぶっていた大きなネコが見えてきたころに 彼女の方から別れ話を切り出されたというのです 「というわけでオレはキライなヘビがさらにキライになったわい!」 と話をまとめたKさんにU君は「そういうことってあるんですよね~」と言い 「・・・あのときヘビと遭遇しなかったら別かれてなかったのかな~?」 と懐かしむKさんにG君は無言で相槌を打ちましたが 空気を読まない私はつい本当のことを言ってしまいます 「別れたはずですよ、Kさんて爬虫類系というか、かなりのヘビ顔だから~」 マジ怒りのKさんが毒ヘビの様な視線で私をにらむと噛み付いてくれました 「オレは大キライなヘビ以上にお前がキライじゃあああああ!」 K先輩、すみませんでした ダレにでも弱点というか苦手なモノはあります 確かにヘビなら嫌がる人間の方が圧倒的に多いでしょうし 彼女はすでにヘビがトラウマになっており、さらに一度落ち込むと 気持ちの切り替えができにくい人だったのでしょう 自分が恐怖を感じるへビをなんとも思っていないフリのKさんより 「うひゃ~!ヘビや!むっちゃ恐い~」と言って一緒にビビッってくれて 共感のもてる彼氏のほうがよかったのではないかなとフォローもしました じつはこの話を聞いて、うちの娘達には ちょっとヘビを見たくらいで気分を悪くしたりしないように ふだんからヘビに免疫を持たせなければと思ってしまった極端な私は ウチの屋号である辰巳屋の巳はヘビなので 逆に喜ぶくらいでないといけないよ・・・と教育すると こういうことにだけには素直な娘達はヘビが好きになってしまい 今では手掴みできるほどに成長してしまったのです これでは逆に男子からヘビのように恐がられるかもしれません! 娘達よ~今からでも遅くないから、動物つながりで 「ネコを上手にかぶる」こともセットで覚えてくれよ~ 第222話 スマイル♪ 2月18日 娘達がすっかり大きくなってしまい、6畳の居間は狭く感じられます 早いもので長女は春から高校生です 実家で一緒にいられるうちに教えておくべきことはまだまだあるはず なのに大切な事はまだまだ伝えきれていないし・・・ もう高校卒業までのわずか3年ほどしか猶予がないとはどうしたものか どうしたものかと言えば4年生の三女も反抗期に突入しまして ついこないだまでくっついてきたはずの私に「パパはこっちを見るな!」とか 「このオッサンはウザすぎる!」とかカワイイことを言い出したのです それならばチューでもしてやろうかと近づくと それだけでキモイキモイと暴れます 次女と同じく私が触ったものまで汚いとか言って、もはやニコリともしません 長女、次女以上の急激な変化に驚きです しかし親に反抗するのは自我形成には欠かせないことで 特に三女には「大波が来るはずです!」とお世話になった先生から すでにアドバイスをいただいておりますから、あえてショックと思わず 近づきすぎず、かといって妙に離れず、悔やまず、腐らず おたがいにイライラし過ぎないように嵐の去る数年後を待つとしましょう 特にシラフのときは・・・ そうなると近くで暮らす3歳の甥っ子や1歳の姪っ子をかまうと やはりかわいいものですな、ニコニコしています 抱っこしてもいい感じの重みを感じます 幸せの重さかな ちょとしゃべれるようになってきた姪っ子は私に抱っこしてほしいと手を広げて 「ハイハイ」とアピールしてくれて、抱き上げればにっこり笑うと 私の頬にパシパシとビンタをしてくれます ちょっと痛いですが腹はたちません、笑顔は大事ですな 先週、保護者会で先生から子供をほめるのはもちろん大事だが ほめるときに使う言葉の意味よりも、笑顔や態度を重視したほうが 良いコミュニケーションが取れると聞きました 「お前は良くやった、努力が実ったことは実にすばらしい」と無表情で言うよりも にっこり笑って優しい口調で「エライネ~♪」という方が気持ちは 何倍も伝わるというのです・・・ そうだったのか 言葉の意味について深く考えるよりも態度なのか~ とにかく笑顔は大事ということでした そういえば、男前のN先輩から昔アドバイスを受けました 「とりあえず女の子にモテたかったらニコニコせなアカンど~」 私は「クールなボクはニコニコしなくても充分モテていますから大丈夫です」 と聞き流しましたが、今を思えば笑顔でのコミュニケーションは 私にはとても難しくて、やろうと思ってもなかなか普通にはできませんし 本当に大事だったのだと後悔をしています 子供達をほめるのも難しいのに、さらに笑顔付きとなると難易度が増します サワヤカな笑顔のNさんは確かに女の子とすぐに気持ちがツーツーで通じて 常にモテモテでしたし、Nさんと街角で出会っても素晴らしくサワヤカな笑顔で 「恐い顔しとるぞ矢野~!スマイルやっスマイルっ!」と励まし? をくれたものでした、今を思えばとてもありがたいことです 当時の私は笑顔の大事さよりも自分はあんなふうにはとても笑えないと サワヤカさのレベルの違いを思い知らされていました そう、逆にB先輩は私と同じく伏目がちでサワヤカさがひかえめです 無表情で内向的なため、実はワイルドで面白い人なのに とてもとっつきにくい第一印象でした そのB先輩から聞いた話では、夜のクラブで大社長が寒いダジャレを連発して 場をドンビキさせたときにうまく笑えない自分は「なんじゃそれ!」や 「オモロすぎます~」とも言えないまま金縛りにあって困るが そんなときによくできたホステスさんが間髪いれずに 「なにそれ!サム~」と言って笑うと なぜか何事もなかったように場が和んで全て丸くおさまるのを見て 笑顔って大事だな~と痛感したそうです Bさんはこれ以降は努力をして、営業では笑顔を作れるようになったのですが 家に帰ってネクタイをはずすともう笑えないとボヤいていました 私も小学生の頃はたしかによく笑う女子の方が好みでした しかし八方美人な性格がキライなためか、ダレにでもニコニコしている女性に それほど魅力を感じなくなってしまい むしろ普段あまり笑わない人をこちらが笑顔を使わずに笑わせることができたほうが より強いコミュニケーションが取れるのだとずっと錯覚していました 私はとんだ勘違い野郎です だから私は上手く笑えません とてもクールな妻もそんな私を非常にクールな人間だと錯覚していたようで 結婚後は私のことを 「冷たいけどクールじゃない・・・」と 微妙な表現してくれるので念のため確認すると 「クール」から「カッコイイ」をひいて「ひどい」を足せば 「冷たい」になるのだそうです ひどいな~、そういうセリフはせめて笑顔で言って欲しいものだと痛感しました 笑顔と言えば、孫を抱っこしているH先輩のことを娘さんのKちゃんが 私に笑顔で「このジイさんはダッコマシーン1号です、一番よく働きますよ~」 と言うのをこちらも笑顔で、そして言われたHさんもヘラヘラ笑っているのは 面白かったのですが、それ以上にこのおじいさんとそっくりな男の子に マシーンが吸い付いて「ジイジイ、イヤ~!」と拒絶されて喜んでいる姿は なんとも面白い絵でした ちなみに2号機以降の機体がどなたかはあえて聞きませんでした このKちゃんはひょうひょうとしたHさんに似ず 愛嬌があり、いつもニコニコしています 去年、病院で出会ったときにKちゃんは風邪をひいており笑顔ではなかったので 誰だかわからなかったほど常に笑顔の印象があるのです 本人は特に意識しているわけでもないようですが、これは才能だなと思えます とにかくリアクションが明るいので私でも特に話しかけやすい女の子で スマイリーでファニーフェイスなKちゃんはすぐに仲間と打ち解けることができ 彼氏に不自由したことは全くないと聞き まさに笑う門には福来たる~という見本だなと思いました ウチの娘達も見習ってほしいものです しかし後輩のC君はいつもニコニコしていますが彼には違和感を感じます 第一印象はとてもよかったのに3年も付き合うと何かの拍子に ハラがたってくるのです・・・しかも後からです 最初に気づいたのは電話でした 飲みに誘うと「いつです?」「どこの店です?」「ダレと一緒です?」と いろいろ聞いてくれますが、結局最後に 「でも、今月は金がないので行きません、おごってくれます?」と言ったりするのを いつも直接しゃべっているときに腹は立たないのですが 電話はいけませんな~、彼の得意な笑顔のコミュニケーションが取れませんので 通話中の微妙に失礼な部分が気にさわってしまうのです その逆で無愛想なBさんを電話で飲みに誘うと普段言わない「ありがとう」を 連発してくれますし、面と向かって話すよりも感じがいいのです なんなんでしょ? 違う相手につながったのかなと思ったほどなのです 私も電話の応対には気をつけようと思いました 話は変わりますが先日、急用ができた妹に代わって 幼稚園へ甥っ子のお迎えに初めて行きました 私が来ることを知らない甥は不思議そうにしており全く返事はしないものの イヤだとごねることもなく、おとなしく無言で手をつないで帰ったのです 途中で友人の奥さんと出会うと「ええっ!矢野さんとこ・・・4人目?」 と驚いたように聞かれてしまいました なんだかくすぐったいような気分で思わず笑ってしまいました 第201話で書きましたが、お迎えって幸せな気分です 甥っ子も昔の私のように両親の送り迎えより、たった1度迎えに行った人物を 意外とおぼえてくれていないかな?と期待しつつ二人でゆっくり帰りました 次のお迎えがあればニコニコしてもらえるようにもっと優しくしておこう さてさて、1つ年下のJ君が抱いている赤ちゃんが初孫だと聞き驚きました 21才のときの長女のEちゃんが22で子供を生んだのです ちなみにEちゃんはワイルドなJ君によく似ているのに笑顔がステキな美人です 先にお爺さんになった後輩は私がかつて見たことのないやさしい笑顔で 「おお~ヨシヨシ~かわいいの~♪」と言いつつワイルドに頬に吸い付きます なぜかその瞬間だけは後輩のことを年上のように錯覚してしまいました 抱っこさせてもらうと、こんなオッサンにもステキな笑顔を見せてくれます 私も早く爺さんになりたいと思える笑顔でした そうそう、長女を初めて抱っこしたときにあまりに軽くて驚いたのが もう15年も昔だったのかと思い出されます 明日からの私の生活がずいぶん変わるのだろうと かなり重たいイメージでこわごわ抱いたので、逆に軽くて戸惑ったのです とてもか弱い、守らねばと思う重さでした そうそうそう15年前というと出産前の妻が シートベルト検問で捕まったことがありました 妊婦という事で許してもらえるはずだ!と若い警官に訴えても 体をジロジロ見られて「本当に妊婦ですか?」と言われたのが 「普通の肥満でしょ?」と聞こえて腹が立ったものの そういうときにかぎって母子手帳は探しても出てこないし 「ハイハイ、わかりました、もういいです」と無表情で許してもらっても 「一体何がわかったんじゃ~!バカにするな~」と 夕飯を作りながら私に噛み付いたものでした 無表情というのは恨みを買うのでしょうか 私も気をつけないと・・・ 今を思えば昔は妻もとんがっていたのですな 酔っ払って深夜に帰宅したら、中学の娘がまだ寝ていなかったので 教育的指導のチューかお休みのチューのどちらをして欲しいのか問いつつ ワイルドに近づくと、いつものようにキモイとかウザイと言って 嫌な顔をすると思っていたら、珍しくニコニコと笑った次女から 「パパ~おねがいだから~死んで~♪」と言われてしまいました ショックというよりも、不思議とイヤな気はしませんでした やはり笑顔のコミュニケーションは大事ですな~ そのときの私は、いつの日か娘の子供にも同じように 「ジジイ~早く死んで~♪」と笑顔で言われてみたいので 逆にそれまでは死ねないな~と感じてしまっていたのでした しかしこれが10年前なら完全にキレていたところです 私も丸くなったものですな~ というわけで娘達よ笑おうではないか~ 「女は愛嬌」なのだ! ニコニコ笑顔はとてもとても大事だよ 最近髪を短くした妻が、ゆったりとした冬服を着込んで買い物から帰ると 笑いながら言うのには 久しぶりに出会った、娘の同級生のお母さんから 「ええっ!矢野さんとこ・・・4人目?」と驚いたように聞かれてしまった というのです・・・もうこれは笑うしかないと言いながら 笑顔で夕飯を作る姿に安心しました 今夜の料理も美味いはず あれから15年たって、妻もいろいろと丸くなったようです 第221話 何派? 2月1日 青年会の会議が始まる直前に後輩のC君がなんの説明もなく私に 「矢野さんってどっち派です?」と聞いたのです C君は基本的にノリがよくてニコニコしていますが気難しい男です こういうのって困ります 会長の案に乗るか反るかを聞いているのか? っていうか今日の議題って何? どの2択かを自分で考えて答えるのか? ワケが分からないけど・・・無視するのもなんだしな~ そうやって一瞬考えてしまうとC君は 「あれ、自分が何派なのかをまだ決めてないんですか?今さら考えてるなんて」 と言い出すので、どうせ冗談だろうと 「ワシは昔からカメハメ派や・・・」とテキトーに答えたら C君は一度うなずくと「たしかに・・・」と言って黙ったのです このままでは周りから私だけがアホだと思われてはたまらないので 「それでC君はどっち派や?」と聞いても 「ボクは別にどっちでもありませんから・・・」とツレないのです 居酒屋に行くとカウンターで友人と飲んでいたC君が私に気づいて 「こんばんわ~、矢野さんってどっち派でしたっけ?」と聞いたのです ビールか日本酒か洋酒の話なのかもしれませんが、めんどくさいので 軽く挨拶して「どうでもエエ派や」とテキトーに答えると 彼は再び「いやいや、矢野さん!マジでどっち派です?」としつこいのです ここで再び「カメハメ派」と答えても 「いつからそんなつまらん先輩になったんです?」とか言って さらにハードルを上げるのがわかっていますし かといってこちらが深く考えてしまっては 「答えが遅いんですけど・・・考える派?」とか言われても腹が立つので すみやかに「サッポロ一番なら塩ラーメン派や」と答えたら C君は一度うなずき「たしかに・・・」と言って となりの友人に「だろ?」とか言って笑っています なんなんだ? 「ほなC君はどっち派や?」と私が聞いても 「ボクは別にどっちでもありませんから・・・」とツレないのです 「ではワシは君を味噌ラーメン派だと決めてもよろしいか?」と言うと 「なんですか?も~ワケがわかりません」と不機嫌になるではありませんか ワケがわからないのはC君のほうだと思うのですが 相手に聞くだけで自分では答えないのはこちらにばかりリスクがあります めんどくさいな~ 新年会でC君がビンビール片手に注ぎに来てくれましたが またしても「矢野さんはどっち派でしたっけ?」と笑って聞くのです ビールの銘柄ではないのが顔を見て分かったので すみやかに、かつ華麗に「トランクス派や」と答えると C君は一度うなずき「たしかに・・・」と言って黙るのです 「では、君はどっちや?ブリーフ派か?」と聞きつつビールを注ぎ返しても 「ボクは別にどっちでもありませんから・・・」とツレないのです 「おいおい、ほなフンドシ派とか?」 「そんなワケないでしょ、変な派だと決め付けてもらっては困ります!」 「おや~?まさかの履かない派!」と聞いても 「矢野さんはボクの下着に興味があるなんて変態ですね、ワケがわかりません」 と言うではありませんか! 「ワケがわからんのはお前じゃ~っ!」 普段は先輩風を吹かせることのない私ですが 「そういうことはグラスのビールを飲み干してから言えっ!」と さらに2杯目もついで教育的指導をしてからワケを聞くと C君が「どっち派?」と問うのは最近のマイブームで 行く先々で聞いているようでした 飲み会だと「ワシは昔からサッポロ派や」とか「もちろんスーパードライ派」 「最近はハイボール派になった」などの答が多いと聞きました いきなりに何派かと聞かれても困惑してしまう人も多いが 中には面白い返しをする人もいて 「オレは昔からアクエリ派や」とか 「レトルトカレーはククレ派かな」 などと答えられると 「なるほど・・・」とC君は納得するらしいのです C君が言うにはいろんな派があるらしく 妙に詳しく教えてくれました 「ガラケー派」「右脳派」「スポーツは見る派」「インドア派」「武闘派」 「焼き芋の皮を食べない派」「ポロシャツをズボンに入れない派」 「卵焼に砂糖は入れない派」「コーヒーに砂糖を入れない派」 「カラアゲにレモンかけない派」「マニュアル・ミッション派」 「ポテチはコイケヤ派」「アメ玉は噛み砕いて食べる派」 「マーガリン派」「醤油派」「鮭茶漬け派」「肉まん派」 「洋画は字幕派」「牛丼に紅しょうが乗せない派」 「イチゴに練乳をかけない派」「タケノコの里派」 「男なのに洋式トイレに座って小便をする派」 「スノボ派」「うどん派」「おにぎりは俵型派」 「みかんの白いスジをとらずに食べる派」 「桜餅を巻いているハッパも食べる派」 「生卵をといてからご飯にかける派」 「カレーにジャガイモ入れない派」 「カレーはまぜてから食べる派」 「カレーにナスは入れない派」 「トマトジュースは無塩派」 「クーラーをつけない派」 「UFOを信じない派」 「腕時計をする派」 「コンタクト派」 「ペプシ派」 「パン派」 「犬派」 「ビギニ派」 「うつ伏せ寝派」 「フロントホック派」 「寝るとき靴下をはく派」 「寝るとき明かりを消さない派」 「勝負下着はセクシーよりキュート派」 しかしてC君は何派なのか? まるで興味はないものの一応聞いてみると 「そんなに聞きたいですか~しかたないな・・・」 などともったいをつけてから嬉しそうに 「ボクはネコ派のポカリ派のトイレットペーパーの端を三角に折る派なんです~」 しかも私のことは「カメハメ派でサッポロ一番なら塩派のトランクス派」になるらしく とにかくどうでもいい話に付き合わされた私は彼を 「メンドクサイ派」か「どうでもエエ派」のどちらかで簡単にまとめようとするとC君は 「めんどくさいとか、どうでもエエとかボクのこと本当に分かってますか?」 と機嫌が悪くなったので、これは多分本当のことだからとC君を・・・ 「寝るときにブラをしない派」に決めさせていただきました 第220話 刺身 2015年 1月12日 子育てには「食育」も大事なことだと聞いて フキやタラの芽、アケビやタケノコなど山菜を娘と摘みに行くことは 何度か試していましたが、ずっと海のそばに住んでいながら 子供の興味を魚介類に持たせるようなことはほとんどしていませんでした そんな折、休日の水曜日に知人が船で魚釣りに誘ってくれまして 釣りの趣味はない私ですが、一度は地元の海に船で出てみたかったので 3時間ほども乗せてもらい充分満足でした しかも嬉しいことに初心者の私でも貸してもらった竿で 20匹も20cmオーバーのマアジがつれたのです 最新の魚群探知機やポイントをはずさないGPSなどのハイテクはすごいですな~ 水曜の晩飯担当の私はせっかく新鮮な獲物なので刺身にしようと アジの三枚おろしや刺身のひき方、アジのタタキなどをネットで検索していたら なんと中学2年だった長女が「魚ならオレに任せてくれ」と言ってくれたのです どうせ娘に頼んでもみんな「イヤ」か「メンドクサイ~」と言うだろうし 最初からできないだろうと思い込んでいた私は耳を疑いました 耳を疑うといえば女子の一人称が「オレ」というのはいかがなものかと思いますが・・・ それはさておき、いつもはダラダラしていて全くやる気のない長女が 珍しく張り切っても逆に自分の手を切らないかと隣で心配してしまいます しかし長女は私のアドバイスは聞き流しつつ案外簡単そうにさばいたのです なんで? ママが熱心に指導したこともなく、刺身は造ったこともないはずなのに けっこうキレイに盛り付けるのです 聞けば小学校のとき「釣りクラブ」だったことと 調理実習でサワラを3枚におろして上手だとほめられたこと 6年のクラス行事でリンゴの皮を一番長くむくことができたことなどで なんとなく自分は包丁の使える人間だとの自信があったらしく それらの経験が2年経って娘の気持ちを良い方向に変化させたと考えられるのです 普段は料理の手伝いもロクにしない娘が私の釣った魚をさばいてくれる姿に驚き その刺身の美味さにはさらにさらに驚きです 妹達も「ウマイウマイ」「すごいな~」と食べつくしました 「刺身造りにストレスを感じるよりも逆にストレス発散になるかも?」 などと言う頼もしい長女にあまえて、それからは月に2匹は魚を買って帰ると 文句も言わず刺身にしてくれるようになりました ありがたいことです イシダイ、クロダイ、コブダイ、マトウダイ、スズキ、ヤガラ、ウスバハギ サバ、サンマ、トビウオ、ヒラメ、ホウボウ、シマガツオ、ツバス 地元の新鮮な魚をかわいい娘が捌いてくれてまずいわけがありましょうか? も~うまくてたまりません! 醤油とワサビが今までにない速さで減ってしまいます さらに自分でもやってみたくなった私も月に1回は 刺身を造るようになりました 自分で捌いた刺身で1杯やるのも幸せです ああ~海のそばに住んでいてよかったと、この年になって本気で思いました 出刃包丁を娘と買いに行くと喜んでくれましたし クリスマスプレゼントには皮も引きやすい刺身包丁が欲しいと言うほどで 「食育」について逆に長女から教わっているようでとても幸せです 先日、ツバスの成長したハマチが安かったので買うと 魚屋のオッサンが「刺し身にしとこうか?」と聞いてくれるので 「いや、ウチは娘が刺し身にしてくれるんで大丈夫です」というと驚かれました オッサンいわく、今は出刃包丁のない家が圧倒的に多いから 大きな魚は大人でもなかなか捌く機会がないし、臭いとか嫌がるし 子供の多くは切り身の状態でしか魚を見たことがなかったり イカには軟骨があるのを知らないお母さんがいて、イカの中から プラスチックが出てきたと、食の安全を訴えてくるほどだと聞きました 「最近の中学生でハマチを捌ける子はまずいないよ~娘さんすごいね~」 とほめられてすっかり嬉しくなった私は娘の成長を喜び 「ワシの娘はツバスやハマチを三枚におろして刺し身にするくらいは朝飯前です」 と自慢するためだけにウチで飲み会を開きたくなりました ハマチが成長したブリの刺し身盛りを成長した長女に造ってもらおうかな ああ~ブリしゃぶもいいな~、両方頼む~! そうだ、刺し身用に柳刃包丁と~手入れする砥石も両方買っちゃおう! 第219話 運転について 12月28日 私はダラダラとマイペースな運転をするのが好きなので 今でも月に一回は意味なく田舎道を選んでロングドライブに行きます 昨年、後輩のKY君を誘って遠出すると私の運転は下手だといわれてしまいました 失礼だな~ 「上手くはない」と訂正してほしいものです! それならと帰りは運転をKY君に代わると・・・ たしかに彼は上手いのです 全くストレスを感じさせませんから私も安心して助手席で・・・ 酒を飲むことができました 運転はスピード感やブレーキのタイミングとか車間距離とか 評価のポイントも人によって違いますからあまり気にしませんが KY君によると私の運転はメリハリがないようです 私にメリハリがないのは運転だけに限ったことではないので ・・・やっぱり気にしません、人それぞれです 人それぞれと言えば・・・ 普段は温和なKY君ですが他人の運転マナーに関しては妙に厳しくて 無茶な割り込みをされると同乗している家族がひくくらい車内で怒り狂うそうで 「何かんがえとるんじゃ~!」「運転免許とりあげたろかい!」などと叫んで クラクションをしつこく鳴らして追い散らすらしいのです そんなふうには見えないのですが、道路交通法を守らないヤツにたいして 自分でもよく分からないくらい腹が立ってしまい 若い女の子に説教して泣かせたことさえあると言うのです 相手がコワモテの兄さんでもお構いなしでモメてしまうので 夜でもキレイに録画できる最新鋭のドライブレコーダーを 前後に取り付けているそうです 証拠の動画が残っているので強気で文句を言う事ができるとか 文句と言えば・・・ 久しぶりに文句を言いたくなることがありました 国道へ右折するのに交差点が点滅信号のため 車が途切れるのを待っていると後のトラックが私の左に移動しました てっきり直進か左折と思っていると、なんと右にウインカーを出したのです トラックの大きな黄色の点滅が私を横から照らしてうっとおしいばかりか ずいぶん前に乗り出すのでこちらが左方向の安全確認ができないのです 私は動くことができなくなってしまいました 黒煙をまきちらして右折するトラックの運転手が若い女性だったのにも驚き 温和なKY君のキレる気持ちがちょっと分かり ドライブレコーダーを取り付けようかと思いましたが せっかく録画しても、直接文句を言うような元気はもともとありませんし 私が事故に巻き込まれて死んでしまうようなことがあれば その一部始終が映っていたら、逆にイヤかな?とも考えてしまい まだ購入にはいたりません 事故でといえば・・・ 後輩のT君が運転中に3回もオバケを見たと言いました 「足があったか?」と聞くと 「逆に足だけでした・・・」と答えたのです それは目の錯覚で、夜に黒い上着を着た白いズボンの人が飛び出してくると ヘッドライトの光軸の加減でそんなふうに見えるのだよと教えてあげるのですが T君はそんなことは分かっており、注意深く見てもやはり上半身はなくて 背景が透けて見えるしクツも見えなかったとゆずりません しかもそんなモノが見えるようになったのは 知人の事故死からここ1ヶ月だと言うではありませんか! そういうことは先に言ってよね~ しかも不思議な事はまだまだあるというので、ちょっと恐い話で盛り上がりました T君の車にこそドライブレコーダーをつけて欲しいものです 恐いといえば・・・ 信号待ちでバックミラーを見ると後の軽トラックに運転手がいませんでした しかも青信号でそのまま発信して後からついてくるのです オバケか? 何度確認しても運転手はいません コワ~マジでオバケ? まだ午前中だと言うのに、なんなのだ! 恐怖を感じた私は安全な路肩に車を停めて先に後続を行かせて すれ違う瞬間横から見ると 農作業用なのか日焼け予防なのか、黒いムギワラ帽子に黒いマスク 黒い手袋にサングラスをかけた小柄な人が運転していました・・・ 真っ黒はやはり見えないのですな~ しかし、ほっとしました そういえば、とても小柄な奥さんから 自分が車高の高い車を運転していると 知人の乗る車高の低い対向車からは顔が見えないことがあり 無人だ!と驚かれてしまう話を思い出しました たしかに運転手が見えないのには驚かされます 運転手が見えないと言えば・・・ 幼馴染のU君の車とすれ違う時に 手を振るくらいはいつもしていたのですが 去年から彼が私の車に向け手を十字に組んで スペシウム光線を放ったり、投げキッスをするようになり ちょっと面倒くさいながらも、それに付き合っていたら 先日、海岸線の直線道路で向こうからU君の車が見えたので 何かしてくるにちがいないと思い、先にチョキを両手で出して とりあえずバルタン星人のフリをしていたところ ゆっくりやってきた車にはU君が乗っていなかったのです というか運転席に誰もいなかったので驚きました 速度を落してすれ違う瞬間によく見ると 助手席のほうへ体を曲げて低い姿勢で運転していたのです わざわざ隠れて私をおどろかせるとは・・・そこまでやるのかと絶句しました 後日、U君と直線ですれ違うときに私もハンドルを直進で確実に固定してから 助手席側に体を隠してすれ違いました ところが飲み会でU君が私のことを 「こいつはムチャックチャや~そこまでして笑わせたいんか?」と言ったのです 確かにそうかもしれませんがそっちから仕掛けてきたことなので反論すると そんなことは知らないというのです・・・ よくよく思い出してもらうと どうやらU君は隠れていたわけではなく助手席の足元に携帯を落して それを拾っていたのが隠れているように見えたのだろうということでした 普段から大人のクセに子供みたいなことでふざけていると こういうときに紛らわしくて困りまね 皆さんはマネをしないようにしてください、マジで危険です マジで危険でといえば・・・ スーパーの駐車場で買い物が終わって車に乗るときに 隣からエンジンをかけて発進した車を運転しているのが 子供に見えたのです 驚いてガン見しても小学校2年生くらいの子供でした しかもそのままゆっくり車は出て行くのです 運転席に座らずに床に立っているようにも見えたので とてもブレーキに足が届かないのではと思い 子供によるオートチック車の暴走事故になるぞ!と通報を考えたときに 角度がかわって黒い服のお父さんが子供をヒザに乗せているのが見えました お父さんは背もたれをかなり倒し、あえて手は使わずアクセルとブレーキ担当で ウインカーを出したボウヤがうれしそうにハンドルを操って ゆっくり町へと戻って行きました 危なくないのか? いつものことなのか? でも意外と運転できるもんだな、すごいな~ イカンイカン! とにかく人騒がせだな~! そういうことはダレもいないところでやって欲しいものです 人騒がせと言えば・・・ トラックに乗っているB先輩が工場への搬入が終り 赤信号で止まっているとき隣の右折レーンの車を何気に見下ろすと サンルーフ越しに運転手の女性と目が合ってしまい 向こうが微笑んでいたため、知り合いかな?とよく見ると なんと下半身は裸だったと言うのです 肌色のズボンではないことを確認するためガン見したときには 信号が青になっており、後続のクラクションであわてて発進しなければならず しっかりと確認ができなかったことが心残りで それ以後は隣の車がサンル-フだと、ついのぞいてしまうと言っていました 運転席の高い車からだけは見える角度らしいので 「あれはバスとかトラックのドライバーだけを狙った新手の露出狂だ!」 と言い切るBさんは ・・・ドライブレコーダーを取り付けることにしたそうです 第218話 記憶障害~その2 12月19日 第109話の「記憶障害~」の続きです 今では通算218話まで数えたことを思うと、当時のちょうど倍です そんなに時間がたっていたとは・・・はっきりとした記憶はないですね~ 記憶といえば皆さんは飲み会の翌日に、昨夜は何を話していたのか覚えていますか? 去年、後輩達と我が家で湯豆腐をしましたらウチの娘を見たT君が 「もう中学生って!あの子がこんな大きくなったんですか~!」と言うので 娘のどれくらい小さい頃を覚えているのかを聞いて驚きました T「最初に見たのはお祭りの時で、この子がビールを飲んでいたんです!」 私「こらこら、何をいっているのだ、それはいつの話や?」 T「まだ幼稚園のころだと思いますから4~5歳?、10年も昔ですね」 私「いやいやいや、祭りでウチの子がビールを飲むわけがない、たぶん人違いやで」 T「間違いないです、だって矢野さんが小さな缶のビールを手渡してました」 私「ワシがか?」 T「逆によその子供だったら大問題になりません?」 私「それはそうだが・・・なんだったんだろう?」 T「スーパードライだったはずです」 私「ビールの銘柄の話と違うんじゃい!理由じゃい」 T「太鼓をたたく前の景気づけだったと思います、娘さんは最初は嫌がってましたよ」 私「それで?」 T「父親にビール飲め~!って言われて娘さんもしょうがなくゴクゴクと」 私「うわ~っ、それがもしも本当なら、ワシはダメ親父やないか」 T「本当ですって・・・ダメ親父の矢野さんは覚えてないんですか?」 私「覚えてないな~・・・ワシってよっぱらっとった?」 T「そうですね、どうみてもシラフではなかったと思います」 私「あちゃ~、場所って覚えとる?時間とかも」 T「@@会館の横の空き地で、ちょっと休憩中で、夕方だったと思います」 私「ああ~そんなことがあったのかも?・・・誰かと一緒やったかな」 T「Nさんと一緒に飲んでましたし、Kさんが青年会長の年だったはずです」 私「わ~、そんなことがあったような気がしてきた!・・・君はすごい記憶力やな~異常やで」 T「そうじゃなくて、この話は衝撃的で忘れたくても忘れらないんですけどね~~っ!」 恐ろしいことです、全く忘れ去っておりました お茶目な私のことですから当時はそういうことがなかったと言い切れません しかも断片的な情報を聞くとそれをきっかけに画像が少しづつよみがえってくるのです T君は1枚の写真のようにはっきりと記憶していると聞きました 念のために娘に聞いても私と同じで忘れているようで親子ともども酒で記憶が飛んでいます 10年前とはいえ自分のことを覚えていないのは恐いことだと痛感しました 恐いといえば、体調の悪い日などは乾杯の1時間後から 翌朝までの記憶がほとんど無いこともあります かといって寝ていたわけではありませんし、何かを食べておいしかったはず でも思い出せない・・・これではお金を払って気を失ったのと同じことです これは私が酔ったときに発揮できる17の特殊能力のうち「メモリー消去」の力が 高まりすぎているのもと思われます!しかし手がかりさえあれば 10年前でもなんとか思い出せるのだから ストレスと一緒に記憶を消すのではなく、飲み会ごとに1つくらいは確実な記憶を 残しておきたいと思っていたところ、後述するVさんとH先輩がきっかけで 記憶の大事さをさらに痛感することになったのです それからの私は飲み会のたびに記憶の手ががりを意識することにしました そして18番目の特殊能力として最後の技「データ・サルベージ」を編み出したのです 使うタイミングとしてはトイレに立った時などに使います 頭の中の記憶の泉へ覚えておきたいことを特徴のある小石にマジックでメモし 印象的な画像も添付して1個だけチャポンと投げ入れるイメージをする という簡単な方法で、翌朝その石を探して拾うと記憶がよみがえります 今回の話でしたら古そうな石に「娘/酒」と書いて、次の日に拾うことができたら 「10年前の娘への飲酒強要事件」が思い出されます たとえばその後でT君から聞いた 「骨折で自宅療養中の伯父があまりにヒマなのでオヤツをよく食べるようになり 欲しがる犬にもどんどん与えていたら、おじさんも犬も糖尿になってしまった」 という話には犬の形の石に「糖尿/同病」と書くわけです おかげさまで特に調子が良いときは芋づる式にかなり思い出せるようになりました そんなこんなでよく覚えている「Vさんの霊体験と記憶について」と 「H先輩の記憶障害進行中」を特殊能力であるドランク・ライターでまとめてみました それは半年ほど前のこと、H先輩が自宅での飲み会に呼んだ6人のうち 大柄でおとなしそうなVさんだけは私と初対面でした 最年長のH先輩の乾杯の後で鍋をつついて盛り上がります 政治への不満や子供の話、若い頃の武勇伝に定番の病気の話と続いたはずです もう40歳も半ばを過ぎれば酒で記憶が無くなることのほうが当たり前だと 先輩方は気休めをおっしゃいますし、私もその通りと思い始めておりました 〆の雑炊をフーフー食べながらH先輩は昨夜の心霊番組が 思ったほど恐くなかったな~という話を自分で振っておいて 泣く子も黙る霊体験を話してくれましたが、恐いよりも爆笑必至のスベらない話でした 恐い話を期待してしまった私はリアルに恐い話をリクエストすると H先輩はVさんにあの恐い話をしてやってくれと頼んだのです どうやらVさんは「見える」人だとのことで緊張しました 「さあ、恐いかどうか・・・」などとなれた感じの前置きのあとVさんは 子供の頃に祖母の通夜で親戚が集まっているのを死んだはずの祖母が普通に 居間で座って見ていたので、おばあさんは死んでいないと思っていた話から 去年、若くして死んだ友人の悪口を言っていたら声が聞こえてきた話は・・・ スマホのラジオのアプリ?がなぜか勝手に起動していたようで ポケットから小さく聞こえるラジオの声が友人に似ていただけだと思うが 本気でガラケーに戻そうかと思えるほど恐かったとのこと そして先月、運が悪すぎる仕事仲間とお祓いに行った話は・・・ 事故に遭ったり体調が悪くなったりが短期間に続くので みんなで隣町の神社へ向うと一番やせていて、よく寝込んでいた後輩の態度が 徐々に変わり、普段は従順なのに、車から降りるのを本気で嫌がったというのです よく顔を見ると何かが憑依していると思えたので 3人がかりでやっと車から降ろして門の前まで引っ張って連れて行ったが 「ダメだ!」とわめいて先輩達の手を振りほどくと逃げ去ってしまった 小柄な彼のどこにそんな力があったのか全くワケが分からないし その後の行方も全く分からない・・・ このような話をさらに続けてくれたのでたまりません 思った以上に恐い話の連続に私の好奇心はもう充分でしたし この話を忘れないように強く心のメモを残そうとイメージしました しかし「よく顔を見ると何かが憑依していると思えた・・・」 というのはどうしてなのかが気になって尋ねると Vさんが私の顔に接近して10秒ほども無表情のまま見つめて言うのには 「それは、憑依されている人の目は瞳の奥が濁って光がない・・・ 何かが瞳の中にいて死んだような目でこちらを覗いていたり 他の世界につながっていると思えるほどの奥行きが見えたりもします 後輩の場合は顔も青ざめて引きつっていて、古い表現ですがキツネ憑きとか そういう感じだったんです、本当に狐だとは言いませんが何か低級な 動物霊が人間への恨みで憑いていたりしたのではないでしょうか・・・」 と言い終わると、ふと穏やかな表情で続けました 「矢野さん?でしたっけ、まだ・・・何も憑いてはいないようですよ」 恐怖で呼吸をするのを忘れていた私は思わず焼酎のお湯割りを 思わず飲み干さなくてはならないほどの寒気を感じました Vさんは思った以上に話し上手で稲川淳二氏とは違った恐さがありました でも後味がどうにも悪かったので、逆に恐くない不思議な話や 霊感以外の特殊能力はないのかを聞いてみますと意外な言葉が! V「そうですね~、特殊といえば・・・実は私は記憶喪失なんです」 お湯割で一気に酔いが回った私はなぜか急に嬉しくなってしまい ぜひ詳しく聞きたいとお願いしたのですが 3年前の事故で入院から社会復帰する客観的で簡単な内容だけだったのです それではモノ足らないので、いろいろVさんに聞いてしましました 私「事故ってやっぱり痛かったんですか?」 V「さあ~気絶してましたから覚えてないです」 私「事故直前の意識はないんです?」 V「それもないです」 私「どこへ行こうとしてたのかは?」 V「さっぱりわからないんです」 私「対向車はなかったんですか?」 V「あったのかもしれません」 私「全治何ヶ月だったんです?」 V「骨折自体は3ヶ月くらいだったかと」 私「車は廃車になったんですか?」 V「そうらしいです」 私「運転が恐くなったりしませんか?」 V「特に恐くないです」 私「現場へ行くと何かが見えたりしません?」 V「見えませんし何も感じないんです」 私「思い出そうとすると頭が急に痛くなったりは?」 V「なかったと思います」 私「家族は相当心配されたでしょうね」 V「そうでしょうね」 私「催眠術とかで記憶をよみがえらせたりは?」 V「特にしてません」 私「今でも記憶をなくしたりするんですか?」 V「なくしているのかもしれません」 私「それって恐くないですか?」 V「特に恐くないですけど」 私「そんなもんなんですか?」 V「そんなもんって・・・」 私「あ、すみません、ご自分の体験ではないようにも聞こえてしまったもので」 V「・・・そうですか」 ついつい詳しく聞けば聞くほどに、さっきの憑依の話と違って臨場感とか 盛り上がりのないためがっかりしている私の気持ちを見抜いたVさんは言いました V「矢野さん・・・私は記憶喪失なんですよ、事故のしばらく前から およそ半年くらいの記憶がキレイにないワケです ということは私が今答えている話の全ては家族や警察や 病院から聞いた自分についての話のうち、まだ忘れていない話だけなのです ボクは自分が記憶喪失だという話をしていますよね? 実体験のように話せるような記憶があればボクは記憶喪失者ではないわけで 記憶が戻らないから記憶喪失なんです、分かってもらえないですかね?」 Vさんから当たり前のことを言われて、確かにそうだと納得はしましたが ドラマのような展開で記憶の復活を期待する私は、酔ったときに使える新能力 「データ・サルベージ」をVさんに試してみようかと思っているとH先輩が H「矢野君よ~、ワシが思うにV君が事故の瞬間や手術で感じた恐怖や苦痛は 覚えておくには、つら過ぎるからと彼の脳が自動で消してしまったんとちゃうかな 忘れていたほうが幸せなのかもしれんのに、お前が変な事をイチイチ聞くせいで 事故を思い出したらどうなると思う?、V君は毎晩うなされて不眠になったり 恐くて運転ができなくなるかもしれんじゃろうが!もうちょっと考えてしゃべれよな」 無神経な私はH先輩から軽く頭をシバかれてようやく気づき Vさんに失礼な事をしていたと心おからお詫びをしました 「ぜんぜん気にしなくていいですよ~、どうせすぐ忘れてしまうかもしれませんし」 Vさんは何事もなかったように許してくださいました なんだか空気の読めない自分が情けなくて、一旦記憶を消してしまいたくなりましたが それ以上にしっかり覚えておこうとも思っていました 後日スーパーで買い物中にH先輩に出会ったので 「こないだは空気が読めずにVさんに悪いことをしてすみませんでした」と謝ると 先輩からとても悲しい言葉を聞かされました 「え?それ何の話や?こないだの飲み会って、お前おったか?」 この話は衝撃的で忘れたくても忘れらないんですけどね~~~っ! 第217話 アタリメとバナナについて思うこと 12月12日 私が一人暮らしをしていた20代前半のころ 実家に帰るといつもテーブルには大きなバナナの房がありました 母が私に「たくさん食べろ!」とイチイチ言うのでワケを聞くと 私の大好物だからといったのです しかし私はバナナが好物というわけではありません 母が言うには数年前に私が「ウマイ!」といってバナナを美味そうに食べた と言いゆずりません キライではないけどバナナを買ってまで食べることはない私ですから たぶん猛烈にハラが減っていたときにたまたま目に付いたバナナをたべて 「意外と・・・うまいな~」とつぶやく程度のことはあったかと思うので それを見た母がバナナを私の好物と決め付けたのは極端だなと思いました みなさんは子供の好物をご存知ですか? 私は知っているつもりで知りませんでした もちろん味の好みも少しづつ変わったりするのでしょう ウチの娘たちは酒のツマミを欲しがらなくなってきました 以前なら私の分が少ししかのこらなかったりしたのに・・・ 食べるか?とこちらからお伺いを立てても無視されたり まずコミュニケーションをとるのが難しいという事もあり 親として何をすれば喜んでくれるのかが分かりにくいお年頃ですな 先日、反抗期真っ盛りの次女から 「パパ・・・アタリメを買って帰って・・・」との着信がありました 「オッサンはウザイ」とか「キモイ」とかマイナスの言葉を連発する次女が 私にオヤツを直接たのむとは珍しいことなのです そういえば私は買いませんが時々アタリメの袋を家で見かけます アタリメとは干したスルメイカのことで、商品としてはサキイカより 厚くさいてあり固いので、白いソフトサキイカのほうが私は好きでした ここ1年間は次女をなるだけ怒らないように気をつけていたので ママに言うべきところをやっとパパにも甘えてくれるようになったかな と思い、気分はよかったのです 帰宅して100円のアタリメを手渡すと娘は「ありがとう」といいました 聞けば、サキイカよりも歯ごたえのあるアタリメが大好物だというのです 私はぜんぜん知りませんでした ツマミに捌いたアオリイカの刺身を新鮮だよと勧めても 「いらん・・・うまいとは思えないから・・・」とカワイイこと言っていたからです イカをたべるのなら干物にしたほうがうまいと言う意味だったのでしょう しかも、アタリメへのこだわりを話してくれたのも私には新鮮でしたし 私ならすぐに歯が痛くなってしまう、あの固い固いアタリメをほおばる姿は なんとなく頼もしく思えました そして1週間後のこと、会議で遅くなりスーパーに寄って発泡酒とツマミと レジ横にぶら下がっていた小さなアタリメを見つけて買って帰りました 次女に「たべるか?」と見せると 「やった~!むっちゃたべたかったんや~」と喜んだのには驚きました いままでそんな明るく嬉しそうな次女の反応を見たことがなかったのです たった100円の小袋で娘の笑顔が見れるのなら安いものではありませんか かめばかむほどに味がでて、アゴにも脳にもよさそうですし 極端な私はアタリメをキロ単位で買いしめようかと思ったそのとき 母が買っていたバナナの房が頭に浮かんだのです 普段は何をしてもまったく喜ばない、かわいげのない息子が バナナを食べて「ウマイ」とつぶやいたのが珍しくて そのときの母はよほど嬉しかったのでしょう そういえば次女はときどき祖母の家に寄ってはご機嫌伺いをしてくれます そうするとおばあちゃんが300円の袋のアタリメをくれるから と言っていました ああ~そうか、時々みかけるアタリメの袋は私の母が次女の喜ぶ顔が見たくて 用意してくれていたものだったのか、気が付かなかった 親に自分の大好物を伝えたり、しっかりとしたコミュニケーションが とれていなかったのは、やはり私のほうだったかと反省し 45才にして、やっと親のやさしい気持ちがわかりました おかげさまで私はバナナ一本でお腹いっぱい 胸いっぱいになることができるようになりました 第216話 ビミョーな詐欺 11月17日 N先輩の店で油を売っているときに見知らぬオバサンが来て言いました 「あの~100円足りなくて困っています、どうか100円貸してください」 先輩は名前と住所を書くように言い、メモ受け取ると財布から100円出したのです 私は「ちょっと・・・」と声をかけたのですが先輩は手のひらを見せて私を制しました オバサンは「すぐに返しますから」と何度も頭を下げて帰ってしまいました 私「あれはなんなんです?」 N「ん?・・・そうやな~、100円オバサンとでもしとこか」 私「いやいや、今つけたニックネームを聞きたいのと違います」 N「わかっとるがな、あれは寸借サギというビミョーな手口の詐欺やな」 私「はい~っ? まさかとは思いますが、ぜんぜん知らない人ですか?」 N「そう、はじめてみたわい、どうせこのメモの名前もデタラメやろう」 私「えええ~っ、それなら100円は100%戻ってきませんよ」 N「そうやろな」 私「なんで見ず知らずのあんな人に金を貸すんです?Nさん・・・アホなんですか?」 N「コラコラ、失礼なヤツやな~、これは授業料というか社会勉強というか」 私「勉強にはならんでしょ?絶対に無駄金ですって~ もったいな~」 N「まあ聞け、結局ああいう人は心が淋しい人で、邪険にするとややこしくなる」 私「逆ギレするとかですか?」 N「いいや、あの店の主人は悪人やとか商品も悪いとか言いふらすかもしれん」 私「それはあるかもしれません、でもあの100円で味をしめてまた来ますよ」 N「もう来ないと思うし、来たら『100円返してくれるんでしょ?』と言えばいい」 私「ま~それはそうですが、なんだかな~」 N「じゃあ、君はあんなオバサンに何度も来て欲しいと思うか?」 私「そうですね100円払ってでも来て欲しくないですね」 N「な、100円で口止めと店に来なくできるのだから安いもんやろ?」 私「へ~、逆に100円が帰ってきたら儲けモンみたいな? でもビミョーですね」 N「どの町にも一人か二人はおるもんや、明日は君の店にも出没するかもしれんな」 私「ああ~イヤだな~ 寸借サギでしたっけ?よく覚えておきます」 サギと言えば振り込め詐欺のウワサを我が町でも聞くようになりました うちの近所で母親と二人暮らしのM君が言うには、恐いので電話番号を変えたとか なんでも母親が引っかかる寸前だったというのです 昼飯を食べに家に戻ってきたM君にお母さんが心配そうに言うのには 「あれ?さっきの電話では急用があると言ってたけど、ほな自分で振り込むんやな?」 自分は電話をしていないので兄の間違いではないかと聞くと、たしかにM君だったと言い 詳しく聞けば、1時間ほど前にM君から通帳の残高を聞く電話があったとのこと 残高を教えると、またかけなおすと切ってしまい、しばらくして新しい口座を作ったから そっちにお金を移したいが急用ができて自分では振り込めないので 同じ金額をおかあさんが立て替えて振り込んで欲しい、とても急ぐし1時には口座番号を 連絡するから用意しておいてほしい、もちろんお金は後で返すよ、と言っていた M君が兄貴にも確認して、息子からではないと注意しても母親はM君だと思い込んでおり 「親の私がカワイイ息子の声を聞き間違えるわけがないやないの~いややわ~」 と言って信じてもらえず、警察から注意されてやっと事情が分かったとのこと その後、犯人から母にかかってきた電話を途中で代り黙って聞いていたところ 自分になりすましている犯人もこれは詐欺がバレたと気づき お互い1分ほどの長~い無言の後で電話は切られたのです しかし最後に「・・・この町はダメだな」と、今までとは違う人物が 電話の奥でつぶやいたとか・・・恐ろしいことです、うちも用心せねば 都会で暮らしている兄貴が交通事故をして治療代と示談金が要るので お金を送って欲しいという電話なら、声が違っていても事故で動揺しているとか 風邪気味だからとごまかすのでしょうが、一緒に暮らしている元気な息子の声を 電話で聞き間違えてしまえる母が一番恐かった、とM君は言いました その業界では電話番号が共有されていて次もかかってくる可能性は大だとの 警察からのアドバイスをすぐに聞き入れて、生まれる前から長年使ってきた 電話番号を変えざるをえなかったと悔しそうでした もう1つ身近でビミョーな振り込め詐欺の話がありました H先輩の家は大きなお屋敷で、どう見ても金持ちです 詐欺まがいの電話が狙い撃ちでかかってくるのでは?と聞くと H「こないだのは、泣きながら『オレだよ100万いるんだ~かあさん助けてよ~』って」 私「みごとなオレオレですね、犯人は息子のふりをするんでしょ?」 H「そうそう、弟なら東京からしばらく帰ってないからな~」 私「え?被害にあったんですか?」 H「ないない、ウチにはしっかりした家政婦がいてくれるから、そこで毎回止まる」 私「そうか、お金持ちの家だと奥さんが直接電話口には出ないのか~!」 H「嫁はともかくオカアは半ボケでビミョーやけどな」 私「そんなことはないでしょう」 H「オレオレ詐欺の電話があったことを家政婦から聞いてオカアが何て言うたと思う?」 私「ん~、念のため息子に連絡して本人確認をしなさい・・・とか?」 H「違うんや、確認の必要は無いと、息子がたったの百万円で泣くわけが無い・・・って」 私「へえ~、すごいな~ちょっと深い話ですか?」 H「お金を送って欲しいと泣いて頼むくらいのかわいげがあったらよかったのに・・・と」 私「え?」 H「たったの100万くらいで『お母さん助けて~』って泣かれてみたいもんだと」 私「意味が良く分かりませんが、お金持ちは我々庶民とはビミョーにちがうんですね~!」 とにかく詐欺には気をつけようと思っていた矢先、またもやビミョーな出来事が・・・ 店に見知らぬオジサンが来て私にこう言いました 「あの~、500円足りなくて困っています、どうか500円貸してください」 キタ~っ! なんと500円オジサンの登場です 「財布を落として、バス代がないので家に帰ることもできず困っている」と強く訴えます 100円ならN先輩と同じようにすんなり貸すつもりだったのですが 同じワンコインでも500円はいかがなものかと考えたものの このオジサンは強烈に臭いので胸が悪くなってきました! こうなると早く帰って欲しいので、これも社会勉強かとしぶしぶ貸すことにしました とりあえず名前と住所を書くように言い、メモ受け取ると財布から500円出しました オジサンは「すぐに返しますから」と何度も頭を下げて帰りましたが 残されたメモにはしっかり「借用書」と書かれ、ご丁寧に日付まで記入されており なんだか手馴ているのがイヤ~な感じに思えました その後で私は配達に出かけると、偶然にもパチンコ屋に入っていく姿を目撃してしまい なんだかバカバカしい気分になりました バス代がないのはやはりウソだったか~!・・・くっそ~分かっていたのに腹の立つ~! さらに配達を4件ほど済ませて店へ戻った私はオヤジから叱られてしまったのです 父「なんで見ず知らずのあんな男に金を貸すのだ! ・・・お前はアホなんか?」 小言を言われても当然かと思いましたが、なんでバレたのかは腑に落ちません 父「それに借用書を返せとワーワー言われてもワシには意味がわからんし、臭いし」 私「えっ?まさかあの500円オジサンが金を返しにきたんか?」 父「そうじゃ!あんなヤカラにはもうかまうな、また来るぞ!」 私「いや~ソレはない・・・と思う」 オジサンは私の500円玉で大フィーバーでもしたのでしょうか? 手渡された500円玉をアホみたいな顔で見つめる私が 無事に戻ってきたはずなのに、なぜか500円以上の寸借詐欺被害にあったかのような イヤ~な気分を味わってしまっただけでなく 律儀な500円オジサンが翌週に再び来店したのです! 「あの~今度は1000円貸してください~」と言って・・・ 第215話 好物 ~その7 10月25日 私の選ぶ「秋~冬の味覚ベスト3」と言えば 昔からコッペガニとマツタケとスジコです しかし、ここ数年で大好物となったギンナン・イカ・サンマのランクが じわじわ上位に上がってきたということで 今回も美味いよ~!と言いながら後味の悪いお話なのです スジコにつきましては「第170話 好物~その4」を見ていただくとして コッペガニとはセコガニとも呼ばれるズワイガニの小さなメスのことです お腹についているサクサクと歯ごたえのいいツブツブの卵と 7cmほどのコウラをめくると出てくる内子と呼ばれる赤い部分は最高です 以前は茹でたコッペガニを3匹で500円ほどで売っていましたが 今では1匹で500円を越す値がつくこともよくあります 気軽に食べることができなくなり残念ですな~ 残念と言えばマツタケは高級品なので食べたくても機会がないため 親戚が1本くれたのをマツタケご飯にしたのがちょうど3年前だったと はっきり思い出すことができます その夜は泣き上戸の後輩M君が遊びにきており、すっかり酔っ払った頃に 妻がマツタケご飯のオニギリを〆に出してくれてのです 神妙な顔をしてオニギリを見ていたM君は深いため息をつきました 彼は第157話と170話他にも登場するスキ/キライの激しい人物ですから どうせマツタケも何かに似ているからキライと言い出すと思っていました ところがオニギリを一口たべてうなずいたM君は珍しく 「とても美味いです・・・」とつぶやいたのです! 私「やっぱり日本人でオニギリをキライなヤツはめったにおらんからな~」 M「そうですか?ご飯は茶碗にふわっと盛ってある方がスキなんですが・・・」 私「握ってあるよりもマツタケご飯のままが良かったんか?」 M「というか、もともと炊き込みご飯もスキではないはずなんですが・・・」 私「ほな、やっぱり高級食材のマツタケ様には君も弱いということか?」 M「高級とかは関係ないですし、このニオイも臭いな~とは思っているんですが・・・」 私「ほな、食感?が好きとか?」 M「この妙なムニムニ感はコンニャクみたいで歯ごたえもキライなんですが・・・」 私「え?やっぱり君はややこしいヤツやな~、結局はキライなんか?形か色か?」 M「はい、本体の形はもとより傘の内側のヒダヒダは見るに耐えないんですが・・・」 私「ひょっとしてキノコ類は全般的にイヤなんか?」 M「はい、基本的にはキノコはカビと同じ菌類なので気持ち悪いはずなんですが・・・」 私「さっき美味いと聞こえたんはワシの耳がおかしかったんか?」 M「いえ、それがマジでうまいんです・・・どう考えてもキライなはずなのに」 私「君は酔うと味覚障害になってしまうのか?」 M「それはないと思うんですが・・・でもこのオニギリは美味いんです、大人の味です」 そして濃い目の焼酎をごくりと飲んだM君はオニギリを片手に湿っぽく話し始めました 「ボクの父は秋になると山に入ってマツタケを採って帰ってきたんです そのときばかりは母も兄も喜んで、父が間違いなく家族のヒーローでした でも、しばらくマツタケ料理が続くのでボクはイヤだったんです そう、家に帰るとこの独特のにおいがしてました、くさかったな~ 忙しくてほとんど家にいなかった父があっけなく死んでしまってからは ぜんぜんマツタケを食べられなくなってしまったのでマツタケといえば ボク的には父のイメージそのものなんです・・・懐かしいな~モグモグ ああ~もう20年くらいは食べてなかったかも・・・ううっ(泣)うまいっす この味や香りは幸せだった当時の思い出にぴったりと重なるんですよ そういえばボクはもう父より年上になってます・・・(泣)ううううう」 私「も、もう1つたべるか? そうか・・・うまいか~(泣)ううう」 泣き上戸のM君が語るマツタケ話で逆に泣かされてしまいました さて、私のマツタケにまつわる思い出は小学4~5年の頃です マツタケご飯を母が料理しているのを見てワクワクしていたところ 炊飯器の中で炊かれる寸前の刻まれたマツタケに 小さなキラキラと輝く部分があったので凝視すると 2mmくらいの透明のイモムシが動いていたのです しかも勇気を出して取り除いても、次から次へニョロニョロとわいて出てきます あまりの気色悪さに驚いて家の中を右往左往したのを思い出しますが 母は自然の食材に虫がいるのは珍しくないから気にしたらアカンし 加熱したら死んでしまい分からなくなるから見なかったことにしておけばよい と言うのですが、すぐに納得はできませんでした でも家族全員が同じ条件で食べるわけだし 普通のご飯に比べてマツタケ入りのほうがおいしいのだから 虫さえ忘れてしまえば、すべてがうまく行くのだろうと割り切り ソレができることが大人になることではないのかとも考えました というわけで私的にもマツタケは大人の味なのです さて赤丸急上昇のギンナンとイカとサンマの話をします 3年前に妻が仲間と一緒に「銀杏拾い」に行きまして 持って帰ってきた袋には山吹色の実がどうみても300個以上はあったのです 種の部分を取り出してよく洗って乾かしている間にただよってくる あのウ○コのようなニオイは、もはや食べ物と思えません もともとギンナンといえば茶碗蒸し以外ではなじみのない食材でした しかも茶碗蒸しが大好きな私の「必要ないと思う具」の第一位がギンナンだったのです ちなみに2位は百合根でした 翌日の晩酌にツマミとしてギンナンをいただくときは 妻には申し訳ないですが何も期待はしていませんでした とりあえず10粒のギンナンをいらない封筒にいれて電子レンジで温めます 1分もしないうちに5発以上の爆発音を確認して取り出すと・・・やはり臭います でも封筒からコロコロ出てきたギンナンの割れた殻からのぞく中身は 私がイメージしていた黄土色でモサモサの粒などではなく 美しいエメラルドの輝きを放っており、皮を剥いて塩をちょっとつけて口に運ぶと モッチモチでプリップリで香ばしくて、めちゃくちゃ美味かったのです! 臭さもほとんど感じませんし、こんなうまいモノが身近にまだあったことに驚きでした すぐにオカワリの50粒を加熱しウマイウマイと妻も子供達も食べたましたが このペースで毎晩たべると1週間もたないではありませんか! 妻には翌週も拾いに行ってもらいましたし、私も別の場所に出撃するようになりました ギンナンを食べ過ぎると中毒になるから危険と聞きましたが 体調を崩すどころか美味すぎるので 食べられないと落ち着かなくて困るほうの中毒になってしまいました ちなみに百合根も本当は美味いかもと思い スーパーで安売りしていたのを湯がいて塩だけつけて食べてみると サクサク、ホクホクでねっとりと甘くて思った以上に美味かったのです これもまた秋の味覚ですな ああ~、好物が増えるのはありがたいことです 昨年は三女と一緒にオニユリの根を掘りに行きましたが ゲットした野生の百合根は苦くてちょっと残念な・・・いや、大人の味でした 残念といえば去年はギンナン拾いに何度か出撃しても、あまり落ちていないし 小粒でちょっと薄味だったのです、それにスジコも手に入りませんでした でもその代わりにイカの旨みをを堪能することにつながったのです 後輩のJ君が釣りたてのアオリイカを5杯もくれました 秋イカともよばれる美味いイカです ちなみにイカは匹ではなく杯で数えるそうです 捌き方を妻に教えてもらい刺身にして食べましたら 甘くてプリプリでエンペラ(ミミ)は特にコリコリで間違いなく美味かったのです スーパーに行くとJ君がくれたイカと同じサイズを298円で売っていました 5匹だと1500円か・・・彼には何か返さねばと思いました さて刺身を晩酌用に買おうと手に取ると秋イカの刺身は同じく298円です 何気にこのパックに盛られている量を刺身用のイカと見比べると どうやら30%ほどですし、ゲソもあのうまいエンペラも入っていません イカをさばくのさえ気持ち悪く思わなければ1杯のほうが断然お得です ちょうど明日は生ゴミの日だし、妙なやる気も沸いてきて サクサクと半分を刺身にしてみましたら三女だけはウマイウマイと食べてくれました 残りの半分は冷凍して、2~3日後に刺身にすれば 週に2日はイカをアテに幸せな酒を飲めるではありませんか そして冬になると今度は冬イカが並びだします ヤリイカと呼ばれる、これまた美味いイカなのです そんなわけで秋~冬にはイカを肴に機嫌よく飲むようになりました さて、イカをくれたJ君はギンナンに興味があったので一緒に拾いに行きました かぶれるので絶対手袋をすること とにかくよく洗うこと 封筒に入れて電子レンジで加熱するように言っておきました J君は私と同じくギンナンの美味さに驚き しばらくギンナンを機嫌よく食べていたそうですが 1週間ももたずに食べつくしてしまい、再び拾いに行った時には うっかり手袋をしなかったため、ひどくかぶれてしまい 親でも分からない顔になったとかで 携帯に残してあった画像を見せてもらい驚愕しました しかも、封筒に入れずに加熱したため 炸裂したギンナンの殻の破壊力で電子レンジのランプが壊れたとのこと 確かにギンナンとは思った以上においしくて危険な食材だったのです みなさんも気をつけましょう そして、おいしくて危険な食材と言えば・・・ B先輩と飲んでいて秋の味覚について語り合うと 先輩は「秋はサンマの塩焼きに限る」と言ったのです しかも油の乗ったサンマのワタの苦さは思い出してもよだれが出るほどだと 確かにサンマは美味いと思いますが私はハラワタ部分は文字通り苦手で 子供の頃から身だけを食べておりました そんな私にBさんはこう言い切るのです 「お前な~、サンマのワタを食べないならサンマを食べる意味がないぞ」 そこで私はBさんに妙な事を聞いてしまいました 「2匹のサンマを2枚の皿にそれぞれ身だけとワタだけに分けたらどっちを食べます?」 Bさんは「もちろんワタだけのほう」と即答したので驚きました そこまでワタが好きな人間が身近にいたとは・・・ 「君の味覚はまだお子様ランチをおいしいと思うレベルやな~ サンマはワタを含めた全てを味わうのが大人の食べ方や 俺の皿には頭と背骨しか残らないぞ」と言われてしまいました とにかくワタの苦さを美味いかどうか大人として再検証しようと さっそく買いに行くと、安くて新鮮なサンマを見つけました 3匹で198円のパックには「刺身用」と表示してあったのです なに?刺身?青魚はよほど新鮮でないと刺身にできないが・・・ 今回は刺身と塩焼きの両方を楽しもうと、まずは刺身に挑戦してみました ネットでサンマの捌き方の動画で研究して、不細工ながら2匹分の 刺身盛りを造ると、驚くほど上品な味だったのです! アジの刺身に近くて美味いとしか言えませんし、アジより安いのです これは我が家の定番の刺身にしよう! また好物が増えました さて残る1匹を塩焼きにするとこちらも間違いなく美味い! たったの198円で焼いても生でもメチャメチャ美味いとは これは最強の秋の使者だ!讃えよサンマ!美しきかなサンマ!サンマ万歳! しかし、いよいよワタを食べてみるかと腹部を探っていると 妙なモノが出てきたので妻に聞けば もはやワタを食べようという気がまるでなくなってしまいました 妻「あ、その赤い糸は寄生虫やで」 私「ううっ!これが、あの・・・アニサキスとかそういうヤツなんか?」 妻「そう、もともとは見えにくいけど加熱すれば赤く変色して見分けやすくなる」 私「うわ~初めて見た~キモい~!」 妻「部厚い切り身の魚を買ってきても、新鮮ならまだ寄生虫が生きているの見つけるよ」 私「しらなんだ~こんなヤツがおるんか~」 妻「イカを捌いても時々見かけるけど、かなり見つけにくいで」 私「イカにもか!早く言ってよ・・・で、生きたまま飲んでしまったらどうなるん?」 妻「胃壁を食い破って、もぐりこまれたらむっちゃ痛くて大変な事になるらしい」 私「マジか?ほな、イカを生でたべるのは危険じゃないのん?」 妻「イカそうめんみたいに細く捌いたら切れて死ぬし、よく噛んだらエエんちゃう?」 私「それはそうだが・・・怖いな~ さっきのサンマの刺身は大丈夫か?」 妻「サンマの身にもぐりこんでいる話は聞いたことがないから大丈夫とおもう」 おかげさまで翌日腹が痛くなることも体調を崩すこともありませんでしたし 身の部分にはもともと潜伏していないのでしょうね 加熱すれば分からなくなるマツタケの寄生虫とちがって 赤く色づいてアピール度を増すとは・・・それにしても気色悪いな~ それからの私はイカの刺身もサンマの刺身も細く切るようになりました さてさて寄生虫の件をサンマが大好物なB先輩に教えてあげようか、どうしようか しかし大人の味覚を持つBさんのことだから 「頭と背骨は残すが寄生虫をも含めた全てを味わうのが大人の食べ方だ!」 と言うかもしれませんね~ 第214話 話 9月28日 テレビで「すべらない話」を見ていて、話のクオリティの高さと その話術にうなりました ほんの2~3分で爆笑を生むプロのすごさを感じて 笑うより先に感心することさえあるほどです 私の周りでは先輩のHさんが話し上手で破壊力のある昔話をネタに 飲み会をいつも盛り上げてくれます 何度も聞いて知ってるはずのなのにすべらない、まさに鉄板ネタなのです 「小学校の頃、改札で切符を切られると、自分の指まで切られた感じで痛いんじゃ~ もう今では切符を切られんけど、自動改札に切符が吸い込まれるときは 自分も中に吸い込まれそうで緊張するけど、みんなもそうやろ?怖いよな?」 文章で書いてもイマイチ面白さが伝わりませんが 本人が話すとめっちゃくちゃ面白いのです それに続く中学のエレベーター編でも、電話のマークのボタンを押して 「5階をおねがいします」と行き先を言ったら警備員に叱られた~ などの勘違いネタを大げさな身振り手振りで3連発させ 我々を大爆笑させてくれます 話の上手い人はいいな~と思いつつ私も話をするのですが なかなか大爆笑まではいただけません 文章で書くのでさえ難しいのに何も見ずにしゃべって タイミングよく笑わせるなどかなりの高等テクニックです 登場人物が多いときは、今は誰の話なのかを説明するだけでたいへんですし 言葉足らずなのを補足しているうちに途中で違う話になったり 声が小さくて上手く伝わらなかったり 話が長いとオチまでしゃべらせてもらえなかったりもします 私は酔わないとしゃべれませんが 酔っていてはロレツがまわらなくなってまともに話ができません はやり話をするより、聞くほうがずいぶん楽ですな~ 後輩のTに聞くと私の話術を分析してくれました 「矢野さんの話はテンポがないのと変なカエシをしてくるのでツッコミにくいから オチで大爆笑にはなりにくいけど、あとからジワジワとくるタイプですよ」 おりしもT君は先週、車から私が声をかけた話をしました 「お~い、T君ヒマか?今から白骨化した鹿を見に行くけど一緒に行かんか?」 T君はバカバカしくてすぐに断ったが、しばらくしてから不覚にも笑ってしまい 「なんで鹿やねん、白骨っておかしいやろ?」と、思わずひとりツッコミをしたとか しかもこの話でT君は爆笑を巻き起こしていましたました なにが面白いのだ? この話は私的には何のひねりもない話に思えます 鹿の骨を見に行くのが目的なので笑いをとろうという気は微塵も無いわけです それならば後から笑ってもらえているものという前提で すべることを恐れずに話をして、たいしたオチのないまま 一方的に話を切り上げるのもアリかと思いました そうそう、この骨の話を娘にすると、笑うとかバカバカしいとかではなく 「鹿の骨って?・・・角はないんか?」と普通に言われました 反応は人それぞれですな こんな私ですが飲み会で珍しくウケた学生時代のアホな話を3つご紹介します ちなみに私が笑って欲しいポイントではないところで大いにウケたり ココがウケると思っている部分がダダスベリだったりするのは不思議です その1 鳥取県の最高峰・大山に一人で山登りをした時の話 下山のルートを間違えたらしく道が細く険しくなり 日も暮れかかってきたのであせっていると おりしも籔の向こうの岩場から妙な気配が 近づいてみるとプシュー、プシュー ボボッボ・・・ウウウ~ と繰り返し妙な音が聞こえてくるのです こんな人気のない場所でなんだろう? 気になったので勇気を出して覗き込んでみると そこにいたのは恐いといえばちょっと恐い動物でした 文字通り山にいるとは聞いてはいたが今まで一度も見ることがなかった 「山伏」が真っ赤な顔でホラ貝を吹く練習をしていたのです 黒くて小さな帽子を頭にのせ白い袴と黒いベストに丸いホワホワの飾りをつけた どこをどう見ても山伏でした・・・コスプレではなくマジで修行中のようで だれもいないと思って吹き始めたものの、プォ~プォ~という音がまともに出ず 素人でも下手だと分かる様子を見られてバツが悪そうだった 人生で山伏にあったのはこの日だけです 下山のルートを聞くのも忘れて静か~に後ずさりしたのは いろんな意味でちょっと恐かったからです その2 K先輩と二人で土日に単発のバイトをした話 近代的な食品用紙容器の巨大工場は土日が休みらしく、静まり返り 広い事務所でみた二人のオッサン以外には 最後までダレとも会うことがなかったのです 白いツナギに着替えて、百メートル以上あるラインの端の非常階段下に長机を置き 組み立て前の牛乳のパッケージの束から印刷の汚れやカスレを探すのが仕事でした 天井も高く、めちゃめちゃ広い工場に我々以外に誰もいないは不気味です 先輩と二人で何千枚という厚紙を無言でパラパラめくってチェックを続けます 検品が終わったら大きな箱に良品だけをもどして台車に乗せておくと すぐにロボットが新しい箱を持って回収にくるのです それを受け取って再び地味な作業を続けます これを1日中繰り返すと妙なストレスがたまりました ちなみにロボットは人の形をしているわけではなく 大人が2人ほど乗れそうな平たい台車に制御盤のあるらしいボックスがのっかり 上に突き出た棒にはカメラとアンテナ、センサーユニットがぶら下がり 配線がむきだしの無骨なというか不細工な姿で、むりやり例えると ドラえもんのタイムマシンを分解してタイヤをつけたような感じでした それが回転灯をまわして不快なブザーを鳴らしつつ廊下にしかれたレールを這って移動し 時には壁を登って上のラインや別の棟にも行ったりもします この白くてぞっとするほど静かな巨大空間で動いているのはこのロボットのみです 音が聞こえるのもその駆動音とブザーと・・・たまにしゃべる声だけなのです 「右ニ曲ガリマス」とか「バックシマスゴ注意クダサイ」という簡単なセリフです はじめはこのロボットでちょっとだけ気がまぎれていました しかし我々の作業台の真横にバックで来るときだけセリフが中途半端なのです 「バックシマスゴチュウイクダサイ~バックシマスゴチュウイクダサイ~ バックシマスゴチュっ!・・・」 これを何度も聞いているうちに我々はだんだん不愉快になりましたし ロボットのカメラでモニターされているのも気持ちがいいものではなく 8時間近く検品を続けてもこのロボットしか作業場に現れないのは隔離されているようで 地味にキツイ仕事だな~と思いました すっかり作業にあきた先輩は私に「おもろい話をしろ!」と何度も無茶振りしますが バイト中にそうはしゃべれませんし、面白いことなど全く思いつきません しゃべれば巡回に来たロボットに聞かれてしまうかもしれません それでも一日目はなんとか耐えられましたが二日目はとうとう先輩がキレたのです もちろん私にではありません 「バックシマスゴチュウイクダサイ~バックシマスゴチュウイクダサイ~ バックシマスゴチュっ!・・・」 「うるさい~!ゴチュっ!ってなんじゃい!最後まで言え!アホ!ボケ!カスッ~!」 二日目の午後からは事務所のモニターには作業台の横にロボットが来るたび 毎回キレまくるK先輩が映って失笑を買っていたと思います ちなみにバイト代だけはロボットではなく事務所のオッサンからの手渡しでした その3 K先輩の車にのせてもらい田舎道をドライブしていた風の強い夜の話 車を停めてカンコーヒーの自販機を見つけて一服していると そこからちょっと分け入った人気の全くない公園の隅に 大きな箱バンが1台停まっているのに気づきました なぜか後席に明かりがついており、窓は曇っています 先輩はなぜか喜んで、ライトを何気に消して車を近くに移動させました 50mくらいの距離からは車中に2人の影が見える気がしました なんと一人は金髪のようだと先輩はテンションが上がっていました そして金髪なのはどうやら女だと先輩は断言します 距離が近くなると、たしかに男が抱きしめているようにも見えました 先輩は微妙に動いていると大喜びで車をさらに近づけ 下世話にもウインドーを開けて聞き耳を立てると風の音に混じって 「ウッウウ・・ウウウ~」と聞こえてくるではありませんか 「おいおいおい!これはヤバイぞ~どうする矢野ちゃん~!」 という先輩に私は「ヤバイなら引き返しましょう」と言いましたが 「ちがうやろうがっ!アホ~」と言って、おかまいなしで車を横付けしてしまいます 強風のせいなのか?箱バンはちょっとゆれていました そこで私達が見た、後席を折りたたんだバンの広い荷室での驚愕のシルエットとは 汗をタオルで拭きながら重そうな金色の大きな女性 ・・・ではなく、ラッパを抱きかかえてブッウウ~~ブブブ~と吹いているオッサンでした 逆にショッキングな光景に落ち込んだ先輩はその場を逃げるように引き返したのです 先「あれはなんなんや?」 私「あの金管楽器ならチューバだと思います」 先「ちがうやろうがっ!」 私「あ・・・たしかに、あれはユーフォニュームのほうだったかもしれません」 先「うるさいんじゃ~」 私「たしかに、うるさいから近所迷惑にならないようにこんな場所で練習するんですね~」 先「ちがうやろうがっ~!このボケっ!」 私「ちがうんですか?ボクは鳥取県の山中でホラ貝を練習中の山伏に出くわしたことがあります」 先「うるさいって」 私「それがうるさくはなかったんです、その山伏はヘタでほとんど音が出なくて」 先「そういうことじゃなくて、分からんか?」 私「・・・ここは鳥取ではないぞと?」 先「アホ!メンドクサイな~ちがうちがうちがう~!お前は違う!」 私「ボクのどこが違うんでしょう?」 先「はぁ?マジでメンドクサイな~ も~エエ・・・しかし~がっかりや~」 私「すみません」 先「クッソ~全然オモロないぞ~!」 私「すみません」 先「いったいどうしてくれるんじゃ~!」 私「すみません」 先「だから~お前と違うんじゃああああ!いちいち謝るな~アホ!ボケ!カスゥ~!」 とうとうキレたK先輩からはうるさく叱られてしまいましたが この話は金管楽器だけに、いつも鉄板でウケるのです どうでしょう・・・すべりましたかね? 第213話 遺書 8月29日 「今は2011年の夏です 42才の矢野誠一がここに遺言を残します! と言っても私には、ここ20年で死ぬ予定など全くありません 今までの自分と将来を考えて、整理の意味で書くだけですのでご心配なく 孫の顔も見てみたいし、70歳くらいまで生きればなと思っております・・・」 こんな感じの書き出しで遺書をしたためたのは3年前のことです 厄年も終わって同級生と初老のお祝いだと飲んだときに 東日本大震災から放射能、生命保険から遺言の話になったのです G君だけは自分が死ねば今感じている世界は一緒に全て終わると思っており 死んでから心配することはないはずなので保険にも入らないし 遺言もあえて書かないと妙に強気でした 普通は残された家族が困らないようにと考えるものですし 不慮の事故は起こりうるので、G君以外の普通の同級生はこれを機会に 真面目に考えたほうがいいよねという話に落ち着き 千鳥足の家路の途中でみんなの意見を参考に自分なりの遺書を考えてみました そして家に戻ると特殊能力『ドランク・ライター』でパソコンに思いつくことを 打ち込んでおいた・・・ようなのです そう、すっかり忘れてしまっておりました さて3年が経ってから覚えのないフォルダで見つけたこの文章に 思わず自分がびっくりしてしまいました 夜中に書いたラブレターを朝読み返すのと似た驚きかもしれません そこには迷惑を掛けた妻へのお詫び、両親への謝罪 娘達へのアドバイスなどを含む10項目が列記されていました かなり恥ずかしい部分はありましたが意外と読み応えもあったのです 断片的にご紹介しますと・・・ その第7番項目には知人への日頃できていなかった感謝のしるしとして カップ酒の1本だけでも届けて欲しいと名前が30人も書いてありました しかし、いまでは引越しで音信不通になってしまった友人や 体調が悪くてお酒をのまなくなった先輩や 定年で退職された先生の名前などを見つけて たった3年でずいぶん状況が変わるものだと感じました 第4番項目の娘へのアドバイスには「第140話 遺言~」で書いた 「気にしたら負け、くさったら負け、死んだら負け」を追加記入して 第5番「家族旅行で富士山(3776m)に登ってください」を、より現実的に 伯耆富士と呼ばれる鳥取県の大山(1,729m)に変更 「半年に一度は施設に入っている祖母のお見舞いに行って下さい」という 第6番の項目は昨年祖母が亡くなってしまったので欠番にして 最後に日付を変えれば2014年度版のマイ遺書が完成しました 時間をおいて読み返すと第9~10番項目での 「子供達よ、父親不在に早く慣れて命日にだけちょっと思い出してください」 「夫として反省もしていたし、とても感謝しているよ」 のくだりではマジで泣けてきます よもや死のうなどという気は全くなくても 実際に書いてみて気がついたことが5つありました 今の自分がいかに幸せであるかということ 文章で残さなくても今なら口頭で直接気持ちを伝えれること 行きたい場所に行って、やりたいこともほとんどできること カップ酒を死後に配るより、一緒に飲んだ方がいいこと そして この遺書がここ20年のうちに役に立つことが絶対にないように・・・ということです 第212話 オバケ 7月25日 あなたの怖いものは何ですか?と尋ねられると「オバケ」と答えます あれは中学1年の夏の夜のこと 2階に上がって寝室の明かりをつける寸前に 窓の外に黒い人影を見たのです 暗くて顔はわかりませんが窓の外にしゃがんで こっちを見ているように思えました 網戸の向こうはトタン屋根になっており、小さな猫でさえ歩けば音がするはず しかし全く物音がしないのです だれだ?泥棒なのかノゾキ魔か・・・驚いた私は30秒ほど固まってしまいました そして意を決して明かりをつけると人影は消え 窓の外を確認しても異常は見られなかったのです 現場を検証してみても自分の影が網戸に映ったわけではなく 物音を立てない人影は、自分の中でオバケと認識しました 親に言っても、それは変態がのぞいていたのだろうと笑われて終わりでした それでも当時の私にはメチャメチャ怖かったのです それ以来、オバケには足が無いというのは 足音を立てないことがその由来ではないかと納得しました しかし、この頃はまだ自分が悪いことさえしていなければ オバケは私に悪さをしないと思っていました あれは忘れもしない高校の入学式を控えた3月31日の夜 夜中にふと目を覚ました私は妙な気配を感じました 部屋に誰かがいるのです・・・ 当時の私は祖父母の家で寝起きしており 1階に祖父母が、2階には私だけでした 薄暗がりの中であたりをうかがうと、左に誰かの黒い影があります よく見るとモヤモヤしておりイヤな感じがしました 「おじいさんかな?」と思うと同時に影は足元にす~っと移動し 身を起そうとする私の足首をかなり強くつかんだのです 私は足をバタバタしてその手をはずそうとしたものの 徐々に力が抜けて足が動かせなくなりました そしてつかまれた足首からしびれはじめて、足先から徐々に 体が石へと変化させられていく・・・そんな感じがしました いよいよ腰から下が全く動かない状態になり、次に手が そして最後まで動いていた首が固まってしまいます 夢で見た金縛りとは感覚が違いました ここに来て私は相手が人間ではないと確信しオバケと判断しました というかバケモノです! こんなときにはお経で心を落ち着かせればよいと聞いたことがあるので 小学校の頃から徐々に覚えた「般若心経」を唱えるのですが すぐに声が出せなくなくなりました しかも息苦しい! このままでは呼吸さえも止まると思った時に 握られた足首がすごい力で持ち上げられたのです 私の体はカチカチに硬直していますから、頭だけが接地しており 冷たい空気が布団に入ってきたことを背中で感じます これ以上持ち上げられると頭で逆立ちしているような状況になり危険です すると頭が枕を離れるほどナナメに持ち上げられたかと思うと 背中からプロレスの技のように敷布団にドスンと叩きつけられたのです 痛みが背中からおなかへ突き抜けて呼吸困難になり苦しくて目も開けていられません 石になった私の体はバリンと割れてしまうのではないのかと恐怖しました 後にも先にも人生でこれほど怖い瞬間はありません 何度も叩きつけられる痛みで意識が遠くなり、呼吸も止まって死にそうでした 何の目的があるのか?なんで私は石化したのか?このままここで死ぬのか? 怖くて怖くて泣きそうでした 心の中で何かに謝りながら途切れながらもお経を念じ続けると 叩きつけていた手が緩んで止まり、頭のモヤモヤが解けて呼吸が再開し 金縛りの状態から、ようやく声が出せるようになったのです そして足を握っている手が外れ、冷たい痺れが徐々に治まり 首だけは動かせるようになり、次に手が、腰が 最後に足が開放されました しかし動けるようになったものの恐怖で布団から出られず 中で丸くなってお経を繰り返して10分もたってからようやく このままではイカンぞと勇気を振り絞って飛び起きて明かりをつけましたが ふすまも障子も閉まったままで、そこには誰もいませんでした 翌日はおりしも4月1日なので四月バカでは誰も信用してくれないことと 本当に怖かったので人に話したのは5月も後半になってからでした 親に言っても、それは寝ボケて祖父母を見間違ったのだと笑われて終わりでした 当時の私はすでに180cmの大柄だったため 持ち上げて何度も叩きつけるには、小柄な祖父母が協力しても無理なのです 力の強い大人が二人は必要でしょう、そう二人・・・ 私はもともとオバケよりも宇宙人による誘拐が怖かったのですが これ以降はオバケがダントツで怖いものの筆頭ですし 今でも般若心経は何も見なくても唱えることができるのです がしかし、これ以降はオバケを見てはいません 私は見たことが無いのですが・・・ 学生時代に無口なG君の部屋に泊めてもらったときに驚いたのは お化けを見たのではなく、テレビもCDもつけっぱなしで 部屋の明かりも朝まで消さないことでした 理由を聞くと、しぶしぶ「怖いから・・・」と言われました 「こんな明るくてうるさいと普通は寝られんやろ?」と聞くと 「わかっているけど、にぎやかにしていないと、もって行かれそうになる」 と微妙な事を言ってそれっきり話さなかったのです 当時の私は部屋を暗く静かにしないと眠れなかったのですが その時ばかりは我慢をしました 彼が私の部屋に泊まりに来ることも何度かあり そのときにはCDだけはつけっぱなしにしました それから10年後、G君と酒を飲みつつ昔話に花が咲き 「そうそう、今も寝るときにはテレビもCDもつけっぱなしか?」と聞くと 「なんでや・・・」といいながら完全に否定しているわけでもなく 妙なスイッチが入ったのか、くちなしのG君が饒舌に話しはじめたのです じつは当時、お化けが見えるようになっていた事を・・・ なんでも、もや~っとした半分透けたシルエットのようなものが 眼鏡をはずしていても夜でも昼間でも人ごみの中でもしっかり動いて見えるので 最初はノイローゼ気味になるくらい怖くて 人に話してもどうせ誰も信じてくれないだろうし 言いふらすと自分の身に悪いことが起こりそうな気がして、黙っていたのだそうです 私もしゃべらない気持ちは理解できますがG君の無口さは こちらが閉口するほどです そして半年もたつと、見えてしまうことには慣れてきて こちらが強い気持ちを持っていれば、悪いことはしてこないと分かってきたが 妙なパワーを持っている縁起の悪い地縛霊には気をつけなければならないし 浮遊霊なら見渡せば普通にいるのでイチイチ気にするとキリが無いし こちらが一人で淋しい時に寄ってくるヤツはうっとおしいので なるだけ単独では行動しなかったし、だから一人の時にはCDもテレビもつけて 朝までにぎやかにしていたのだ・・・と言うではありませんか しかも私は当時よくしゃべったので、口数が多いのがよかったと言われました その後G君は彼女ができて普段の生活が安定してくると しだいに見えなくなり、結婚後は全く見えないとのこと おいおい~マジか? そんなことだったのか! それならそうと言ってくれればよかったのに こんなにG君がオバケに詳しいとは・・・ おおっ!それなら聞きたいことがありました 実は私が真っ暗にして寝る理由は・・・恐いからです 逆のように思われるかもしれませんが 明るい時にオバケが出たらそれをハッキリと目撃してしまうではありませんか かつての黒い影のオバケの姿や顔を部屋が明るくてバッチリ見ていたらトラウマです それでもG君の部屋みたいに寝るときも明るいほうがいいのか尋ねると 「不安な気持ちにならずに、気を強く持ってさえいれば暗くても大丈夫だし 見えるときには目をつぶっていてもハッキリ見えるから結局同じだった」と言われました 目をつぶっていても見えるとはどういうことか理解できないので聞くと よくオバケが見えた最悪の時期には、うたた寝中に真上から落ちてくる男性が見えて 自分を通過した時には声が出るほど気持ち悪いし 決まった時刻に何回も同じ体験をするので、どうやら夢ではないし これは怪しいと思い近所で聞いてみると はやり飛び降り自殺があったマンションだったとか・・・ うう~む、恐いな~深いな~ G君から「お前は見る力がもともとないようだから安心しろ」と妙な励まし? の言葉をもらいましたが喜んでいいものか・・・ やはり世の中には恐くて不思議な事があるもんだな~ でもまあ、今はお互い幸せという事で乾杯~♪ 恐いのでたっぷりの酒で清めて祓いましょう さて、たくさん飲んでもう帰ろうかというときに 珍しく酔っ払ったG君が、一瞬で私の酔いを覚ましてくれました G「あ、そうや・・・これは気にすると思って当時は言わなんだんやけどな 何度か泊めてもらったオマエの部屋には、いつも2人おったで・・・」 私「いつもって!・・・2人って!・・・ひええええええええ!」 おかげで私は今もCDを聞きながら眠むっています 第211話 ウメボリ 7月4日 梅を収穫することをこのあたりでは「ウメをボル」といいます ウメの実をぼじり採ることで、なにも不当に高い値段を請求される ことではありません おととしの話、地元のスナックで梅酒のロックをすすめられました 新鮮な地物の梅で作ったので特別おいしいよ~というのです 聞けばブランデーでつけたらしく、妙に美味い梅酒でした そういえば昔、祖母がつけた梅酒をカキ氷にかけたらうまかったな~ 漬けるのに使う氷砂糖が氷なのか砂糖なのか不思議で食べてみたかったな~ それほど難しくはないと聞き、私もなんだか梅酒を作りたくなりました アドバイスをもらおうとみんなと話していたら、一緒に飲んでいたカワイイ後輩が 「梅なら6~7月はウチに売るほどありますよ~」 というので詳しく聞くと、彼の家は立派な梅林を持っており 市場に出荷もしているとのこと それなら来年は2~3kgほど買わせてもらうので 木から梅の実を採るところからさてはもらえないか つまり「梅狩り」ならぬ「梅ボリ」ができないかとお願いしておくと 去年の6月は梅林に連れて行ってくれて ウチの子供達にも大粒の青梅をボラせてもらえたのです キャタツに登り、コロッコロに鈴なりの南高梅の枝から プッチン・プッチン♪とリズムよくボルのは大人でも楽しく 帰りは運搬用の小さなモノレールにナイショで乗せてもらい とても良い思い出ができました すぐにもって帰るとボリたての新鮮な黄緑色のウメを洗いレシピどうりに ちょっとアク抜きして乾かしたら半日と待たずに漬け込むのです これなら良い梅酒ができるはず、なんといっても梅の鮮度が違います! 後は半年待つだけです (早ければ2ヶ月ほどで飲めるらしいです) ちなみにウメの表面に水分を残さないように漬けるのが肝らしいです 上手に仕上がるといいのですが・・・どうなんでしょ? さてさて半年あっという間に流れていよいよ飲む日がやってきました! そういえば17年前に結婚祝いに旧友からビール作りキットを貰って バッチリ消毒も温度管理もしたはずが、たっぷりの白い泡ではなく たっぷり白いカビの浮いた腐れ汁を作ってしまった過去がよぎります あの時はショックだったな~ 酸っぱい臭いで吐き気がしたな~ あんな気持ちにはなりたくないな~ もしも梅酒の色が悪くても、濁っていなければよしにしようか 味が悪くても、香りがよければよしとしようか 後味が悪くてもアルコールが入っているならそれでエエか~ などと心の保険をかけるのにいろいろシミュレーションしつつ 待望のマイ梅酒を倉庫から出してロックで飲んでみると・・・ああ~無駄だった! ああ~なんということだ マズイい時のために心にかけた保険が無駄だったのです つまり、めっちゃめちゃ美味く仕上がっていたのですよ 一般に売っている梅酒と比べて劣るところがどこにも見つかりません 香りも酸味も色も後味も申し分なく、初めて作ったにしては出来過ぎです 梅酒だけに自分に酔うわけではないですが、自分でも信じられないほどなのです 子供達にはソーダ水で割ると素直にうまいと言ってくれます 自分の好みの濃さに調節したり、ブランデーを追加したり工夫すると 飽きるどころかますます美味くて困るほどです そうだ、あのスナックで自家製の梅酒が1杯500円なら 5ℓビンや氷砂糖、リキュールなどの代金を含めても8杯分でおつりが来るな~ 500円ならボラれているわけではないけど、やっぱりウメはボルのが一番! というわけで今夜も琥珀色のグラスをウメ~!と言いつつ飲み干すのでした ウメボリでは長浜荘さんに大変お世話になり、ありがとうございました 梅の時期には新鮮なウメの小売もされていますので 興味のある方は連絡してみてはいかがでしょう 民宿・長浜荘 宮津市獅子崎376-1 Tel 0772-22-4840 第210話 ボツネタ集 6月30日 いずれはこの「店長の独り言」に載せようと思って書いておきながら うまくまとめられずに、ず~っと放置している支離滅裂な話が ずいぶんたまってしまいました もう最終の243話までに掲載することもなさそうなので ここで、そんな断片的な内容を15本だけでも発表してしまいます 1「マンパ」 同じマウンテンパーカーを気に入って20歳からもう25年も着ているし 色違いも10年以上着ているのが2着あるよと言うと後輩が驚いてくれた 流行に疎い私には、このマンパが着心地でも実用性でも申し分ないのです 娘のお世話になった先生にこの話をすると 「私は幼稚園からずっと同じ工作バサミを使っています」と言われて さらに上がいるものだと驚いた しかし文章にすると特に盛り上がらないのでボツに 2「カメラ」 娘の七五三で知らないおじさんから写真を撮らせてと言われました なんだか気持ち悪かったのですが晴れ着の三女を撮ってもらおうとすると おじさんは「奥さんだけで」と言ったのです! そういえば数年前に着物姿を撮らせて欲しいと言うおじさんが ウロウロしていると聞いたことがありました 後日先輩に聞いたら、同じような話を教えてくれました 娘の試合にいつも同行するおじさんが娘達の写真を撮ってくれており チームのだれかの親だろうと思っていたが1年以上たってから だれの保護者でもないことが分かり、ましてや学校関係者でも無い・・・ 具体的に書くのはリアルに恐いのでボツ 3「殻」 ちょっと暗いB先輩とウイスキーを飲みすぎてしまったのは・・・ おつまみに出てきたピスタチオをつまんだBさんが 「オレは歯が悪くなってこんなカタイもんはニガテや、よくみんな平気で食べるな~」 というので、Bさんをかつごうと調子に乗った話 「カタイから美味いんです、このガリガリした歯ごたえで脳が揺れるのが最高なんです」 そういって二人でピスタチオを殻をむかずに食べていたら 口の中が砂まみれのような感じになって飲み込むことができないので ウイスキーをおかわりしつつゴクゴク流し込めば 5粒も食べたところでお互いにすっかり酔っ払ってしまうし 私の奥歯は欠けてしまった・・・ このくだりを長々と書いたので、アホらしくてボツ 4「動物~その6」 近年は家の近所にまで普通にタヌキとキツネだけでなくイノシシとシカが出るようになり とうとうクマとサルにくわえてヌートリアとハクビシンまで繁殖がし始めまて困る話と 我が家に巣くいはじめたアライグマを捕獲して市役所に引き取ってもらった話 近所の人もアナグマの見間違いではなかったことに驚いていました 長女は処分されてしまうことに対してしょうがないと理解はしていましたが 「パパ、次からは動物を殺すのはやめて」と言うので私は複雑な気分になった そういえば祖母がワナにかかったドブネズミを川に沈めて殺すのを 小学校生だった私も複雑な思いで見ていたのを思い出す 逆に父は今でも捕まえた極悪イタチを山へ捨てに行く、つまり逃すのです どちらがいいのか害獣駆除に対する意識を書いてみても文章がまとまらずボツに 5「1枚だけ選ぶなら・・・」 10代からずっと聞き続けてきるアルバムは「大瀧詠一・ロングバケイション」 これは世界最初のCDとして有名ですが、大滝詠一のけだるい声質は個性的でスバラシイ 女性歌手で個性的と言うなら平山三紀も好きですね~あの鼻にかかりながらも 鋭い声質で黄色い悪女風のいでたちは、唯一無二です 平山みきのアルバムなら「鬼が島」が窪田晴男の曲と近田春夫の歌詞で秀逸です そして近田春夫といえば~彼のバンドの「近田春夫&ハルヲフォン・電撃的東京」が最高 無人島に1枚持っていくならこれでしょう!という話は みなさんにオススメしなくても私が死ぬまで機嫌よく聞けばいいのだ! という自分勝手さ炸裂のためボツ (敬称略) 6「レコーディング」 隣町の小さなスタジオにカラオケ仲間が5人集まり、ご当地ソングを作るのに コーラスのレコーディングをするという話 といってもハモるわけではなくサビの5小節をメロディと同じ音で歌うだけで ディレクターさんからは、うまく歌う必要はないと言われてしまい拍子抜けでした 『飲み屋で曲を聞いていたヨッパライが一緒に口ずさんでしまったようなイメージ』 との説明を受けて、それなら適任かと深く納得しました スタジオ内では窓越しに大きなヘッドフォンへ指示がきて まるで音楽関係者にでもなったような気分を味わえました 「もう一度丹後へ」というタイトルの演歌でした 後日ネットで公開されていたので聞いてみましたが 私達のコーラスはほとんど聞こえませんでしたのでボツに 7「ウワサをすれば」 会議所で雑談中に、H先輩が家に妙なオッサンが来た話をしたところ K先輩の会社にもB先輩の店にもそのオッサンは来たということで 詳しく話を聞くと・・・どうみても怪しいそのオッサンは運転免許を見せ 「怪しいものではありませ~ん、千円貸してくださ~い」と言うらしく どんな感じのなのかを説明し始めたところ 会議室のドアが開いて、まさにその怪しいおっさんが 「怪しいものではありませ~ん、千円貸してくださ~い」と タイミングよく現れた話 かなり衝撃的だったのですが、うまく文章にできないのでボツ 8「スイッチ」 心のスイッチはそれぞれあるものですな~という話 物心ついてから6歳頃までの私は、なぜか鉄道が好きで 踏み切りからカンカンという音が聞こえると、妙にソワソワしてしまい 一目でも列車を見送ろうと、あわてて線路脇まで移動したものでした そういえば、長女はしゃべれるようになった頃に地元を走る「丹海バス」を見ると 「タンカイ!タンカイ~!」と毎回エキサイトしていました 思い起こせば次女は「トトロ」に、三女は「セメント工場」に反応していました 他の工場は全く気にならないのに、生コンクリートを扱う工場だけに反応するのです これも半年ほどでおさまりました ちなみに最近の私は造り酒屋の杉玉に反応してしまいます! この杉玉の説明をいつも以上に長々としてしまい、まとまりがなくなりボツ 9「微妙な他人」 2件目の飲み屋で隣に座っているオッサンをどこかで見たことあるな~と考えれば 1件目の店でも隣に座っていたオッサンだった 3件目に行くと客さんは私達だけでした とりあえずカウンター席に座ってシメのラーメンを注文してトイレに行き 席に戻るとあのオッサンがまたもや隣の席に座っている 思わず会釈したものの、何かしゃべらなくては逆に気まずいような・・・ こんな話をたくさんつなげてみたものの 微妙なニュアンスを上手に書けないのでボツに 10「困ったお客さん~その1」 数年前の定休日に知らないおばあさんが当店のシャッターをガラガラ開けて 暗い店内をのぞいていて驚いた話 出産祝いが必要とのことだったので、あわてて照明をつけた いろいろオススメするが全て気に入ってもらえず、3000円はもったいないし 2000円のお祝いならあげないほうがマシだと言って30分かけても決まらない 親戚の悪口をヤイヤイ言いながらじょじょにエキサイトして最後には 「なんで私があんな家のヤツらに出産祝いをあげなアカンのじゃ!どう思う? だいたい結婚式にも呼ばれとらんわい!アホらしなってきた、私はもう帰る!」 そう言うとシャッターを閉めて帰って行きました なんなんだ? 長く詳しく書いても結局は仕事のグチなのでボツに 11「好物~その6」 春から夏への季節で好物といえばイチゴとウナギとスイカでしたが ここ数年でタラの芽、タケノコ、新マタネギの順位が上がってきたよという話 タラの芽は一昨年、長女と山菜摘みに行った際にトンネル横の斜面で見つけて 不安定な足場と木のトゲに悪戦苦闘しつつ1つだけゲットしました それをテンプラにして家族5人で分けて食ると妙においしかったのです タケノコは去年、次女と後輩の家の裏山へ連れて行ってもらって堀りました すぐに持ち帰って、すぐに米ヌカと茹でてアクを抜き アツアツを刺身のように切って醤油マヨネーズでいただくと妙においしかったのです 新タマネギはこの春に友人宅でBBQに誘われたときに オニオンスライスサラダをいただきました 生のタマネギには胃袋を掴まれているような気分の悪さを食後に感じて ずっと敬遠していましたが、その新タマは甘くてリンゴのような サクサク感が妙においしかったのです でも、妙においしかっただけでは文章としては妙においしくないな~と思いボツに 12「困ったお客さん2」 数年前に大きなケース人形の修理の件でとにかく来て欲しいと電話をもらい 時間厳守でお客さんの家を訪ねるとなぜか玄関で10分も待たされて 「アンカケうどんを食べていたのに、あなたのせいで口をヤケドした!」 と叱られたり、修理代金は絶対に2000円以内と指定されたが ガラスが全て割れているので4000円以上はかかると見積もりをすると フリーマーケットで買った1000円の人形にそんな大金は出せないと言われた その後で、2000円以内で修理可能な業者を紹介するように言われたり 500円で当店が引き取らないかなどと全く話にならないのに帰らせてもらえず 「私はトイレに行ってくるから勝手に帰らないように」と言っておきながら 3分後にスッキリした顔で戻ってきたときに言われた言葉が 「あなただれ?なんでいるのよ!」 この話は突っ込みどころが多すぎるし、これも商売のグチになるのでボツに 13「特殊能力について~その2」 第102話の続編として「マジック・ペイント」を第113・131話 「ソロモン・リング」を第121話、「サイコ・タクシー」を第132話 「兄尊」を第165・166話で紹介済みでしたが 残る5つ「最強」「エンプティ・ウォレット」「メタボリック・ウエスト」 「ドランク・ドライビン」と「ストマック・リバース」についてのアホな話 「無敵」とは、飲酒で防御能力を高める強化系の技 K先輩が高校の頃、朝から酒を飲んで登校すると力がみなぎり勇気にあふれ 思わず隣のクラスへたった一人でケンカを売りに行ってしまった 当然ボコボコにされた先輩ですが、お酒のパワーで防御能力も高まっており 不思議と痛くはなかったので今でもお酒の神様には感謝しているという話 今では酔えば「エンプティ・ウォレット」でオケラになることもできるよと・・・ 残りの3つにつきましては解説する値打ちさえなく 自分でも年々そのあたりの能力がジワジワ強まっていることに危機感を感じて シャレにならないのでボツ 14「先輩・後輩」 この「店長の独り言」を盛り上げていただきました登場人物について 近所の人から「あのK先輩ってダレです?」と聞かれて困った話 先輩方にはN・H・K・Bのアルファベットなどを適当に使っておりまして イニシャルとかではありませんし、Kさんも毎回同じ人物ではないのです 狭い町ですし、アホな内容でK先輩が特定されて迷惑がからないようにと 気を使ったりしている・・・わけでもないのですが 後輩のJ・T・M・C、友人のUとGについても同じです というわけで全243話で10回ほど登場したKさんは 4人ほどいるのです、すみません そして最後に後輩C君から聞いた「親子風呂」の大爆笑ネタを書きあげるつもりが 妻に話すと珍しく大笑いしてもらえたので もう気が済んでしまいボツに 15「お話の絵コンクール」 8年前、長女が小学校で表彰状をいただきました 「なんでも買ってあげよう、おいしいモンも食べにいこか~」とベタぼめすると それを見ていた幼稚園児だった次女は「コレでなんでも買ってくれるんやろ?」 と言って『保育園の卒園証書』をもって来ました 「残念やな~これは表彰状やなくて、だれでも持っとるモンなんや~」 と言って受け流しましたが、園長先生と出会った時にこの話をすると 「それはちがいますよ、あの卒園証書は毎日がんばって保育園に通い続けた まさに表彰状なんですよ、それはちゃんと認めてあげないとかわいそうです・・・」 と残念そうに言われました 私はその言葉を受け流してしまいましたが、認めることの大事さに気づけば気づくほど ジワジワ反省をすることになり この話だけはボツにするが残念でした 第209話 子育てについてのちょっと真面目で長~い話 6月6日 ビールをゴクリと飲み干し、目をつむって思い出します・・・ ジャラジャラとクマ避けの派手な鈴の音が近づいてくるので どうやらウチの子が帰ってきたなと勝手口からのぞいてみると 娘は「パパ~ただいま~!」と叫んで笑顔で手を振っています 「おかえり~、学校は楽しかったか?」と聞けば 「楽しい!」と言ってランドセルを投げて オヤツも食べず、もちろん宿題もせずに友達の家に行くのを 元気がなによりだな~と見送りました ああ~なんとかわいい、そして・・・なつかしい ピカピカの小学1年生だった娘のそんな光景が忘れられません それから年月があっという間に流れて6年にもなると ジワジワと反抗的になり、ついに無反応になってきました 妙におとなしく帰ってきた娘に 「おかえり~、学校は楽しかったか?」と聞けば 「ベツに~」と言ってランドセルを投げる時はまだマシで 全く無視されることもあります とりあえず「ランドを投げるのはやめろ」と注意しても無駄で オヤツを食べても宿題はせず、かといって遊びにも行かず しゃべるかと思うと「学校行きたくない」とか「だる~」とか マイナスの言葉ばかりなのでこちらまでだる~くなります 夜遅く帰宅すると夜更かしをしてマンガを読んでいた娘は私を横目で見て 「なんや!」と言うではありませんか 「なんやとはこっちのセリフじゃ!おかえりなさいやろうが!」 と言いたくなりますが、それを言っても 「オッサンはウザイ」とか、よくても「ハイハイ~」と気の抜けた返事に まともに向き合っては腹が立つだけなので こちらもあえて「ただいま」と声をかけませんし 「はよ寝ろ!」と一方通行で怒るだけ そんなことが普通になっていました 当然普段の会話も減って、これでは親子のコミュニケーションは とれているとは言えません・・・ それでも週の半分以上を一緒に夕飯を囲んでいるのならば 会話がなくても大丈夫だろうし、男親では女の子のことはよくわからんから 嫁にまかせていればいいと思って深くは考えていなかったのです そんな頃に飲み会で先輩方から普段は聞かない 真面目な子育ての悩みを聞くことができました 高校生の一人娘がいる、ちょっと暗いBさんと 明るいKさんとのやり取りが印象的だったのでご紹介します 第63話「育児マヒ」の続編と思ってください 私「え?U子ちゃんって高校生なんですか?まだ中学生かと思ってました」 B「K君の次女と同級でOO高校の2年生や、ホンマあっというまやで」 私「そうだ、Kさんの三女と同級のウチの娘がもう6年生ですもんね、早~っ!」 K「しかし、あのU子ちゃんがな~、子供の大きなるんはマジで早いっすね~」 B「そういえばK君にはずいぶん相談したな~ほんま感謝しとるで」 私「え?Kさんに何を相談したんですか?」 B「育児というか、子供とのかかわりとかが分からなくなった時期にな」 私「ウチも3人娘がおりますが、確かに年々分からなくなってきますね」 B「今はうるさいくらいよくしゃべってくれるようになったけどいろいろあってな」 私「Kさんの方がいろいろありそうですよ」 K「なにか文句があるんか?5人も子育てしているワシの話は奥が深いんやど!」 私「でも、Kさんに育児のイメージはないな~、ないない」 K「アホ、お前が子育てに悩んでも真逆のアドバイスをしてやるぞ」 私「もとよりボクはKさんを反面教師にしてますので大丈夫です」 K「そうそう、子供とのコミュニケーションの基本は体罰や!勝手に悩めよ~」 B「まあまあ~、こんな機会やし、矢野くんにも話をしとこか・・・」 Bさんの話は中学生だったU子ちゃんが学校をサボリ気味で 問題行動をするようになったことをKさんに相談していたところ とうとうU子ちゃんが万引きで御用になってしまい迎えに行かねば・・・ という3年ほど前の衝撃的な場面から始まりました 奥さんが忙しかったので、Bさんが仕事を抜けて警察に行くと 泣くばかりのU子ちゃんにBさんはどうしていいのか困り Kさんに電話をかけると「今日1日はU子ちゃんと向き合ってみたらどうです」 とアドバイスされたとか 向き合うとはどうしたものかを考えあぐねたBさんは仕事に戻らず そのまま海沿いの道路をあてもなく、ず~っと夕方までドライブしたら Bさんがしゃべらなくても、なぜか娘は自分が悪いと反省したとのこと 私「なかなかいいことを言いましたね~、Kさんなのに」 K「アホ、ま~オレに言わせれば悪いんはU子ちゃんやなくてBさんなんや」 B「今になればそう思うが、当時の何もせんワシは、自分が悪いと思えなんだ」 K「奥さんと仲悪いし、間に入ったU子ちゃんを無視する感じが見えましたよ」 B「妻と娘もよくもめてたし、そんなんとかかわりあいになりたくないやん?」 私「BさんはU子ちゃんとしゃべらなかったんですか?」 B「ああ~小学校卒業から2年ほど口をきかなんだな~、会話にならんのや」 私「2年も!自分の子供なのに会話にならんのですか?」 B「そう、年頃の女の子とどうしゃべってエエのんかもよくわからなんだ」 K「それでもU子ちゃんはBさんにかまって欲しいオーラがでてましたやん」 私「さすが空気を読めないBさんですね」 K「アホ、お前もそうとう空気を読んでないぞ」 B「そうそう~あの当時はアホみたいに忙しかったし、妻もイライラしてな」 私「それがどうやって普通にしゃべれるようになったんです?」 K「オレのアドバイスが効いたんや、子供と本気で遊んだほうがエエってな」 私「あそぶって言われても具体的に何をするんですか?ボクも聞きたいです」 K「山登りやスキーや釣りとかキャンプにバーベキューなんかも勧めたな」 B「ワシはK君みたいにアウトドア派じゃないけど、自転車くらいならと」 私「サイクリングですか~エエ感じですね、どこまで行ったんです?」 B「隣町まで普通のママチャリで往復30kmほど走って、パフェを食うた」 K「これがなぜか効くんや、U子ちゃんはそれだけでちょっと変わったんやで」 私「甘党のダイエット作戦ですか? なぜか激ヤセ的な~」 K「ハハハ、だれが体重の話をしとるんじゃい!これも育児なんやど~」 B「育児というか、海を見て帰ってきただけなんやけども、効果はあったんや」 K「U子ちゃんは父親がかまってくれるようになったのが嬉しいんや」 B「2ヶ月に1回でも、自転車じゃなくて散歩でも意外と喜んでくれるんやで」 私「そうなんですか、遊園地とかショッピングとかじゃないんですよね」 K「それでもエエけど、ようは子供と向き合って共感できる体験をすることや」 私「まずいと評判の店で子供と向かい合わせに座って『マズ~』って言うとか」 K「アホ、その例えは悪いけど『マズ』でも『コワ』でも『ヤバ』でもOKや」 B「子供と共感するのは思った以上に難しいんやで~、かなりヤバいんやで」 K「例えば子供が簡単な宿題が分からんと言うのをどうする?共感できるか?」 私「そうですね~『この問題なら、ほれ、こんな簡単に解けるぞ~』とか?」 K「それは共感ではないな、できない問題を簡単と言われたら子供は困るがな」 私「あ、そうか~『がんばったら、解けるぞ~』でも共感にはならんか・・・」 K「まずは『ああ~この問題か~たしかに難しいな~』とか言うのが共感や」 私「なるほど確かに共感してますね、でもそれで問題が解けるわけじゃないし」 K「アホ、共感できんヤツに答えを教えられても気分がエエわけないやろ?」 B「理詰めでしゃべっても会話にはならんのやで、これがポイントや」 私「ほな、共感さえしたら子供とちゃんとしゃべれるようになるんですか?」 B「そうそう『このパフェうまいな~』とか『足がつかれた』とかが言える」 私「そこからはじめるんですか・・・当たり前すぎてあえて言わないかも」 B「ま~そこらへんからワシは娘としゃべれるように変わったんや」 私「ほな奥さんとは?」 B「まあまあ、それはそれでなんとかしゃべるようにしたんや、な~K君よ」 K「奥さんと共感するにはまず話を聞くだけで、ちゃんと答えんでもエエから」 私「聞くだけって?答えんでも共感になるんですか? あ!聞き流すんでしょ」 K「そう、ぶっちゃけ結論とか改善策を理詰めで議論しても意味はないんや」 B「『そうか~』『ほんまか』『大変やったな~』とかでエエんやって」 私「なんかクレーム担当の相談員みたいですね~ストレスたまりそう」 K「たまらへん、それで妻のストレスが抜けるんや、早く慣れたら案外楽やぞ」 B「とにかく沈黙や口論をするよりはずいぶんとマシな雰囲気に変わるで~」 K「そういうのを子供はよく見とるわけや、お前のところは大丈夫か?」 私「ああ~そういえば夫婦の会話・・・減ってますね、ヤバいかな~」 B「かなりヤバいと思うで~、昨日はなんの話をした?そもそも覚えとるか?」 私「・・・『ワシの夏のパジャマはどこや?』とか・・・それくらいですかね」 K「晩御飯に何食べた?」 私「・・・何食べたかな~、ううう~おもいだせん・・・・・あ、ハルマキ?」 B「うまい言うたか?」 私「言ってないです、もちろんマズくはなかったですよ」 K「マズくないなら、それはうまいということやないか、気のきかんヤツやな~アホ」 B「寝る前におやすみとか言うた?」 私「それは言わないですね」 B「おはようは?」 私「言ってないです」 K「アホ!普通は言うやろ? というか人間として当たり前のことができてないぞ」 B「これは相当ヤバイ状態と見た!ううう・・・これはどこから教えてよいものか」 私「ええっ!みなさんは奥さんに『オハヨウ~』って朝から言ってるんですか?」 K「出た!家庭内別居~閉店ガラガラ~積み木崩し~ハハハ、おもろいやろ?笑えよ~」 私「笑うところが見つかりません、しかしなんでBさんも笑ってるんです?」 B「キミもワシと同じで暗いけど、K君みたいに何も考えんと笑えるほうがエエんやで」 K「家で親がニコニコしとったら子供は安心するもんなんや、お前笑ってもないやろ?」 私「うう・・・笑ってませんね、むしろ父親は笑わんほうがエエような気もしますけど」 B「家で酒飲んで『うまいわ~、ワシは幸せじゃ~』って笑たら家内安全、間違いない」 私「なんか違うような気がするんですが・・・明るいのと軽いのとは違うわけで・・・」 K「違うことはない!とりあえずテレビ見たら皆で笑うやろ?そんなんでエエんじゃい」 私「テレビでボクはあんまり笑いませんよ、笑わせようとする演出がわざとらしくてね」 B「イチイチ演出なんか考えてテレビ見るか?お前はかなり共感しにくいヤツやな~」 私「あ、そうかも、みんなが大笑いしてても僕だけは特に笑うほどでもないな~とか」 K「あ~~こんなオッサンとは絶対だれも会話したくない!めんどくさいもん~お前は」 私「めんどくさいって、失礼な!でも親父はそういうめんどくさそうなモンでしょ?」 B「めんどうでもウチはK君のアドバイスを聞いて、笑うようにしてよかったと思う」 K「聞いたか?Bさんはオレに感謝してくれとるし、それで何回もおごってもらった」 私「へ~、Kさんのアドバイスでね~、結局それがU子ちゃんにどう効いたんですか?」 B「そうそう、それでU子は学校をサボらんようになったし、問題行動もなくなった」 私「えっ?そうなんですか・・・いや~よかったですね~ で、それがKさんおかげと」 B「そう、妻の話を聞き流し、娘と遊び、ちょっと笑うようにしただけ、それが効く」 K「ま~オレに言わせれば、親が変われば子も変わるっちゅうことやな」 私「ということはU子ちゃんはBさんには全然かまってもらえてなかったんですか?」 B「そう、しかも妻も娘を叱るばかりでよく分かってないし、かまってもなかったんや」 K「そのBさんは奥さんも全然かまってなかったし、アカン亭主でアカン親父やった!」 私「Kさんも空気読まずによく言いますね~」 K「アホ~、オレはしっかり女房をかまったから5人も子ができたんじゃろうが!」 私「今夜のKさんは説得力がありますね~、ちょっとだけ参考にさせてもらいます」 K「ちょっとだけか?メンドクサイな~とりあえず笑っとけ!そこからじゃ、ハハハ」 私「しかし、Kさんは何でそんなに詳しいんです?昔からではないですよね」 B「それはな・・・K君ところも昔はいろいろあったからな~、なんせ5人!」 K「Bさんの5倍やで~警察に何回迎えに行ったこ・・・Bさんやめてください!」 B「ストレスでブチ切れた奥さんを実家に何回迎えに行ったことか~ハハハ」 私「ハハハ、なるほど~そうですよね~Kさんが詳しくないわけがない!ハハハ」 K「ハハハって笑うな~!そこは共感せんでよい!もう閉店ガラガラ~お勘定~!」 お二人の言葉には聞くべき部分が多く、かなりメモをさせてもらいました ちょっと暗くて不器用なB先輩と私は似ている部分が多いので 気をつけねばと思いました 我が家も娘達が警察のお世話になどならないように 今からしっかり遊んであげようではありませんか! 妻の話も聞いて、面白くないテレビも酒飲んで脳をマヒさせて笑いましましょう! そして、1年間それを続けてみることにしたのです すると2年目には確かに変化があったのです・・・が いや~大変でした 初めは、私くらいのイケメンになると子供と遊ぶのは楽勝で いざとなればスイーツ作戦発動!と安易に構えていたのに 聞くのとやるのは大違いで、子供をサイクリングやドライブに誘っても スイーツをプラスしても「なんで?めんどくさい・・・」と断られてしまうのです これは共感する以前の問題です しかも一緒に遊べたとしても子供は喜んではいないことのほうが多いのです それでも月に1度は機会を作って誘うようにしましたら 無視されることは減りましたし、中学に入って反抗期がやや落ち着いた頃には 子供の方からボチボチしゃべってくれるようになってきたのです 「ただいま~」と帰ってきてくれるので「お帰り~」が言えます 問題行動も今のところ縁がありません 夫婦の会話もちょっと増えて家庭内別居は回避されました ありがたいことです KさんBさんの両先輩には、毎晩おごって差し上げたいくらい感謝しています 以前は娘との会話がすぐに途切れて続かなかったのに こちらが聞き役のときに「へ~」と「ほ~」だけ10回も繰り返してしまい ほかにどう返したものか考え付かないのはなんでかな?と考えると ここ3~4年はすぐに終わるようなパターンの会話しかしていなかった事に加え ある晩、その原因がどうやら娘や妻ではなく私のほうにあり 自分こそが不器用なアカン父親でアカン亭主であることを実感するのです それは私が遅くなり、夜の12時に帰宅したときのことでした 勝手口のカギを開けると試験週間でまだ起きていた娘が出てきました 「早く寝ろ!」と言おうとしていた私に 「パパ、おかえり~おそかったな~」と言ってくれたのです この普通の会話に軽く驚いた私は「ただいま」とすぐに反応できませんでした 「ご飯は食べた?」と聞かれてもクビを横に振るだけで言葉がでてきません 「ほなカレーをレンジで温めよか?」とやさしく尋ねてくれても 私はぶっきらぼうに「自分でする」と言っており それでも「麦茶をいれよか?」と気を利かせてくれる娘に 「ワシはビールを飲むからいらん」と言ってしまったのです 冷蔵庫のビールをプシュと開けて一口飲んで 娘がいた方向を見たときにひどく後悔しました 娘の入れてくれる麦茶の方がうまいに決まっているではありませんか! せっかくのカワイイ申し出に私は笑顔で「ありがとう」を 2回言うだけで1日が幸せに終わるはず・・・なぜそうできないのか? 自分でもワケが分かりません、勝手に口が動くのです しかもこういうことは初めてではない感覚もありますし 妻とはこんなふうに終わるパターンの会話が少なくないな・・・いや多い! たった今気がついた 自分はどんだけかわいげのない人間なのだろう! ああ~バカバカ Kさんが言うメンドクサイとはこういうことなのか! 「空気が読めないにも程があるじゃろ~、アホ!」と鏡に向かって突っ込んで Bさんの言う「年頃の娘とどうしゃべってエエんかわからん」という状態は こういう感じなのかもしれないな~とも理解しつつ このまま娘が私に似てかわいげのない暗い女性に育ってしまったら困るので Kさんのアドバイス「親が変わらないと子供は変わらない」を思い出して まずはカワイイ娘を育てるには、自分がカワイイ父親になることが大事と その苦いビールをいつもよりカワイイ仕草で飲み干してみるのでした ハハハ 第208話 鳥鳥 5月20日 私が鳥を保護する話の多さに、後輩から「本当ですか?」と聞かれました 実はあの話はぜ~んぶウソで・・・はなく、ウソみたいにまだまだあるのです 私に似て動物好きな長女もよく拾ってくるようになったので ダンボールを運んでいるのを見た妻が 「その中にまた鳥がおるんちゃうやろな?」と疑うほどなのです その1 イソヒヨドリが国道に落ちていたので拾いました ちょっと頭を打っていただけなのか半日で元気になり 子供達に見せる前に逃げてしまいました イソヒヨドリは3羽目 その2 長女が巣立ったばかりのシジュウカラを拾いました 家へ連れ帰る途中に手から急に飛び立ち屋根の上にとまると すぐに親鳥がやってきて、一緒に飛んでいきました 保護するつもりが、危うく親と離してしまうところでした その3 ムクドリが落ちていました・・・あまり飛ぶことができないようで ミールワームなどをやってみたところ翌日には元気になり 防犯ベルのようにけたたましく鳴きだしたので、すぐ逃がしました その4 長女が近所でスズメを拾ってきました。尾羽が短いのでまだ幼鳥です 雨にぬれてブルブルふるえていたので、ドライヤーで乾かして コタツの中で暖めていると元気になってきました 飛べそうなので拾ったところへ連れて行くとチュンチュン鳴いて親鳥を呼びました するとスズメ達がたくさん集まってきて、お父さんとお母さんが近くまできて 3羽で仲良く飛び去りました めでたしめでたし スズメは5羽目? その5 長女がセグロセキレイの幼鳥を拾いました ミールワームをやるとピョコピョコ歩き回って元気になったので 翌日に外へ連れ出すと、やはり親が迎えに来ました セキレイは3羽目でした その6 近寄っても飛ばないウミネコを捕まえましたら、釣り糸が2本も翼に絡まっていました つれて帰って糸を切ってはずしましたが釣り針が胸元に深く刺さって化膿しており エサを与えて安静にしても、未明には冷たくなっておりました その7 長女が白鷺を拾ってきました、3週間で元気になり保護した公園で放しました なぜか10分くらい固まって飛びたちませんでしたが、長女が空き缶を カンカラカ~ンと蹴飛ばしたのに驚いてフワフワ空に舞い上がり 山の向こうへ飛び去りました その8 トンビが落ちていました、抵抗もしないので次女と連れ帰り エサを与えたら1週間でほどで元気になってきました 羽がボロボロだったので生えそろうまで保護しようと思っていましたが 窓の隙間から逃げてしまいました・・・うまく飛べたのかな? トンビは4羽目 その9 夜の自販機前の路上にコサギがたたずんでおりました 持っていた傘を反対方向に広げて退路をふさいですばやく捕獲・・・いや 保護してみましたが、怪我をしているようでもなく 手をゆるめるとフワフワ夜の川面へ飛び立ちました その10 長女が中学下で右の翼だけがボロボロのキジバトを拾いました 2ケ月で羽が生え換わって飛べるようになり放しました 電灯の傘の上にとまって、食卓宅へワタボコリを落とすのには困りました その11 長女がハシボソガラスの幼鳥を拾いました 2日ほどで元気になったので、拾ったところで放すと しばらくして親がやってきて、かなり威嚇されてしまいました フンやゲロを近くに落とすとは、なんだか失礼だな~! カラスも2羽目 その12 京都のお寺で豆をまくと集まってくる食い意地の張ったドバトを1羽保護しました もちろん、他の観光客が「ああ~!変なオッサンがハトを捕まえとる~!」 と騒ぎ出す前に放すのですが、長女はとても喜んだのでこの機会に鳩捕獲法を 伝授したところ、さすがは我が娘「手掴みのナコ」はすぐマスターしました そうそう、思い起こせば20年前、学生時代に須磨寺へ行ったときのこと 友人の前でウケを狙って鳩を捕まえて見せたのですが 「触ってみ~気持ちエエど~」という私に 「アホか!恥ずかしいからすぐ逃がせ」 「信じられん~、人がみとるやろ!まずオレらから離れろ」と皆冷たい反応で ちょっとした人だかりがそのときもできたような・・・ その12の続き おや?ハトと戯れている私たち親子を撮影している外国人旅行者がいます 気のせいか周りが我々と距離を開けているような・・・人もかなり集まっています しかも珍しいものを見るような眼をしているのは・・・気のせいではありません どうにもこうにも私たちは浮いているようです・・・だれか保護してくれませんか~! 追記~ 野鳥は危険なので、基本的に捕まえてはいけません! どれくらい危険かというと、トンビを保護して帰宅した際などは ダンボール箱がなかったため助手席の次女に持たせていところ トンビからシラミが10数匹ほども次女の手に移って 半そでのヒジのあたりまでジワジワ這い上がってきたのです 半狂乱で 「キモイからもう手を放す!」と叫ぶ娘には悪いのですが 手を離されると翼長1mを超えるトンビが車中でバサバサすると まともに運転ができないので、がまんするように言ったものの 娘がシラミだらけになっても困るわで軽いパニックになったことがあり危険ですし その話を小学校の保護者会でうっかりしゃべると とても信じられないという意見が多く、私がアホな親だとバレてしまいましたので 野鳥を保護するのは本当に危険ですね ちなみに鳥のシラミが人間に住みつくことは最終的にはないようです というわけで、よいこのみんなは絶対まねしないでね~ 第207話 先生 5月1日 印象の深かった先生方との思い出をちょとづつ 保育所の頃 昼寝の時間は苦痛だった、もっと遊びたいのにみんな寝てしまうし 全く眠たくないし、先生が添い寝してトントンしてくれるのもイヤで いつも寝たふりをしていた 幼稚園の頃 友人と遊んでいて先生の住んでいるアパートが近所だと聞いたので 一緒に先生の部屋を探検しに行くと 若くて明るくて優しい先生のイメージと違い、暗くて寒くて古い建物で 部屋のドアを開けて中をうかがうと先生は友達とガールズトークをしており 幼稚園での先生とは雰囲気が違った 子供の気配を感じてドアを開けた先生に「バレたか~」と言う私たちを 先生はいつもの顔で部屋の中に呼んでくれてコタツでお茶をご馳走になった 先生の友達からはカワイイ教え子達だと言われた なんだか恥ずかしくてたまらなかった 小学1年の頃 プールサイドで水をまいたり花壇の草引きをしている 白いランニングシャツにステテコ姿のオッサンが用務員さんではなくて 校長先生だったとは全く気がつかなかった 小学2年の頃 グラウンドで遊んでいて砂の掛け合いになり、先生をもまきこんで盛り上がった 先生が風呂で頭を洗うとタイルの上にはたくさん砂がたまっていたそうで 次の日に「みんなは砂をしっかり洗い流せたかな?」と聞かれた 昨夜は風呂に入っていなかったので、まだ頭に砂が残っていると思うと頭がかゆくなった 昔は毎晩風呂を沸かしてたわけではなかったのを思い出す とてもキレイな声の先生だった 3年生の頃 理科の授業で使うデンプンが入ったビーカーを割ってしまった 休み時間にふざけて遊んでいて手が滑ったのです 連帯責任を意識させるためか先生は私の班に実験させてくれませんでした 仲間に申し訳ないやら情けないやらで、立たされながら泣いてしまった 授業中に泣いたのはこのときが最後だと思う 厳しい先生だったが、私の作った彫刻を職員室の机に 飾ってくれていたのはとても嬉しかった 4年生の頃 運動会で全体の指示を出す男の先生が厳しくてとても恐かった 逆に担任の先生をとても優しく思えたが、親からその先生は恐い人ではなく むしろとても明るくて楽しい人気のある先生だと聞いて驚いた PTAの飲み会ではいつもみんなを盛り上げてくれており 若いお母さんの手拍子でお茶碗を箸で叩いて小躍りをすると言われても 全くイメージできなかった 恐い先生を明るく変えるお酒も恐いと思った 5年生の頃 給食室の前で栄養士の先生に入室を止められた 当番なのにマスクを忘れていたので仕方ないことだが 私は妙に落ち着いた態度で先生と対峙して「見逃して」ほしいと訴えた 「明日は必ずマスクを持ってくるから」と言い訳をする私に先生は 「君の口から出たバイキンがオカズにくっついて食中毒がでたら どう責任を取るの!私の責任になってしまうじゃないの!」と言って 許してくれないので、温厚な私にしては珍しく 「なんでじゃい!」と逆ギレするとこのヒステリックな女性の先生は 驚くべきことを言い放ったのです 「まあ!アナタは女の子なのに、その口の利き方はどうなの?」と・・・ ・・・たしかに そうたしかに私はクラスでは一番背が高いのになかなかの美少年で 髪の毛も半分耳が隠れるくらいにのばしていたため中性的な魅力も もちろんあるにはありましたが女の子っぽい服装をしていませんでした 「ワシは男なんじゃ~!」と訴えても、いかんせんカワイイ声なのか 「ウソをつくのならもっとマシな事をいいなさい!」と信じてもらえず さらにヤイヤイ言ってくるのです 「そのエプロンは何?シワシワじゃないの、女子ならアイロンくらい当てなさい」 「男の子みたいなカッコウをしていると本当に男の子みたいになるわよ!」 もはやプッツン寸前の私に優しい友達が私の運ぶオカズのバケツを手渡してくれて 「せんせ~コイツは本当に男なんですよ」と言ってくれましたが それでも信用しない先生に最後は女子達も 「矢野君は男です、信じてあげてください」と証言してくれたのに先生は 「も~最近の女の子達はみんなどうなってるの!」とマジ切れで皆殺し状態になり 給食室前が騒然となり大渋滞でした マスクを忘れただけでこんな情けない状況になるとは 自分のフェミニンな可愛らしさを呪いつつも 男らしさとはなんぞやと考えさせられる事件だった ちなみに、この話だけはだれにも信じてもらえないので詳しく書きました 6年生の頃 5年生をからかって遊んでいたら、髪の毛を逆立てたその子の担任に 「イジメは二度とするな!」と胸ぐらをつかまれた 「仲良くなるために遊びでやっていることです、全く悪気もないし これはイジメなんかではありません」と妙に落ち着いて対峙して 口ごたえを続ける私を先生は半泣きでコンクリートの壁に打ち付けて怒鳴り イジメとはイジメられたと感じた相手が決めることなのだと教えてくださり そんな単純な事が分かっていなかったことに気づいた私は 自分の気遣いの無さをずいぶん反省することになった ずいぶん手荒いが良い先生だった 中1の頃 担任から健康管理は大事だと言われてもイマイチ分からなかったが とにかく風邪さえひかなければ健康なのだから、寒いときには 必ず首に1mくらいのタオルを巻いて寝てくれと言われた そのことだけをクラスの皆に何度も念を押していたのが妙に思えたが おかげで風邪をあまりひかなくなったので今も感謝をしています 日曜日にクラブのみんなと隣町へアニメ映画を見に行くことになり 親にその旨を伝えると反対されてしまい、どうしてもと言うのなら 担任の先生に電話で意見を聞くという大げさな話になってしまった 先生からはどうしてそのアニメが見たいのか、どういう内容なのか そもそもガンダムとはどういうロボットなのか?と尋ねられ 詳しく説明しているうちに自分でもバカバカしくなってしまい 先生は許可してくれたが映画には行かなかった 月曜日に楽しかった話を友人達から聞くのがつらいよりも 他の親は映画に反対すらしなかったと聞くのがつらかった 中2の頃 とても厳しい印象の女の先生が教室に入ってくると いつもに増して恐い雰囲気だった 授業の前に「今日が何の日か分かるか?」と何人かが当てられた どうやら今日が先生の誕生日と言う答えにたどり着き おめでとうございます・・・とだれかが言うと 「めでたいことがあるかい!今日で30才になってしもたんやで 結婚相手も見つからへんし、見合いでもしたほうがエエんか? 一人暮らしも大変なんやで 気休めなんかは言わんでくれるか! それよりこの中のだれかが私をもらってくれるんか? でも君らが結婚できるまで待っとったら、ウチはその時40才かもしれん そうなったらもう子供も生むこともできんやろう、どう思う? 大学出てからホンマ、あっと言う間やった・・・女の時間は短いんや あ、ごめんよ~グチきいてもろて ハイっ!授業を始めるぞ~25ページを開いてっ!」 何の迷いもなく自信たっぷりに見えたクールな先生にも 深い悩みがあることに驚いたし 女性には出産のタイミングの問題があること 結婚とは人生において重要な事だと教わることができて良かった 中3の頃 先輩達から、とても良い先生だと聞いていた先生が担任になった たしかに良い先生で、しかもハンサムだったが なぜか女子はロコツに嫌っていた そしてある日を境に先生は学校に来なくなってしまい担任をやめてしまった 言う事を聞かないウチのクラスに代理の先生方も手を焼いて 新しい担任がなかなか決まらなかった 卒業前にウワサに聞けば先生の愛車を壊したのが原因とのこと 当時は自動車のことで学校に来なくなるとは先生も大人気ないな~と感じていたが 駐車してあった車を大勢でひっくリかえしたのはイタズラのレベルを超えており 笑い話では済まされないことだったのだと分かったのは免許を取ってからだった 器物損壊は間違いなく犯罪だ 高1の頃 いつもさえない感じの先生がクラスのダラダラした雰囲気を見かねて 「昨日の夜10時頃は何をしとった?」と当てていきました 「テレビ見てました」「漫画読んでました」「ラジオ聞いてました」 答のほとんどが「私は勉強していませんでした」という内容だったので 軽いため息の後でくたびれた顔をした先生はこう続けました 「あのな~、お前ら・・・悪いことは言わん 勉強しとけ」 クラスは相変わらずダラダラとしておりましたが先生は次の質問をします 「女にモテたいか?モテたくないか?」と当てていくと答えのほとんどは 肯定的な内容でしたので先生は深くうなずいて 「だったら、お前ら~悪いことは言わん、やっぱり勉強しとけ・・・ というのも、大人になってからモテるには顔だけではダメなんや 経済力とか生活力も必要になってくる、まだ君達は学生だから収入は無い だが数年後は社会人になるわけや、そこで勤め先から給料をもらう 給料をたくさんくれる会社に入るのにもそこで活躍するのにも 学歴とか能力とか資格が大事で、それには学力が必要なんや それでもらえる給料はかなり変わってくる、差がつくわけや 月給を15万もらうのと25万とでは10万だけの差やないで~ それが1年続くと120万の差が出るし、ボーナスでさらに差がつくんや それが一生ではどうなる? 貯金があるのと無いのではどっちがモテるか思い知らされる日がきっと来る だから~もっぺん言う、今は勉強しとけ なぜならば・・・しょせん女とは金になびく動物なんや」 教育者の口から特大のNGワードが出た違和感を覚えた この最後の一言の重さが分かるのは後になってからで 偶然みかけた先生の奥さんは見まごう事なき美人だったのです 高2の頃 さて、我が美術クラブは文化祭で絵の展示だけではとどまらず 多趣味な顧問の先生が弾くギターに合わせて合唱することになった 練習では伴奏とぜんぜん合わないし、上達しないし 油絵の作品もまだ出来上がらないというのに、歌を楽しむ余裕は全くなかった なんとか仕上げた「あの素晴らしい愛をもう一度」と 「オリーブの首飾り」の2曲は見ている方からすれば 12名の淋しいステージだったかと思うが 本番では自分のクラスのコーラス発表よりも気分が高まり 高校の思い出での中では卒業式以上に鮮明に覚えているのです 覚えてもいますが、私だけはその当時まだ珍しかったビデオ映像で 文化祭を見返す機会に恵まれました 話せばこれまた長いのですが・・・ 調子に乗ってエスケープしたら電気科のK先生に見つかったのです 私は妙に落ち着いた態度で先生と対峙して「見逃して」ほしいと訴えた K先生からは怒られなかったが担任からはやんわり叱られたので反省したフリはした 後日、クラブで絵を書いていると学校の記録映像を撮るからといって 視聴覚教室担当の先生が美術室に入ってきたら ビデオカメラを持っていたのはあのK先生だった ちょっと驚いて「お前は美術部だったのか」と言うK先生に 顧問の先生は「コイツはちゃんとした生徒ですけど」と擁護してくださり 納得したK先生は私をしっかり撮ってくれたし、編集作業も見せてくれた エスケープ以外に接点は全くなかったのに、その後何度か話をさせてもらい 卒業後にもかかわらず視聴覚教室で記録映像を勝手に見たりするのを 「見逃して」くださった 文化祭、運動会や卒業式などの貴重な映像をありがとうございました 高3の頃 体調不良で検査入院した担任のT先生が急性の白血病で亡くなられた 先生からはたった一度だけ分かりにくい言葉でほめられたのをよく覚えている お葬式に参列すると、きれいな奥さんがこちらに向かって深々と頭を下げ かわいいお子さんが持っているT先生の遺影と目が合ったとき なぜか分からないがとても怖かった その時はこぼれそうになる涙をどうにか止めることができた 現在 早いもので高校卒業から30年近くたち、すでに初老の祝いも終わりました こうして先生達との思い出のページをめくりつつ現在を思うと 小さな町なのでたまたま出会った先生方にはお孫さんがいたり 保育園の先生にはひ孫さんがいることに驚きます 今では毎晩風呂にも入れますし どこをどう見ても女性に間違えられないほど男らしくなりました 気遣いも多少はできるようになったかと思います 今でも冬場は首にタオルを巻いて寝ますし 映画などは気が向けばいつでも見に行くことができるではありませんか おいしくお酒を飲んで周りを盛り上げたりすることもできますし 娘の文化祭にPTAコーラスで参加して歌を楽しむ余裕もできました ステキな女性と結婚することができて、かわいい子供を3人ももうけることがでました オッサンになってずいぶんたくさんのことができるようになったと気づきましたが 久しぶりにT先生のお墓へ参ると・・・私のほうが年上になっていることと 涙を止めることができなくなっていることにも気づかされました 第206話 ダイエット ~その3 4月13日 第136話でダイエットに成功した私はその後もリバウンドはしないように 暴飲暴食をせずに適度な運動と糖分の少ないお酒に切り替えていたのですが 夜食を解禁しても体重が戻るどころか減っていくのです 81kgから減量してその後1年も目標の71kgをキープしていた頃のこと 妻が「人間ドックに入ってみたら?」と勧めてくれました さすがに45年も生きればどこか悪くなっているかもと思うのと 減量で検査の数値が良くなっていることを期待して人間ドックに行きました サクサクと検査は進みましたが最後の胃カメラには参りました 生まれて初めての胃カメラは苦しくてオエオエうなって泣かずにはおれませんし 超ベテランの看護婦さんが横にぴたっとくっついて 「私がいるから大丈夫よ~ん、恐くない恐くない~男の子でしょ?」と言って 体のあちこちを熱心にさすってくれるのには参りました 「キモいんじゃ~!離れろ!ワシは子供と違うんじゃ~」と叫ぶことができなかったのは カメラで口がふさがっているからというよりも 予想を上回る苦痛に、誰かにさすってもらっていないと気が変になりそうだったのです さすってもらえるというのは大事な行為だな~と理解しました おかげさまで検査結果はまずまずで、胃ガンの疑いはありませんでした これで安心して酒が飲めます そういえば、3女のときだけは出産に立ち会うことができました 陣痛に耐える妻の枕元で何をしていいのか分からず 「さすってあげてください」と言われも どこをどのようにさすれば効くのか分からなくて立ち尽くすと 見かねた看護婦さん達が妻の腕や腰をさすってくれて 私はだれもさすっていない頭をさするというよりゴシゴシとこすっていたため 妻は出産後に頭を触られると分娩室を思い出すと言いました ああ~どこでもいいからさすってあげれば気がまぎれたのかといまさら気づきました 人間ドックの話でツヨシと飲んでいると 「もちろん大腸ファイバーもやってもらったんやろ?」と聞かれました 彼は昨年、大腸ガンの疑いが出たので大腸ファイバーとやらを受けたとかで よくよく聞けばファイバースコープによる大腸内視鏡検査のことでした しかし胃カメラは口からですが、大腸ファイバーは肛門からというではありませんか! あの恐ろしい胃カメラより長大なモノを入れられると思っただけで吐き気がします 絶対にそれはやらないと言う私にツヨシは「君は絶対にガンやと思う」と言いました 酒がまずくなるではないかと思いつつ家に帰って妻に聞くと 同じように大腸ファイバーをすすめようと思っていたところだと言ったのです でも・・・ワシは健康なんじゃい! ここ1年は何の検査も受けませええええええん! 2週間後に体脂肪計付のデジタル体重計に乗ると 2kgほど太っているだろうと思っていたのに 5kgもやせていました・・・66kgです 感覚として7kgも差があるのは今までないことです ココしばらくは、運動もしておらず、解禁した夜食やオヤツで日本酒もビールも かなりの量を飲んだりしていたにもかかわらずやせていたのです まさか大・腸・ガ・ン! 気になった私は安眠できなくなりガンのことや検査のこと思うと お腹がキリキリ痛むので、夜はアルコール濃度をさらに高めて 気を紛らわせる悪循環の日々に、とうとう私の胃腸が悲鳴を上げたのです! 隣町の病院で診察を受けると過敏性大腸炎との診断を頂きました そこで先生に聞いてみると 私「やせてしまうのは、もしかして大腸ガンではないか?と悩みだすと腹が痛くて・・・」 医「そうか、じゃあ調べてみる?」 私「お願いできますか」 医「大腸ファイバーね~」 私「え? あ、はい・・・もっと簡単なのはないでしょうか?」 医「大腸ファイバーが一番簡単で確実でしょうね、ご都合は?」 私「水曜日なら都合がいいんですが」 医「水曜?今日も水曜だけど、今やってしまう?」 私「ええっ?たしかに今日は水曜ですが、今ですか?」 医「検査するのに早い方がいいでしょ?」 私「予約とかはいらないんですか?」 医「ウチはいつでもOKです、すぐにやっちゃいましょう」 私「準備がまだなんですが・・・」 医「泊り込んだりしないから準備はいりませんよ」 私「いや、心のほうの準備なんです」 医「大丈夫、すぐにすませるから」 私「・・・わかりました」 いきなりの展開に戸惑うよりも先生が看護婦さんへ指示した言葉に恐怖を覚えました 医「すぐに高圧浣腸を用意して!」 私「え・・・!」 ツヨシから聞いていた、前の日から絶食して甘くないスポーツ飲料をたくさん飲んで 腸内をきれいにするだけで半日かかるという話とは全く違うではありませんか まさか当日にやられてしまうなどとは思ってもいなかったのです しかも浣腸って・・・聞いていません 浣腸されるだけですでに頭はパニックなのに、その後で大腸カメラとは なんて日だろう・・・あの胃カメラでさえカワイイものに思えました 浣腸は先生がするのかと思ったら若い看護婦さん二人にやられてしまいます しかも高圧です 5分は耐えるように言われても、もともと気にしすぎの過敏性大腸炎の直腸に 耐える力があるのなら最初からここには来ていません 2分も持たずに屈辱のギブアップでした トイレから放心状態で戻ると胃カメラの倍ほどもある黒光りした大技モノが準備中でした ところが薬を飲まされる直前に看護婦さんが「あれ?」と言ったのです 同時にカメラのジョイントからかなりの勢いで水がブシューっと飛んできました あわてた看護婦さんからは待合で呼ぶまでちょっと待ってて欲しいといわれたものの 診察室に呼ばれたのはなんと2時間後でした しかもとぼけた先生が言うのには 「今日はなんだか大腸ファイバーが調子が悪いから、次の機会にしようか~」 チョットだけホッとしましたが会計のときに妙な怒りがこみ上げます 浣腸代が請求されていたのです! 検査をしていないのなら浣腸の意味が全くない! なんで金を払わなアカンのじゃ~! そんな趣味はないぞ!とわめきたいところでしたが カメラさえ直れば検査は2時間かからずに終るのかと安心もしました 1週間後に再診して大腸ファイバーをお願いすると 先生は忘れていたようで、看護婦さんから耳打ちされて思い出すと軽い口調で 「ああ~あのときの・・・今日は時間あるの?大腸の奥までしっかりみとく?」 奥まで見るのが当然の検査だと思うのですが なんなんでしょう・・・言葉に重みがないのです どうも変なノリな先生ですが評判はいいのでお任せしましたら 今回は浣腸ではなく、ツヨシから聞いた半日かけて腸内を洗浄する作戦でした 高圧ですぐに済ませてくれるものと思って午後からは予定があったのに! ベッドで寝ながら3時間で2リットルの水分を飲んで何度もトイレに通いました そしてすっかりキレイになった私にカメラが差し込まれると 痛いし苦しいし、だれもさすってもくれないので、おちついてモニターを 見つづけることなどできませんでした 画面にはピンクのヒダヒダに空気を吹き込んで腸を膨らませながら 奥へと進む鮮やかな画像が映っているのを何度か確認しました お腹の中を別の生き物が入ってグリグリ暴れている感じで気分はすこぶる悪く 途中で進みにくくなると空気を入れては肛門をゴンゴン突き上げるのが苦しいのです 奥の院までたどり着いたときに先生は軽くこう言いました 「矢野さん~1.4mのカメラが根元まで入っちゃいましたよ!」 私はいまだにこの瞬間にどう言葉を返したらよかったのかが分かりません 組織を採取された後でカメラを引き抜かれた私は美しい涙を流しながら 空気で膨らんだ腸の違和感にその後6時間も苦しみ続けると同時に 3人も子供を生んでくれた妻にいまさら感謝の気持ちを伝えたくなっていました そうそう妻と言えば機嫌がいいのです ここ1月で8kg近くやせたと言って嬉しそうです しかし鈍い私はその変化に全く気づきませんでした 私も念のため体重計に乗ってみますと65kgです またやせています! 何が悪いのか、まさか脳みそか? もしやと思って以前使っていた体重計を引っ張り出して乗ってみると なんと73kgの表示 なんで?増えとるがな・・・ 念のためもう1台さらに古い体重計に乗ると 73kgを指したままで針のゆれは止まってしまったのです! まさか新しい体脂肪計付のデジタル体重計が壊れていたとは 妻はずいぶんがっかりして「許せん!」と言っておりましたが 私の場合はどうなるのでしょう? 実際にはリバウンドしているにもかかわらず やせていくのを心配するあまりに無意味な浣腸されたり 大腸カメラでグリグリされて流した涙は一体なんだったのか? 体重計のウソツキ~! 体重計が度量衡を無視して存在意義があるのかあああああああ! そして検査の結果ですが・・・翌週に病院へ行くと 先生はもったいぶったように言います 「この検査では矢野さんの大腸には問題が・・・全く・・・見つかりませんでした」 ようやく安堵の胸をなでおろす私に先生は妙な沈黙の後でこう続けたのです 「でも痔になっていましたよ」と・・・ なに?痔ですと! 早期発見のおかげで手術はしなくていいといわれて 注入軟膏をもらって帰るのですが・・・なんだかモヤモヤしたものが心に残りました こんな話を同級生の飲み会でぶちまけたところ 他人の不幸は面白いからきっと盛り上がると思っていたのに さほどウケないし、続きを聞きたがってもくれないので 話のネタにさえもならなかったのかと残念でしたが 後でみんなの話を聞くと残念という気持ちはなくなってしまいました 実は8人中6人もがすでに痔を患っており すでに手術を受けて落ち着いているG君や 今も出血を繰り返して困っているU君から言わせると どうやら私の場合はずいぶん軽いというのです そして、一番興味がなさそうに飲んでいたツレは 大腸ガンを摘出したばかりと言うではありませんか! 運よく早期発見できたため大丈夫だったとのことでした ・・・そういうことは先に言ってよね~ これでもワシはずいぶんマシだったのか! また驚かされてしまいました その夜は、あのウソツキ体重計にちょっとだけ感謝をいたしました 第205話 「・・・万円」 3月3日 子供の頃からテレビでよく見ていたおなじみの吉本新喜劇を 去年はとうとう大阪まで家族で見に行きました いや~、生で見るといつもの数倍も面白く感じますね~ 井上竜夫の「おじゃましま~~んにゃ~わ」の出オチは(敬称略) 私が子供の頃と変わりませんし、子供のように喜ぶことができます このギャグとよい意味で対照的な安尾信之助の放つボケが斬新でよかったです 登場してすぐ「おじゃします・・・か?」と言うかとおもえば 「私は聞きたいことがあるんです・・・か?」とさらにボケて 「なんで疑問やねん!最後の『か』はいらん」とつっこませるのです 意外にも母は村上ショージのネタを一番面白いと喜んでくれましたし 子供達もまた行きたいと言ってくれましたので、両親がボケるまでに もう一度一緒に吉本を堪能しに行こうと思いました ボケるといえば私は年寄り役の間寛平が最強かと思っています 杖でセットをたたきまくって暴れたり、人の話をよく聞かずに 「誰がじゃ~」「何でじゃ~」「ど~してじゃ~」と繰り返すのは 面白くてたまりませんでした 故・原鉄男の扮する定食屋のオヤジが真顔で 「お会計700・・万円」とか言うのも地味に面白かったな~ ただし、こんな吉本的なシチュエーションを子供の頃はテレビの中だけと思っていました 実生活での吉本的な一番古い記憶をたどれば・・・ 学生の頃にラーメン店で言われたのです 「塩ラーメンの大盛り550・・・万円です!」 これが人生初の「・・・万円」だったのでとてもよく覚えています いくらなじみの店でもいきなりやられるとどうしていいのか分からず固まってしまい 黙って1000円をわたすと「それじゃ~450万円のおつりね~」と言われて店を出ましたが 一言も返せなかった私は、おなか一杯なのに何か物足らなさを感じたことを覚えています どういうリアクションがよかったのか・・・ 予行練習するなら、すぐによろめいてコケるか、「なんでやねん」と突っ込むか あるいは「めっちゃ安いやん・・・ツケといて」あたりが正解かな? しかし次からはいつ来るかと待ちかまえているのに「・・・万円」といわれることは もうなかったのです・・・ 社会人になってから神戸の定食屋でうどんを食べていると 「・・・万円」を隣のお客に店主が使ったので緊張したことがあります お客さんとは気心が知れている間柄のようで、やりとりが見事でした 店主「おおきに~日替わり定食が600・・・万円です」 客「安っ!ほな1千万円札ではろうたるさかい、400万円返せ!」 すると店主はチャリンチャリンとおつりを数えながら手渡します 店主「100万・200万・300万・400万円のおつりです」 客「おお~これがウワサに聞く100万円玉か~初めて見たわい」 店主「私も100万円玉を初めて見た人を初めて見ました」 客「あ~ほ~!もうこんな店には来んからな~」 店主「昨日もそれ言うてはりましたやん」 客「そうやったっけ?1年ぶりやろ?」 店主「それも昨日ゆ~てました」 客「昨日も阪神勝ったか?」 店主「昨日も負けました」 客「ほなまた来年な~」 店主「また明日もおまちしてま~す」 客「ごっつぉーさ~ん」 店主「まいど~」 ああ~すごいな~、神戸市はバッチリ関西圏だということを忘れていました これはついていけないぞ~ 恐るべし神戸! などと感心してはおられません 次は私の番かも 食べ終わるった私は緊張してレジに向いましたが主人からは普通に 「月見うどんの大盛りで550円です」と言われてしまったため 逆に「言わんのかいっ!」と突っ込みそうになりつつも黙って会計を済ませば これまたおなか一杯食べたのに、物足らない感じで店を出たのでした ああ~「・・・万円」はなかなか来ないな~ 吉本的なやりとりで印象的だったのが 配達の途中で田舎の小さなスーパーのレジに特売の缶コーヒー1本と 菓子パン2つとガムを買って並んだときでした 若いバイトのお兄さんが超早打ちでキーを叩いて言うのです 「4点でお会計16万4千3百3十2円になりま・・・せんよね~!」 誤打とはいえスーパーのレジに6桁の数字が並んでいるのを初めて見ました 前述の安尾信之助のギャグの「になります・・・か?」と似ています このお兄さんは指も早いが頭の回転も早いようで一人突っ込みのあとで すばやくレジを打ち直すと「390円です」と訂正してしまい 私にコケたり、「ピッタリ164332円あるわ~全部一円玉で払う!」 などとボケる暇を与えてはくれませんでした ああ~またもや物足らない感じがする~ 今ではバーコードリーダーで読み取ることが多いので 「レジの誤打」はあまり見かけませんが、以前は金額キーのほかに 部門キーと掛け算キー、割引キー、消費税キー、小計キーなどを使っていたので 打つ際に手元が狂うと驚くような数字になってしまうのです 私も新入社員の頃にやらかした覚えがあります・・・か? なんてな~ さて、つい先日のこと初めて入った定食屋での話です 狭い店内ではおじいさんが一人でラーメンを食べていました 水をもって来た店員は70代の無表情なおばあさんでした 私もラーメンを注文したのですが返事もなく、持ってくるときも無言でしたので なんだか感じ悪い人だな~と思いつつもツルツルと先に食べ終わった私が レジ前で財布を探っていると、まさかの展開が! そうです!このおばあさんが「ラーメンは500・・・万円」と言ったのです かれこれ25年ぶりの「・・・万円」に私はとまどい 500円玉を手渡す意外になんの反応もできませんでした この店に限っては絶対に来ないと油断していた私の若さゆえの失態でした おりしもそれを隣の席で見ていたおじいさんがワンテンポ遅れて驚いたのです このおじさんも70歳くらいに見えたため、大変失礼ながら 驚いている内容がラーメン1杯を本当に500万円と勘違いされたのか 私のような40代の若造が何の返しもできないでいるノリの悪い様を嘆いたのかが はっきり分からないのです 私 「ごちそうさんでした~」 おばあさん「ラーメンは500・・・万円」 私 「・・・!」 おじいさん「えっ?」 私 「・・・はい」(500円をわたす) おばあさん「ちょうどやね」 おじいさん「なんで?」 おばあさん「なに?」 おじいさん「そんな高いんか?」 おばあさん「ラーメンは500万円なんやで」 おじいさん「いつから?」 おばあさん「まえから」 おじいさん「なんで?」 おばあさん「なんでやない、ウチは万円をつけて言うの!」 おじいさん「いつから?」 おばあさん「まえから」 おじいさん「なんで?」 おばあさん「え?」 おじいさん「え?」 私 「え?」 おばあさん「ラーメンは500万円!」 私 「ごちそうさんでした~」 おばあさん「ありがと~」 おじいさん「なんで?」 おばあさん「なんでも」 おじいさん「いつから?」 おばあさん「まえから」 おじいさん「なんで?」 おばあさん「なんでもなの!」 本当にボケているのかボケの達人の模範演技なのか・・・ この微妙な感じが伝われば幸いです・・・か? 第204話 先輩の年に近づくということ 2月5日 思い起こせば、この「店長の独り言」をはじめたのは A先輩から聞いたYさんの話があまりにも興味深くて 誰かに伝えたくなったことがきっかけの一つでした A先輩はずいぶん年上で恐妻家で繊細で器用で茶目っ気があり パソコンのことがまだ良く分からない私にたくさんのアドバイスをくれて とてもかわいがっていただきました いつも最後は「また飲みにいこうや!」と誘ってくれるものの ただの一度も飲みに行ったことがない不思議な先輩でした 10年前にA先輩から聞いたのはこんな話です 「不死身のY君が東南アジアへの格安ツアーに申し込んでから 悪夢を何度も見るとかで、今回はやめようかな~と相談されたんや 外国のホテルで寝ていると知らない男に刺されてしまう夢がリアルだとか 今まで予知夢を見たこともないなら大丈夫だろうと気休めを言って 送り出したら、初日の夜に知らない男がホテルの部屋に入ってきて 夢のとおりにY君はナイフで刺されたんやって 幸いなことに傷は浅くてたいしたことはなかったんだが 旅行は中止で日本へすぐに戻されてしまい 俺に『やっぱり刺されてしもた~~次はぜひ一緒に旅行に行こう!』 と嬉しそうに電話してきたんやけど、どう思う?Y君って変な男やろ?」 この突っ込みどころの多い話に私はYさんに会いたくなりましたし 忘れてはもったいないとパソコンのメモ帳に書いてみたのですが 読み返しても面白さがどうも表現できませんでした 文章って難しいな~と思いつつも、ネットのお客さんへの出荷案内メールの最後に この話を書き加えて送ったところ、反響があったので 日常の面白いことをチョコチョコっと書き留めるようになったのです その後A先輩から紹介されたYさんはごく普通のさえない45才のオッサンで 酒の飲みすぎで体調が悪いらしく顔色からも不死身とは逆の印象だったのです いろんな仕事をしていて、昔は音楽スタジオもやっていたとか もうすぐ東京へ出て向こうで新しい仕事をはじめるとのことでした Yさんとしゃべったのはこの日だけでしたが、年が離れていても妙に気が合い もうちょっと早く知り合っていればと残念に思うのと、Yさんの健康が心配でした しばらくして東京でのYさんの話をA先輩に聞いてみると 「そうそう~じつは・・・」とYさんから私にと預かっていた荷物を渡されました 重くて大きな包みを開けると1枚の大きなシンバルが出てきたのです 学生時代に欲しくても高くて買えなかったライドシンバルでした スタジオ閉めるときに私が今でも欲しいといったのを覚えていてくれたのです うれしかったのでお礼を言いたかったのですが Aさんも新しい連絡先が分からないそうなのです Yさんの肝臓の数値はもう落ち着いたのかな?もう一度会いたいな~ この話を「店長の独り言」に載せる場合には本来なら 第20話までの時期だったのですが どうも発表する気になれなかったのは 「Y君なら殺されても死なないから大丈夫、またいつか三人で飲みにいこうや~」 と言っていたAさんのほうがその半年後に病気で亡くなったからで 10年もたって掲載するのは、いまさら元気な姿で夢に出てきてくれたからです 先輩、今度は夢で飲みましょうか 第203話 残念なキツネうどん 2014年 1月11日 家族でうどん屋に入ると次女はいつもキツネうどんを注文します 私もそれに乗っかって~キツネで!・・・と思いつつも 迷った末にいつも他のうどんを食べてしまいますが その店のキツネは小さな三角形が2枚ではなく 四角い1枚のアゲが部厚くて、かなり大きかったので ちょっとうらやましい気がしました 後日スーパーで巨大なおあげさんを見つけたので 次女とキツネうどんを作ってみたのです 甘辛く煮込んだアゲはうどんに乗せると丼からはみ出て ネギもカマボコも麺さえも隠れてしまうではありませんか もちろん味も美味いし、その普通のうどん屋ではありえない光景に 普通のうどん屋ではありえない話を思い出しました そう、私はキツネうどんをインスタント以外では ここ10年は食べたことがなかったのです それは、スキとかキライではなく気分がのらんのです・・・ 昔の話です 一人でドライブをしていて県境の峠にある小さなうどん屋に車を止めました 入る前に10台以上の大きなバイクが奥の駐車場に並んでいるのに気づいていたのですが なんのためらいもなくのれんをくぐればそこには・・・ 狭い店内に20人近くの黒い革ジャンを着たお兄さん達がたむろしており なんだか怖い雰囲気をかもし出していたのです・・・さては暴走族なのか? くわえタバコ一で斉にこっちを振り向き、一瞬の沈黙の後で目くばせすると 親切な事にカウンターを1席分つめてくれたのです 私としては『残念だが満席なので座れないな~』という体で帰ろうとしていたので この小さな親切がちょっと迷惑にも感じてしまいました かといってビビッていることがバレバレなのもいかがなものかと思い座ってしまいます お兄さん達はすでにうどんを食べ終わっていたため 私のうどんは意外と早く出てくると予想し、短い時間の辛抱だとタカをくくりました ところが、セルフでもなさそうなのに5分たっても誰も水を持ってきてくれません 食券を買うわけでもないのに注文を聞きにも来てくれません 私は放置されているようなのです とりあえず500円のキツネうどんを頼んですぐに食べて帰りたかったのに 辺りを見回しても店員らしき人物は見当たりません・・・なんで? 隣のコワモテお兄さんはイライラしているようでタバコの煙が私をいぶします 店の奥の座敷では何やらもめているようでもありました 革ジャン姿のお兄さんたちは『オレたちの貸切中に入ってくるとは空気の読めんヤツ』 と私のことを思っているようで「おいおい~」とか 「なんとかならんかいや~」「もっと気をつかえよな」なんて言う言葉が聞こえますし こちらを何度もチラ見してくれますからお呼びでないことはよく分かりました 今更なにもなかったように退場するべきか・・・どうするワシ! さらに数分がたって、あまりの気まずさに席を立つと 奥のマガジンラックから興味のない雑誌を手に取りつつ厨房をのぞいてみたものの やっぱり誰もいません・・・そして座敷の奥を横目で見ると周りから 「エエかげんにしとかんと」「たいがいや」「言われるで」というセリフが チクチクと私に刺さります・・・すると 「おお~い、とりあえず水でもだしとけ~」という声が聞こえたのです 私はビビッて席に戻ると、一体どうしたものか悩みました しばらくしてチームの中で一番若そうな兄さんが私の前に水を置いて 「あ~、なにか食べるんですよね?」と聞いてくれました 「キツネうどん・・・と思っているのですが今日はやってないんですか?」と尋ねると このお兄さんが奥に向かって 「ちょっといいっすか~?この人は~キツネが食べたいそうです~聞こえてますか~?」 と声をかけると返ってきた言葉に耳を疑いました 「聞こえとるわい~キツネはまたせとけ!」 そして奥ではまだヤイヤイ言っています 私はどうしていいかわからないまま隣の席のお兄さんと目が合うと 眉間にしわを寄せたままゆっくりと2回うなずいてくれます どういうことか分かりません まさか殺されたりはしないと思うのですがヤバい雰囲気です キツネうどんを頼んでから5分はたった頃にリーダーっぽい大男が立ち上がり私と目が合いました すると大声で「ちょっと言わしてもらってよろしいか!」と言い放った時には 私のデリケートな胃は穴が開く寸前でした そしてリーダーは軽い舌打ちのあとで意外な事を言うのです 「ね~マスターおしゃべりは後にして働きましょうや!キツネを待ってはりますやン」 すると座敷の奥で立ち上がったマスターらしき小柄なオヤジが酔っ払ったようすでこっちを見据え びっくりするようなことばを返すのです 「ワシは今、うどんを作る雰囲気じゃない!気分が乗らんのじゃ~」 コントのような展開に驚いていると革ジャンの面々が 「うどんはノリで作るもんなんすか?」 「たいがいにしましょう、オレたちが困るんです、お客さんが気の毒や!」 「おやっさん、エエかげんにしてうどんを作ってあげてください」 「でないとオレらが悪いように言われますやン」 どうやら皆は最初から私に気をつかっていてくれたようなのです 「おいおい~」とか「なんとかならんかいや」「もっと気をつかえよな」と言われていたのは 私ではなくマスターだったとは・・・ しかしイマイチ事情がよく分からないので隣の兄さんに聞くと この店のマスターは大のバイク好きで、さらにおしゃべり好きなんだそうで バイクのお客さんが来ると長く引きとめて昔話をしてしまい いつもすぐには返してもらえないらしく 後から来たお客さんを無視して帰らせてしまうことがよくあり リーダーたちは昔から世話になっているのでマスターを邪険にもできないし 今日も今日とて、うどんを作り終えたマスターはビールを開けて自分ひとりで飲みながら ワイワイ盛り上がってしまい、自分達もじつは早く帰りたくてイライラしており そこへ運悪く私が入ってきたとのこと は~? そういうことなら早く言ってよね この15分ほどは長かった~めっちゃ緊張しまくったやないかい! マスターは「みんな~まだ帰らんといてよ~」と釘を刺してしぶしぶ厨房に戻り 「ホントにモ~」と2回言ってうどんをゆでて、酔っているのかヨロヨロ運ぶと 私に小声で「どうぞごゆっくり」と心のこもらない言葉を発した後で すぐに新しいビンビールの栓をスポンと抜きつつ奥の座敷へと舞い戻り 「それで~九州にツーリングに行ったときの話なんやけどな~!」と叫んでいました 早攻で食べ終わった私が「ごちそうさん」と言ってもマスターは出て来てもくれなかったので 隣のお兄さんに見せた500円玉をカウンターにおいて帰ることにしました なぜか「お疲れさんでした」と言われてしまいましたが 言われるまでもなく本当に疲れました そして、この残念なキツネうどんの味がまったく心に残らないまま店を後にしたのです マスターは峠でいつも一人でうどんを作っていて たまにこういうバイクチームが来ると嬉しくってしょうがないのでしょうね でもねぇ~ 私は車を始動させてから独り言をいわずにはおれませんでした 「ね~マスターちょっと言わせてもらってよろしいか!気分が乗らない時には つまり~のれん時にこそ、のれんはさげておきましょうや!みんな困ってはりますやン」 第202話 残念なカツカレー 12月3日 ~その1 一人でとある喫茶店に入りました すでに午後2時に近く、お客は私だけでした 店頭でおススメされていた500円の特製ビーフカレーを食べようと席に着くと だまって注文を聞きにやってきた人が若い頃の間寛平ちゃんにそっくりだったのです オカッパ頭で口がとがっており、黒目がちな小さな目は笑っているように見えましたが 愛想は全然なくて、何歳なのか分かりませんしスカートをはいてなければ 女性なのかも分からなかったのです 私がカレーを頼むとメモ紙に書きとめ黙ってうなずき振り返ると 「カレー・ワ~~ン!」とかん高い声を発して厨房へ戻って行きました ここで私は昨夜のテレビでカツカレーを芸能人がうまそうに食べていたのを思い出し 厨房をのぞいて「すみませ~ん、やっぱりカツカレーにしてください」というと 中には寛平さん・・・じゃなかった、おねえさん一人だけしかいませんでした さっきの「カレー・ワ~~ン!」は誰に言ったのだ? 言うべきなのは「いらっしゃいませ」や「しばらくお待ちください」のほうなのに そのあとも黙ってカツカレーを運んできたお姉さんに水のオカワリを頼むと 小さくなずいたものの、なかなか持ってきてくれませんでした・・・ ヒマそうに見えるのになんで? しばらくしてやっと水が運ばれたころに次のお客さんがやって来ました アメリカンなバイクがバルバルバルと5台停まったのです 黒い皮ジャン姿のいかついお兄さんたちがカラコロカラコロとにぎやかに入ってきます おねえさんは今回も「いらっしゃい」とは言わずにだまって水を持って行くのですが a「定食は終っとる時間か・・・ううう~ん、カレーでええか」 b「ほな俺も」 c「俺もカレー」 d「カレー」 e「カレー」 c「あ~すまんが先に水のオカワリくれんか」 おねえさんはそのつどメモして小さくうなずくと厨房を振り返って叫びます 「カレー・ファ~~イブ!」 一同は不思議そうに見送ると突っ込み放題でした 「えらい不愛想なオバサンやな~」「男の子やろ?」「でもスカートはいとったで」 「スカートをはいたカッパか?」「カッパでも、いらっしゃいませは言うで」「んなアホな~」 私はとしては無人の厨房に「カレー・ファ~~イブ!」と叫ぶことのほうが奇妙に思えました いつもはマスターがいるのかな?このお姉さんが店長かな?などと考えつつ食べていると 水のオカワリをたのんだ兄さんが妙にからみだしたのです 「はよ水をもってきてくれ~!」と再度声をかけても返事がなく、ずいぶん待たせたのに 「お待たせしました」もなく無言で水を注いで戻ろうとしたので仕方ないのですが・・・ 「おい、客商売でその態度はアカンやろうが!きこえとるんか!」 お姉さんは「・・・スンマセン」とペコペコ頭を下げましたが怒りはおさまりません 「水だけ持ってくるんに、どんだけかかるんじゃ!買いに行っとったんか?」 他のメンバーが「それくらいにしとけ」と言っても「コイツのためなんじゃ~」と お仕着せがましい態度で叱り続けます 「客をマジで待たせたんやで、お待たせしました~くらいはマジで言わんかいや!」 ちょうど先に食べ終わった私は助け舟のつもりで「ごちそうさ~ん、お会計を」と声をかけると 開放されてレジ前に戻ってきたお姉さんはひきつった営業スマイルで 「失礼いたしました、カツカレーがお一つで800円です、1000円から頂戴しますので 200円のおつりです、お確かめください、ありがとうございました、またおねがいします」 と丁寧に言うこともなく、さらに無愛想な態度で 「800円・・・」とつぶやいただけでした たった今叱られたばかりなのに・・・ 「ありがとうございました~」を今使わないでいつ使うの? また叱られるだろうなとの不安を抱きつつ店を出ました なんだか残念な後味がするカツカレーでした ~その2 一人でとある喫茶店に入りました すでに午後2時に近く、お客は私だけでした 店頭でおススメされていた500円の特製ビーフカレーを食べようと席に着くと 注文を聞きにやってきたウェイトレスさんが驚くほどの美人だったのです ちょっと見とれてしまってから思わずメニューを見なおしてしまうくらいの美しさに 私としたことがうっかり800円の「カツカレー」をたのんでしまっていたのです 300円のアップですな・・・ しかも美人に「お飲み物はどうします?セットがお徳です」と言われて 「ワシは水でじゅうぶんです」と答えたいはずなのに 「それじゃ~アイスコーヒーで」と勝手に口が動いてしまうため セットでさらに200円アップとなり、500円でワンコインランチのはずが とても不思議な事に倍の1000円になったのです 「しょうしょ~お待ち下さ~い」と言って厨房へ戻る美人を見送ってしばらくすると 店の前にアメリカンなバイクがバルバルバルと5台停まったのです 黒い皮ジャン姿のいかついお兄さんたちがカラコロカラコロとにぎやかに入ってきて だいたいこんな感じの会話でした 美人「いらっしゃいませ」 a「おお~べっぴんさんや~いつから働いとるんや?」 美人「・・・」 b「彼氏はおるのんか?」 美人「・・・」 c「おるにきまっとるやろうが~めっちゃかわいいがな」 美人「・・・」 e「なんや~つれない態度やな」 美人「・・・」 d「なんとか言うて~な~」 美人「御注文はお決まりでしょうか?」 d「うおっ!そうくるか」 a「定食はもうわっとる時間か・・・ううう~ん、カレーでええか」 b「俺もカレー」 c「ほな、俺はカツカレーで」 d「・・・カツカレー」 e「カツカレー」 b「あ!やっぱり俺もカツカレーにして」 美人「お飲み物はどうします?200円のセットでこちらからお選びいただけますが」 a「飲みもんってか・・・ほなアイスコーヒー」 b「じゃ~、俺も」 c「・・・俺はアイスレモンティで」 d「レモンティ」 e「アイスコーヒー」 美人「御注文を繰り返します、カツカレー3つとカレー2つでよろしかったでしょうか」 b「カツカレーは4になったんやで」 美人「それではカツカレー4つとカレー2つで」 一同「え?」 c「一人分増えとるがな~カレーは1やで、おね~ちゃん、メモしたほうがええぞ] a「ほな、俺もカツカレーにするからや~、おね~ちゃん!カツカレーが5や」 美人「お飲み物はアイスコーヒーが3つとアイスレモンティ2つでよろしかったでしょうか」 d「俺のレモンティはホットね」 美人「そうしますとアイスコーヒー3つとレモンティが2つ」 c「俺のはアイスのレモンティやで」 美人「そうしますとレモンティは2つでアイスレモンティがおひとつ」 一同「おいおい」 c「なんで覚えられんかな?」 美人「え?」 c「ふつうメモとかするやろ?」 a「まあまあ、べっぴんさんに免じてゆるしたれや~」 c「でもこの子は分かってないと思いますよ」 美人「・・・マスタ~~!どうしたらいいんですかぁ~?」 マスター「すんません~こちらにはオーダーが聞こえてますから、大丈夫ですので」 美人「しょうしょ~お待ち下さい」 一同は見送りつつ「美人じゃなかったらもうちょっと言うたるんやけどな~」 などと言って納得いかない御様子 しばらくして私のカツカレーとアイスコーヒーが運ばれてきたのを見て 自分たちの分と勘違いしたお兄さん達が「おね~ちゃん仕事が早いな~」と言うのにも 美人はそれを完全に無視してこちらに運んでしまうので店内はイヤ~な雰囲気になりました 「こちら、カツカレーになりま~す、アイスコーヒーになりま~す」とやる気なく言われて 言葉どうりうけとってしまう私は、頭の中のイメージとして カツカレーになると言われるからには、今は普通のカレーだがしばらく待っていると 見事なカツカレーに変化するという意味か? すでにちょこっと乗っかっているのはカツではないのか? どうみてもアイスコーヒーに見えるが今はまだちがうのか?いつそうなるのだ? などと新しい日本語が妙に気になったりもしました そんなどうでもいいことを考えつつも先に食べ終わった私が会計の時には わざわざマスターが厨房から出てきてレジを打って 「ありがとうございました、どうか、またお願いします」と言ってペコペコしているのに 美人は厨房でつまらなさそうに頬杖をついてタバコをふかしていたのです・・・ 私は車を発進させて考えました もしも美人ではなかったのなら、みんなカツカレーではなくて500円カレーのままで 飲み物も追加で頼まなかったこともありうる・・・ そう思うと美人だったために私も含めた6人がそれぞれ500円追加で 合計3000円を稼ぎ出せたということは、物覚えが悪くても愛想がなくても 時給以上の働きをしていることになりますし、しかもクレームは少なめです・・・ ああ~なんだかな・・・このモヤモヤ感は? 上に乗っていたカツの薄さ以上に残念な後味のするカレーになりました そして残念と言えば、同じくバイクのお兄さんたちが登場する うどん屋の話も思い出したので、その話は次の機会に 第201話 おくりむかえ 11月20日 子供の手を引いた後輩とすれ違いました 3時過ぎなので幼稚園のお迎えですね、なんだか幸せそうでした ああ~お迎えか・・・ ウチの末娘はこの春で小学4年生になるため、送り迎えをしなくなってずいぶん経ちます うちの長女が保育園に入園してから三女の幼稚園の卒園まで ざっと10年近くは送り迎えをしていたはずですが、今を思えばあっという間でした でも実際にはどれくらい子供の世話をしたのだろう? ひまに任せて計算してみますと・・・ 365日から土日祝と夏・冬・春の休みを除くと210日ほど 保育園が2年と幼稚園の2年あわせると4年間で 送りと迎えで一日2回を子供が3人の場合なら・・・のべ5040回! もちろん妻の回数は一番多く、私の両親とも手分けしましたが どう考えても1500回以上も私は出動しています そういえば三女が小学校入学した当初には もう迎えに行く必要がないのに なぜか午後3時頃には気になってソワソワしたものでした 体内時計とか言うモノですかね~ そういえば私が小学生の頃に送り迎えの話で母をひどくがっかりさせた というか、たいへん怒らせたことがありました それは当時の私が送り迎えで覚えている唯一の記憶は たった一度だけ代理で来てくれたオバサンのことだけで 毎日送ってくれていたらしい母には申し訳ないのですが それ以外はまるで覚えていなかったのです しかも、珍しくて印象が強かったオバサンだけがしょっちゅう送り迎えしてくれたように まちがって記憶していたのです 小学校に上がったとたん、送り迎えしてもらった記憶は消えてしまう 当たり前の出来事は当たり前のように忘れてしまう 子供の記憶とはそんなものなのでしょう ウチの娘達に送り迎えをしてもらっていたことを覚えているかを聞いても 「ママやパパが送ってくれてたんかいな?」「覚えてないな~」「さあ?」 などと残念な事を言うので、当時の母のがっかりぶりが今になってよくわかりました そういえば、忙しい中をせっかく迎えに行っても そしらぬ顔で遊びを続行してくれたり 「ママのお迎えがよかった・・・ママでないと帰らん」と言われて頭にきたり 炎天下の園庭で待っていて、教室からなかなか出てこない娘に 腹を立てないように何度も自分に言い聞かせて汗をぬぐったり 大雪の中をお昼寝布団を担いでツルツル滑りながら歩いたり ついてこないな~と振り返ると、空からホワホワ振ってくる綿雪を 娘は立ち止まって大きな口をあけてパクパク食べていたり 雨がよく降っているのに車で来ていないことを子供にとがめられたり ドングリを拾って道草を喰うのをしばらく黙って見ていてあげたり 捕まえた大きな虫(ナナフシ)を他のお母さん達に見せてドン引きさせたり 止めろというのに友達の悪口を言い続け、その子の親に全部聞こえていたり 買い換えた「中古の改造車」を「新車の外車」だとクラスで言いふらしたので 車では迎えに行きづらくなったり(ホンダ・オデッセイ・改) みんなで育てたプチトマトをジャンケンで負けたためもらえなかったことが どうにも悲しくて、ずっ~と家まで泣き続けたり 友達と砂場でかれこれ15分も遊んでいて帰ろうとせず困ったり でも相手の子のお迎えのおじいさんは幸せそうに孫をず~っと待っているので いつもどれくらい待つのか尋ねると1時間近くは遊ぶと聞かされ絶句したり ワシも孫に穏やかになれる日がくるのかな~と思ったり そんな送り迎えの記憶は親だけのモノのようです そうそう久しぶりにお迎えをしました あっという間に6年生になった次女が修学旅行から帰ってきた日です 自転車で小学校へ行くと娘は大きな旅行カバンをカゴに乗せ 「あ~疲れた、先に帰るわ~」と自転車を押している私を置いて手ぶらで駆け出し 別の道で走り去ってしまったのです 思春期まっ盛りの6年女子は、もうオヤジと一緒に歩くのが照れくさいのかウザイのか・・・ みやげ話を聞きながら帰るつもりが 単なる荷物運びになってしまい残念でした 幸せな送り迎えは孫の誕生まで待つことになりそうです しかしそれもあっという間なのでしょうかね? 200話目の掲載にあたりまして 今回で「店長の独り言」はめでたく第200話の掲載とあいなりました これは一重に閲覧していただきました心やさしい美男美女の皆様方のおかげです ありがとうございました しかし月日のたつのは早いものですな~第1話の開始時に3歳だった長女は 現在では中学校2年になっており、1歳だった次女は6年生に、三女は3年生になっているのです 優しい先輩・後輩・友人達、ならびにお世話になった皆様、そして愛する家族との日々には なんと幸せが詰まっていたことだろうと感謝の気持ちでいっぱいです この10年もの間、薬にも毒にもならない事をダラダラと書き散らかしてすみませんでした もうそろそろキリのいい200話で終了しようと思っておりましたが たまに反響があったりするものうれしいので、もうちょっとだけ続けてみたいと思います 最終は第222話になると思います 200話の節目を自分で記念しまして「禁断の恋や燃え盛る愛の炎」についての色気のある話を と思い書き始めたもののネタが無いのです・・・ すでに薄れ行く記憶のなかより 小学5年生からの出来事をお粗末ながら書き留めてみました 第200話 恋の備忘録 10月30日 我が家の娘たちも中2や小6年のお年頃ともなると 「ダレがコクった」とか「フラれた」などとしゃべっているのを小耳にはさみます 残念なことにウチの子はそういう話の主人公とは今のところは無縁のようです いったいダレに似たのやら・・・ 異性に対して必要以上に臆することなく よさそうな男子にわかりやすい言葉と仕草で 好意を自然に伝えることが重要であることに 早く気づいてほしいものですな まあ私くらいのイケメンになるとその当時は・・・ 5年生の頃 私のことをスキだというやさしい女子がいて アホなツレからヒューヒュー言われて冷やかされた とにかく恥ずかしいのだが自分にプラスの力が向いているのは なんとなく安堵感があったように思う 結局は告白されるとかも一切なかったな そういえば未だにダレからも告白されたことがない・・・ 6年生の頃 日曜日の朝、約束したわけでもないのにU君が呼びに来て 公園で女の子が待っているのですぐに着替ろと言いだした 土曜の夜更かし後で気持ちよく朝寝しているところを起されたため 腹がたつし寝ぼけていたし、すぐに着替えろというのもなぜか気に入らなくて あっさり断って二度寝した バッチリ目を覚ました2時間後にはもったいないことをしたと気づいたが 女子から呼ばれることはこれが最初で最後になるとはな~ 中1の頃 ほとんど同じ背格好で同じくらいイケメンのU君と2人で学校の坂を下ると モジモジしているきれいな女の先輩に呼び止められて どうか運動会の当日だけ上着を貸して欲しいと言われました なんでも、運動会の応援合戦で先輩のチームだけは女子も学生服姿になるとのこと 「な~、貸してくれへん?」とカワイクお願いする先輩に、私と同じくらいスケベなU君なのに なぜか迷惑そうにしていたので、親切な私は「ボクのでよければ」とOKすると 「ありがとう、でも1着しかいらないから」と答えた先輩は あえて立ち位置を変えるとU君だけに向かって 「キミのサイズの学生服が必要なの」と言ったため 「あの~ボクも全く同じサイズなんですけど~」と言いう私を横目で見たきれいな先輩が 「ぜんぜんちがうっ!」と怖い顔をしたのにはビビらされた 鈍い私はU君を見るときの先輩の瞳にハートマークが点灯していたのに気づかなかったし 明るくてモテるU君の上着はすで他の美人な先輩の予約済みだったことが分かり 結局だれからも上着を貸しと欲しいといわれなかった暗い自分とU君では 「ぜんぜんちがうっ!」ということもちょっと分かってきた 中2の頃 登校してきた女子を指差してU君が「わ~、あのこかわいいな~」と叫んだ かわいい女子というのもたいしたもので、自分のことだとすぐに気づいてこちらを向くと 余裕の笑顔で小さく手を振るのです これには一緒にいた周りの男子もU君に続けとばかりに 「だれ?かわいいな~」「むっちゃかわいい~」「なんて名前?」と尋ねたら 女子は小さく「ヒ・ミ・ツ」と笑顔のまま我々の前を軽やかに通過するので 私も何か言っておこうと思い「ホントに怖いくらいかわいいね~」というのを間違えて 「かわいくて、・・・ホンマに怖いな~」と言ってしまった それでも意味は通じると思ったが振り向いた女の子に 「おバカさんね」とでも言いたそうな困った笑顔でちょっと見つめられた 転校生ということだった 言葉のニュアンスが伝わらなかった以前に、不慣れなことは急にはできないし 言葉のチョイスにセンスが無かったと反省もする U君のようにシンプルなのがいいのだろう そう、そのU君はあまりのカワイらしさにその子のファンクラブをすぐに作るとかさわいでいたが 女子はすぐに転校してしまった 中3の頃 明るい女子から妙な頼みごとをされることが何度かあった よく覚えているのは体育の授業後にセーラー服をポンと手渡された事だ この制服を先に教室へ持って帰ってほしいといわれ しばらく意味が分からず体育館の前で硬直してしまったが 困りながらもその子の席へ届ける直前に、うるさいU君に見つかり 弁解しても「ふつうは男に制服を預けたりするわけがない!」と信じてもらえず その女子から直接弁護してもらうまで「セーラー服泥棒」となってしまった よほど配達係として信頼されていたのかとも思ったが U君はその女子は私に気があるのかもと言ってくれた しかし妙なことで振り回されるのは困るな~と心配するまもなく その子はやんちゃな男前と付き合いはじめ 逆に振り回されて大変らしいと聞かされちょっとがっかりした 高1の頃 U君が女子と交換日記をしている話をしたので驚いたら 一緒に聞いていたツレはみんな交換日記経験者だったのでさらに驚いた 私は交換日記をしたこともないけれど得意分野だったはずなのにと思うと残念だ 残念と言えば、不意の通り雨に高校前のトンネルで雨宿りしているところへ 憧れの先輩が通りがかって「カサに入ってく?」と優しく声をかけてくれたのに 「だれかを待っているだけです」とクールかつ妙な言い訳で遠慮したことが いまだに残念でならないし 高校生活でアイアイガサに誘われたのはこの日だけだったことを省みるに チャンスを見送ってしまった自分が本当に残念だった 高2の頃 自転車小屋でかわいい後輩から急いでいるので駅に送って欲しいと頼まれた それなら自転車を貸してあげるからそのまま駅に乗り捨てて 鍵は明日返してくれればいいと答えると、なにか違うみたいで どこからかもう一人女の子が出てきて「とにかく後ろに乗っけてあげて!」と言われ 駅まで急いでぶっ飛ばすと、どうやらそれも違うようだった 今度はバイト先に送って欲しいと言われたので がんばって自転車をこいだのにあまり感謝されなかったような・・・ 半年も経ってから、あれは私と二人乗りでおしゃべりをしたかったのでは!と思い ちょっと声をかけてみたが「もう遅い~」といわれた 高3の頃 美人の同級生から卒業式の後で一緒に写真を撮ろうと言われて どんなクールな顔をして写ったらいいものか どんなカッコイイポ-ズがいいのかしばらく考え付かず 困った顔で小首をかしげた妙なツーショットになった 実は顔が赤く写っていたらヤだな~と心配していた 成人式の後に友人達と飲んでいて 当時はラブレターを書くのに三日三晩かかったとか 知らない女子からもらって困ってしまったとやらで話は盛り上がっていたが 私はラブレターにもほとんど縁がなく 唯一もらったのは 「スキでした・・・」という過去形の重たい文章だった ああ~どうにもこうにも気づくのが遅くて鈍感すぎる私でしたが おかげさまで成人後には気づくのが遅いことに気づいたために もとよりイケメンの私はかなりのMMKになったことは言うまでもなく MMKとはモテテ・モテテ・コマッチャウの略であることも言うまでもありません 娘達におねがいしておきます 男の子と話の合う趣味も持ち、なるべく笑顔は絶やさず 身だしなみを整えつつ、軽くネコはかぶり いざというときには鈍い男子にも分かりやすい優しさが表現できますように 相手のいいところや本人も気づいていないステキな部分を 上手にほめたりできますように ウソをついたり気の多い相手には振り回されませんように からかわれても妙な雰囲気のバリヤーを張ったりせず シャイなボーイにも告白されやすい距離感で接することができますように 気持ちを伝えるのにたとえ失敗してもそれは自分にも相手にも無駄にはならないから 恐れず、懲りずにチャレンジできますように そして恋のチャンスに気づけますように 最近、机の奥から出てきた卒業時のあの美人とのスナップをみつけた妻に 「これは昔の彼女じゃい!」と言ってしまったが 娘達にも・・・それがウソだと気づくことができますように 第199話 ナナクサ 10月3日 5年程前にJ君の家の庭に妙な木が生えたのを見たH先輩が 「この葉の並びはハゼとかウルシとか、かぶれるヤツかもしれん」と言うので J君は通学路にも面している場所だからとすぐに切ってしまったのです ウチの裏の荒地にも同じような木が1本だけ生えてきたのを思い出して 私もエンジン付きの草刈機でギャンギャン削って切り倒しましたが 翌年の初夏にはまた同じ根からトゲのついた枝が伸びていたので、再び切り落としました もうこれで生えてこないはず 春先にワラビでも摘みに行こうかと春の味覚について調べたら 「山菜の王様」と呼ばれる「タラノメ」のほうに興味が出てきました タラの木から春に出てくる一番芽が美味いと紹介している画像の太い枝には 見覚えのある無数のトゲがあったのです・・・ そう、私が切ったのはどうやら「タラ」だったのです たしかに葉のつき方はウルシに似ていますが、ウルシにはトゲがないらしいのです これにはやられました・・・せっかくの春の味覚を不意にしてしまったのです もう生えてはきません ああ~タラの木を切っタラ私はアホンダラ・・・ とても残念でしたが、逆に植物について興味が出てしまった私は よくよくタラについて調べた上で山へ行ってその新芽を見分けて ちょっとだけ摘んでこれるようになり それをバターでいためるだけで特別美味く感じることができたのです おかげで毎年山菜摘みは楽しい行事の一つになり知識は大事だなと思いしらされました そんな話で酒を飲んでいると後輩のKY君が言うのには KY「近所の沢でワサビを1本とってきて、丁寧にすりおろしたのを 3mmに切ったカマボコにちょっと乗せて、刺身醤油でペロッと食べると 鼻に抜ける香りはチューブのワサビとは全くの別モノでなんです 間違いなく美味いんですよね~、これってある意味で贅沢かな~って 最近思うんですが・・・こんな話に興味あります?」 私「あるにきまっとるじゃろうが!そのワサビ沢はどこじゃ~い!」 安くて美味い酒の肴を捜し求める私が ささやかな贅沢とか野性味あふれる風味に興味を持たないわけがありません 詳しく教えてもらったのですが、日ごろの行いが悪いせいなのか 摘みに行く前日のゲリラ豪雨が沢の形を完全に変えるほどえぐってしまい ワサビは全て流されており1本も残っておりませんでした ああ~タイミングが悪かった~ 再生まで3年はかかるとのこと・・・トホホ 食べたかったな~ J君にその話をすると J「あ~ワサビじゃないですが、職場の近くの沢にはセリがたくさん生えてて それを摘んで帰って、おふくろにおひたしにしてもらったんですよ ちょっとクセはあるけどいいカオリがしてね歯ごたえもよくて 思った以上に美味かったな~って、こんな話にも興味あるんですか?」 私「あるにきまっとるじゃろうが!どこの沢じゃ~い!」 明日にも摘みに行こうかと思って詳しく教えてもらったのですが セリは春先なら食べれるけれどお盆前の今では食べれないだろうと あとで聞かされがっかりしました・・・ドクセリにも気をつけないといけないとか なかなかタイミングが合わないものだな~ ああ~食べたかったな~ そういえばセリは春の七草ですな セリ・ナズナ~ゴギョウ・ハコベラ・ホトケノザ~・スズナ・スズシロこれぞ七草! ホトケノザとハコベラは見覚えがないのですが、ナズナはペンペン草ですし スズナはカブでスズシロは大根 ゴギョウはスーパーで売っているおかゆ用の七草セット買ったときに ウチの周りでよく生えている雑草だと気づきました この草が「ゴギョウ」だったのかと一掴み摘んできて 3分ほど塩茹でしてみますと、とても硬くて 口の中で苦いクキがずっと存在を主張し続るのです ・・・5分経っても飲み込めません もっと長く茹でるべきだったのか? 若芽のうちならOKなのか? 料理のタイミングも難しいですな~ さて、季節はお盆を過ぎて秋に向かい 秋の七草が顔をそろえます ハギ、オバナ、、クズ、オミナエシ、フジバカマ、キキョウ、ナデシコ 去年も10月に秋の七草を摘みに行こうと三女と出撃して ハギとオバナとクズの花などを摘んで帰って花瓶にいけてみると風流な気分になれました 今年は9月からドライブがてら何度も探していたらオミナエシは見つかりましたが キキョウは花壇では見かけても野生では出会えませんでしたし フジバカマは似たような花は見かけても摘んで帰ると別の種類のようでした そうそう、ナデシコなら歩道の脇でたくさん咲いてるのをサイクリング中に見つけたので 翌日に摘みに行こうと三女と車で出かけたのですが ちょうど除草作業をしており、雑草としてナデシコも全てきれいに刈られてしまっており 1本も残っておりませんでした・・・ やはりタイミングは難しいですな~ 草刈と言えば我が家の裏手の荒地にこの時期には秋の七草である蔓性の「クズ」と 普段はススキとも呼ばれる「オバナ」、そして七草ではないですが 黄色い外来種の「セイタカアワダチソウ」という最強の雑草たちが びっしりとはびこりだしますので、いつもなら9月の中旬に草刈機でなぎ倒しております 今年は遅れて10月の1週目に草刈をしましたら ホオズキやみなれぬ白い花がたくさん咲いていたのです 気になってよく見ると、それはフジバカマに見えました! ネットで確かめましたが本物の野生のフジバカマのようでした 軽い絶滅危惧種とも書いてあります ここ3年ほどあんなに探して見つからなかったのに、まさかこんな身近に咲いていたとは あの「タラ」のときと同様に無知な私は カワイイ花が咲く前のフジバカマを毎年刈ってしまっていたのでしょう・・・ あ~あ、バカバカ~フジバカマ・・・オヨヨ やはりタイミングか~と考えさせられました 第198話 小学生時代の友人と家庭の事情 9月20日 授業参観の後で「もしも生まれ変わるのならどこの家の子供になる?」 という不毛な話で盛り上がりました 私が4か5年生頃の話です 「地味なツレ」の家が「過保護だから」と大人気でした 「頭のいいツレ」の家は「ママが美人だから」と2番人気 同じ理由で「アホなツレ」の家が3着でした 今更いろんなキャラクターのツレといろんな家があったな~と思い返してみました 「地味なツレ」の家に連日友人がたむろしていると聞き遊びに行くと お母さんがオヤツをたくさん振舞ってくれて 新しいオモチャも遊び放題で 棚にならんだマンガも読み放題だったのです うらやましいとは思いましたが 母親へのツレの言葉に違和感を覚えて もう遊びに行かなくなりました 「ママ、次のテストでもいい点取ったらまた新しいのを買ってくれるんだよね?」 ・・・地味だと思っていたけど家では派手なのね 「頭のいいツレ」の家に遊びに行くと 遅い昼ごはんを食べていたお父さんがお母さんに 「おまえの作る料理はいつもおいしいよ」的な言葉をかけ 「喜んでもらってうれしいわ~あなたのおかげで幸せです」的な返事に 聞いているこちらがテレてしまいました 後でツレに両親のラブラブぶりは恥ずかしくないのかと聞くと 意外な顔で「なんのこと?」と3度も聞き返されました 頭がいいのになぜ分からないのか不思議でしたが 彼にとっては親がラブラブなのはいつものことなので 私が照れる意味がよく分からなかったようなのです とにかくウチの両親とはえらい違いでした 「アホなツレ」の家に遊びに行きました とても遠かったのにも驚きましたがお母さんに私のことを 「彼はなかなかいいやつで・・・」と紹介してくれたのが意外で 学校での底抜けにオチャラケたイメージは全くなかったのです お母さんは私に「息子と仲良くしてくれてありがとうね」と言ってくれました 病気がちな色白のお母さんがオヤツを運んでくれても 「いいからいいから、おかあさんは休んでてよ~」と気遣い 学校でのふざけた行動の数々から考えられないほど良い子だったのです どういうこと? キャラが違いすぎるんですけど・・・ 「大人しいツレ」の家に遊びに行くと、大きなお屋敷でした どこが玄関だったのか案内されないと帰る事もできません オヤツも豪華に見えましたがツレは全く気に入らないと言って 母親にタメ口で文句を言っているのを聞くと 学校でのいつも大人しい雰囲気はそこにはありませんでした 高そうなチョコが運ばれてきても、こんなモノしかないのかとご立腹で 丁寧な言葉遣いのお母さんにイチイチ噛み付くのです 内弁慶とはこういうことかと理解し 大人しいどころか怒らせると怖いヤツかもと注意することにしました 「明るいツレ」の家に遊びに行って、もうそろそろ帰ろうかというときに 高校生のきれいなお姉さんが帰ってきました 私は妹しかいないので年の離れたお姉さんが魅力的に思えたのですが ツレは表情が急に曇っていました どうやら怖いらしいのです 逆らうと手荒な事をされるし、一つ言えば十返ってくるとか だから全くうらやましいことはないと言い切ります しかし面白いこともあり・・・それは 姉の味噌汁にハ●クソを入れておいたのを美味しそうに飲み干す姿を見ることで 姉の「ごちそうさま~」に笑いをこらえるのはいつも必死だと明るく言いました 明るいツレの姉に対する暗く陰湿な抵抗に驚きました 「ケンカ好きなツレ」の家に気がすすまないけど遊びに行くと 乱入してきた中学生の兄貴がプロレス技を遊びでツレに次々とかけるので さすがのケンカ好きなツレでも「もうギブや、仲良くしよう~」を連発し 聞く耳を持たない兄貴の四の字固めで悶絶しそうな様子に恐怖を覚えました ツレは相撲がとても強かったので後日この兄貴さんに どうしたら弟に勝てるのかをこわごわ聞くとあっさり教えてくれました 「弟なら最後に上手投げをかけてくるのでその軸足を刈れは簡単に転がるよ」 そのおかげで私はケンカに巻き込まれることはなくなり あのアニキからのストレスこそがケンカの原因なのだと理解できました 「ちょっとイヤな感じのツレ」の家に呼ばれてしまい遊びに行くと 新しいおもちゃを自慢したかったのだと分かりました ところが、お母さんが今日は忙しくて買えなかったことを伝えると 「ウソツキ~ウソツキ~」と泣き叫んで母親をたたき 見ているこちらが帰ろうかなと思うほどギャーギャーわめいておさまりません お母さんはかわりにケーキが買ってあるからと言って部屋を出ると ツレは涙を拭いてぺロっと舌を出して何事もなかったかのように遊びを再開し お母さんが4人で分けてねと用意したケーキをかわいい妹とそのツレには食べさせず ウマイウマイと4つ独り占めして、私にも「欲しいか?」と聞いてくるのを見て ケーキを食べたいより、もう帰りたい気持ちでした 家ではちょっとイヤどころではなく、もっとイヤな感じなのか~ 「いつもニコニコしているツレ」の家に遊びに行くと 「まだ宿題が終わらないから遊べない」と困った顔で言うので 後ですればいいと誘うのですが、気難しそうなお母さんが出てきて 「君は宿題を終わらせてから遊びにきたんでしょうね?」と高圧的で まだ宿題を終わらせていないという私に 「そんなことでは君はダメになるし、ダメな友達とは遊ばせません!」と 取り付くシマもなく、ツレは子供部屋へと戻され その時の悲しそうな顔は別人みたいでした 逆に家ではニコニコ笑えないのか・・・ 「問題児のツレ」が夕方の公園で弟と遊んでいたので しばらく一緒にいると、いつものクラスでの乱暴なイメージと違いました 落ち着いており、とても弟思いで言葉遣いも優しいのです そこへ派手な母親がズカズカやってくると、皿を洗っていなかったと言って いきなりツレを張り倒して、弟をひっぱって帰りました なぜか私に申し訳なさそうな顔をして二人を追っかける姿を見た後では そんな悪いヤツとも思えなくなり むしろ問題があるのは親の方だったのではと今も思います 最後になりましたが 当時のワースト3はもちろん、かわいそうな「問題児のツレ」の家と 「いつもニコニコしているツレ」の家、そして・・・ 同じく教育ママだからという理由で我が家がランクインしたのです! じつは私の母の外見は絵に描いたような教育ママ・スパルタ仕様でした しかしながら実際には「勉強しろ!」とヤイヤイ言われたことは皆無で おかげさまで私もぜんぜん勉強をしませんでした 聞けば友人達は私のことを教育ママからいつも叱られている 「かわいそうなツレ」と思っていたというので参りました 私はそんなキャラではないぞといくら説明しても信じてもらえず 我が家も含めて学校と家庭、外見と中身のイメージが違う場合は 思った以上に多いのだな~と子供ながらに驚いたものでした アアコワ 第197話 肝試し~その2・勘違い 9月1日 クラス行事のキャンプに参加する保護者は3チームに分かれます ママさんたちのカレー調理班とパパさん達のキャンプファイヤー班 そして・・・イケてるオッサンたちの「肝試し班」 しかも私が一番のイケメンかつ肝試し経験者ということで リーダーになってしまったのです 準備の日に確認した学校の備品らしいダンボール箱には 変なカツラに衣裳、まがまがしい面が3枚 やぶれ提灯や不気味な置物などがそろっておりましたが 個人的に水鉄砲と怖い面を追加で用意をしてもらいました これだけあれば安心して怖がらせることができるでしょう キャンプ当日は日暮れ直前にオッサン達と一緒にコースを歩いて 8人で6箇所の持ち場を割り振り、肝試しグッズを確認すると 追加でたのんだ水鉄砲と怖い面2枚・・・以外が見当たらないのです どうやら肝心の肝試しグッズの入った箱を他の備品と勘違いして 学校で積み忘れていたのです! ・・・え?じゃあ、一体どうやって驚かすの? 予想外の展開にこっちの肝が冷えます せっかく8人もスタンバイするというのに驚かすためのアイテムが あまりにも貧弱すぎるではありませんか・・・時間もないし・・・ もはやそれぞれの持ち場で使えそうなモノで何とかしてもらうほかありません こんな心細い状態で怖い肝試しができるのだろうか? とっても不安・・・ 思った以上の暗さと静けさの中で逆に私達がビビリながらの肝試しが始まったのです 私はその日が初対面だったDさんと最終チェックポイントの古い体育館の入り口で ろうそくをならべて火をつけて子供が自分の名前を書く台の横で待ち構えます キャンプファイヤー用で持ってきた一番長い角材を抱えた私は顔を隠してうずくまり 不気味な雰囲気で注意をひいている隙にDさんが物陰から驚かし 驚かなければ角材を子供にあたらないように私が投げつけるヤケクソな作戦でした うちの子には全く怖がってもらえませんでしたが、半数はビビっていたと感じました そのほかにも、オッサン達が工夫してタイミングよくドアを叩いて大きな音を出したり 物陰から小石を投げたり、枝をゆすったり、自分の顔を照らしてワーワー言って追いかけたり 男子には普通に近づいて捕まえていたセミをにぎらせたりと、地味にがんばりましたら 中には「本当にごめんなさい」とか「もう許してください」「やめて~えええ」 と言っておびえる半泣きの子供を4~5人は見ることができました 「いや~Dさん、おつかれでした~何とか終りましたね~よかったよかった」 と言いつつ二人で持ち場から帰って、その夜は美味いビールを こっそりいただいたのです 気持ちよく酔っ払うと、もっともっと怖くできたはずだと いろんなアイデアが浮かんできますな~ 各自、黒っぽい着替えやタオルを用意しいておけば親だとバレにくくてすんだのに 赤い水の入ったバケツにドライアイスを入れておく小道具はどうだろう 山で見つけたイノシシの白骨を用意しておいたら衝撃的だったかな 照明を赤いセロハンで覆ったり、赤いスライムをガラスにたらしてつけるとか 名前を書くために半紙と筆ペンがあったのだから、「生きては返さぬ」とか 「そのままこっちへおいで」「死ぬ前に言い残すことは・・・」 「もうすぐだよ」などと怖い字体で書いて順路の矢印と一緒に貼っておくとか 子供の体育ジャージをこっそり何枚か持ってきて コースに無造作に散らかしておくだけでも怖いはず 教科書や学校の机や古い人形もならべようか 路面にぬれたモップで「タ・ス・ケ・テ」と字を書くとか そういえばうちの倉庫に使っていないマネキンがあったのに・・・ それをゴロンと道をふさぐように置くか、バラバラがいいかも 携帯を置いておいて子供が来たら不気味な着信音を鳴らすとどうするだろう? もしも電話に出たら「隣の車のナンバーをよく見ろ!」と指示しておいて クルマの前へ来るとハイビームでいきなり顔を照らせば・・・ワ~コワ 近所迷惑にならなければクラクションもありか 無人のクルマからCDで怖そうな音楽かお経を流すのもいいな ノートPCを置いておいて30秒くらいの恐怖映像を繰り返し再生すると 怖いけど見てしまうだろうな 陸上競技用の紙雷管ピストルを撃ってリアルな強盗風に脅かすか お面よりパンストをかぶったほうがホンモノぽくて怖いかも そうだ、ホンモノといえば体育館の壁にヤモリが張り付いていたので アレをビンにつめて名前を書く紙が風で飛ばないようにするオモリにできたのに! さらに無毒のヘビや大きなクモやカエルを捕まえて水槽にいれておけば 理科室的な恐怖も加えることができてさらに恐怖は増すばかり・・・ ああ~鳥肌がたつわい~ なんだか次の肝試しが楽しみになってきました グフグフグフ・・・死なない程度に殺してやろう ・・・でもトラウマになっては困るのよね さて、学級連絡網で時間割の変更が回ってきました 次のDさんの家に連絡して電話口の奥さんに挨拶しました 「先週のキャンプではご主人に肝試しのオバケでお世話になりまして」 すると奥さんは意外そうな感じでこう言うのです 「肝試し?うちの主人は参加してませんけど」 「え?・・・またまた~おどかさないでくださいよ~」 「勘違いでは?主人は仕事で、キャンプには子供と私しか参加してないんです」 ええええ~っ? では、あのDさんってだれ? 同じ苗字は2人もいません・・・ やめてええええええええ! ひょっとして私はDさんではない他のお父さんをDさんと呼んでいたのでしょうか? それはそれで恥ずかしいではありませんか! ああ~勘違いがこれほどまでに恐ろしいとは いろんな意味でこちらの肝が冷える肝試しでした アアコワ 第196話 病院にて 8月22日 病院での忘れられないシチュエーションを2つご紹介します その1~「もしも高齢の医師のいる病院があったら・・・」 右目が腫れて痛みだしまして 3日目になっても悪化するばかりなので小さな病院に行きました 出てきた先生はお年寄りと表現する以外には思いつかないほどの老医師でした すっかり腰が曲がっており両目が私の右目と同じくらいはれぼったくて細いため まるでうたた寝でもしているような第一印象でした 大丈夫かな?と思いつつも診察が始まると あたかも往年のドリフターズのコントのようなシチュエーションが展開されたのです 先生はゆっくりと私のまぶたをめくると 「あぁ~麦粒腫やね~」と診断しました バクリュウシュという耳慣れない言葉に「骨肉腫」とか「リンパ腫」みたいに まさか命にかかわる病気なのでは?とちょっとビビリましたが ごく普通のモノモライのことらしく、まぶたの内側に膿がたまっているので 針で突いて絞ればすぐ治ると言うのですが・・・ なぜか先生は自信がないと言い出したのです 先生「あの~、かわってくれんか」 看護「すぐに準備できますから」 先生「ワタシは目がね~」 看護「矢野さん、こちらへどうぞ~」 私 「・・・はい」 先生「年のせいか、どうにも見えにくくてね」 看護「ベッドに寝てください」 先生「手元がなんだかね~」 私 「あの~・・・」 看護「どうしました?さあ、どうぞ横になってください、こちらが頭で」 先生「私より君がしたほうがいいと思うんじゃが」 看護「先生、準備できました」 先生「やっぱり私がするの?」 私 「あの~大丈夫なんですか?」 看護婦さんは問答無用で針のついた器具を先生の手ににぎらせます 看護「大丈夫ですよ~先生」 先生「そうは言われても・・・困ったな~」 看護「大丈夫、大丈夫」 困るのはこちらのほうです! 看護婦さんの「大丈夫、大丈夫」というのは明らかに先生に対して言っています 私はかなり不安を感じながら天井を見上げると こともあろうに天井には血がついているではありませんか! どうしたらあの高さまで血が飛んでしまうのかを今は考えたくありません すっかり帰りたい気分になっていたのですが、すでに看護婦さんは私の頭を押さえており 顔をまぶしいライトで照らされていたのが急に暗くなったと思ったら 老眼鏡をかけて目をショボショさせている先生のドアップが目の前に! そしてまぶたが無造作にねじり上げられた時に恐怖というモノを感じ しかも針が震えながら目の前に迫っていても、まぶたを閉じることができません 見たくなくても見えてしまうのです ウミを絞る前に針で眼球のほうを傷つけられたらと悲観的なイメージが浮かびます ああ~たすけてえええええ 小首をかしげてのぞきこんでいる先生の小さなうなり声が 「ウ~ッウウウウッ・・・」と一瞬止まって 小さなプチっという破裂音の後でまぶたギュっと絞られたときに 痛みと同時に視界が紅く染まったのが忘れられません 薬を塗りながら看護婦さんも先生も「よかったよかった」と言っていました 私はこんな怖い診察を今まで受けたことがありません しかし「ダメだこりゃ~!」と言って帰るより先に痛みをほとんど感じなくなってしまい 翌朝にはウソのように腫れもひいて完治していたのです どうもありがとうございました というわけで「次ぎ行ってみよ~!」 その2~「もしも微妙にSな医師と看護婦のいる病院があったら・・・」 腰痛がひどくて歩くのも困難になり、悪化するばかりなので病院に行きました 大きな総合病院で見てもらったのです 私は午前中の最後の患者だったらしく、レントゲンが終わって診察室に戻ったときには ベテランの看護婦さんと先生以外はすでに昼休憩に行っており 大きな病院なのに診察室も廊下も妙に静かでした 二人はさっさと休憩したいのでしょう、機嫌がいいようには感じませんでした 無愛想な先生がレントゲン写真を見るか見ないかで注射を看護婦さんに指示します 私はどうも注射は好きになれませんが、ちょっとでもよくなるのならばと 腰の痛みに耐えつつベッドでうつぶせに寝ました しかしココからがまるでコントのようだったのです 看護「先生~注射針はこの太さでよかったですか?」 先生「ん・・ダメだ、もっと太いのにしよう」 看護「え? あ、ハイ」 背中をめくって消毒をされる時にさっきの「え?」に引っかかるものを感じました 先生「そうそう~この太いほうがいいね~」 看護「しかし、痛む腰にこんな痛い注射を打つのは・・・」 看護婦さんは寝ている私の前をわざわざ通って低い位置で注射器を手渡します 看護「先生、どうぞ」 私 「うわ」 看護「見えた?」 先生「見ちゃったか~」 私 「はい、見ました・・・というか、いま見せましたよね?」 看護「どう?太い?」 私 「そうですね・・・」 看護「でもね~太くても、痛いだけだから大丈夫!」 私 「え?」 先生「ほら、細い針だと中で曲がったりするとね~」 私 「は?」 看護「この注射は本当に痛いので余計な事は考えなくても大丈夫ですよ」 私 「いやいや、意味がちょっとわかりませんが・・・」 先生「じゃ~プスプスプスプスっと4箇所も打ちますよ チクっとしま~す、ひと~つ」 (プス!) 私 「イっ・・・」 看護「痛いですか?」 私 「はい・・・」 先生「でも痛いのは今からですよ~じゃあ~ゆっくり入れま~す」 私 「イタタタ」 看護「なんですって?」 私 「いえ」 先生「今度は下に打ちます・・・チクっとしま~す ふた~つ」 (プス!) 私 「イタタタ・・・」 看護「動いちゃダメですよ」 先生「動いて中で針が折れると後が大変だからね~じゃ~今度は右に、みっつ~」 (プス!) 私 「イタ・・・ハハ」 (なぜか私は笑ってしまったのです) 看護「あれ?先生、この人笑ってますよ」 先生「注射されるのが面白いのかな?」 私 「いえ・・・ククク」 先生「動くと手元が狂うから、ちゃんと押さててね」 看護「わかりました、しかしアナタは注射を打たれると笑う人なんですか?」 私 「そんなことはないんですがククク」 先生「じゃ~これで最後ね、よっつ~! フフフ」 (プス!) 私 「うっ・・・ククク」 先生「じゃあ~ゆっくり入れま~す・・・フフフ」 先生の声は私をなぶって面白がっているようにしか聞こえませんでしたが 私を押えている看護婦さんまでもが肩を震わせて笑っているのに気づき 腰の痛みを上回る注射の痛みに耐えながら、なぜか心の痛みも感じました しかも、帰る時にはちょっとだけ楽になっていたはずなのに 翌朝には以前と変わらない腰痛で顔をゆがめながらベッドから身を起こした私は いかりや長介よろしく「だめだこりゃ!」と言わずにいられませんでした 第195話 交差点には危険がいっぱい 7月19日 選挙が始まるとこんな田舎でも急ににぎやかになります 大きなスピーカーを積んだ選挙運動車と呼ばれるやかましい車が走りまくり つい振り返ると車中から手を振って「ありがとうございます!」と言ってくれるので 思わず「なにが?」と言い返したくなります そういえば5年ほど前に先輩から頼まれて選挙カーの運転手を半日だけ勤めました たまたま友人のU君も頼まれて別の候補の運転手をしており 選挙カーがゆっくりとすれ違うときに目が合って いつもの調子でお互いにクラクションを軽く鳴らして笑顔で手を振ったのですが 車内にはしばらく気まずい雰囲気が流れました 「お前は対立候補とつながっているのか?なんで勝手に挨拶しとるんじゃい、空気を読め!」 と言われているような気がしたよな~と、後日U君と酒の肴にしました もう選挙カーには頼まれても乗らんわい! しかし、選挙カーからウグイス嬢や候補者が叫んでいるのを聞くと セミの声のように暑さが増幅される気がするのは私だけでしょうか? 実際にムシ暑い日は続いており、なんだか集中力も途切れ気味です そんな時、気をつけねばと思わされる出来事が多々・・・ 交差点で左折しようと待っていた私の車の横で 黒いスーツを着たおじいさんが自転車にまたがって信号待ちをしていました お葬式か法事だな~と思って見ていましたら、青で進み始めたおじいさんが こちらにななめにフラフラ近づいて来て自転車ごと派手に倒れて転がったのです え!当たってもないのに なんで? すぐ車を停めると助手席から妻が駆け出して助け起こしましたが・・・ おじいさんは葬式の帰りで、なんと昼間から酒をずいぶん飲んでおり もともとフラフラのようでした 真っ赤な顔は熱中症なのか酔っ払なのいかよく分からない状態で 「ツレの葬式の帰りにワシが死んどったらアカンわな~友引か?」と言って笑うのです 多分、アルコールで痛みを感じていないものと思われます とにかく無事でよかった しかし転倒した時に、こちらの車が少しでも動いていて ちょっとでも接触していれば交通事故になってしまいます! これは怖いことです 自分が気をつけていても当たってこられてはたまりません そうそう、当たってこられるといえば 昨年のこと、交差点を直進で信号待ちをしていて青に変わったとき 隣にいた右折レーンの軽自動車が先に発進、右折すると 横断歩道を青で渡りはじめた自転車をはねました すぐに車を止めて警察を呼びました 被害者のご夫人はヒザから血を流して呆然としていました 私の携帯を貸して家族へ連絡してもらいました 驚いたのは軽四を運転していたオバサンがノソノソ降りてきて 「自分は青だったから悪くない!」と言ったのです 御婦人は自信なさげに「私が赤で渡っていたのでしょうか?」と聞くので お互い青で交差点に入っており、もちろんはねた車が100%悪いと言うと オバサンは「とにかく私は用事があるから早く帰りたいんやけど」といいだし 警察が来るまで帰れるわけがないと言う私に迷惑そうな顔をしました 人身事故なのに事の重大さで落ち込むとか責任感とかはないのか? 信号が青でも右左折時には巻き込み確認が必要なのは運転の初歩ですし 今回の場合は進行方向の横断歩道上だったので前方不注意に相当すると思います じきに到着した警察にも同じことを言われていましたが オバサンはよく理解できていないようでした とても恐ろしいことです 安全確認をしないことこそがとても危険な運転なのです こんな常識のないドライバーが免許を持っており 自分の子供が巻き込まれたらと思うとぞっとします さて、ぞっとするといえば・・・ 配達の帰りに蛇行する古い軽自動車が私の前を走っておりまして 50キロ制限の直線道路を40~45キロの超安全運転でした その車は坂道では速度がガクッと落ちますし 下り坂ではブレーキを多用しますから、私の後ろは大名行列ができてしまいました 私は急いでもいなかったので、そのままダラダラついていくと 軽四は交差点にゆっくりとスピードを落として入ると普通にまっすぐ走り抜けたのですが 信号は赤だったのです 黄色だったのではなくて、最初から思いっきり赤でした スピードが出ていなかったのでこちらは交差点前でとまれましたが なんのためらいもなくゆっくりと現場を走り去る車に恐怖を感じました 見事な信号無視です、タイミングしだいでは大事故になりかねません 赤信号では止まるのが交通ルールの初歩の初歩なのに とても恐ろしいことです 超安全運転では無かったのです こんな常識のないドライバーが免許を持っており 自分の子供が巻き込まれたらと思うとぞっとしました 娘が学校から帰ってきました 私は交差点の向こうで手を振る娘が青になってもすぐには渡らずに あえて信号待ちの右折車が2台ほど曲がってから 他に車はこないと確認して渡り始めるのを見てよしよしと思ったその時 青いやんちゃな車が青信号を右折しようと交差点に減速せずに入ってきたのです! 「待て!」と叫ぶ私の声はぜんぜん聞こえないようでそのままこちらに走ってきます このままでは娘がはねられる!というそんな絶体絶命の状況で 「危ない!」という大声が響いて青い車は娘の直前で急停止しました ああ~神か仏か、偶然にも赤信号で止まっていたのは選挙カーだったのです 気の利くウグイス嬢が大音量のマイクで「危ない!」と叫んでくれたので助かりました ありがとうございました 本来ならば私の清き一票をその候補に投じたいところですが すっかり動揺していたので名前も政党も思い出せないのです すみません あれ以降・・・私は選挙カーをうるさいとは思えません 選挙カーには向き直って手を振るようになりました それを見て、さらに手を振りかえしてくれる笑顔の候補者には悪いのですが 私が手を振っているのは 車とウグイス嬢に向けてだけなのです というわけで交差点ではご注意を 第194話 しあわせについて、それぞれのちょっとした話 6月23日 ありがたいことに、ここ2年間で遠くがよ~く見えるようになりました 0.7だった左目の視力が今は1.2~1.5ほどもあるのです 右は0.2の近眼だったのに0.5ほどに改善されています しかし左右のバランスは悪くてどうにも見えにくいな~と思っていたら すでに老眼がバッチリ進んでおり、手元が見えなくなっておりました 年ですな~ 新聞や説明書がぜんぜん読めないので不便で困るな~という話に 先輩方はうなづいてくれますが目の悪い後輩のC君は 自分に比べればぜんぜん幸せだというのです なんでも彼は片目の視力がほとんどなく、幼稚園の頃から近眼で眼鏡をかけており もともと遠くは見えないのに私と同じ老眼が早くに始まり いまでは近くも見えなくなったというではありませんか それは困るのレベルが違います、そこまで悪いとは知らなかったので 比較すればたしかに私は幸せなのだな~と思っていたら 「むかしね~ごっついエエ女が電車に乗っててこっちを見てたんですよ~」 と彼が学生時代の話をしてくれたのです その美人が同じ駅で降りたので何気にながめていたら 向こうもこちらをじっと見ており、自転車で家に向かうと 美人も同じ方向に歩いていたので、ウブなC君はちょっとドキドキしながらも チラ見してから家に帰ったら10分後・・・ 「荷物が重いのに無視しやがって、気がきかんのじゃい~このガキは~!」と言って 都会に暮らす姉が久しぶりに実家に帰ってきたとか・・・ C君は実の姉でさえ見分けがつかない視力なのに 美人だと判断できたとは なんだか幸せな話だな~と思ってしまいました 姉と言えばJ君も自分の姉貴は美人で面倒をよく見てくれたため 今でも頭があがらないと言っていましたし 父親は理不尽なくらい怖いが尊敬はできるとか 母親は「Shall We Dance?」の「草刈民代」にそっくりで 料理がとても上手で何を作っても美味いと言っていました (敬称略) うう~む、無理して見ればJ君のお母さんは「草刈民代」に似てなくも無いことも無いことも・・・ C君ならそう見えるかも知れないが目に異常のないJ君も本気でそう見えるのなら とてもいい家族で食生活も豊かで、なんと幸せなことだろう~と思いました 数年前の青年会の旅行でH先輩と夜の繁華街に繰り出したとき 客引きのお兄さんに「1時間飲み放題で3980円!今日は女子大生のバイトがいるよ」 と言われてその気になって入ったラウンジで 目のいいはずの先輩が吟味して指名した女の子は、なぜか女子大生ではなく 30代後半の奥さんにそっくりな人だったのです しかもお姉さんの飲み代は別会計のため よく飲んでよく食べてしゃべりまくるお姉さんに延長までした結果 お勘定は3980+3980ですむはずもなく2万円近く払ったのでした こんなことなら先輩の家で奥さん相手に3人で飲んで 1万円札がポケットに残っているほうが幸せかと思いましたが 先輩はとても満足そうだったのです・・・ H先輩は幸せな人だな~と思いました 満足そうと言えば 運動会でK先輩が子供の写真を望遠レンズで撮っていました 後ろから驚かそうかと思い、お茶目な私は忍び足で近づくと 先輩はファインダーをのぞきながら満足そうに 「ああ~かわいいな~ああ~かわいいな~」 と小声で何度も言いつつシャッターを切っていたので 逆にこちらが驚いてしまい声をかけれませんでした 「娘を撮影中にかわいいな~って言うなんて、どんだけ親バカなんですか?」 と問えば、真顔のKさんは「オレがそんなこと言うわけないやろ~」と シラをきるのでさらに驚くばかりです ひょっとして無意識でそう言ってしまうのでしょうか・・・ それならそれでK先輩はなんと幸せな人でしょうか U君が隣町にうまいラーメン屋を見つけたと聞き一緒に食べに行ったのです 醤油味のシンプルな中華ソバが700円は高いとは思いましたが、かなりおいしいラーメンでした その後U君はすっかりハマってしまい、月に2~3回も通っていたらしいのですが ある日スーパーで安売りしていた和○山ラーメンを買って作ってみたら あのうまいラーメン屋と似た味で、とても105円とは思えないツルツルの生麺だったので すっかりその味に満足してしまい何度も家で作って食べたと聞いて それは幸せな話だな~と思っていたらどうやら違うようで その後はうまい店に行っても「うまいな~」よりも「高いな~」と思ってしまうのと 105円ラーメンは定番ではないので特売の期間が過ぎるとスーパーの棚から消えてしまい こちらの都合では食べることができないため、次の特売日を待つのがつらいと言うのです 『うまいラーメン屋にハマる』のと『うまいラーメンがスーパーで安売り』というのは 断片的に見ると2つの幸せでも、全体的に見ると幸せではないそうです U君には今度、安くてうまい塩ラーメンの店を見つけてもらって 紹介してほしいものです 無口な友人のG君はある友達に20万円も貸して もう10年以上返してもらっていないというのです 20万円と言えば大金ですから、もしも電話に出てくれなくなったりしたら 内容証明郵便を奥さん宛に送るとかしたほうがいいよ~と 野暮なアドバイスをしてしまいます しかしヤツはぜんぜん平気で、たまにその友人と出会ったときに 「あの金・・・忘れてないよね~」と切り出すことを思うと たまらなくなるな~と言って笑うのです・・・ 私はG君が何を考えているのか分かりませんでした 詳しく聞くと、貸した金について尋ると、借りている相手が突然困りだす小芝居が G君にとっては「20万円分」面白く感じてしまうらしく もはや返してもらおうと思っていないばかりか、さらに10万追加で30万円分貸せば さらに面白さが増すだろうというのです 相手からはすでに20万円分感謝されているはずだし 自分の貯金は充分たまっているので全く困ってはいないと言うのです お金を貸すことで得られる満足感についての持論を展開するG君と話しているうちに ひょっとして自分が人間的に小さくてケチでアホではないかと錯覚したほどでした お金の使い道は人それぞれと思いますが 貸したお金を返してもらえない状態を楽しむことができる人間を生まれて初めて見ました G君はたいして飲んでいないのに笑いながらこう言ってくれます 「君にも貸そか?20万」と・・・ G君は私の考えの及ぶ幸せ者のレベルをはるかに超えているな~と感心しましたし まだG君にお金を貸してもらおうと思わない私の今現在と いつでもお金を貸してくれる友人がいることは幸せかもと思いました 酔ったN先輩が「来月みんなで一泊旅行に行こうや~!」と言い出しました 「うまいもん食べて、温泉につかって、パーっと騒ごうで~マイクロバスならすぐ手配出来るし どこの温泉がええ?城崎は近すぎ?有馬?北陸?南紀?皆生?飛騨とか伊勢は遠いか~ フグって高いけど間違いなくうまいよな~ どう?コンパニオンは呼ぶよね~」とノリノリです 一緒に飲んでいたC君、J君、H先輩、K先輩、U君、G君の8人で相談したのですが 休日の都合がまるで合わず、行き先どころか日程さえ決まりません それならと乗り合わせでの日帰り旅行に変更しても参加者は増えないのです みんな忙しいのですね~ 最後は男前のNさんにしては珍しく泣きが入り、こう叫んだのです 「ほんの半日でもいいから行こうや~、オレは家からちょっとでも離れたいんや~!」 N先輩は幸せではないようでした U君が塩ラーメンではなく隣町の定食屋の親子丼がめちゃめちゃうまいと言い出しました 卵のとじ方が絶妙で、ふっくらトロリ感がハンパなく いまだそれ以上の親子物を食べたことが無いとベタ褒めでしたから 後日食べに行ってみますと なんと! うちの妻が作る親子丼とよく似た味だったのです どうやら私は幸せ者だと気づきました 第193話 カエル 6月9日 五月の蝿と書いて「五月蝿い~うるさい」と読むようですが うるさいハエを食べるほうもこの時期にはそうとう五月蝿いです 「カエルのせいでねむれんかった~」と次女がアクビをしました 確かに我が家は田畑に囲まれているため毎晩カエルの歌が大合唱で聞こえます 眠る前に蒸し暑くて窓を開ける時など急にボリュームが上がった気がして なんだかうっとおしいな~と思うこともあります カエルは夜鳴くばかりではありません、昼でも鳴きますし雨のふる前は特にです ドライブ中に満開のハスの花が水面を埋め尽くしている美しい池を見て 風流な私は思わず車を止めました 携帯で撮っておこうかと池に近づくと足元からカエルが何匹も飛び出して驚きましたが あまりにも巨大なその姿に2度びっくりしました ドポン!ドポン!と派手な音をさせて池に飛び込んだのは、かつて食用ガエルと呼ばれた 警戒心の強いウシガエルというヤツらです そう思うと松尾芭蕉が「古池や~」の句で聞いたのはかなり小さなカエルでしょうね しばらくして池のあちこちで牛のようにモ~モ~と鳴きはじめます 夢のような蓮池にはちょっと趣が違うかなという気がしました 三女が「カエルはどうしてないとるの~?」と聞いてくれますから 「ワシはココやで~嫁さんに来てくれ~」とアピールしているのだと教えておきました 後でよく調べてみましたら、ナワバリの主張と求愛のためという事で 間違ってはいませんでしたが、鳴くのはオスだけというのを初めて知りました カエルか~いままでそんなに興味を持って見ていなかったな~ なになに国内にいるのはアマガエル科・アオガエル科・アカガエル科・ヒキガエル科 大きなウシガエルもトノサマガエルも緑色ですが赤ガエルの仲間のようです イボガエルと呼んで恐れていたツチガエルも実は無毒でこれまた赤ガエルの仲間 逆にアマガエルやヒキガエルは毒があるようで、猛毒ではないが気はつけたほうがいいとか それぞれのカエルに特徴があり、もちろん鳴き声も全く違うようです どんなんかな~とネット動画を検索するとそれぞれの鳴き声もパソコンで再生できるのです なんて便利な世の中でしょう 長女と三女はモニターに食いつき「カエル~カワイイ~捕まえたい~」と喜びます それならばと一番の美声といわれるカジカの鳴き声を実際に聞いてみようと 車を飛ばして宮津市辛皮まで聞きに行ってまいりました ちなみに次女はヘビは触れるがカエルはウエット系なのでNGとのことでした よくわからんな~ 川沿いに車を止めてそぞろ歩くと飛び交うゲンジやヘイケのホタル達もきれいでしたが 清流に響くリュリュリュリュリュリュという鳥のような美しい鳴き声に ゲロゲ~ロと鳴く一般的なカエルのイメージはありませんでした しかし、カジカのみが鳴いているわけではなく3種類ほど他にも聞こえます どうやらうるさいのはアマガエルです 久しぶりで車を洗っている時にこのカエルが鳴きだすと嫌な気になりますね~ 小さいくせにクワクワクワクワと大声でかなりの数が鳴き続けています たまにアオガエルのコロコロコロコロという 優しい声も聞こえることに気づきました 気づくといえば、道端に白いふわっとしたゲンコツ大の白い泡が落ちていたのです どうやらアオガエルの卵塊のようです、しかしその周りに水溜りはなく 中からオタマジャクシが出てきても干上がった側溝に落ちて全滅してしまうので 長女に命じて水辺に移植してやりました 雑草にかなり固くくっついて難儀したようです なんだかとてもいいことをしたような気分で家に戻り あかりを消して窓を開け、焼酎ロックの氷をコロコロ鳴らしつつ カエルの声に聞き入れば、なんだかとてもいい感じなのです 一番やかましいと思っていたゲコゲコゲコというトノサマガエルの声はそれほどしません やはりうるさいのはアマガエルでした・・・いったい何十匹鳴いているのか そして、たまに聞こえるアオガエルのコロコロコロという鳴き声にこそ趣があります 今回あらためてカエルの歌声の聞き分けをしたおかげで この大合唱を以前ほどにうっとおしいとは感じなくなりましたし むしろ歌でも詠んでみようかなと思うほどの風流さを感じつつ酩酊できるのです 古池や~蛙飛び込む~水の音 蓮池に~蛙飛び込む~牛の声? 焼酎を~芭蕉とロックで~飲みたいな コロコロコロと グラスも蛙も~ 字余り! 少し興味を持つことが小さな幸せにつながったりするのね~ というわけで 次回は幸せをお題に 第192話 食事のマナー 5月10日 先日、夕飯時に芸能人の食事マナーが格付けされる番組TVを見ておりました タレントさん達の箸の持ち方が変だったり、うっかり犬喰いしてしまい もはや一流ではないと笑われるのを娘達は 「でたっ!ドッグイート~ドッグイート!」と妙に喜びつつも いつものようにヤツらは犬に近いマナーで食事していたのです どうしてこんな風に育ってしまったのやら・・・ 箸の持ち方、茶碗の持ち方、ひじをつくとか、音を立てないとか・・・ 言い出したらキリがありませんな~ しかもポロポロよく落とすので、テーブルの下には愛犬のマコが 高確率で落ちてくるご馳走を狙って娘達のそばを離れないほどです しかも本人達には意識がないようで注意しても一向に改善されません 娘達には食べられることに感謝しつつ、きれいな所作で口に運んで 何でもおいしいと感じるようになってほしいな~と願いつつ いったい誰に似てしまったのかと行儀の悪さを嘆きながら ご飯をビールで胃袋へ流し込むとゲップ三連の後で U君のかつての彼女のことを思い出した私はうっかり グーで握っていた箸で茶碗を叩いてしまうのです 話は15年前にさかのぼります U君はお調子者で面食いで惚れっぽい、単純というか普通の男です ステキな彼女ができたと聞かされてしばらくたったころ おごってやるからと焼肉をにさそわれまして、そこで紹介されたのは 日本人離れした面持ちの色白でまつげが長くて細身の美しい人でした このK子ちゃんは銀河鉄道999のメーテルに共通した非現実的な美しさがあり 簡単な挨拶のあと無表情に5秒ほど見つめられると、クールな印象を受けるとともに なんだかうらやましい気持ちがわいてきました この彼女ならば焼肉をおごってでも自慢したい気持ちも分からなくありません その場には彼女のツレだという、化粧っけの全くないP子ちゃんも同席しており 度の強い眼鏡とパイナップルのような髪型がファニーでした K子ちゃんと比べては申し訳ないのですが、地味な印象のP子ちゃんは もはや引き立て役にしか見えない状態だったのです 普通では考えられないほどの美人がU君とくっつくとはこの世の中どうなっているのだ? と思いつつもビールを飲み飲み肉を焼き始めると P子ちゃんが気を使って「K子はすっごいキレイでしょ?」と言ってくれるので 私は「そうやな~、どこでみつけたんやろ?こんなキレイな彼女を~」とU君に振ると 嬉しそうにうなずきドヤ顔をしますが、当のK子ちゃんは謙遜して 「そんなことないですよぉ~」と言ったりは一切しないので最初の違和感を感じました 黙って肉を焼くのも面白くないので、私が先日ドライブ中にヤギを見た話をしましたら K子ちゃんは無言でしたがP子ちゃんは「それでそれで~」と 一応聞きたいフリをしてくれるのです 夜の峠で私は目を疑いつつ白いヤギに近づくと、かなり汚れており臭いし 瞳が横に割れているように見えるのがキモくて怖かった! という内容にP子ちゃんは「となりのトトロのワンシーンみたい」と ナイスなフォローをしてくれましたがK子ちゃんは嫌そうにひいていました たしかに食事中の話題ではないか・・・ しかしながらU君のダジャレや下品な話でK子ちゃんは大口を開けて笑うではありませんか そこでクールな第一印象が壊れましたし、P子ちゃんは普通にニコニコしているだけでした 笑えば笑うほどなぜかかわいく感じるP子ちゃんとは真逆にK子ちゃんに対しては 美人が笑うとバランスがこうも崩れてしまうのかと驚かされました 私には「危険を感じたサルのような表情」と思えてしまったのです P子ちゃんはその間にも要領よく肉を焼き、追加してはおいしそうに食べ続けていました 小皿や箸の使い方が上品で、笑うときに口元を隠したりするのでよい印象を抱きました K子ちゃんにはその後も私が放つシュールなボケをことごとくスルーされてしまうし なんとなく人を小バカにしているような態度が見え隠れして 私にはとても相手が勤まらないな~と距離を感じました K子ちゃんは好き嫌いが激しいらしくホルモン系が気持ち悪いから食べられないと言い それをおいしくいただく私やP子ちゃんを哀れそうな目で見てくれますし 自分では肉を焼こうともせず、少し焦げてしまっても生焼けでも食べないし この肉は安そうとか固いとかタレが辛すぎるとかマイナスの言葉も多く口にし しゃべるとツバを飛ばすし、口は半開きでピチャピチャ音を立てるし 飯を口からポロポロこぼすわで突っ込みどころ満載の女性だったのです それに箸の持ち方が妙なことも気になってしまいます しかも両ヒジはテーブルにつけたままつまらなさそうに食べるので U君に対するうらやましい気持ちは焼肉開始のわずか10分でなくなってしまい 思った以上に雑なしぐさの数々が残念でなりませんでした 上機嫌だったU君はあえて注意することもなく、デレデレすることもないまま その後の居酒屋でも我々はさらにご馳走になってしまいました P子ちゃんはおごってもらえるからついてきただけの浅い友達のようでしたが 楽しそうに、おいしそうに、たくさん食べてくれるので 見ているほうも気分がよかったのをよく覚えています 一緒にご飯を食べて不快感がない女性は自分にとって意外とポイントが高いのかと そう気づいた瞬間でもありました U君と彼女はどうなったのか・・・その後の話しを聞くと 最初はアパートに入れてもらったことがないと言ってボヤいていましたが そのうち彼女が携帯を2台持っていたとか、とても尻軽だと聞かされるようになり 彼女の職場を訪ねても無断欠勤していることが多かったり 借金もかなりあるとかで、どうにもややこしい女性と疑い始めたころ 急な引越しをしてそのまま音信普通になってしまったという微妙な話でした 今思い出しても普通では考えられないほど美しい人でしたが 普通では考えられない部分はまだまだあったようです まだまだあるといえば、そのしばらく後のこと・・・ イケメンとのデート中のP子ちゃんが私を見かけて挨拶してくれたのです そのときに名乗ってくれていなかったら絶対に気づくことはなかったと思います それは・・・眼鏡を外して髪を下ろした彼女が本気でメイクすると 高島礼子によく似ていたからなのです 驚いた私は「コンタクトにしたん?」としか言葉が出ませんでした そんなこんなで愛娘達にはP子ちゃんのように化粧でどれほど美しく・・・ ではなくて、美しい所作で食事をして欲しいと思いつつ ズボンで手を拭きながら小走りでトイレから戻った私は ご飯に突き立てていた箸を引き抜いて口にくわえ 茶碗に味噌汁の残りを注いで一気にかきこみ 最後に男らしく袖で口元をぬぐうと立てヒザのまま手を合わせて感謝の一言 「ごちそう・・・サマンサ」 しかし娘達の行儀の悪さはいったい誰に似てしまったのかと 嘆くあまりにビールがすすむので今夜も飲みすぎてしまいます 第191話 見かけ 4月24日 ~その1~ 血の気の多い後輩のJ君と顔色も悪くてちょっと暗いB先輩と3人で飲んでいて なぜか献血の話題になったのです J君は20歳からずっと愛の献血を続けており 自分の血が誰かの役に立っていることはとても気持ちがいい~と語りつつ 気持ちよくビールをお代わりしています 献血車の前を通りがかっても時間がなくて献血できない場合などは 体中であまった血が煮えたぎるのを感じて困るほどだと言うのです すごいな~ 恥ずかしながら貧血気味の私は未だ献血をしたことがありませんでした 一緒にだまってうなずいてウイスキーを飲んでいたB先輩は あまり献血に興味がなさそうに見えたのですが話を振ってみると 私「Bさんの顔色だとボクと一緒で献血はしないほうでしょ?」 B「献血か・・・今はできないんや」 J「マジで貧血ですか?」 B「いや、むしろ血はあまっとる」 私「変な病気でしょ?」 B「ワシは健康じゃ」 J「予防接種したところですか?」 B「ああ~ちょっと近いぞ」 私「変な薬を飲んでるから?」 B「あほ~遠くなったど~、ワシは健康やと言っとるやろ!」 J「ほかの理由となると海外旅行から帰って間が無いとか・・・妊娠中はありえんし」 私「授乳中でしょ?」 B「あほ!なんでワシが赤ちゃんもおらんのにチチださなあかんのじゃいや!」 私「そういう変なクセのある人の血はお断りします的な?」 B「うるさい! もったいぶって言うことでもないが、もう回数オーバなんや」 J「Bさんもやりますね~」 私「やるって? すでに献血しすぎということですか」 B「そうや、400の献血は1年間にたった3回までしかとってもらえんのや」 私「Bさんは血の抜きすぎで顔色が悪いんですか?」 B「コラコラ、こう見えてオレの血は比重も重くてイイ血なんやぞ」 J「おや?まさかと思いますが矢野さんは献血したことがないなんて言いませんよね?」 私「うっ、実はそうなんや、ワシは400mlも血を抜かれるかと考えただけで立ちくらみが」 B「今は200mlの献血ってあまり聞かんし、もっとも200ではオレはモノ足らんが」 J「わかるわかる~200ではぜんぜんモノ足りませんよね」 私「モノ足らんという意味がぜんぜんわからん」 J「意味がわからんのは矢野さんのほうですよ、ちゃんと献血して社会の役に立たないと」 B「ほんまや、献血を一回もしたことない情けない大人が身近におったとはマジで驚きや」 私「ボクも自分で振った話でこんなに追い詰められるとはマジで驚きです」 J「マジで献血に行きましょ!次の日程をメールしますから」 B「そんなことしてもコイツは行かんやろな~、J君が拉致って献血車に乗せてしまえ」 私「も~酔いがさめますやん、マスター~オカワリくださ~い!」 J「おや?無駄に血を酒なんかで薄めてる場合じゃないですよ、血は不足しているんです」 B「君の子供に輸血が必要なのに血液が足らなんだとしたら困るよな?ちがうか?」 私「それは困ります、でもね~」 B「足らんモンはお互いが支え合うことが大事やろ?そんなことも理解できんのか?」 J「支えあうのはいいことですよね~、矢野さん!支えあう優しい気持ちってありますか?」 私「ないことはないようなあるような・・・」 J「あるんか、ないんかどっちです?イエスかノー!」 私「・・・」 B「フン、うわべの優さだけで人が助けらると勘違いしているのか?お前にできるんは何や?」 私「あの~おごることだけはできますので、今夜はこのへんで許してください・・・」 いや~参りました、口の悪いオッサンたちからヤイヤイ言われてへこみました しかしB先輩はどうみても血が足りなさそうな見かけなので 献血には縁がないと思い込んでしまい申し訳なかったと軽く反省しました いや~人を見かけで判断してはならんな~ 失敬 ~その2~ ちょっといい光景をみました 大きな公園での前でたむろしていた5~6人の中学生くらいの不良グループに 田舎から出てきた感じのおばあさんが、トイレはどこかと声をかけたのです 無視するか、ヤな顔で振り返って「は~?うるせ~ぞ!向こうへ行け」 などというのかと思ったら、さにあらず リーダーっぽい感じの子がめんどくさそうに 「トイレはな・・・え~っと、あの建物の向こうを曲がったら、その奥や~」 と教え始めると、ゆ~っくりと立ちあがった金髪の一番派手な兄ちゃんが 「OK!OK!ばあちゃんよ、オレが教えたるわ~こっちやで」と おばあさんをつれて行きました まさか人目につかないところでカツアゲをしてるのかと いらぬ心配をしましたが、すぐに戻ってきました 用を済ませたおばあさんが「さっきはありがとうね~」と不良たちに声をかけると 不良たちは何も言わず、おばあさんにそれぞれちょっとだけ頭を下げて見送ったのです う~む意外に親切なヤツらだな~特に金髪の子 いや~人を見かけで判断してはならんな~ 失敬 ~その3~ ドライブの帰りに喉が渇いたので田舎のバス亭横に車を止めました 缶コーヒーを飲みつつ気分転換にと時刻表を見たりしておりましたら 自販機の裏から下品な笑い声が・・・ 何気にのぞくと高校生らしき軽薄そうな不良の3人がタバコをくわえてウンコ座りをしています かかわりあいになりたくないものだと思って、ちょっと離れてコーヒーをすすっていると セーラー服の女の子達が登場しました、しかも1人は泣いているではありませんか ぐったりしているA子ちゃんの肩を抱いた優等生タイプのF子ちゃんは自販機の裏に向かって F子「C君達おる~?」 C「おらんど~」 F子「ああ~よかった、ちょっと聞いて!」 C「は~?珍しい、副会長のF子がアホウのワシらになんのようや?」 D「ワシらは何も悪いことしてへんで~ タバコなんかすったこともないわい」 E「そうそうそう~健康第一!プハ~」 F子「真面目な話なんよ、こっち来てくれる、A子がさっき変なオッサンに裸を見せられたんや」 C[なに?裸のおっさんって、おいおい!・・・マジで泣いとるやないかい!」 C君に遅れてD君とE君もあわてて火を消して話に加わり私も耳がダンボになります 鼠色のジャンパーを着た中年男が自転車から降りて振り向きざまにズボンを下げたとのこと D「おのれ~!ゆるせんど~その変態野郎!しばきまわしたる」 C「ま~あとはオレらにまかせとけ! で、そいつは今どこにおるんや?」 F子「A子しゃべれるか?○○公民館の裏手から出てきて学校と反対へ逃げたんやんな?」 A子「・・・うん・・・」 E「すぐそばか・・・F子はA子をたのむ、その変態はオレらがフルボッコにしたる」 C「よっしゃ!Dは学校に戻って誰かチャリにのっとるヤツらを呼べ!Eはワシと来い!」 そう言うが早いか走り出した三人にF子ちゃんは「むちゃはせんとってよ~」と言って 心配そうに見送り、震えるA子ちゃんに向きなおると 「C君たちがきっとカタキをとってくれるから安心し~」と慰めていました コーヒーを飲み干した私はそんなドラマチックな場面からゆっくりと車を発進させつつ たぶんあの不良の三人は大捕り物の末に変態さんをパトカーに乗せてくれるものと予感しました そして、彼らの頼もしさには貧血ぎみの私ですら 忘れかけていた青春の血がたぎりだすのを覚えたほどでした いや~人は見かけで判断してはならんな~ 失敬 さて、血がたぎるので献血に行くことにしましょう 第190話 気になる気になる 4月19日 どうでもいいことなのに、なぜか気になって ついつい考えこんでしまうことがあります なんとか自分なりの答えがでればスッキリするのですが・・・ 先々月のこと、隣町に老舗ラーメン屋さんっぽいお店を見つけた私は うまいかもしれないと直感し、のれんをくぐりました 常連らしい4~5人がおいしそうに食べているのはチャンポンだったので 他の人が食べているものを欲しくなる私はうっかりチャンポンを頼んだのです 出てきたのはラーメンに野菜炒めが軽く乗っているシンプルな品でした 最初の一口は期待どりにおいしかったのですが 三口目くらいから徐々に味がしなくなったのです おいしい気はするのですが、どうにも物足らなくなって 胡椒を一振り、また一振りと投入しても胡椒のみが主張してイマイチでした それならばとテーブルにある醤油や塩や七味、酢を逐次投入するも 味は落ちつくどころか妙な味わいに化学変化を起してしまったのです とても残念な後味に納得のいかない私は スープが薄かったのは何かの間違いだったのかもと思い 先月立ち寄った際にもう一度ちゃんぽんを注文したのです おなじでした・・・ 周りのお客さんもほとんどチャンポンを食べているのに 私には味がついていないのか?とさえ思えるほど薄味なのです ちなみに妻は私の味覚を薄口だと言うので この店はどう考えても超薄口と思えるのです しかし店は繁盛している様子 なんだろう おいしい気もするが・・・ お客さんを見ると私が一番年下のようですし、塩分控えめのお店なのか? いや違う・・・なんだろう~なんだろう~ 気になるな~ 考えながら半分くらい食べてようやく気がつきました このお店は麺が抜群にうまいのです スープはあっさりしすぎの優しい薄味なのですが 麺が妙にツルツルして滑らかなので喉越しがすばらしいのです 薄いスープのために麺本来の味や香もよくわかります 最近の「こってり」や「激辛」や「背脂」などで忘れていた 何かを思い出せたような気分でお店を後にしました ああ~すっきりした 朝の4時に目が覚めました いつもならトイレに行ってスッキリした気分で二度寝するはずが どうにも寝付くことができません しかもなんだか・・・ひもじいのです よく覚えていませんが、夢でおいしいものを食べていたような・・・ ああ~どうしたものか こんなこともあろうかと私はあるシンプルな計画を立てていました 「眠れないなら隣町へ牛丼を食べに行こう」 午前5時に牛丼専門店に到着してまさかの大盛を頼みました 並盛で充分なのに、このためだけにわざわざ来たので早朝からはじけてみたのです 店の中には妙な先客が一人だけいました 男の子です 学生服を着ており牛丼をガツガツとかきこ込んでいました 高校生・・・いや中学生? やや小太りで真面目そうな雰囲気です なんだろう? 受験のために遅くまで勉強していて眠れなかったのか あるいは遠くの高校へ通うための朝ごはんなのか? なんだかよくわかりません 食べ終わった彼はおもむろに「大盛りください!」と言ったのです 私に大盛りを運んできた店員が思わず「ええ~っ?」と聞き返したのでよく見ると なんと少年の前にはすでに大小2つの空のどんぶりがあったのです 私は大盛りを食べながらも、この子が気になって仕方ありません 新聞配達の勤労学生かな?でも何で学生服なの?どんだけ食べるの? しばらくは疑問符達が私の頭上に点滅しっぱなしでした そして私が牛丼を食べ終わる直前に学生は頭をかきむしり、苦しそうに箸をおくと 「ああ~ボクはダメだっ!」と言って席を立ち 牛丼を半分残して帰ってしまったのです お会計では2000円を出しておつりをもらっていました 500円玉の1コインで得られる幸せを求めてやってきている私にくらべても 学生で朝から1000円以上を使うのはずいぶんリッチなヤツだと思っていた矢先 厨房から聞こえてくる店員の声に驚かされました 「あの子はどうなっとるんや~注文の順番がむちゃくちゃや」 「あれだけ食べるのなら最初は大盛りから頼むはずやし」 「最後に大盛りで半分残すなんて」 「そうそう、並は2回もいらんはずや~」 話を整理すると、どうやら学生は最初に並、そして大盛り、そしてまた並 最後に大盛りの順でオーダーしたようです たしかにその順番は解せません しかも私は牛丼店でオカワリしている人をいままでに見かけたことさえなかったのです 未だに夢の続きかと思うような出来事でした ああ、あの少年はいったい何を考えているのやら・・・ 分からない・・・あああなんなのだろう 気になるな~ 隣の隣の町で定食屋に入ったときのこと 私と入れ替わりで常連さんらしきお父さんと息子の2人が帰っていきました すでに午後2時近くになっていたため、お客はおじさんが一人だけでした せまい店内には4つのテーブルがあり 奥のテーブルの後片付けをしているおねえさんにラーメンを頼むと 私は上着をイスにかけてトイレに行こうとしたのですが 隣の席で定食をモリモリと食べていたジャージ姿のおじさんのテーブルには コーラとバヤリースオレンジとチャーハンが食べかけのまま置いてあったので 連れがトイレに入っているのかと思い、少し待ってみようと席に着きました おじさんのテーブルには、その後オムライスが運ばれてきました やはり連れと一緒なのか・・・しかもトイレが長いところを見ると大だな? などと邪推しつつおじさんを見れば、なんとチャーハンを食べているではありませんか しかも「こっちもラーメンください」と追加してオムライスも食べて コーラで胃袋へと流し込んでいるのです! ひょっとして連れはいないのではとトイレに行けば 男女兼用のトイレには気配もありません おじさん一人で定食にチャーハンにオムライスとコーラにバヤリースで 〆にラーメンとは恐れ入ります なんという食欲魔人! さてさて、私はラーメンを食べ終わったあとも雑誌をみておりましたら 汗を拭きながら食べていたおじさんがいきなりガクッと脱力すると 「ああ~ダメだ~クソーまたかっ!」 と言って箸をおき、ラーメンを半分残して帰ってしまったのです お会計では4000円でおつりをもらっていました 私が600円なので、なんとリッチなおじさんなんでしょう 私にはこのラーメン1杯で充分な量だと思いました ひとりで外食しているのにテーブルが皿で一杯という光景を初めて見た気がします 自分へのご褒美? 今日はおじさんの誕生日なのか? 逆に悲しいことでもあったのか・・・ どうせラーメンを頼むならチャーハンと同時がよかったのでは 定食のご飯に、オムライスにチャーハンとはよほどの米好きか? それならラーメンをやめてカレーライスを注文したらいいのに ああ、このジャージのおじさんはいったい何を考えているのやら・・・ 気になるな~ そもそも「ダメだ~!」はなんなのでしょう そうです、牛丼の少年も言っていました どうしてダメなのか どうにも気になってしまい眠れなくなりそうです あの時、テーブルを片付けていた定食屋のおねえさんは 親子連れが食べ終わった皿を運んでいた たしかジュースのビンもあったはず もしかして そう! そういうことか! おじさんも、少年も「他人の食べているものが欲しくなる星人」 だったのではないでしょうか その気持ちなら私もよく理解できます おそらく親子連れのお父さんがチャーハンとコーラ 息子はオムライスとバヤリースを飲んでいるのを見たおじさんは 同じ品を注文して、その後で私がラーメンを食べるのが気になって ラーメンも追加してしまう その前にはきっと定食を頼んでいた先客がいたのかもしれません そうすると、あの牛丼少年も私が大盛りを頼んだので 同じものが食べたくなってしまったのかもしれません そうなると店に他の客がたくさんいる時間だと困ったことになりそうです 逆にお客さんが少ない時間帯なら 「他人の食べているものが欲しくなる星人」の人たちにとっては好都合なのでしょう 店が混んでいる時間帯に外食に行ってしまうと止め処もなく注文してしまい そして食べきれないとなればやりきれない思いがあふれ出てしまうため あえて人気のない時間を選んで食べに通っているのではないのでしょうか! そう考えるのとスッキリするのですが みなさんはどう思います? 正解でしょうか なになに え? 正解はごく簡単で? 牛丼少年もジャージのおじさんも私と同じ変な人ですって? そうか! ああ~ワシもダメだぁ~ああああああああああ さて、また眠れなくなったら牛丼を食べにいくとしましょう 第189話 言葉のトゲ 3月29日 娘がイヤ~な感じの言葉を使うようになりました 年頃なので背伸びしているのか局地的な流行なのか 「こんなムズかし~宿題はかなんわ~」と言っていたのが 「このクソムズい宿題はムリ!」と言い出し 「今日の給食は苦手なオカズばっかりやったわ~」を 「あんなゲロマズの給食、終っとるし・・・」などと表現します サンタさんからのプレゼントでさえ「サンタさんにもらったの~」ではなく 「サンタからゲットした」などと言うため、奪い取ったかのような印象を受けます なんとも不満たっぷりで相手に気遣いのカケラも見えないイヤ~な言葉を使うと 運気が逃げるし、思いやりをふくんだきれいな言葉も使えるようにしていないと いずれ世間に出て恥をかくことになるよ~と言ってやんわりと指導する私にさえ キモイやウザイやスケベなどとまるで真逆のことを言ってきますから 「このクソ生意気なバカ娘こそ終っとるんじゃ、ムリとか言うことはムリじゃろうがいや!」 な~んて下品な言葉で応戦しないようにと心がける今日この頃です 幼い言葉のトゲトゲに反応してイライラしてもくたびれるだけですし 当時の私もあえて汚い言葉を使って喜んでいたはずなので気長に見守ろうと思います さて子供の使う言葉のトゲはこのように単純で表面にチクチク現れているのですが 大人の使うトゲは文章に書き出しても見えないことが多いため 空気が読めないと大事な意味が分からない場合もあり厄介ですな 初めてそれを意識した高校時代の会話を懐かしく思い出しました 放課後にお調子者のU君とアホな話している所へ親切なB子ちゃんが通りがかったのです B子ちゃんは気さくな人で、シャイな私も普通に会話が出来る数少ない女子です U君は何かを思い出してB子ちゃんを呼びとめて聞くのには U「ちょっとちょっと~あのな~B子ちゃんのクラスで、@@@部のコがおるやんか~」 B「それは多分・・・山田さん(仮名)のことかな?ウチよりちょっと背が低い?」 U「そうそう」 B「色白で」 U「そうそう」 B「小顔の」 U「そうそう」 B「ウチより髪がちょっと長くて・・・かわいい」 U「そうそう、その山田ちゃんのことやけど、どんなコなんやろ?」 B「・・・どんなって?・・・山田A子は@@中学の出身で猫より犬が好きらしい~とか?」 U「そうそう、そのA子ちゃんって~なんか優しそうというか、よさそうな感じじゃない?」 B「そう・・・よさそうな感じやし、声もいい感じに聞こえると思うで、歌も上手らしいし」 U「そうか~それで勉強はできるほうやろか?得意な科目とか」 B「ん~文系はできるほうかな~図書委員やし、さっきも図書室の前ですれちがってしまった」 U「そうか~本ね~うんうん~本の似合う大人しそうな雰囲気やな~ そうそう、兄弟は?」 B「ん~山田のお姉さんはウチの部の先輩で本当に優しい人やし、やんちゃな弟が1人かな」 U「そうかA子ちゃんは~次女なのか・・・次女はけっこう人懐っこいって言うやん?」 B「そう、人懐っこくて、男子のボタンを付けるのはうまいという評判もある」 U「そうか~家庭的でもあるわけか~、ということは料理が得意だったりして」 B「ん~調理実習ではクッキーを焼いて男子に配ってたな~、でも得意なのは剣道なんやて」 U「そうか~意外に活発なところもあるんやな」 B「そう、意外と友だちも多いし、ちなみに家は国道沿いの@@神社の近くらしいで~」 U「そうか~趣味はなんやろ?すきなタレントとかでもエエから」 B「ん~洋楽なんかを聴くらしいし、アイドルなら光GENJIの赤坂君がタイプらしい」 U「そうか~休みの日は何をしてるんやろ」 B「ん~ちょっとおしゃれだから、わざわざ遠くまで買いモノに行くとか映画の話もしてたかな」 U「そうか~映画を見に行く手もありか・・・」 B「ま~そんなこんなで男子の人気はあるわけやけど・・・ちょうど今は彼氏がおらんらしい」 お調子者で面食いで惚れっぽいU君は上を向いて「そうか~」と嬉しそうに何度か言うと 満足そうにどこかへ行ってしまいました おそらく図書室へ 私はB子ちゃんの言葉に引っかかるところがあったので聞いてみました 私「それにしても山田さん(仮名)についての説明があまりにも親切というか丁寧なんやけど」 B「もっと教えよか? 確か血液型はABで射手座の~」 私「いや、聞きたいのはU君の質問にちょっと先回りして教えているようにも思えて」 B「ん~それはね・・・入学以来、私に山田のことを聞いたのがU君で5人目だから」 私「なるほど、説明に慣れてたんか・・・山田さんは相当モテるんやね~」 B「あれ?矢野君も興味がでてきた?」 私「いやいや、そうではなくて・・・なんていうか・・・悪い部分ってないんやろか?」 B「悪いところはな~・・・フフフ、ウチがほめたように聞こえた部分意外の全てかな」 私「え?ゴメン、どういうこと??」 B「そういうこと」 私「実は山田さんのことをあまりほめてないようにも感じたし、ちょっと違和感というか」 B「あ?やっぱり伝わってた?・・・ま~U君は幸せ者やから気づかんかったようやけど」 私「でもあの説明はウソではないんやろ?」 B「そう、全部本当なんやけど~1つだけ大事な部分をあえて言い忘れてたのよ」 私「それは?」 B「それは・・・山田A子がむっちゃ底意地の悪~いイヤ~な女・・・ということを」 私「わちゃ~! それは・・・それをU君に言ってやったらよかったのに、どうして?」 B「ウチは親切やから~フフフ」 U君の口から出た4回目の「そうそう」がB子ちゃんの「ある意味で親切なスイッチ」を 入れてしまったのではと振り返ります そしてB子ちゃんの言葉のトゲにちょっとひっかかったおかげで 私はすこし大人に近づいたのを自覚したのでした 第188話 寿司 3月13日 毎年3月3日の夜には家族で手巻き寿司をいただきます 大人でも手で巻くのと具を自分で選べるのは面白いですな 普通のカッパ巻きでさえワサビのちょうどいいきかせ具合とパリパリの海苔で 「美味い!」といわざるを得ませんし サーモンにイクラをたっぷりまぶして巻けば「鮭の親子巻」は絶品です さらにイカとひきわり納豆、アマエビとホタテとカイワレもいけます 子供達もそれぞれ好みの具を巻いては嬉しそうです 雛人形に桃の花や餅を飾って、去年の節句はどうだったっけかな~と思い出しつつ 白酒や白くない酒を飲みながら娘達の成長を確認します 寿司で子供の成長を確認すると言えば 回転寿司で積み上げる皿もそうです とうとう三女までもが二桁になったのには驚きですし 逆に親は10皿も食べられなくなってきました・・・年ですな~ そうそう食べられないといえば ちょっと贅沢しようとクルクルではない小さな寿司屋ののれんをくぐると いいタイミングでザパ~と音がしてトイレから大将が出てきたのです 前掛けで手をぬぐうと明るくこう言います 「いらっしゃい!何をにぎらせてもらいましょうか!」と・・・ え?にぎるのですか! 誰でもトイレに行くことは当たり前なのに そして「にぎり」を食べに来たはずなのに 気の小さい私は、なぜか「ちらし」をたのんでしまいました しかし、それでなにかが解決した感じもなく 腑に落ちないし、箸もすすまないしで困りました さて寿司屋で困ったと言えば・・・U君と飲みに出たときに サービスがいいらしいとの評判を聞いたとかでU君が寿司屋へ誘ってくれたのです 嫌な予感はしながらものれんをくぐると、妙に愛想のいい大将が 「何をにぎらせてもらいましょうか?」と3回も聞いてくれるのですが にぎり寿司はシメで食べようというU君の話に乗って、とりあえずビールと 黒板からオススメ品を3品づつ注文すると 「あ~それはもうなくなっちゃったんだよね~」という残念なセリフを 3回も聞かされてしまいました 昨日から黒板を書き換えていなかったらしく、大将は申し訳ない様子で 「これはサービスだから」とビンビールを最初の1本はおごってくれました カマ焼き、アサリの酒蒸、地魚の煮付け、タコ酢、出汁巻き、潮汁など どれもおいしくいただきましたが1時間も飲んだ頃に寿司も食べようかと まずはカッパ巻きから頼むと大将は慣れた手つきで パリパリの海苔を目の前で巻いてくれました キューリも太くて、あたかも大な乾電池ほどの異様に立派なカッパ巻きが 大きな桶に4X4で並んで出てきたので、量が多いな~とつぶやくと 「これはサービスだから」と言われました・・・2人で8個づつです これを食べれば、もう他の握りは注文しなくてもよくなってしまいましたし ひとつ食べて驚いたのは、その海苔とシャリのおいしさですが 5秒後にさらに驚いたのはワサビの量でした 泣けました・・・酔いも醒めるし、3個目で胃袋が変になったのです そしてもっと驚いたのは涙を出してむせかえしている私達が 大将に文句を言おうとしてもそのつど「ワサビもサービスだから」と 明るく笑いながら3回も繰り返したことだったのです 評判のサービスはどうにも方向性が間違っており お会計では異様に立派な金額でさらに驚かされ 気の小さな私は贅沢してはダメなのだな~と思い知ることになりました やはり庶民的なクルクルがサイフには優しいですね そう、クルクルといえば回転寿司に初めて行った時のことはよく覚えています あれは運転免許をとって間もない頃でした 祖父母から頼まれて京都市内の病院へ送った際に寄ったのです 寿司がベルトコンベアーで流れてくる状況に私もちょっと緊張しましたし 祖父母はどうしていいのか分からないみたいで、ほとんど食べようとはせずに 私が適当に選んだ皿を「なんとハイカラな~」と言って不思議そうに凝視していました 食べ終わった皿を何度もレーンに戻そうとするので困ったのも懐かしいです 車に戻ると、まるで外国に来たみたいだったと言って喜んでくれました あとで思い返すと祖父母と三人で外食したのはその日が約10年ぶりで しかもそれが最後となってしまったため 行こうと思えば機会はあったのに・・・と悔やみ 気が利かない自分に腹が立ったのものでした しかし腹が立つといえば驚くような話があります 長いカウンターのクルクル寿司に入ってイカの皿を手に取ると 思わず自分の目を疑いました・・・茶色のトッピングに見えていたのは チャバネゴキブリだったのです 娘が「あ~ムシや~」と喜ぶので静かにするように言い 何事かとこちらを見ているまわりの目もあるので 店員さんに小声でそれとなく知らせると カウンター越しに笑顔で皿を回収したお兄さんは ゴキブリを素手で払って床に落とすと靴でトンと踏みつぶし 慣れた感じで寿司はゴミ箱へ落としました そして軽く手を洗うとこう言ったのです 「失礼しました~次は何をにぎらせてもらいましょうか?」 え?にぎるのですか! しかもそのお兄さんは指に絆創膏を巻いているではありませんか! 無性に腹が立つのと同時に気の小さい私は食欲がなくなり 寿司と言えば ひな祭りに食べる我が家の手巻きに勝るものは無いのだと気づかされました 第187話 あたたかな雪 2月12日 今回は田舎に住んでいてよかったな~と思うことをご紹介します わが故郷・宮津は小さな町のため、出会った人が顔見知りである割合は 都会で暮らした場合よりもずいぶん高いということです 国道なのにすれ違う車が5台連続で知り合いだったとか 授業参観に行けば同窓会のようだったり、居酒屋でかつての恩師と出会って緊張したり 外食しても両隣のテーブルが先輩と後輩の家族だったりします 世間が狭いのですな 昔なじみは親子を区別するために苗字ではなく名前や愛称で呼ばれることも多く 「Aちゃん」や「B坊」「Cやん」とかわいらしく表現されるのは子供に限りません ちなみに私は「セイイチ」なので子供の頃から「せ~ちゃん」と呼ばれており おっさんになった今でもそう呼んでくれる方々を40歳を越してから特にありがたく思います 大雪の朝、車を出そうと車庫前の雪かきしていると近所の友人が通りがかりました U「どうや~? せ~ちゃ~ん、ごっつい積もったど~」 私「おお~Uちゃんか~、ほんまやな~」 U「しかし寒いな~」 私「そうやで、もう寒すぎて雪かきでもせんことには温まらんわいや」 U「ほんまやな~、こ~のクソ重たい雪でウチのスコップは壊れてしもたで」 私「アラ~、ほな今から買いに行くんか?」 U「おう、サンポがてら行ってくるわ~」 私「そらご苦労さん、まあ気をつけて」 U「そっちも気をつけて、また腰をいわすなよ~ もう若ないんやし」 私「ホンマやな、お互い気をつけなな~」 雪の降る中を遠ざかる影をあったかい気持ちで見送りました そういえば年末に学校帰りのU君の息子が挨拶してくれるので 「先月のマラソン大会で君は何位やったんや~?」と尋ねると 「オレは23位やったけど、せーちゃんはマラソン早かったんか?」と言われて 思わず噴出しそうになりました 父親とおばあさんが私のことをそう呼ぶからなのでしょう 30年前のU君にそっくりな5年生から「せ~ちゃん」と呼ばれることに 懐かしい錯覚も覚えて、とても嬉しい出来事でした 午後からはナナメに雪の降る中を配達に出かけました もちろん冬用タイヤの車に乗っていたのですが圧雪で凍結した坂で滑ってしまい もがけばもがくほど雪の中へナナメに沈んで動けなくなってしまいました 「やってもた~」と落ち込むのもつかのま大きなトラックがやってきたのです 運転手に「アホか~!道をふさぎやがって、さっさとどけ!」 とののしられることも覚悟していたのですが 降りてきた運転手は手にスコップを持っており 「おお~い、せ~ちゃんやないか~、な~に面白いことしとるんじゃい~」 と笑顔で言ってくれたのは中学時代の友人・G君の兄貴だったのです 20年ぶり?でしょうか 懐かしすぎます 兄貴はこちらがまだ頼みもしないのに仲間にも声をかけてくれて 私の車を雪の中から手際よく押し出してくれたので本当に助かりました そして充分にお礼も言えないまま、兄貴さん達は急ぐからと行ってしまいました 軽い絶望の中で不意に名前を呼ばれたことがとても嬉しい出来事でした さて、その夜はお通夜がありまして すっかり凍った歩道を喪服でバリバリと歩いていると 軽四が近づいてきてウインドーがツ~っと下がり 「せ~ちゃん!ひさしぶり~」といわれたのです よく見るとハンドルを握っていた喪服の女性は知り合いのおね~さんでした 「@@さんトコのお通夜に行くんやろ?一緒やから乗っていきなよ~」と言って下さいます 朝の雪かきで腰がすでに痛くなっていたので助かりました このおねえさんからも「ちゃん付け」で呼ばれるのも10年ぶりのはず 乗せてもらったのと同じくらいにそう呼ばれたことも嬉しい出来事でした すっかり大雪になりましたが帰宅後にホットウヰスキーを飲みながら思い返せば 『友人』『兄貴』『ねえさん』方達から優しい声をかけてもらえて 厳しい寒さとは真逆に、とても心温まる一日でした ツマミは何もいりません 第186話 やんちゃ 1月22日 一昨年のこと、取引先からCさんが当店したときの話です 世間話のあとで、ようやくCさんの営業トークが始まるという時に彼の携帯が鳴りました 「ああ~家からですわ~」と言ってCさんはすぐ切ってしまいます しかい、そのあとも何度もかかってきますので 出たほうがいいのではとこちらが促すと 「すみませんね~、すぐにすみますのでチョット失礼して・・・モシモシ~仕事中やぞ 今いそがしいから、あとでかけなお・・・警察?・・・どういうことだ?・・・ 本当にY子がか?・・・うんうん、確認を・・・俺は今いそがしいから・・・ じゃなくて・・・また電話してくれ・・・早めに済ます・・・じゃあ一旦切るぞ!」 Cさんは一変して険しい表情になり、ハンカチで汗を拭いていました お茶をゴクリと飲んでもまだ落ち着かない様子でした 今日は早めに社に戻らなければならないかも~と言っているところへまた着信があり 「もしもし、で、どうだった・・・そうなのか!なんでそんなことに・・・ Y子のことは全部おまえに任せてただろうが・・・もういいって・・・ だから泣くなって・・・ケガ?・・・5針も!・・・そうか・・・ しょうがないな、どこの病院や?・・・そうだな、警察よりそっちが先か でもどうしてそんな大ケガに・・・クギバット?・・・それはわかっとる! 分かったから、とにかく急いで行く・・・ああ~そうする、続きはあとで聞く ・・・あ~それも後で考えよう・・・とにかく落ち着け・・・・ハイハ~イ」 Cさんが急いで病院へ行かねばならないということは分かりました 話の途中までは交通事故かなと感じたのですが「クギバット」はどうも引っかかります 『凶器として釘の打ち付けられた木製のバット』以外に考えられません 「あの~大変な様子でしたが、事故ですか?」と聞くと Cさんは深いため息をつき、うつむいてちょっと考えてから 「タツミヤさん~この際だから聞いてください・・・お恥ずかしい話ですが 高校生になる娘のY子のことなんですけどね~あいつはやんちゃでね~ とても手のかかる子なんです、ああ~なんでこうなったのかな~ やさしい子だったはずなのに~ そうそう、さっきの電話は妻からでして 娘が授業中にもかかわらず友達を呼び出してリンチしたらしいんです そしたら相手が頭を5針縫う大ケガをして大騒ぎになったみたいで 先にお詫びに行ったほうがいいと担任が言ってるようですし とりあえず病院へ妻と一緒に行って謝らなければならないかなと 一対一ならまだしも、3人で囲んで一方的にボコボコにしたというのは なんとも情けないことです・・・そうは思いませんか?ケンカにもやり方がね しかも釘バットなんかを使うなんて、僕らが現役の頃でもめったにやりません あ~ぁ、いそがしくてかまってやれなかった私が悪いと言って妻は泣くし そうなのかもしれんと今さらボクが反省しても、すでにおきてしまったことは 今さらどうなるものでもないわけですし、ほんまに困ったことなんですよ ま~そういうわけで、今日のところは帰ります、ではまた・・・」 驚きました・・・話の内容もさることながらツッコミどころが多すぎです お嬢さんを「やんちゃ」というかわいい言葉で飾っていますが 最初から武器まで持ってリンチするのは「やんちゃ」の範疇を逸しています リンチした相手は本当に友達なのか? 授業中でなければリンチはOKなの? タイマンならセーフなのか? 相手が怪我をしたので問題になったのではなく 縫うような怪我をするまでリンチしたことが問題ではないのでしょうか? 今では真面目そうなCさんでしたが、10代の頃はブイブイ言わしていたようです ああ~人は見かけによらないな~ もしも自分の娘が人様に怪我をさせるようなことがあればと思うとぞっとしました しかし、子育てを奥さんに任せっぱなしで、ぜんぜんかまってやらないことが 娘を「やんちゃ」にさせるのならば・・・私は 私は娘をお姫様抱っこして大声で名前を呼んではバンバン花火を打ち上げ 花びらと紙吹雪を撒きつつ笑顔でクルリクルリと周りながら 芦屋雁之助の「娘よ」を歌いつつゴシゴシと頬ずりすることで 娘へのあふれる愛情をマックスでアピールしようかな~と 極端な事をイメージしてしまいましたが・・・ やりすぎなのも逆効果だとすぐに思いなおし、ふつうに軽く抱っこしてみたり 楽しい話をすることくらいのコミュニケーションを普段からしておかねばと思いました そうです~あれから有言実行の私は 月に一度と言わず娘を抱きしめていますが おかげさまで、家庭内はいつも笑いが絶えず 「このオッサンはキモいんじゃ~!」とか「ウザすぎ!」とか 「汚い油をつけるな、加齢臭がひどいんじゃ!」などと言って妙に照れる愛娘は いつもかわいい目を吊り上げ、子猫のように爪を立てて喜ぶと 思った以上に重たいパンチや少し鋭くとがったヒジ打ち 小さなカカトに全体重を乗せたイイ感じのキックを何度も使って 私への愛情を惜しみなく返してくれていますので ウチの娘に限っては、やんちゃになどならないと胸をなでおろしております 第185話 こだわりの4分割 2013年 1月8日 大晦日は年越しにソバをいただきました ソバと言えば焦がした白ネギと鴨肉を入れるのが好きなのですが 年越し用には、あえて娘の作ってくれる即席のカップめんで済ませるのもお手軽で これはこれでおめでたい年越しでもあります 第146話でご紹介したインスタント焼きそば「UFO」の食べ方に続き 今回はインスタント商品のベストセラーである「どん兵衛」についても無用のこだわりを持つ私が 薬にも毒にもならないことを承知でオススメしてしまいます それは「うどんどん兵衛」よりも「そばどん兵衛」に特化したこだわりです 他の商品で通用するかどうかは微妙ですが興味のある方はお試しください さて、そばどん兵衛には「あとのせサクサクてんぷら」なる具が付属しておりまして お召し上がりの直前にお入れください~と書いてあるのですが いつたべるかは自分で決めることこそが男らしい食べ方なので 男前な私はメーカーである日清の言うことを聞きません お召し上がりの直前にだけは入れないのです! かといって湯を入れるのと同時では、すぐに柔らかくとろけてしまうので気に入りません がしか~し!とろけたブヨブヨのてんぷらが結果的にうまみを増加させていることも否めないので なんでも4分割の持論を持つ私は芸術的な食べ方を編み出したのです 美しくもワイルドな私は「あとのせサクサクてんぷら」を惜しげもなくバキバキと4つに叩き割ると 投入時期を「湯を入れる前」と「湯を入れてから」の2つに分けまして それぞれをさらに「湯を入れる前にのせておく~先乗せ」と「湯を入れる前に食べてしまう~乗せず」 そして「お召し上がりの直前ではなく途中から入れる~中乗せ」と 「お召し上がりの後に入れる~最後乗せ」の4つに細分化したのであります 常人には分かりにくいと思うので、作って食べる手順にそって説明しますと あえてふやかすためのテンプラである第1番目のカケラは湯を入れる前に投入しておきます そして湯を入れて仕上がりを待っている三分間の「召し上がり前」に第2カケラを スナック菓子のようにそのままバリバリたべるのです! 心地よい歯ごたえと凝縮されたエビの風味を直接に感じましょう ここで私をうっかり信じてお試しになったみなさんは、典雅な味わいに加え 待ち時間の手持ち無沙汰が一気に解消されたことにも驚きを隠せなくなるでしょう さて、やや薄味が好みの私は湯を線より3mm上まで注ぎ 2分30秒でフタをはずし、やや固めだった麺が食べ終わる頃には 柔らかく変化しているという「うどん・そば」共通の麺へのこだわりも展開しつつ 先ほどのカリッカリとブヨブヨのてんぷらの対比を楽しむのです ソバもこれまた四分割して考えましょう 最初の4分の1をすすったところで、いよいよ3番目のカケラを 中途投入して次の4分の1の麺をいただきます 後半戦に際して忘れてならないポイントは、どん兵衛の唯一の弱点である 「七味の小袋」の不在を補うために七味唐辛子をあらかじめ用意しておき ひと振り投入して味を引きしめるということです 麺が残り4分の1になりましたら、もう2~3振り七味を投入して味の変化を楽しみます さらには最後の麺を全てすすり終わったあとで第4のカケラを投入するのです 満を持しての「召し上がり後」というわけです 「あとのせにもほどがあるじゃろうがっ!」と一人突っ込みをしながら 最後まで取っておいた虎の子のてんぷらだけを存分に味わいつつ 七味の効いたダシを名残惜しげに飲みほすのであります ああ~これはたまらん! しかもこの幸せが200円も出せば買えること さらにおつりがもらえるなんて・・・ああ~なんてすばらしい世の中なのだろう ああ~めでたいめでたい え? おめでたいのはお前だとおっしゃりたいのですか? そうです 年越しをソバで祝うほどめでたいのであります 第184話 心残り 12月12日 「私バカよねぇ~~~おバカさんよね~ぇ♪」ではじまる演歌といえば 細川たかしのデビュー曲「心のこり」ですよね~ぇ♪(敬称略) たまたま耳にして、やっぱりいい曲だな~と思ってしまったら それから2週間もこの歌が頭を離れなくなたのです 運転中などは他の音楽をかけないと「心のこり」がエンドレスで聞こえて困るほどでした この曲を聞くと歌の上手な同級生U君が休み時間に歌って 教室を盛り上げてくれていたのを思い出します ド演歌を次々と披露するU君にリクエストする友人達も 「Uちゃん~次は『私バカよね』を歌ってくれ~や」とか 「ちがうで~『おばかさん』やろ?」 「いや、たしか『後ろ指』という曲じゃ~」 などとテキトーに言っていましたが、よもや「心のこり」というタイトルだとは 私も含めて誰も知らなかったのですな 実は三番まで聞かないとこのタイトルの意味は分からないのです さてさて今回はその中学時代の心残りについて 「その1~ビューラ○ドへ山越えで行く」と「その2~宮守線のトンネルで隣町へ行く」 この2本立てでお話いたします どちらも仲のいい友人達が行ったというのに私は都合がつかなかったのです ああ~行きたかったな~とオッサンになった今でも思い起こされます 詳しく長~く説明いたしますと ~その1~ まづ「ビューラ○ドへ山越えで行く」は天橋立を一望できる高台のレジャー施設へ 一般的なリフトやケーブルカーで入場せずに、料金を払わない方法として 道なき斜面を登ったり、山伝いに侵入するというもので おこづかいを節約する手段として珍しいことではなかったのです この話で飲み会が盛り上がったことがあり 未経験の私は、いまさら子供のように侵入したくなりました ネットを調べてみると近畿自然歩道「金引の滝と旧宮津街道を訪ねるみち」 として整備されている須津街道の峠付近から分岐してビュー○ンドへと つながる古い山道は今も存在し、きっちり入場料と帰りのリフト代さえ払えば 山越えで中に入っても大丈夫らしいとの情報を見つけたのです 地図上では、宮津トンネルそばのパーキングから古道に入れば直線で600mほど これなら楽勝!ほんのひとまたぎだ~と大人気なく浮かれて行ってまいりました 須津峠 いや~、たいへんでした・・・道がかなり悪かったのです 倒木や竹林が道をふさぎ、峠の分岐からは急に細くなり、さらにビューラン○方面は だれも歩かないため背の高い笹が茂って道があるのかさえもよく分からないのです 一旦休憩して足元を見ると靴にはドロが、ズボンには大きなダニが2匹も喰らいついており 悲鳴をあげながらむしりとると、たった一人の寂しさと気持ち悪さがこみ上げて もはやじっとしていられませんでした とにかく施設から聞こえてくる機械音を頼りにクモの巣を引っ掛けつつも藪を進みますが 普段の運動不足からすぐに足元はおぼつかなくなりました 橋立を縦に見て、この薮のむこうがビューランド そんなこんなで、なんとかビューラン○に入り、山越えで入場したことを係員に告げると 何年ぶりかの珍客扱いで、ジロジロ見られてしまいました もちろんお金はしっかりと払い、飛龍観とよばれる橋立の絶景をしばしながめて リフトで他の観光客と一緒に下山します これで心残りのひとつは30年ぶりにバッチリ解消されましたが 駅の鏡を何げに見ると そこには・・・頭や肩にクモの巣をバッチリつけている 「おバカさん」が映っていたのでした・・・ なかなか立派な看板がくだり斜面にありました ~その2~ さてお次の「宮守線のトンネルで隣町へ行く」は 未成線だった国鉄・宮守線のトンネルを通って隣町まで行くというものです 宮津から大江町・河守を経て福知山への新路線・宮守線は建設凍結になってしまい 中学の頃には大江山をぶち抜く長いトンネル数本はすでに開通しておりましたが まだレールをしいていない状態で工事は中断していたのでした これをいいことに当時の子供は3kmもあるトンネルを徒歩や自転車で抜けて 隣町へ遊びに行く大冒険をしていたのです 友人のU君は「あの暗さは男を試す試練だった」とか 「トンネルの途中で他の人とすれ違うのが怖かった」と言って懐かしがります ああ~私もやってみたかったな~ というのも高校時代には工事が再開されてしまい 20歳の頃には宮福鉄道として開業して車両が走り始めたのです でも・・・40代のオッサンがいまさらこのトンネル(現KTR北近畿タンゴ鉄道・宮福線)に 入ることは社会人として出来ません・・・不法侵入罪で現行犯逮捕されます どうしたら心残りを清算できるだろうかと鉄道マニアの後輩・KY君に尋ねれば 現在営業している路線では無理でも、ちょっと足を伸ばしたJR旧・福知山線ならば トンネル内を歩けるというではありませんか! なに?くわしく教えてちょうだい~ 「昔はね、宝塚から三田までの武庫川沿いは険しい渓谷を縫うようにして 国鉄の線路が通っていたんですけど、安全とか距離短縮のために別路線で 複線の長~いトンネルをぶち抜いたんですよ、当然電化もされてね もちろん川沿いの旧線はレールを撤去してすぐに廃線となったんですが~ なぜかトンネルや鉄橋はいまでもかなり残っていて、地元の人や鉄道マニアが この廃線跡を歩き始めて、今では人気のウォーキングコースになったんですよ~」 これだ~!いい事を聞いたぞ 確かにそこなら1986年に廃線になっている区間なので レールを敷いてないトンネルが天下御免で歩けるではありませんか! KY君は3年ほど前に一人で途中までは歩いたものの トンネルの中が濡れており真っ暗で不気味なため、そこで引き返したのが心残りだとか 地図で見ると武田尾~名塩の間は徒歩で2時間もかからない距離でした 行くべし! 嬉しいことにKY君も同行してくれるというので心強い! 早速二人で心残りを解消すべく行ってまいりました いや~良かったです、こんどは家族連れで行楽に来ようと思います 秋の景色は最高と思いますしKY君も同じことを言ってました JR福知山線の武田尾駅で電車を降り、次の駅である西宮名塩までの 5~6kmの川沿いには枕木も残っており鉄橋なんかもスリリングなので 子供達も喜ぶと感じました そしてお目当てのトンネルです 数ケ所残っている400m級のトンネルは突入して30mも進めば かなりの暗さを感じましたし、目が慣れるまで足元も危うくてつまづきそうになります しかも途中でゆるく曲がっているため、入り口と出口の両方が見えなくなる部分では 外の光がまったく届かず、本当に真っ暗です しかも冷たい水滴が首元にポタリと落ちたりするとチビりそうになるので 昼間なのに夜間の肝試しのようです 一人ではとても脚が前には進みません KY君の勧めで懐中電灯を持ってきて正解でした トンネル前には入ってほしくなさそうな案内が・・・ 念願のトンネルを歩いて感じたのは 400mでこんなに怖いのなら3kmのトンネルは子供にとって いったいどれほどの衝撃があったのかということです 真っ暗な中で行けども行けども出口は見えずの1時間の冒険 逆に子供だから怖いもの無しで走破できたのかな~ あの時・・・私も中学時代にあのトンネルに入っていたなら 肝がズ太くなって、今の人生とは少し違ったりはしなかったのだろうか・・・ KY君とそんなことを話せばトンネル内ですから二人の声がよく響いて エコーがかかっていい感じなのです いい感じなので、このさい歌いましょうか 歌うのはもちろん「心残り」です どうやら私はおバカさんのようですから 第183話 タコヤキの4分割 11月11日 かわいい娘達には素直に育って欲しいと思いつつも 物事をいつも真正面から見てばかりではなく いろんな角度で捕らえれるようにムズカシイことや深い~ことも もうそろそろ教えようかと考えております かといって、人の心の裏側ばかり気にしたり 常にナナメに見るクセがついてもいけません さて、どんな風に教えたものか・・・ たとえば人を見て、優しいのか冷たいのかを判断するときに 優しい人だとしても、優しそうに見える人と見えない人がいる 実際にはグレーゾーンが多いので極端な話はできないけれど あえて外見と中身で4つに分ける考え方を身につけてもらうとして A 優しそうに見えて 優しい人 B 優しそうに見えて 冷たい人 C 冷たそうに見えて 優しい人 D 冷たそうに見えて 冷たい人 この4パターンに分けることができる でも、このうちで本当に優しい人はAとCで AとDは分かりやすいけれどBとCを間違えないように心がけようということなのです 言いたいことは「世の中には少なくとも4パターンはあるよ」ということでして・・・ さらに結果から逆算して分ける方法もあり たとえば結果的にモテモテ男がいるとして まづ二つに切ると優しいかそうでないか さらに別の切り口で男前かそうではないか そのおのおのを組み合わせると4パターンができますので それぞれどういうことか考えてみれば A男前で優しくてモテる男 B男前ではないが優しくてモテる男 C優しくはないが男前でモテる男 D優しくもなく男前でもないのにモテる男 の4パターンができます Aは分かりやすいですな、もてないワケがあれば逆に気になるほどです Bは性格が男前ということか Cは顔だけは良いので見た目重視の女子向け Dの場合にもてるということは・・・そうとう羽振りが良いとか マメだとか、ムードがあるとか なにか特別いいモノをもっているのでしょうな~ 人に限らず、2つに分けて考えられるものは、さらに2つづ つまり4つに分けることができるよということを子供に分かりやすく説明できないものか・・・ たとえばタコヤキ屋さんを「うまい」ことと「流行っている」ことの2つで割ると A うまくて 流行っているタコヤキ屋 B うまいのに 流行っていないタコヤキ屋 C まずくても 流行っているタコヤキ屋 D まずくて 流行っていないタコヤキ屋 AとDは当たり前ですが Bはもう少しでブレイクしそうな感じです、サービスか価格の見直しか、立地か・・・ Cについては面白いのでAと一緒に流行っているタコヤキ屋でくくり 価格でさらに4つに割ってみましょうか~ A1 安くて うまい 流行っているタコヤキ屋 A2 高くて うまい 流行っているタコヤキ屋 C1 高くて まずいのに 流行っているタコヤキ屋 C2 安くて まずいのに 流行っているタコヤキ屋 この場合も、うまいや安いというのは本人の気持ちや感じ方しだいなので 実際にはあやふやなモノではありますが それぞれに、いままで私が感じたことを書いてみます それぞれに、実際に人が並んでいるタコヤキ屋さんなのです A1「安くて うまい」は一番わかりやすいですね ちょうど当てはまるお店が隣町にありました 配達から帰る途中に住宅地の中でタコヤキの旗を見かけた私は 仕事も早く片付いて小腹も減ったので寄ってみることにしました そこは店と言っても民家の納屋にパイプイスが3つと冷蔵庫と用具一式があるだけでした 真面目そうなオバサンが大きなタコヤキをクルクルまわしていたので1つ注文しました 10個で300円は安い! 出来上がってパックにつめはじめたのを見てお金を払おうとすると 「すみません、これは予約の方の分なんです」と言われて次を待つことになりました 程なく6パックを軽自動車のおねえさんが持って帰ると 入れ替わりでやってきたおばあさんは4パックを注文しましたし 常連ぽいおじさん達もやって来て店内はすぐに満席です オバサンは「すんません~」と言って一生懸命タコヤキを焼いており 次から次へとお客さんが来るのです こんな田舎で意外だな~と思いつつアツアツのできたてを食べると ソースもうまいし出てきたタコも大粒だったので6パック買って帰る人の気持ちはよく分かりました これなら流行らないワケがない A2「高くて うまい」の場合も分かりやすくて、財布の中身が部厚い時なら納得できます 8個で580円! 大ダコ入り 踊る花カツオ 外はサクッと中はジューシー チェーン展開してメディアでも取り上げられて、有名人のサインが誇らしげに飾ってあったり 気軽なオヤツにはムリでも味については安心してたべることができます 逆にC1「高くて まずい」店は何ゆえに流行るのか? それはサービスや付加価値の問題です メイドの格好やレースクイーンのコスプレで給仕されたりしたら・・・ タコヤキの味自体は大きな問題ではなくなりますね 味ではなくユニークなサービスで流行るわけですな もちろん田舎では見かけませんけどね 最後のC2ですが、この「安くてまずいのに流行っている店」について思い出だすのは 20数年前にさかのぼって学生時代のアパートの近くにあった小さな店です タコヤキ8個100円の看板があり、前を通るといつもお客さんがいました 夕方の4時頃に小腹が減ってしまった私は、気になっていたこの店に入ってみたのです 普通の民家の軒先を改築した4畳半くらいの小さなお店の奥からは 地味なおばあさんがでてきて、なぜか不機嫌そうに「なに?」と言ったのです メニューはいたってシンプルでタコヤキ100円とバヤリースオレンジ100円のみです タコヤキを1つ頼むと「1つだけ?」と言われてしまい、「じゃ、2つ」と改めると 「タマゴ入りなら20円高くなるけど」と言われ「いりません」と答えました 他のお客さんが帰ると、なぜかめんどくさそうに焼き始めるおばあさんとの沈黙に耐えかねて バヤリースも頼むと300円を先に払いました 「もって帰る?ここでたべる?」と聞かれて、おもわず「ここで食べます」と答えてしまい また嫌そうな顔をされます・・・なんなんだこの店は!無愛想にもほどがある 10分ほどかかって出来上がった白くて不細工なタコヤキには 具はタコの小さなカケラしか入っておらずメリケン粉を水で溶いて焼き固めただけでした ぜんぜん薄くてやる気のないソースの上には よくみると青海苔がわずかにふりかかっていました 食感は「ねちゃっ」としており味はほとんどついていません のどにへばりつくうえに熱くて飲み込みにくいためバヤリースで流し込むと、まずさが加速します そんなおり、小学2年生くらいの子供が駆け込んできました おばあさんは「おかえりっ!」と大きく声をかけてニコニコしています 男の子は「こんにちわ!たこやき1つ、もって帰るわ~」と言い100円玉を大事そうに差し出します おばあさんは「ちょっとまってや~」と言って焼き始めると子供に家族の近況を聞いては 「そうかそうか~」と楽しそうにしています なんだか私の時とまったく態度が違うのですが・・・ワシは初対面でいきなり嫌われてるのか? そうこうしているうちに、次の子供が来てタコヤキをタマゴ入りで注文しました 私は16個をなんとか食べ終わると「ご馳走様」と小声で言って店をあとにしました その数日後の5時頃にこの店の前を通ると、中学生や高校生がたくさんたむろしていました 道にも長イスを出してタコヤキを皿に山盛で注文して回し食べ、バヤリースをのんでいます おばあさんも楽しそうで、路地裏はワイワイ盛り上がっていましたので 私はもう一度この店に寄ってみたくなりました 4時頃に思い切って再び暖簾をくぐるとお客さんは小学生ひとりで 5~6年生に見える男の子は塾へ行く前だとかオバサンとしゃべっていました おばあさんは私を見て「あ~、お兄さんはこないだの・・・」と言ってくれたのです 前回と印象がまるで違います 「タマゴ入りを1つ」と注文すると「ありがと~」と言ってくれます 焼きながら「おにいちゃんはどこの人?普段みかけんね~」と笑顔で聞いてくれます 裏のアパートに住んでいる学生で今日はバイトの帰りだと告げると 妙に世間話が弾むのです なんなんだ? 話をまとめると、おばあさんは無愛想ではなく子供好きだということ 下町ではよそ者は最初は警戒されること おばさんは一見さんである私をお客さんとして愛想を振りまくのではなく 子供達に害の無い人間なのか様子を見ていたらしいこと どうやら前回この店に寄った頃に不審者の目撃情報があったとか そして100円という超低価格なのは子供たちがおこづいかいの100円玉を握って 気軽に寄ってくれることを目的としていること だから大人が食べても正直言っておいしくはないが子供にとってはこれも幸せの一つであり 食べに来る高校生も、みんなヨチヨチ歩きの頃から知っているし みんなエエ子や~かわいい~というおばあさんに 「無愛想なおばあさん」と思っていた私は「無愛想に見えた優しいおばあさん」と改めましたし 20円アップのタマゴ入りは少しだけうまいと感じました あえて、まずい・・・じゃなかった「あまりおいしくない安いタコヤキ」には しっかり意味があったのですな~ さて、タコヤキのことを書いていると A1の安くてうまい店に行ってみようと思ってしまうのですが この店は・・・ほどなく閉店してしまったのです 流行っていたのに何で? それは駐車場が無いのでお客さんの路上駐車に近所迷惑とのクレームが来たことや 店の前は狭い田舎道なのに抜け道として夕方はかなりの交通量があったため渋滞になったり この店のうわさを聞きつけてウロウロ探す車が路地から出入りするので 地元の車との接触事故が起こり危険だったらしいのです ああ~残念、安くてうまいことが逆に作用することもあるとは・・・ そうだ、娘たちよ~世の中はタコヤキのように、まあるくはいかないものなのだ 第182話 百日紅 10月22日 宮津駅前の街路樹はサルスベリの木です あまり樹木に興味がなかったためなんとも思っていなかったのですが 初夏から秋にかけてず~っと咲いていたような気がして なんとなく調べてみたのです 手っ取り早くパソコンで検索しようと、「さ・る・す・べ」と入力しているそばから 「百日紅」と変換候補が出てきたではありませんか なんと「猿滑」よりも先に出てくるのです どうやら「百日紅」~ヒャクジツコウ~と書いて「さるすべり」と読むようです 調べてみるとこの木は文字通り赤い花を夏の盛りから100日に渡って咲かせ続けるとのこと サルがすべるほどにツルっと滑らかでセクシーな樹皮だけでも印象深いのに 花もきれいで長持ちとはな~ 勉強になりました 名前や由来が判るとあちこちに植わっているのが目に留まるようになり 風流な私はサルスベリが気に入りました 話は変わりまして、風流ではないK先輩から飲もうとさそわれて N先輩と3人でとぐろを巻いていたときのことです 先輩方の同窓会での話になり元サッカー部のKさんが酔って言うのには 「み~んな変わってだけど、あの可憐だったA子ちゃんの残念な姿にはまいったど~」 Kさんとは同級生で元バスケ部のイケメン・N先輩は 「そう、花の命は短かくて・・・」と少しクールに言いました 中学卒業から45歳までの約30年間で一度も会っていない友人もいて その変貌振りについては同窓会の内容以上に話が尽きないようです K「だって、中学の時にはむっちゃスリムで声まで可愛らしいかったのがどうして?」 N「A子を花に例えるならば桜か・・・花の見ごろは短くて、散ってしまえば・・・」 K「ショックじゃ~!ワシの青春をかえせ~」 私「まあまあ落ち着いて、中学時代のA子さんはそうとう満開だったということですね」 ショックのせいでメートルの上がるKさんですが・・・残念な事に頭頂部の葉が散り始めており すっかりメタボで中学時代の面影はほとんど無いため Kさんが女子の変貌振りをあげつらうのはいかがなものかと感じました 一方でNさんは今でも男前なので同窓会でも昔の女子からキャーキャーいわれていたと Kさんはうらやましがって妙にからむので困りました K「これでも昔は足も早かったしワシはけっこうモテとったんや~」 私「おや?妄想癖は昔からでしたか」 K「あっ!信じてないな な~Nちゃんよ、ワシもまあまあやったやろ?」 N「はいはい」 私「足が速かったのは本当なんですね」 K「ちが~う!モテとったんや!あえて言おう・・・美少年だったと!」 私「だったら逆にKさんのビフォー・アフターを肴に女子会が盛り上がっていますよ」 K「なに?!聞きずてならんな~もう一回言ってみろ!」 私「ええ~っと、おや?妄想癖は昔からでしたか」 K「そのくだりとちがうんじゃ~ 逆に~の後からやないか」 N「そうそう、逆といえばB子ちゃんが見違えるほどキレイになってたな~」 K「あ、そうや!ワシは最初誰かわからんかったんや、同じ組やったのに」 私「Kさんはとうとう若年性痴呆がはじまりましたか」 K「コラ!思い出せんのやないわい!わからんぐらいにキレイに変わってたんや」 私「整形でしょ」 K「おまえは殴られたいのか?コメカミかミゾオチならどっちがエエ?逆に~どっちもか?」 私「逆に~を無理やり使おうとしてません?」 K「うるさいな~でもB子ちゃんは整形じゃないやろ~ どう思うエロ男爵的には?」 N「整形はしてないな~、B子ちゃんはお母さんに良く似てるし、未だにご両親も若いから」 K「遺伝か~、あんなに美人になるンやったらオレは中学時代にもどってやな~人生を」 私「人生をやりなおせるならそのB子さんは、たぶんNさんとくっつきますよ」 K「う~、おまえはワシに夢をみさせんな~、でもB子ちゃんの変わりようは夢のようやった」 N「B子ちゃんは目立たなかったけど特に悪いところがないし整ってたから、いつかは・・・」 K「おや?花で例えると遅咲きの桜~とか、うまいこというつもりやろ!むかつくの~」 N「そうそう、秋の桜と書いてコスモスというのをK君は知らんか?」 K「そんなん知るかい!この女たらしはな~A子ちゃんとも付き合ってたんや~くそ~!」 私「昔のことは忘れましょう、そのA子さんもB子さんも今は幸せに暮らしているんでしょ?」 N「それがふたりとも何故か未婚ということで」 K「こいつのせいかもしれん!いや、ぜったいそうや」 N「はいはい、オレがわるいです」 K「なんじゃ~その余裕は~反省したふりならサルでもできる」 私「ま~ま~ま、未婚だから幸せじゃないとも限らないし、やさしい彼氏がいるかも」 K「でもな~なんだか引っかかるワケなのよ」 N「そうなのよ」 K「引っかかるといえば、オレに唯一チョコをくれた優しいC子ちゃんはバツ1やて」 N「ほな今はフリー? そういえばセクシーやったD子ちゃんはバツ2らしい」 K「気になるね~」 N「気になるね~」 私「ハイハイ先輩方は今から嫁をもらうワケでもなし、帰って奥さんをかわいがってください」 K「ほんまにおまえはワシに夢を見させんな~」 私「そうですかね?」 N「な~にもうすぐ矢野君も夢が見たくなるから・・・」 たしか同窓会なら3年後に予定されているはず その際にはNさんを見習って、Kさんのように女子の皆さんを がっかりさせない容姿で登場できるようにしたいものです そういえば去年、10年ぶりに女性の先輩と出会って驚いたことを思い出しました 33歳から43歳になっているはずのE子先輩があまりにも変わらないので 年の離れたそっくりな妹がいらっしゃったのかな?と思ったくらいです E子さんはかなり地味な先輩で学生時代の印象は薄いのですが 卒業後にパッと花咲いたようにキレイになられて思わず二度見した事がありました そして少し遅い結婚をされた直後に再びお会いした際には、さらに美しくなられていたのです かといって整形ではなくて、普通に食生活を改善したことによるシュイプアップと もともとの小顔で美肌なのに加えて上品な髪型とお化粧がプラスされた結果 学生時代よりぜんぜん魅力的になられたのです それからさらに10年経って、E子先輩は服のセンスや立ち居振る舞いなどでも さらにさらに磨きがかかってますますステキになられていたので思わず声が出ました 「いったいどこまできれいになるんです? いつも何を食べているんですか?」 すると艶のある優しい声で教えてくださいました 「我が家の食事の基本はね、たっぷりの野菜がメインでアク抜きも重要なのよ♪」 とにかく驚きでした・・・そうだN先輩ならどう例えるだろう 小~中学生の頃、つまり春に満開ならA子さんのように桜として 高校生~20代は夏の日向葵~ひまわり、30~40代は秋桜~コスモス 50才以上は冬の山茶花~さざんか、ということにしても E子先輩は夏から秋になってもまだ咲き続けているのです これはもう「百日紅~サルスベリ」ではありませんか 娘にこの話を聞かせると チョット考えてから「たしかに、私もサルスベリがいいな~」と答えてくれましたが 思っていても、なかなかそうなれるものではありませんよね あの100日間も咲き続ける息の長い華やかさにあやかりたくて 妻や子供達に菜食を勧める今日この頃です 第181話 二輪~その2 9月5日 半年前の飲み会でK先輩から唯一の趣味だったバイクを売ってしまったと聞かされました 「ここ数年のオレはやめる時期をさがしていただけだったかもしれん」 とまでおっしゃいます K先「よく時代劇であるやんか、お侍が刀を質に預けるシーンが、あの気持ち分かったわ~」 私「バイクの名前がカタナだっただけに~」 K先「ああ~オチを先に言いやがって!」 私「すみません、でもKさんはサムライじゃなくて・・・あきんどですやん」 K先「なんだかな~お前に言うと損した気になる」 私「お金に困ってというわけじゃないんでしょ?」 K先「まあ~な、話せば長いが聞いてくれ」 先輩の話はたしかに長かったので、ちょっと短めにご紹介します Kさんは高校卒業から数えて30年ほども同じメーカーのバイクにこだわって ず~っと乗り継いでいたのですが さすがに40代の後半に入ってからは、たまにエンジンをかける程度で バイクに一度も乗らない月もよくあったそうです もともと夏と冬と夜と雨降りには乗りたくないし、仲間も先にバイクを卒業してしまっていたこと 大昔はタンデムシートでキャーキャー言っていた奥さんからここ10数年にわたり バイクを手放すようにギャーギャー言われつづけてきたこと 広かった車庫も買い換えたワンボックスのワゴンと奥さんの軽四に加えて スクーターと大きくなった子供達の乗る5台の自転車などで いつのまにか手狭になり、一番奥でほこりをかぶっているバイクが 邪魔な存在として家族から白眼視されてきたこと もちろん車検や保険などの経費は乗らなくてもかかるので、もったいないこと しかしながら、それらのことを頭では当然理解しているのに ど~うしても手放せなかったバイクから急に卒業しようと思ったきっかけは 刺激的な事件だったというのです 半年前のその休日も奥さんから「乗らないなら今日、いますぐバイクを売れ!」 と言われてしまい、Kさんはあまり乗気ではないのに遠出をしたのだそうです 久しぶりの丹後半島一周道路から分岐する山道を快調に飛ばして とある村はずれから急なワインディングをブンブン攻めて峠に差し掛かったとき ある動物に遭遇してしまったのです! 間違えようもないツキノワグマが目の前の峠道をウロウロしているではありませんか しかも急ブレーキをかけたバイクに気づいても逃げるそぶりを見せないので Kさんは立ち往生です その瞬間に恐怖は感じながらも、なぜか昔の記憶がひとりでに・・・ まるで走馬灯のようによみがえってしまったのだそうです 一番バイクが楽しかった20歳の夏休みに北海道の林道を一人で飛ばしていると 巨大なシカが道をふさいでおり、急ブレーキで停止し、そのままにらみ合いになったこと バイクに乗った状態の低い体勢ではオスのエゾジカの目を見上げるしかなく さらにその上で鋭くとがった立派な角がどうにも恐ろしくて ゆっくりゆっくりと後退して別のルートを探して遠回りをしたこと そしてバイクに乗った自分は 負けたのだと・・・ 今回Kさんの遭遇した動物がシカだったら、本州の個体は北海道にくらべて小さいので オスでもそれほど怖くはなかったと思いますが、残念ながらクマだったのです もっと厄介です 10mと離れてはいません Kさんは、かつてシカに負けたことを心のどこかで気にしていたのでしょう しばらく様子を見ているうちにクマに対して妙な闘志がわいてしまったというのです クマならば襲ってきても登りは強いが下りには弱いと聞いているので 即座に反転して峠を降りればバイクのほうが当然早いと判断して 事もあろうにビービー警笛を鳴らしてクマを追い散らそうとしたそうです しかしクマは動じません カチンときたKさんはアクセルを開けてバンババ・バンババ空ぶかしでクマを刺激したのです するとKさんをにらみつけたクマはいきなり恐ろしいスピードで襲ってくる・・・ことはなく めんどくさそうに藪から谷へガザガサと降りていったそうです その様子を見て勝利を確信したKさんは喜び、フルスロットルでその場を突っ切っると 直後のカーブで次の動物に遭遇して再び驚くことになったのです それは動物と言ってもセーラー服のかわいい女の子でした 自転車を押してこの危険な峠を普通に登ってきたのです 彼女には先ほどのクマによる危険はもはやないと判断して Kさんはそのままかっこよく走り去るとニヤニヤしながら思ったのです もしも自分がいなければあの女の子はクマと鉢合わせになりヤバかったはず いや~これはいいことをしたな~と そして昔のバイク仲間を尋ねてクマを駆逐した話をドヤ顔で聞かせると 今では丸くなった友人はこの武勇伝に 「あっぱれ!さすがはK君じゃ~未だに現役でワイルドやな~」と言うのではなく 「あのな~お前が死ぬのは仕方ないとして、その子がクマに殺されてたかもそれんぞ」 とあきれられてしまったのです とにかくクマにかぎらず野生動物はヘタに刺激しないことが一番で なんでもクマは逃げる相手の背中を見ると襲い掛かってしまう習性があるらしく その場合には最高時速50kmもの高速で追いかけてくるため バイクがもたつけば加速するより先に後ろから襲われてしまうことも考えられるだろうこと もちろんクマと向き合っていても刺激しすぎるとびっくりして襲ってくることもある 辛口な友人の言葉に今一度冷静に考えれば たしかにあのとき2~3分でもタイミングがずれていれば クマを威嚇している現場に女の子が現れてしまい びっくりして逃げるセーラー服の背中にクマが襲い掛かる! という最悪の事態になりえたかもと気づいたKさんは 見ず知らずの女の子を巻き込んで簡単に死なせる可能性があった事に恐怖し その一方で、徐々にうなり声を上げる事がクマに有効な場合もあるとも聞き バイクの排気音はクマに効いていたはずなので・・・やはり自分があの場にいなければ 女の子はどうせクマと鉢合わせになるのだから危険な状態に変わりない・・・ などとあれこれ思い悩んで家路につくと海岸線の大きなカーブで おりしもどんよりした空模様が一変、雲の切れ間から天使が降臨するがごとく 光のカーテンが現れ、鉛色だった日本海の一部がキラキラと輝きだしたのです その美しさに目を細めていると 何か大きな存在から、もうバイクを卒業してもいいのだと気づかされたような なんとも不思議な気分になり 今がそのときとバイクはすぐに売却 「あのときのオレはクマに気持ちで勝っていたんじゃ~ エイドリア~ン!」 とのことでした わかるような、わからないような微妙な話ですが Kさんは意外とロマンチックな人なのでしょう さて、バイクをきっぱりとやめたKさんは・・・こんどは自転車に目覚めてしまい 車庫にはタイヤの細いロードレーサーとイボイボタイヤのマウンテンバイク 折りたたみ式のクロスバイクの3台が、かつてのバイク以上に車庫を占領しているそうで 家族の冷たい視線は相変わらずとのこと ちなみにクマと遭遇したら注意を引きつけるための目立つモノを地面に残しながら 背中を見せないようにゆっくり後退するのが鉄則なんだそうです 第000~40話 第41~70話 第71~100話 第101~140話 第141~180話 第181話~最新 |